1-2 呼ばれた先の状況を聞く
「ふんっ! やはり異世界から召喚した奴に魔王を任せるなんて反対だったんだ。時間の無駄だったな」
巨漢の男がキレながらその場を後にする。
同じような筋骨隆々の集団もそのあとに続いていった。
「私も失礼させてもらおう」
黒髪和服の女性もその場から立ち去った。
しかし、彼女についていく者は誰もいなかった。
もしかして、一人で来ていたのだろうか?
「アタシたちも帰るわね。何か進展があったら、呼んで頂戴」
妖艶な女性は笑顔でその場から消える。
似たような格好をしている女性の集団も消えたり──はせず、普通に扉から出て行った。
もしかすると、上位の存在だからできることなのだろうか?
「わ、わたしは研究室に──」
「ちょっと待って」
研究者の女性が立ち去ろうとしたが、それをOL風の女性が引き留める。
面倒ごとに巻き込まれると思ったのだろうか、研究者はビクビクしていた。
「な、なんですか? 他の人が反対しているのに、私も賛成はできないですよ」
自分だけ別の行動するのが難しいのだろう。
力のありそうな3人が反対しているのに、彼女だけ賛成したら何かされるかもしれない。
その判断はおかしくないと思う。
「その必要はないわ。ただ頼み事があるの」
「頼み事? なんですか?」
「水晶と計測器を持ってきてもらえる?」
「・・・・・・それぐらいなら」
OL風の頼みに研究者はしぶしぶ受け入れる。
おそらく内容的には問題なかったのだろう。
タタッと急いで部屋から駆け出した。
「さて、話をしましょうか」
「ひっ⁉」
いきなり話しかけられ、短い悲鳴を上げてしまう。
見知らぬ場所で知らない人に話しかけらたら、当然の反応だろう。
今まで見たことがない美人なのも理由の一端である。
こんな女性と話すなんて、あとでお金を取られたりしないだろうか?
「まずは自己紹介からしましょう。魔王補佐官のスクレと申します」
「僕は天城 尊です」
自己紹介されたので、流石に返事をする。
名前が分からなかったので、どうしようかと思っていた。
「天城がファミリーネーム、尊がファーストネームですかね」
「そうですね」
「では、タケル様と呼ばせていただきます。よろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫です。ですが、様はつけなくていいですよ」
スクレさんの言葉に頷く。
別に名前を呼ばれること自体は拒否することではない。
むしろこんな綺麗な女性に名前を呼ばれるのはなんとなく嬉しい。
だが、流石に様付けだけは気になったので辞退しようとしたが・・・・・・
「仕えるべき主を呼び捨てなどできません。絶対に様はつけさせていただきます」
「・・・・・・そうですか」
頑なな彼女の態度に反論はしなかった。
真面目な雰囲気の彼女は自分の仕事に誇りを持っているのかもしれない。
だからこそ、こだわっているのだろう。
「あの、スクレさん」
「スクレでよろしいですよ」
自分はさん付けを断ってきた。
部下として、上下関係をしっかりしておきたいのだろう。
悪いことではないが、今回はこちらにも理由がある。
「初対面で年上の女性相手に呼び捨てなんてできません」
「ふむ、そういうものですか」
僕の話を聞き、少し考え込む彼女。
おそらくこの世界の文化ではないのだろう。
だが、こちらの考えには理解を示してくれているようだ。
「わかりました。タケル様の思うように呼んでください」
「ありがとうございます」
「ですが、いずれは敬称なしで呼べるようにしてください。他の者達への示しもありますから」
「・・・・・・善処します」
彼女を敬称なしで呼べるだろうか?
正直、自信が無かった。
「では、話を進めましょうか」
「はい」
「どうしてタケル様は魔王になることを拒まれたのですか?」
やはり話は先程の内容だった。
といっても、答えは単純である。
「僕に魔王なんて務まるはずがないです。そもそも、ここってどこですか?」
十代半ばの僕にそんな大役が果たせるわけがない。
しかも、まったく知らない場所で、だ。
「ここは魔王城です。魔王が住んでいる城ですね」
「まあ、そうですよね。というか、魔王が住んでいるのなら僕が呼ばれる理由はないのでは?」
スクレさんの話から矛盾に気づく。
僕は魔王として呼ばれたはずで、既に魔王がいるのなら必要はないだろう。
「現在、この城に主はいません。1年ほど前に勇者と呼ばれる者に討たれました」
「勇者、ですか?」
なんか格好いい称号が聞こえてきた。
明らかに魔王と対になる存在だろう。
どちらかというと、そちらに憧れてしまう。
まあ、僕には到底できないことだろうが・・・・・・
「人間の英雄と呼ばれる存在ですね。人間界に脅威をもたらす魔王を倒し、世界を救うのを使命としてます」
「脅威をもたらすんですか?」
思わず質問してしまった。
魔王だから当然かもしれないが、悪いことはしようと思わない。
そもそも出来る気がしない。
そんな僕の反応に気づき、スクレさんは首を横に振る。
「そこは人──いえ、魔王様それぞれです。たしかに脅威をもたらす魔王もいますが、逆に人間界と融和しようとする魔王様もいらっしゃいます」
「なるほど。ちなみに先代はどちらで?」
「脅威をもたらす方ですね。だから、討たれました」
「ですよね」
流石に平和を望む者が討たれるわけがない。
先代はかなり悪いことをして、人間にとって脅威だったのだろう。
だが、ここで気づいたことがある。
「僕も人間なんですけど」
脅威にしろ、融和にしろ、魔王は人間とは違う存在だろう。
それなのに、人間の僕が選ばれて良いのだろうか?
「その点は安心してください。召喚して呼ばれるのは魔王の才能がある者だけですから」
「それは安心していいのかな?」
自信満々なスクレさんの言葉になんとも言えない表情を浮かべる。
良い意味で言ってくれているのだろうが、まったく褒められている気がしないからだ。
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