2-3 新米魔王は書類仕事にてんてこ舞いである
「はぁ、終わった」
執務室に戻って2時間ほどが経ち、ようやく書類の山を捌ききることができた。
ぐったりと椅子にもたれかかる。
「お疲れ様です。こちらどうぞ」
「ありがとう」
スクレさんが紅茶を淹れてくれる。
感謝の言葉を告げてから口に含む。
あぁ、落ち着くなぁ。
「魔王って、書類仕事もあるんだな」
捌いた書類の山を見て、思わずそんな感想を漏らす。
実力主義の魔族社会の長なので、こういう仕事はしないと思っていた。
「国を治める立場ですから、当然ありますよ。ちなみに、これでもかなり減らした方ですよ?」
「えっ⁉」
スクレさんの言葉に驚きの声を漏らす。
結構頑張ったと思うのだが、これでも減らしたのか?
「私で対処できる案件は除いて、タケル様でないと駄目なものだけ残しています。そうしないと、3倍ぐらいの量になっていますね」
「そんなに?」
想像以上の量に驚愕してしまう。
今の量でもかなりしんどいのに、3倍になったら捌ききる自信がない。
「先代魔王もこんな書類仕事をやっていたの?」
思わずそんなことが気になってしまう。
話を聞く限り、かなりの武闘派だったはずだ。
こんな書類仕事をするイメージはないが・・・・・・
「先代魔王様はあまりこういう仕事はしていませんでしたね」
「え? 良いなぁ」
仕事をしていないと聞いて、羨ましいと思ってしまった。
どうして僕だけこんなしんどい仕事をしているのだろうか?
「先代魔王様は畏怖の対象でしたから、民からの嘆願書がかなり少なかったんですよ。今の治世に何か文句があるのか、と言われかねませんから」
「ああ、そういうこと」
先代魔王があまり書類仕事をしなかった理由がわかった。
そもそも捌く書類がそこまで多くなかったのだ。
「そういう意味ではタケル様の方が民から慕われていますね。こうやって多くの嘆願書が届いているのですから」
「僕なら問題ないと舐められているんじゃないの?」
褒めているつもりなのだろうが、素直に受け取れなかった。
元々先代魔王の時にはあまり届かなかったのに、代替わりして1ヶ月も経たずにこれだけ嘆願書が届くようになったのだ。
先代魔王への畏怖もあるだろうが、単純に僕が舐められているようにも感じる。
「否定はできませんね」
「否定はしないんだ」
スクレさんの反応に驚く。
てっきりフォローしてくれると思っていた。
フォローできないほど舐められているのだろうか?
「ですが、民が望んでいるのも事実ですよ。タケル様なら叶えてくれると思ったからこそ、こうやって嘆願書が届いているんです」
「そういうものか」
嘆願書が届いているのなら、民が助けてほしがっているのだ。
ならば、上に立つ者として手を差し伸べなければならないだろう。
まあ、新米魔王にできることは限られているだろうが・・・・・・
「【領域調整】の範囲がもっと広かったら、いろんな問題が解決できそうなんだけどな」
思わずそんなことを口にしてしまう。
僕の【領域調整】は支配下においてある領域を色々変化させることができる。
どこまでできるかは研究の余地はあるが、意外とできることは幅広いのだ。
だが、現状は範囲が魔王城のみなので、嘆願書が送られてきた場所をどうこうするのは難しい。
「範囲が広がっても難しいと思いますよ」
そんな僕の呟きにスクレさんは否定した。
受け入れられなかったことに思わず頬を膨らませる。
「なんで?」
「範囲が広がるということは、使用魔力量も高くなります。魔族領がどれほど広いかわかっていますか?」
「・・・・・・そういえば、広かったね」
彼女の指摘に納得せざるを得なかった。
地図を見せてもらったことがあるのだが、僕が治めている魔族領は思ったよりも広かった。
魔王城だけしか使えない現状、その範囲を支配したとしても自在に調整できないかもしれない。
そういう意味では現状が身の丈に合っているのだろう。
「楽をしようとせず、地道に書類仕事をしてください。私もお手伝いしますから」
「うん、わかったよ」
僕より仕事をしてくれている手前、拒否することはできなかった。
文句を言っていたことが申し訳なく思ってしまった。
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