2-2 新米魔王はいたずらっ子扱いに不満である
「やはりここでしたか、タケル様」
料理長と会話していると、スクレさんがやってきた。
メイド姿ではなく、スーツのような服装だった。
「どうしたの、スクレさん?」
「どうしたの、ではありません。まだまだ書類があるので、早く執務室に戻ってください」
「えぇ~」
「文句を言わないでください」
不満げな反応をすると叱責される。
先代魔王が討伐されて1年間に様々な書類が溜まっていたらしい。
魔王がいなくとも、魔族領の生活がなくなるわけではない。
その間に仕事が溜まっていったのだ。
新たな魔王に就任した僕がそのツケを支払うことになったわけだ。
だが、召喚される前も引きこもりの元学生だったので、いきなり書類仕事ができるはずがなかった。
慣れない仕事に疲れ、【領域調整】を使える頼みを引き受けたのだ。
「スクレ様の前では魔王様も形無しですな」
そんな僕の様子を見て、料理長が苦笑する。
なんか子供を見るような目である。
いや、彼の年齢からすれば、子供ぐらいの年齢なのだろうが・・・・・・
「料理長~」
助けを求めようと声を掛ける。
まだまだ食材の箱が残っていたはずだ。
僕の【領域調整】が必要だろう。
「残りはウチの若手達に任せますよ。やはり甘やかすのはよくない」
「「「「「っ⁉」」」」」
いきなり矛先を向けられた若手料理人たちが驚きの表情を浮かべる。
僕がいたことで楽できると思っていたのだろう。
その表情には絶望が浮かんでいる。
当然、はしごを外された僕も同じような表情だろう。
「では、行きますよ」
「ちょ、離してよ」
右手を掴まれ、そのまま引っ張られていく。
綺麗な女性と手を繋いだことで思わずドキッとしてしまう。
今までの人生で女性と手を繋ぐ経験などなかったので仕方がない反応である。
「まるで姉弟のようですな」
背後から料理長が呟いた。
別に他意はないのだろう。
だが、僕はショックを受けてしまった。
魔王として受け入れてもらったはずだが、未だに子供扱いをされているからだ。
思わず下を向いてしまう。
「タケル様」
廊下を歩きながらスクレさんが声を掛けてくる。
顔を上げるが、彼女は前を向いていた。
「気にすることはないと思いますよ」
慰めてくれているのがわかった。
おそらく先程の料理長の発言が聞こえていたのだろう。
僕が落ち込んでいるのも気づいたようだ。
「先代魔王様は強大な力で恐れられており、臣下はともかく多くの魔族から慕われてはいませんでした。そういう意味では一般魔族から慕われているタケル様は素晴らしいと思いますよ」
「でも、魔王なのに頼りないと言われている気がして」
フォローされても気になることは気になってしまう。
大人から見れば、僕はまだまだ頼りない子供なのだろう。
「タケル様はまだまだ成長途中なのです。これから立派になれば良いんですよ」
「・・・・・・わかったよ」
彼女のフォローを受け入れることができた。
たしかに僕は先代魔王に比べれば、頼りない存在だろう。
だが、彼とは違って僕には成長する可能性がある。
今のように信頼されている状態で立派に成長できれば、先代よりも優れた魔王になれるはずだ。
「私としては、もう少しこのままでもいいですけど・・・・・・」
「何か言った?」
「いえ、なんでもありません。早く行きますよ」
「?」
スクレさんが何か呟いたが、聞き取ることができなかった。
思わず質問したが、答えてもらえずにそのまま連れて行かれてしまった。
一体、なんて言ったのだろうか?
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