プロローグ 魔族領に近い人間の村にて
第二章、開始します。
──とある人間領の小さな村の酒場。
「なぁ、聞いたか? 新たな魔王が現れたってよ」
酒飲みの一人が相手に話しかける。
すでに何杯か酒は飲んでいる様子だが、まだまだしっかり意識があるようだ。
「その話か。本当なのか?」
話しかけられた相手は怪訝そうな表情を浮かべていた。
噂は聞いていたようだが、どうにも信じられない様子だった。
「本当だと聞いている。なんでも、魔王城で激しい戦闘が行われたらしい」
「1年前に魔王が討伐されたばかりだろ? だったら、魔王の後釜を狙った幹部同士の戦いじゃないのか?」
「どちらにしても、新しい魔王が現れたってことじゃないのかな。新たな魔王が戦闘を行ったのか、幹部同士が戦ったかはわからないけど」
「たしかにそうだよな」
二人はそんな会話をしながらも、酒を飲む手は止まらない。
新たな魔王の存在にそこまで恐怖を抱いていない様子だった。
「また戦いの日々になるのかな? そうしたら、この辺りも人が一杯になって、売り上げとかが上がるんだがな」
「まあ、危険度もその分上がるんだがな
「それは仕方がないだろうよ。戦いの最前線なんだからな」
この村は人間領の端っこ──魔族領と隣接する地域に位置していた。
だからこそ、近くで戦いが頻繁に起こっていた。
戦闘に巻き込まれる危険性は高いが、事前の準備する場所として多くの人間が金を落としてくれる。
そういう意味では戦いも悪い話ではなかった。
「といっても、大きな戦いにはならないだろうな」
「どうしてだ?」
相方の言葉に思わず聞き返してしまう。
その理由がわからなかったからだ。
「だって、前の魔王が討伐されて、まだ1年しか経っていないんだぞ? だったら、新しい魔王も勇者様がすぐに倒してしまうだろうよ」
「ああ、そういうことか。でも、たしか・・・・・・」
説明を聞いて、何かに気づいた様子だった。
だが、その内容を口にしようとしたが──
(バンッ)
「「っ⁉」」
──いつの間にか背後に来た男がテーブルの上に大きな酒瓶を置いた。
といっても、騒がしい店内ではそこまで大した音ではなく、周囲も気にしていない様子だ。
「新しい魔王の話、聞かせて貰えるか? 酒は俺が驕るからよ」
「「・・・・・・はい」」
突然現れた男が怖い笑みを浮かべてきた。
男達は素直に頷くしかできなかった。
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