1-14 僕が使う【領域調整】が異常らしい
「タケル様! 一体、何をしたんですか?」
慌てた様子で質問してくるイスティさん。
何をそんなに驚いているのだろうか?
「え? 普通に魔力を通して、部屋に穴を作っただけですけど」
「いや、それは普通じゃないですよ」
「そうなんですか?」
普通じゃないと言われ、思わず聞き返してしまった。
魔法がある世界なのだから、これぐらいできてもおかしくないと思っていた。
そもそもあっさりとできてしまったし・・・・・・
「さっき、箱を動かしただけでかなりの魔力を消費したでしょう。それなのに、こんな大きな穴を作るだなんて」
「壁を通じて魔力を流したら、そこまで消費は激しくなかったよ」
「え?」
僕の説明を聞き、彼女は言葉を失う。
口に手を当て、しばらく考え始める。
考えがまとまったのか、再び顔を上げる。
「では、他の場所で同じ事ができますか?」
「たぶん、できますよ。ほら」
少し離れたところで同じように穴を作る。
玉座の間が大変なことになっているが、証明するためなので仕方がない。
あとでしっかりと戻しておかないと・・・・・・
「この玉座の間はタケル様の支配下におかれていますね。だからこそ、こんな風に自由自在に変化させられるのかも」
「そういえば、画面にも玉座の間と自室の項目があったな。そういうことか」
説明を聞いて、改めて状況を理解する。
しかし、ここで疑問が出てくる。
「支配下におかれている場所を自在に変化させられるのはわかったよ。でも、さっきの箱を移動させるときにかなりの魔力を消耗したのはどうしてだろう?」
この部屋の中で移動させたのに、消耗の度合いが違いすぎた。
正確な値はわからないが、体感で数倍──下手したら、十倍ぐらい消耗した気がする。
同じ部屋での出来事なのに、ここまで違うのはおかしい気がする。
「おそらく私が持ち込んだ箱だからでしょう」
「それで何かが変わるの?」
「外部から持ち込んだものなので、タケル様の【領域調整】の支配下に入っていなかったのです。だから、消耗が激しかったのでしょう」
「はぁ、なるほど」
説明を聞いて、納得の言葉を漏らす。
これだけの条件から結論を導き出せるとは流石研究者である。
直感的に【領域調整】を使っただけなので、僕ではこういう風に言語化はできなかった。
「しかし、とんでもない力ですね」
「そうなんですか?」
イスティさんの言葉に聞き返してしまう。
評価して貰えるのは嬉しいが、とんでもないと言われるほどだろうか?
ただただ部屋を自由自在に変化できる能力なだけだと思うけど・・・・・・
「もちろんですよ。タケル様はこの凄さがわからないのですか?」
「魔法自体が初めてなので、イマイチわからないよ」
目を輝かせて詰め寄ってくる彼女に若干引いてしまう。
眼鏡をかけて野暮ったい雰囲気があるが、元の素材が良いので綺麗である。
女性になれていない僕には目に毒である。
「例えば、あれほどの穴を作る場合、結構な魔力を消費します。訓練を繰り返せば息をするようにできるでしょうが、初心者があっさりできることではありません」
「初心者の僕がやったのが異常だと?」
「はい、異常ですね。さらに、部屋の中であれば自在に変化させられるのも異常なんですよ。本来はモノの配置を変えたりするだけの魔法なんですから」
「そうなんですか?」
説明を聞いて、驚きを隠せなかった。
【領域調整】は本来もっと小規模な魔法のようだ。
正直、他にもいろいろとできる気がする。
だが、この場でやることはしない。
これ以上、彼女を驚かせるのもしのびない
「もしかすると、この異常性が魔王の才覚として認められたのかもしれませんね」
「異常性、って酷いですよ。でも、異常であるなら魔王として認められるのもおかしくはないのかな」
異常であると言われたことにショックを受けつつ、状況に納得できた。
今までどうして僕が呼ばれたのかわからなかったが、この力があるのならおかしな話ではないのだろう。
「タケル様、訓練をつづけましょう。この力を使いこなせれば、他の者達もあなたを魔王として認めざるを得ないはずです」
「認められる必要はあるの?」
「当たり前です。そのためにタケル様は召喚されたんでしょう」
「まあ、そうなんだけど・・・・・・」
強く言われ、否定できなかった。
だが、そこまで魔王として認められたいとは思えなかった。
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