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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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第644話 エドガーとの話し合い

 レコア川を視察してから、一週間が経った。


 あれから俺は、何度かレコア川へ足を運んでいる。


 これまで見てきたのは、川が南へ曲がる場所だけじゃない。


 その少し上流や下流にも足を延ばして、川岸の様子や周囲の土地を確認してき


 水深や川底の状態までは、専門の人たちに調べてもらう必要がある。


 それでも、いくつか候補地を見比べることで、それぞれの特徴が少しずつわかってきた。


 曲がり角の周辺は土地が広いけど、川岸が削られている場所がある。


 上流側には比較的流れが穏やかに見える場所もあるけど、浅瀬が気になる。


 下流側では、倉庫や道路を整備できそうな土地も見つかった。ただ、増水したときの安全性はまだわからない。


 ……うーん。


 どこにも長所と短所があるな。


 とりあえず地図に現時点で考えていることを記しておいた。


 それらを含めて共鳴石通信でエドガーとも情報を共有したが、エドガーも色々と考えてるらしく、どうやらここに来るらしい。


 ◇


「リオン!」


 午前中、政務所で仕事をしていると、聞き慣れた大きな声がした。


 顔を上げると、ガイルが部屋の入口に立っていた。


「あっ、ガイル! 帰ってきたんだね!」


「ああ! さっき戻ったところだ!」


 その隣には、ナディアもいた。


「二人ともお疲れさま!」


「ありがとうございます」


 ナディアが微笑んだ。


 ガイルは騎士団を率いて、上水道の建設工事を手伝っていた。


 ナディアはレイ湿原で、アーロンたちと稲作の状況を確認していたはずだ。


「ガイル、上水道の工事はどうだった?」


「順調だぞ! ただ、まだやることは山ほどあるな!」


「そうだよね。かなり長い水路だからね」


「ああ。でも訓練としてはかなりいいぞ!」


「うちの騎士団の訓練にもなるし、ガイルには本当に感謝してるよ」


「はっはっは!」


 ガイルは笑いながら胸を張った。


 次に、ナディアへ顔を向ける。


「稲作の方はどうだった?」


「今のところ、大きな問題はありません。ただ、水の管理にはもう少し工夫が必要そうです」


「水の管理?」


「はい。田んぼによって、水がたまりやすい場所と抜けやすい場所があるんです。アーロンさんたちと相談して、水路や畦を調整しています」


「そっか。ありがとう、ナディア!」


「いえ。私も、こちらでの稲作が成功するのを楽しみにしていますから」


 二人とも、それぞれの現場で仕事を進めてくれている。


「ところで、リオン」


 ガイルが机の上に広げられた地図へ目を向けた。


「何だ、それ?」


「ああ。レコア川の港の候補地を調べてたんだ」


「おっ! もう現地へ行ってきたのか!」


「うん。ミラたちと一緒にね」


「そうだったのか!いい場所はあったか?」


「うーん。まだどこが一番港に向いているのか、決められなくてね」


「港か……。本格的に工事が始まったら、相当な人数が必要になるだろうな」


「うん。そこも気になってるんだ」


 俺は地図の端に書いたメモを見せた。


「今は上水道の工事もあるし、蒸気機関の開発も進めてるでしょ?」


「ああ」


「だから、港はまず測量と設計を進めて、工事を始める時期は慎重に決めたいんだ」


「おまえは次から次へと新しいことを見つけてくるな!」


「ははは。自分でもそう思うよ」


 すると、ナディアが地図を覗き込んだ。


「リオンさん。この場所は、エドガーさんの領地との境ですよね?」


「うん。川の両岸を一つの港として整備できないかと思ってるんだ」


「……両岸を、ですか?」


「王都方面へ運ぶ荷物はエドガーの領地側、俺の領へ運ぶ荷物はこちら側で扱えたら便利だと思ってね」


「なるほど。それなら、両岸に荷物を保管する場所も必要になりますね」


「そうなんだ。それに、港からの道路も整備しないとね」


 俺は地図に目を落とした。


「今日、エドガーとも相談する予定なんだけど……」


 そのときだった。


「リオン様。失礼いたします」


 部屋に入ってきたのは、ローレンさんだった。


「どうしたの?」


「エドガー殿下がお見えになりました」


「お! 来たか」


 俺は顔を上げた。


「すぐにお迎えしよう!」


 俺は椅子から立ち上がった。


 ◇


 屋敷の玄関へ向かうと、エドガーが待っていた。


「エドガー! 久しぶり!」


「久しぶり、リオン。急に来て悪かったね」


「ううん! 直接会って話したかったんだ!」


「それはよかった」


 エドガーが微笑んだ。


「それに、僕の方でも調べてみたら、気になる記録が見つかったんだ」


「……気になる記録?」


「ああ。地図を見ながら説明するよ」


 エドガーが手に持っていた書類の束を軽く持ち上げた。


 何が見つかったんだろう?


 俺たちは応接室へ向かった。


 ◇


 応接室には、俺とエドガー、ミラ、ガイル、ナディアが集まった。


 ローレンさんには、王宮から届いた測量資料と、俺がまとめた地図を用意してもらった。


「それでは、私は政務所の仕事に戻ります。何かございましたら、お呼びください」


「ありがとう、ローレンさん」


 ローレンさんが一礼して部屋を出ていった。


「ガイルとナディアも戻っていたんだね」


 エドガーが二人を見た。


「ああ! ついさっき帰ってきたところだ!」


「相変わらず元気だな、ガイル」


「お前も元気そうじゃないか!」


「おかげさまでね」


 ナディアも微笑んだ。


「エドガーさんも、お変わりなさそうで何よりです」


「ありがとう、ナディア」


「それじゃあ、まずは俺が見てきた場所について説明するね」


 俺は地図を広げた。


 そこには、レコア川の曲がり角を中心に、いくつか印をつけてある。


「ここが、最初に視察した場所なんだ」


 俺は川が南へ曲がる地点を指さした。


「周囲に広い土地があって、候補地としては面白いと思う。ただ、川岸が削られている場所もあったんだ」


「削られている?」


「うん。いくつか亀裂を見つけてね。実際に、その一部が崩れるところも見たよ」


 エドガーの表情が真剣になった。


「それなら、何もしないで港を造るわけにはいかないな」


「そうなんだ。そこで、ビダン山の硬化石を使った護岸工事を考えてるんだ」


「硬化石か」


 エドガーが頷いた。


「あの石を使えば、普通の石材より丈夫にできるかもしれないが」


「うん。ただ、硬化石で岸を固めるだけじゃ駄目なんだ。川底の土まで削られたら、護岸そのものが崩れてしまうからね」


「なるほど。川底の状態も調べる必要があるわけだ」


「そういうこと!」


 俺は次の印を指さした。


「こっちは少し上流。流れが穏やかに見える場所があったんだけど、水深が足りるかはまだわからないんだ」


「浅いと船が着けないからな!」


 ガイルが言った。


「そうなんだ。それから、下流側には倉庫や道路を造れそうな土地もあったよ」


 俺は三つの候補地を順番に説明した。


「ただ、どこが一番いいのかは、まだ決められないんだ」


 エドガーが地図を見つめた。


「それでいいと思う。港は一度造ったら、簡単には移せないからね」


「うん。だから、慎重に調べたいんだ」


 すると、エドガーが持ってきた資料を広げた。


「実は、そのことで君に見せたいものがある」


 エドガーが広げたのは、レコア川の東岸を中心に描かれた古い地図だった。


「これは、僕の方の文官たちが保管していた記録なんだ」


「へえ!」


「以前、レコア川が大きく増水したときに、どこまで水が広がったか調べたものらしい」


「……増水したときの記録?」


「ああ。まず、ここを見てほしい」


 エドガーが指さしたのは、俺が最初に港の候補地として考えていた曲がり角の周辺だった。


 地図には、川岸から離れた場所にも線が引かれている。


「この線が、増水したときに水が達したとされる場所だそうだ」


「……結構遠くまで広がってるんだね」


「ああ。特にこの辺りは、川から離れていても水が来た記録が残っている」


 そういえば。


「実は、現地でも気になるものを見つけたんだ」


「何だ?」


「川岸から少し離れた場所に、流木や枯れ草が残ってたんだ。テオが見つけてくれたんだけどね」


「それなら、同じ場所かもしれないな」


 エドガーが地図に目を落とした。


「ただ、この記録は昔のものだ。今も同じように水が広がるとは限らないし、当時の詳しい水位もわかっていない」


「うん。でも、調べる価値はありそうだね」


 俺は、持っていた地図に新しく印をつけた。


 現地で見つけた流木と、過去の増水記録。


 二つの情報を合わせることで、土地の危険性が少し見えてきた。


「エドガー。この記録、写しをもらってもいい?」


「もちろん。そのつもりで持ってきたんだ」


「ありがとう!」


 エドガーが、もう一枚の地図を取り出した。


「それから、もう一つある」


「何?」


「こちらは、川沿いの古い道について調べたものだ」


 俺は地図を覗き込んだ。


 川岸から少し離れたところを、一本の道が北へ延びている。


「……この道は?」


「昔から使われている道らしい。王都へ続く街道に合流しているんだ」


「へえ! それは便利そうだね!」


「ああ。ただ、今の道幅では大きな荷馬車が何台も行き来するのは難しいと思う」


「それなら、港ができるときに拡張する必要があるね」


「そうなるな」


 エドガーが頷いた。


「でも、まったく道がない場所に新しく造るよりは、工事が少なく済む可能性がある」


 確かにそうだ。


 港に必要なのは、船着き場だけじゃない。


 荷物を積み下ろしする場所。


 倉庫。


 そこから町へ荷物を運ぶ道路。


 いくら船を安全に着けられても、その先へ荷物を運べなければ使いにくい港になってしまう。


「エドガー、さすがだね。俺は川岸のことばかり考えてたよ」


「港を造るなら、その先の道も必要だと思っただけだよ」


「でも、大事なことだよ!」


 俺は、二枚の地図を並べた。


 これで、候補地を選ぶときの条件が増えたな。


 川の深さや流れだけでなく、増水の危険性や道路への接続も考えよう。


 ◇


「ところで、リオン」


 エドガーが俺の地図を指さした。


「君の報告には、川の両岸を一つの港として使いたいとあったな」


「うん。実は、それが一番相談したかったことなんだ」


「聞かせてくれるか?」


「もちろん!」


 俺は、レコア川の両岸を指さした。


「例えば、王都方面へ運ぶ荷物はエドガーの領地側で積み下ろして、そのまま街道を使って運ぶんだ」


「なるほど」


「反対に、俺の領へ届ける荷物は、こちら側で受け取ればいいと思う」


 俺の領で採れる石炭や銅を船に積み込むのも、こちら側の港でできる。


 将来、領都から鉄道を延ばせれば、大量の荷物を運べるようになるはずだ。


「そうか。行き先によって船を着ける岸を分けるわけだね」


「そう!」


 エドガーが地図を見つめた。


「確かに、僕の領地の商人にとっても便利そうだ」


「うん。だから、両岸を一つの港として整備できないかと思ってるんだ」


「面白い考えだね」


 エドガーが頷いた。


「ただ、気になることもある」


「何?」


「両岸を使うなら、管理するのは誰になるんだい?」


「ああ。それは俺も考えてたんだ」


 俺は地図を指さした。


「例えば、港の使用料や管理方法は、できるだけ共通にしたいと思ってるんだ」


「共通に?」


「うん。両岸で別々の決まりがあったら、商人たちも使いにくいでしょ?」


「確かにね」


「最初に港へ入るときに手続きを済ませれば、どちらの岸を使ってもわかりやすい仕組みにできないかなって」


 もちろん、具体的な方法はこれから考える必要がある。


 でも、せっかく協力して港を造るなら、使う人にとって便利なものにしたい。


「それに最初に気づいたのはミラなんだ」


「……ミラが?」


 エドガーがミラへ顔を向けた。


「うん。両岸に港ができたら、商人さんたちが困らないかなって思ったの」


「なるほど。それは大切なことだな」


「ありがとう、エドガー」


 ミラが嬉しそうに微笑んだ。


「ただ、一つ問題がある」


 エドガーが言った。


「何?」


「港の使用料を共通にするなら、集めたお金をどう使うかも決めないといけない」


「……そうだね」


「例えば、僕の領地側の護岸が壊れた場合、修理費用をどこから出すのか。最初に決めておかなければ、あとで揉めることになる」


 ……確かに。


 前世でも、複数の会社が共同で事業を進めるときは、責任の範囲を明確にすることが重要だった。


 利益が出ているときはよくても、修繕や追加の投資が必要になったときに問題になることがある。


「だったら、施設の管理方法や費用負担について、最初に取り決めを作っておいた方がいいね」


「ああ。僕もそう思う」


「もちろん、王宮にも相談しないとね」


「そこは僕からも話しておく。王家の土地を使う以上、父上の了承が必要になるからな」


「ありがとう、エドガー!」


 ……心強いな。


 エドガーとなら、こういう問題も一つずつ整理していけそうだ。


「ただ、リオン」


 今度はガイルが口を開いた。


「港を造るのはいいが、最初から両岸で工事をするつもりなのか?」


「ううん。まだそこまでは決めてないよ」


「そうか。ならいいんだが……」


 ガイルが腕を組んだ。


「おまえの領は今だって上水道の工事で人手が必要なんだ。そこに大きな港の工事まで始めたら、職人が足りなくなるぞ」


「そうだね」


「それに、港を造るなら石材や木材も大量に運ぶんだろ? そのための荷馬車や人員だって必要になる」


 ……確かに。


 港を造ることだけ考えて、ほかの工事が遅れてしまっては困る。


「だから、まずは測量と設計を進めたいと思ってるんだ」


「測量と設計か」


「うん。どのくらいの規模の港にするのか、必要な資材や人員はどれくらいか。それがわかってから、工事の日程を決めたいんだ」


「それならいいと思うぞ!」


 ガイルが頷いた。


「上水道の工事も、今のまま進められるからな!」


「うん。それに、最初から大きな港を完成させる必要もないと思うんだ」


「……というと?」


 エドガーが尋ねてきた。


「例えば、まずは一か所に小さな船着き場を造って、実際に船が使えるか確認するんだ」


「なるほど」


「それから、必要に応じて倉庫や船着き場を増やしていけばいいと思う」


 港は、完成して終わりというものじゃない。


 利用する船や荷物が増えれば、それに合わせて設備を増やしていけばいい。


 最初から大きな港を造っても、使う船が少なければ無駄になってしまう。


「まずは小さく始めるわけだ」


「そう。もちろん、安全に船を着けられる場所が見つかってからだけどね」


 エドガーが頷いた。


「それなら、最初の工事費も抑えられる。僕も賛成だ」


「よかった!」


 ……うん。


 これなら、今進めている上水道や蒸気機関の開発と両立できるかもしれないな。


「リオンさん。一つよろしいでしょうか?」


 ナディアが声をかけてきた。


「もちろん。何?」


「港の場所については、かなり検討が進んでいるようですが、船の運航についてはどうお考えですか?」


「船の運航?」


「はい。レコア川は流れが速く、上流へ戻るのが難しい場所もあるとおっしゃっていましたよね」


「うん。そこも課題なんだ」


 ナディアが頷いた。


「ラグナ河でも、船の大きさや積み荷によって、通れる場所が違います。せっかく港を造っても、そこまで船が来られなければ利用できません」


「そうだね」


「それに、下流へ荷物を運ぶことができても、上流へ戻るのが大変では、商人たちも困ると思います」


 確かにそうだ。


 港を造ることと、そこまで船を運航すること。


 両方を考えないといけない。


「実は、蒸気機関を船に載せられないか考えてるんだ」


「蒸気機関を、船にですか?」


「うん。蒸気の力で外輪を回して、船を進める仕組みなんだ」


 俺は持っていた紙に、簡単な図を描いた。


 船の左右についた大きな車輪。


 それを蒸気機関の力で回す。


 前世で見た外輪船の仕組みだ。


「……なるほど」


 ナディアが図を見つめた。


「それなら、川の流れに逆らって進むこともできるかもしれませんね」


「うん。でも、船に載せるにはもっと改良が必要だと思う」


「そうなんですね」


「だから、それまでは今ある船を使って、どこまで運航できるのか調べたいんだ」


 場所によっては、岸から綱で船を引く方法もあるだろう。


 ただ、そのためには川沿いに道が必要になる。


「なるほど。船を引くための道も、港の計画に関係してくるんですね」


「そうなんだ」


 すると、エドガーが口を開いた。


「それなら、港の場所だけでなく、王都からそこまでの川も調べる必要があるな」


「うん。途中で船が通れない場所があったら困るからね」


「僕の領地を流れる区間については、こちらでも調べられると思う」


「本当?」


「ああ。川沿いの村にも、船の通り道について詳しい者がいるはずだ」


「それは助かるよ!」


 地図や測量資料だけでなく、普段から川を利用している人たちに話を聞くのも大切だ。


 船が通りにくい場所。


 増水したときに危険な場所。


 岸から船を引ける場所。


 そういうことなら、地元の人たちの方が詳しいかもしれない。


「エドガー。川沿いの村でも、話を聞いてもらえるかな?」


「もちろん。文官たちに頼んでみるよ」


「ありがとう!」


 ◇


 しばらく話し合ったあと、俺たちは今後の進め方を整理することにした。


 まず、港の候補地については、曲がり角の周辺と、その上流、下流の三か所を中心に詳しく調べる。


 川幅や水深、流れの速さ。


 川底の状態や、増水したときの危険性。


 そして、港から道路を通せる場所があるかどうか。


 それらを確認してから、候補地を絞り込む。


「僕の方では、東岸を中心に調査を進めよう」


 エドガーが言った。


「王都へ続く道や、過去の増水記録についても、さらに詳しく調べてもらう」


「ありがとう。俺の方でも、これまで見つけた場所を整理して、必要な調査項目をまとめるよ」


「ただ、測量担当者は上水道の工事で忙しいんだろ?」


「うん。だから、無理に呼び戻すつもりはないよ」


 俺は頷いた。


「まずは王宮に相談して、測量できる人を派遣してもらえないか確認しようと思ってるんだ」


「それなら、僕からも兄上に話してみる」


「助かるよ!」


 エドガーが地図に目を落とした。


「それと、両岸の管理方法については、候補地がある程度決まってから相談しよう」


「うん。工事費用も、まだ何が必要になるかわからないからね」


「ああ。今の段階で決めるには早いと思う」


 ……よし。


 これで、次にやるべきことがはっきりしたな。


 まずは測量と現地調査。


 その結果をもとに設計を進める。


 そして、王宮と相談しながら、建設の規模や費用を決めていく。


 ◇


「それにしても、不思議なものだね」


 エドガーが地図を見つめながら言った。


「何が?」


「僕たちが任された土地は、もともと一つのグレイヴ領だっただろう?」


「ああ。そうだね」


「今は東と西に分かれているけど、こうして一緒に大きな事業を考えることになるとは思わなかったよ」


「確かに!」


 俺も笑った。


 エドガーは王家直轄領となった東側を再建し、俺は西側を再建している。


 それぞれ、やるべきことはたくさんある。


 でも、だからこそ協力できることもあるはず。


「エドガー」


「何だ?」


「俺は、二つの領地に分かれたことが、悪いことばかりじゃなかったと思ってるんだ」


「……どういうことだ?」


「だって、今はエドガーと一緒に領地をよくしていけるでしょ?」


 エドガーが少し驚いた顔をした。


 それから、静かに微笑んだ。


「……そうだな」


「俺一人じゃ、王都へ続く道のことまで詳しく調べられなかったと思うし」


「僕も、リオンがいなかったら、硬化石を使った港なんて考えなかったと思うよ」


「それなら、ちょうどいいね!」


「ああ」


 エドガーが頷いた。


「お互い協力することはできる。それがわかっただけでも、今回の話し合いには意味があったと思う」


 俺もそう思う。


 ◇


「じゃあ、決まりだね」


 俺は地図を見つめた。


「まずは、二つの領地で協力してレコア川の調査を進めよう!」


「ああ。僕の方でも、すぐに準備を始めるよ」


 エドガーが頷いた。


「リオン。次に会うときには、もう少し詳しい資料を持ってこられると思う」


「楽しみにしてるよ!」


「それまでに、君の方でも調べておいてくれるかい?」


「もちろん!」


 ガイルが笑った。


「なんだか、本当に大きな仕事になりそうだな!」


「そうだね」


 ナディアも頷いた。


「王都とリオンさんの領地を結ぶ港ができれば、交易にも大きな変化が生まれそうですね」


「うん!」


 俺は、広げられた地図へ目を落とした。


 川の西側には、俺の領。


 東側には、エドガーの領地。


 今は、二つの土地の間を大きな川が流れているだけだ。


 でも、ここに港ができれば、船が行き来し、荷物が運ばれ、人が集まるようになる。


 そして、いつかは鉄道もつながるかもしれない。


 ……よし。


 まずは、港を造れる場所をしっかり調べよう。


 エドガーと力を合わせて、この計画を前に進めたいな!



最後まで読んでいただきありがとうございます。

レコア川ですが、作者のイメージでは水面幅200-300mくらいです。


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― 新着の感想 ―
リオン男爵領の対岸に作るエドガーくんの王家直轄領側の港について、あったらいいね的でいいのではと思うのは変でしょうか。 アルフレッド殿下は、王都の南を流れるシーン川が王家直轄領の中央で分かれた川をレコア…
セレナ、連れてこいよー
自分ひとりでするなと言われつつ、相変わらず自分ひとりで動くというのは為政者としてどうなのか。 前世の技術であれば、自らが動く必要はあるが、海運や水運は、この世界でも、すでに多くの知見や経験、ノウハウが…
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