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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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第643話 レコア川視察

 ヴァイスさんから苔の研究成果を聞いて、数日が経った。


 今日は、レコア川の視察に行く。


 王都の南を流れるシーン川から分かれたレコア川は、エドガーの王家直轄領を西へ流れ、ハル領の東端で大きく南へ曲がっている。


 俺が港の候補地として考えているのは、その曲がり角の周辺だ。


 でも、王宮から届いた測量資料だけでは詳しい土地の様子まではわからない。


 そこで、一度現地を見ておくことにした。


 もちろん、正式な測量は専門の人たちにお願いするつもりだ。


 でも、まずは自分の目で確かめたい。


「リオン、準備できたよ!」


 屋敷の玄関へ向かうと、ミラが待っていた。


 その隣にはテオとピコもいる。


「ピー!」


「ピコも準備万端だね!」


 俺が声をかけると、ピコが元気よく鳴いた。


「今日は、私も一緒に行っていいんだよね?」


「もちろん! 結構遠いけど、大丈夫?」


「うん! すごく楽しみにしてたんだ!」


 ミラが嬉しそうに微笑んだ。


最近は政務所や工房で仕事をすることが多くて、ミラとゆっくり過ごす時間があまりなかった。


「リオン様。馬車の準備は整っております」


「ありがとう、テオ。よろしくね」


「はい。道中の警護はお任せください」


 本当は測量担当者たちも連れていきたい。


 でも彼らは上水道工事へ出ているので、今回は俺とミラ、ピコ、そしてテオの四人だけで行く。


 領都から東へ馬車で半日。


 そこからエドガーの領地との境を南へ進み、さらに一日ほどかかる。


「それじゃあ、出発しよう!」


「うん!」


 俺たちは馬車に乗り込んだ。


 ◇


 馬車が領都を出て、しばらく経った。


 窓の外には、畑や草原が広がっている。


「ねえ、リオン」


「何?」


「なんか、ちょっとした旅行みたいだね」


「そうだね。明日は視察だけど、今日はほとんど移動だからね」


「うん。だからね……」


 ミラが少しだけ俺の方へ近づいた。


「今日はデートだと思ってるんだ!」


「……デート?」


「うん!」


 ミラが楽しそうに頷いた。


「お仕事についていくんだけど、こうやって二人で遠くまでお出かけするの、久しぶりでしょ?」


「確かにそうだね」


「だから、馬車の中くらいはリオンを独り占めしてもいい?」


 ……あはは。


 そんなふうに言われたら、断る理由なんてないな。


「もちろん!」


「やった!」


 ミラが嬉しそうに笑った。


 そして、膝の上に置いていた小さな包みを取り出す。


「実はね、お菓子も持ってきたんだ!」


「お菓子?」


「うん。昨日、領都のお店で買っておいたの」


 包みを開くと、中には小さな焼き菓子が入っていた。


「これ、リオンが好きそうだと思って」


「ありがとう!」


 一つ口に入れる。


 甘くて、おいしい。


「どう?」


「すごくおいしい!」


「よかった!」


 ミラも一つ食べる。


 俺は、持っていた地図を鞄にしまった。


「あれ? もう地図を見なくていいの?」


「うん。せっかくのデートだからね」


 すると、ミラが少し驚いた顔をした。


 それから、嬉しそうに俺の腕へ寄り添ってくる。


「……えへへ。ありがとう」


 ……そうだな。


 領地の仕事は大切だけど、ミラとの時間だって同じくらい大切だ。


 たまには、仕事のことを忘れて、ゆっくり話すのもいいものだな。


「ピー」


 ◇


 昼頃。


 馬車はエドガーの王家直轄領との境に近づいた。


 ここからは、領境に沿って南へ進むことになる。


 俺たちは途中で馬車を止め、木陰で昼食を取ることにした。


 テオが周囲の安全を確認している間に、ミラが持ってきた食事を広げる。


「リオン、こっちに座って!」


「ありがとう」


 木陰に腰を下ろすと、涼しい風が吹いてきた。


 目の前には、遠くまで続く草原が広がっている。


「気持ちいいね!」


「うん。今日も天気いいしね」


 ミラがパンを手に取った。


「こうやって外で食べると、いつもよりおいしく感じる」


「確かに!」


 屋敷で食べる料理もおいしいけど、こういう場所で食べるのもいいものだ。


 すると、ミラが少し先を指さした。


「ねえ、リオン。あそこ、きれいだよ」


「本当だね」


 草原には、小さな花がいくつも咲いていた。


 風が吹くたびに、花が揺れている。


「領都の近くとは、また違う景色だね」


「うん。こんな場所があったんだなぁ」


 普段、俺は領地を移動するとき、どうしても道路や建物、畑の様子ばかり気にしてしまう。


 でも、ミラと一緒だと、こういう景色にも目が向く。


「リオン様」


 テオが戻ってきた。


「周囲に異常はありません。こちらで休憩されても問題なさそうです」


「ありがとう。テオも食べよう!」


「ありがとうございます」


 テオが少し離れた場所に腰を下ろした。


「ピー!」


 ピコも、俺たちのそばで元気よく鳴いている。


 何だか、みんなで遠足に来たみたいだな。


 ◇


 午後は、領境に沿って南へ進んだ。


 道中、川へ流れ込む小さな水路や、ところどころに残る古い道を見かけた。


 この辺りは、領都やアナハイムに比べると人の行き来が少ない。


 港を造ることになれば、道路も整備する必要があるだろう。


 ……いや。


 いずれ鉄道を延ばすなら、そのための土地も考えておいた方がいいかな。


 ◇


 夕方。


 俺たちは領境近くにある小さな宿へ到着した。


 今日はここで一泊する。


 宿の主人に部屋を案内してもらい、夕食まで少し時間ができた。


「リオン、少し外を歩かない?」


「うん。行こうか」


 テオに声をかけ、宿の近くを散歩することにした。


 夕日に照らされた畑の向こうには、遠くの山々が見える。


 ミラが俺の手を握った。


「……きれいだね」


「うん」


 しばらく、二人で夕焼けを眺めた。


 すると、ミラが小さな声で言った。


「こういう時間が、もっと増えたらいいな」


 俺は、握っていたミラの手を握り返した。


「そうだね。これからは、もう少し時間を作れるようにしたいな」


「……うん!」


 ミラが嬉しそうに微笑んだ。


 ……よし。


 領地の仕事を頑張るのも大切だけど、ミラとの約束もちゃんと守ろう。


 ◇


 翌朝。


 宿を出発した俺たちは、さらに南へ進んだ。


 そして、昼前。


「リオン様。あちらをご覧ください」


 御者台からテオが声をかけてきた。


 窓の外を見ると、遠くに大きな川が見えてきた。


「……あっ!」


 俺は思わず身を乗り出した。


「レコア川だ!」


 馬車を進めると、川の全体が少しずつ見えてきた。


 エドガーの王家直轄領から西へ流れてきた川が、ハル領の東端で大きく南へ曲がっている。


「……なるほど」


 実際に見ると、思っていた以上に大きな川だった。


 水面には細かな波が立ち、川の流れも速そうだ。


「すごいね、リオン!」


「うん!」


 ミラも窓から川を眺めている。


「ここに港を造るんだね?」


「まだ決まったわけじゃないけど、候補地としては有望だと思ってるんだ」


 俺たちは川から少し離れた平らな場所に馬車を止め、周囲を歩いて確認することにした。


 ◇


「リオン様。川岸に近づきすぎないよう、お気をつけください」


「うん。ありがとう、テオ」


 俺は川から少し距離を取って歩いた。


 ここから見ると、川の曲がり方がよくわかる。


 東から西へ流れてきた水が、ここで大きく南へ向きを変えている。


 ただし、曲がり角の周辺では、水の流れが一様ではないようだ。


 流れの速い場所。


 比較的穏やかな場所。


 そして、土砂がたまっているように見える場所もある。


「……うーん」


 俺は、王宮から届いた測量資料を取り出した。


 川幅。


 水深。


 流れの速さ。


 ある程度の情報は記録されている。


 でも、港を造るとなると、もっと詳しい調査が必要だろう。


「ねえ、リオン」


「何?」


「船が着く場所は、流れが穏やかな方がいいんじゃない?」


「そうだね。でも、穏やかな場所は土砂がたまりやすくて、水深が浅くなっている可能性もあるんだ」


「そっか。船の底が川底に当たっちゃうかもしれないんだね」


「うん。だから、水深と流れの両方を調べないとね」


 俺は川の曲がり角を見つめた。


 ……それにしても。


 この場所なら、港を造るだけの土地は確保できそうだな。


 ◇


 少し歩いたところで、俺は足を止めた。


「……あれ?」


 川岸の一部が、不自然に張り出している。


 下の土が水の流れで削られているようだ。


 俺は《綻びの目》を使った。


 すると、川岸の表面に小さな亀裂が見えた。


 それだけじゃない。


 地面の亀裂が、川岸に沿って細く伸びている。


 ……なるほど。


 この辺りは、思っていた以上に崩れやすくなっているのかもしれない。


「リオン様」


 テオが声をかけてきた。


「それ以上、岸へ近づかないでください」


「うん。わかった」


 俺たちは、安全な距離を保って川岸を眺めた。


 そのときだった。


 ザザッ!


「……えっ!?」


 川岸の一部が崩れ、小さな土の塊が川へ落ちた。


 バシャッ!


 水しぶきが上がる。


「……今、崩れたね」


 ミラが驚いたように言った。


「うん。やっぱり、岸の下が削られているんだと思う」


 テオも、真剣な表情で川岸を見つめていた。


「リオン様。この場所に港を造るのは、危険ではありませんか?」


「そのまま造るなら、危険だと思う」


 俺は頷いた。


 川岸が削られ続ければ、港の建物や道路にも影響が出るかもしれない。


 でも……。


「……あっ」


 俺は、もう一度川岸を見つめた。


 川の流れで岸が削られる。


 それなら、削られないように補強すればいいんじゃないか?


 例えば、硬化石。


「……硬化石を使えば、護岸工事ができるかもしれないな」


「護岸工事?」


 ミラが尋ねてきた。


「うん。川の流れで岸が削られないように、石などを使って補強する工事だよ」


「硬化石なら、丈夫にできそうだね!」


「そう思う。ただ、硬化石を並べるだけじゃ駄目なんだ」


 俺は川岸の下の方を指さした。


「水の流れで、石を支える地面まで削られてしまったら、護岸そのものが崩れてしまうからね」


「じゃあ、どうするの?」


「川底の状態を調べて、護岸の足元までしっかり保護する必要があると思う」


 硬化石なら、普通の石材よりも丈夫な構造を造れる可能性がある。


 でも、どんなに丈夫な石を使っても、下の地盤が崩れてしまったら意味がない。


 それに、川の一部分だけを強く補強すると、別の場所に流れが集中する可能性もある。


 ……うん。


 これは、専門の人たちと相談しながら設計する必要があるな。


「でも、硬化石が役立つなら嬉しいね!」


「そうだね!」


 ミラが笑顔になった。


 ◇


 そのあと、俺たちは川沿いをもう少し歩いた。


 川の曲がり角から南へ向かうと、こちら側が俺の領で、川の向こう側がエドガーの王家直轄領になる。


 ……あれ?


 俺は、対岸を見つめた。


 この領側だけでなく、エドガーの領地側にも、比較的広い土地が見える。


 もちろん、遠くから見ているだけなので、地盤や土地の高さまではわからない。


 でも……。


「……そうか」


 この辺りに港を造るなら、俺の領だけで考える必要はないんじゃないか?


「ミラ、ちょっと見てくれる?」


「うん。何?」


「こっちが俺の領で、川の向こうがエドガーの領地だよね」


「そうだね」


「だったら、川の両岸を使って港を造ることもできるんじゃないかな?」


「……両岸を?」


「うん。二つの領地にまたがる、一つの港として整備するんだ」


 ミラが対岸を見つめた。


「……なるほど。エドガーの領地にも港を造るんだね」


「そう!」


 俺は地図の上で、川の両岸を指さした。


「例えば、王都方面へ運ぶ荷物はエドガーの領地側で積み下ろして、そのまま王都へ続く道路で運ぶことができるかもしれない」


「うん」


「反対に、この領へ届ける荷物は、こちら側で受け取ればいいんだ」


 ハル領で採れる石炭や銅を船へ積み込むのも、こちら側の港でできる。


 将来、領都から鉄道を延ばせれば、港まで大量の荷物を運べるようになるだろう。


「そうすれば、荷物の行き先に合わせて、船を着ける場所を選べるんだね!」


「うん。もちろん、両岸とも港に適した土地なのか、詳しく調べる必要はあるけどね」


 王都からの物資。


 俺の領は石炭や銅。


 南の領地から運ばれてくる食料や建築資材。


 それぞれが、この場所を経由して行き来するようになるかもしれない。


 これなら、王国の物流を大きく変えられる可能性がある。


「よし、エドガーと王宮にも相談しないと」


 何しろ、二つの領地にまたがる事業だ。


 土地の使用方法や工事費用、完成後の管理方法も決める必要がある。


 ただ、王宮が協力してくれるなら、検討する価値は十分にあると思う。


 ◇


「でも、リオン」


「何?」


「二つの領地に港ができたら、商人さんたちはどちらへ行けばいいのかな?」


「……うん?」


「例えば、どちらの岸に荷物を降ろせばいいのか、初めて来た商人さんにはわからないかもしれないでしょ?」


「ああ、そうだね」


「それに、両方の港で別々にお金を払うことになったら、ちょっと大変じゃないかな?」


 そう。それは重要だ。


 俺は地図に目を落とした。


「そうだね。両岸を一つの港として使うなら、船が迷わないように、船着き場の役割を決めておきたいね」


「うん」


「それから、港の使用料や管理方法も、できるだけ統一できるといいと思う」


 港を造っても、使いにくければ船は集まらない。


 荷物の積み下ろし。


 倉庫への運搬。


 港の使用料。


 どれも考える必要がある。


「ミラ、ありがとう。大事なことだね」


「お役に立てた?」


「もちろん!」


 ミラが嬉しそうに微笑んだ。


 ◇


「リオン様」


 今度はテオが声をかけてきた。


「何?」


「少し気になるものがあります」


 テオが指さしたのは、川岸から離れた場所だった。


 そこには、枯れ草や小さな流木が引っかかっている。


「……あれ?」


「今は川から離れていますが、水で運ばれてきたようにも見えます」


 俺は、その場所へ歩いていった。


 確かに、木の枝や草が同じ方向に並んでいる。


 ……なるほど。


「大雨のときに、ここまで水が来た可能性があるね」


「はい。港の近くに建物を建てるのでしたら、気をつけた方がよいかと」


「そうだね。ありがとう、テオ」


 川は、いつも同じ水位というわけじゃない。


 雨が続けば増水するし、逆に水が少なくなる季節もある。


 港そのものだけでなく、倉庫や道路も洪水に備えて配置する必要があるだろう。


「この辺りの増水の記録も、確認しておこう」


「はい」


 俺は、持ってきた紙に印をつけた。


 ◇


 しばらく調べたあと、俺たちは川岸から少し離れた場所で休憩することにした。


 ミラが水筒を取り出す。


「リオン、お水をどうぞ」


「ありがとう!」


 俺は水を飲みながら、もう一度レコア川を眺めた。


 ……それにしても。


 ここへ来て、本当によかったな。


 地図だけではわからなかったことが、いろいろ見えてきた。


 川岸の崩れやすい場所。


 土砂がたまっている可能性のある場所。


 増水したときに水が来るかもしれない土地。


 そして、両岸を使った港湾計画。


 もちろん、これだけで港の場所を決めることはできない。


 でも、次に何を調べればいいのかは、かなりはっきりしてきた。


「ねえ、リオン」


「何?」


「もしここに港ができたら、どんなものを運びたい?」


「そうだなぁ」


 俺は少し考えた。


「最初は石炭や銅、それから建築資材かな」


「そっか」


「それに、ほかの領地から食料も運んでもらえるようになったら嬉しいね」


「じゃあ、商人さんたちも、たくさん来るようになるのかな?」


「うん。そうなってほしいな」


 ミラが川の向こうを見つめた。


「それなら、この辺りにお店も増えそうだね」


「お店?」


「うん。船で来た人たちが泊まる宿とか、ご飯を食べるお店とか」


 確かにそうだ。


 港ができれば、船乗りや商人が集まる。


 荷物を運ぶ人も必要になる。


 倉庫で働く人や、船を修理する職人もいるだろう。


 そうなれば、この辺りに住む人も増えるかもしれない。


「……そうだね。新しい町ができると思うよ」


「すごいね!」


 ミラが嬉しそうに笑った。


「今は静かな場所だけど、いつか人がたくさん行き来するようになるんだね」


「うん。そうなったらいいな」


 俺は、もう一度川を眺めた。


 今、目の前にあるのは、自然のままの川岸と草原だ。


 でも、ここに港を造ることができたら……。


 船が荷物を運んでくる。


 倉庫が建ち、商人が集まる。


 新しい仕事が生まれ、人々が暮らす町ができる。


 そして、いつか蒸気機関車が走る鉄道を、ここまで延ばせるかもしれない。


 ……うん。


 考えるだけで、楽しみになってくるな。


 ◇


「リオン様。そろそろ出発の準備をいたしましょうか」


 テオが声をかけてきた。


「そうだね」


 俺は、最後にもう一度地図を広げた。


 今回、確認できたことを整理する。


 まず、港の候補地は川の曲がり角だけでなく、その少し上流や下流も調べる必要がある。


 それから、硬化石を使った護岸工事。


 そして、ハル領とエドガーの王家直轄領の両岸を、一つの港として整備する構想。


 ……よし。


 帰ったら、ローレンさんと相談して、王宮に報告しよう。


 エドガーにも協力してもらえれば、もっと詳しい調査を進められるはずだ。


「……あっ、そうだ!」


 俺は顔を上げた。


「どうしたの、リオン?」


「ここに魔力印を残しておこうと思って」


「魔力印?」


「うん。そうすれば、次からは転移魔法で来られるからね」


「……あっ! そっか!」


 ミラが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、もう一日半も馬車に乗らなくていいんだね!」


「そういうこと!」


 俺は周囲を見回した。


 魔力印を残すなら、川の増水で流されるような場所は避けたい。


 それに、転移したときに誰かとぶつかるのも危険だ。


 川岸から十分に離れた、少し高くなっている場所へ向かう。


 そこには大きな岩があり、周囲には平らな土地が広がっていた。


 ……ここならよさそうだな。


「テオ。この辺り、人が来ないか確認してもらえる?」


「承知しました」


 テオが周囲を見回した。


 しばらくして戻ってくる。


「周囲に人影はありません」


「ありがとう!」


 俺は岩の横に魔力印を残した。


「……よし。これで大丈夫かな」


「もう終わったの?」


「うん。これで次からは、領都から直接ここへ来られるはずだよ」


「便利な魔法だね」


 ミラが嬉しそうに微笑んだ。


「これで、港の工事が始まっても、すぐに様子を見に来られるね!」


「そう!」


「ねえ、リオン」


「何?」


 ミラが、もう一度レコア川を眺めた。


「この港が完成したら、また二人で来たいな」


「港が完成したら?」


「うん! 今度は、ここから船に乗ってみたい!」


「それはいいね!」


「今はまだ何もないけど、いつかここに港ができて、たくさんの船が行き来するようになるんだよね」


「うん。そうなったら嬉しいな」


 ミラが笑顔で俺の手を握った。


「じゃあ、そのときは、またデートしようね!」


「もちろん!」


 俺もミラの手を握り返した。


 ……そうだな。


 今度ここへ来るときは、今とはまったく違う景色になっているかもしれない。


 船が行き来し、商人が集まり、賑やかな町になっている。


 そんな景色を、ミラと一緒に見られたらいいな。


 ◇


「それじゃあ、みんな。帰ろうか!」


「うん!」


「承知しました」


「ピー!」


 俺はミラとテオ、ピコ、馬車がそばにいることを確かめた。


「ミラ、テオ。俺に触れていてね」


「うん!」


「はい」


 俺は目を閉じた。


 領都の屋敷裏に残してある魔力印を探す。


 ……あった。


 そこへ意識を集中させる。


「それじゃあ、行くよ!」


 魔力を流した。


 次の瞬間。


 景色が変わった。


「……着いた!」


 目の前には、見慣れた屋敷がある。


「本当に一瞬だね」


 ミラが嬉しそうに笑った。


「ピー!」


 ピコも元気よく鳴いている。


 テオは一度周囲を確認すると、小さく頷いた。


「何度経験しても、不思議な魔法ですね」


「そうだね!」


 俺は笑いながら、屋敷を見上げた。


 これで、レコア川の港湾候補地にも転移できるようになった。


 次からは、長い道のりを馬車で移動する必要はない。


 あとは、本格的な測量を進めて、港の建設が可能か確かめよう。


 ……よし。


 この計画、ぜひ前に進めたいな!


最後まで読んでいただきありがとうございます。

もし本当に港を作ることになったら領都、アナハイムに続いて3つ目の街ができるわけですが、名前は何になるのでしょうか?

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― 新着の感想 ―
⋯⋯⋯ いや、デートしただけじゃん?www リア充、ばくs
いずれ港ができて列車も通るとなると景観も良さそうだしそれを見に来る人達も来る事でちょっとした観光名所になって旧クレイブ領は発展するだろうね。王家から金を無心するばかりの欲まみれだった人達はこの発展して…
港となるとラビアンローズでしょ
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