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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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661/675

番外編⑪ ガレスの仕事

新連載もよろしくお願いします!

『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。

お手すきの際に是非!

https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。

 ガレス・グレイヴ。


 私が初めてこの男と会ったとき、正直に言って、どうしようもない男だと思った。


 自分が貴族であることを鼻にかけ、他人を見下す。


 剣の腕には自信があるようだったが、それを支える努力をしているようには見えなかった。


 だから、イレーナ団長がガレスをガルセゾン団で引き受けるとおっしゃったとき、私は驚いた。


 しかも、教育係は私だという。


 ……本当に、この男を鍛え直せるのだろうか。


 そんな不安を抱えていた。


 ◇


「遅い!もっと足を動かせ!」


「わ、わかってる!」


 朝の訓練場に、ガレスの荒い息遣いが響く。


 ガルセゾン団に入ってから、ガレスには毎朝、基礎訓練を課している。


 走り込み、素振り、体力づくり。


 どれも地味な訓練ばかりだ。


 ガレスには《剣豪》のスキルがある。


 剣の扱いは確かに上手い。


 しかし、基礎体力が足りていない。


 剣を振る姿勢も、疲れてくると途端に崩れる。


「あと十回!」


「くっ……!」


 ガレスが木剣を振る。


 一回。


 二回。


 次第に動きが鈍くなる。


「まだだ!」


「わかってるって!」


 ガレスは歯を食いしばり、最後まで木剣を振り切った。


「……はあ、はあ……」


「よし。少し休め」


「……やっとかよ」


 ガレスが地面に腰を下ろした。


 以前なら、途中で文句を言っていただろう。


 いや、そもそも私の指導を素直に受けようともしなかったかもしれない。


 だが、最近は違う。


 口は悪いが、言われたことは最後までやるようになった。


 ……少しは変わってきたのだろうか。


「エメラルダ」


「何だ?」


「明日は、もう少し走れると思う」


「……ほう?」


「今日は昨日より、少しだけ楽だったからな」


 ガレスは息を整えながら、そう言った。


 私は思わず顔を見つめた。


 自分の成長を、ちゃんと感じているのか。


「なら、明日は距離を延ばそう」


「……は?」


「もっと走れるんだろう?」


「いや、そういう意味じゃ……」


「楽しみにしているぞ」


「……くそっ!」


 ガレスが悔しそうに顔をしかめた。


 だが、不思議と嫌そうには見えなかった。


 ◇


 訓練を終えると、今度は仕事だ。


 ガルセゾン団では、鉱山の警備や街道の巡回、荷馬車の護衛などを請け負っている。


 ガレスにも、そうした仕事を少しずつ覚えさせている。


 当然、特別扱いはしない。


 荷物を運ぶこともあれば、道具の手入れを任せることもある。


 最初の頃は、何をするにも不満そうだった。


 だが、今では自分から仕事を探すこともある。


 ……もっとも、周囲の目は相変わらず厳しい。


「あいつ、グレイヴ家の息子だろ?」


「ああ。あの評判の悪い伯爵家のな」


「よく平気な顔で働けるもんだ」


 鉱山へ向かう途中、他領から働きに来ている人たちから、そんな声が聞こえてきた。


 ガレスにも聞こえているはずだ。


 しかし、何も言わない。


 黙って荷馬車の後ろを歩いている。


 旧グレイヴ領出身でアナハイムへ移住してきた者たちは、特にガレスへの反感が強い。


 かつての伯爵家の統治に苦しめられた者も多いからだ。


 私も旧グレイヴ出身だから彼らの言い分は理解できる。


 他領から来た者たちも、その悪評を聞いている。


 中には、ガレス本人が何をしたのかも知らず、面白半分に悪口を言う者までいた。


 私は何度か注意しようとした。


 だが、そのたびにガウマンから止められた。


「放っておけ」


「しかし……」


「あいつが今まで何をしてきたのか、俺たちには全部わからねえだろ」


「……それはそうだが」


「今は見てろ。あいつがどうするかをな」


 私は納得できなかった。


 確かに、過去のガレスはひどかった。


 だが、だからといって、いつまでも罵られてよいわけではない。


 ……それでも。


 私はガウマンの言葉に従い、しばらく見守ることにした。


 ◇


 数日後。


 私たちは、上水道の工事に参加することになった。


 アナハイムの近くでは、領都へ水を運ぶための水路を造り始めている。


 ガルセゾン団にも協力の依頼があり、手の空いている団員たちが工事を手伝うことになったのだ。


 もちろん、ガレスも参加する。


「今日は土砂や石材の運搬だ。職人たちの指示に従え」


「わかった」


「勝手な判断はするなよ」


「うるせぇな!わかってるって」


 ガレスが少し不満そうに答える。


 だが、以前と違って反抗することはない。


 現場に到着すると、大勢の人が働いていた。


 ハル領騎士団に、ガイル殿が率いるベイルン騎士団。


 職人や測量士たちもいる。


 さらに、近隣の村から仕事を求めて集まった人々の姿もあった。


 年配の者も少なくない。


「エメラルダ!」


 アストン殿が声をかけてきた。


「おお、アストン殿。今日はよろしく頼む」


「ああ。ガルセゾン団の協力はありがたい」


「こちらこそ、仕事をいただけて助かる」


 私たちは簡単に作業内容を確認した。


 ガレスには、掘り出した石を荷車へ積む仕事を任せる。


 単純だが、力のいる仕事だ。


「ガレス。無理はするなよ」


「わかってる」


「疲れたら交代しろ」


「ああ」


 ガレスは石を一つ持ち上げた。


 そして、荷車へ運び始める。


 今のところ、問題はなさそうだ。


 ◇


 しばらくして。


「……おい」


 低い声が聞こえた。


 振り返ると、一人の老人がガレスを見つめていた。


 六十歳を過ぎているだろうか。


 日に焼けた顔に、深い皺が刻まれている。


「お前……ガレス・グレイヴか?」


 ガレスの手が止まった。


「……ああ」


「やっぱりそうか!」


 老人の顔が険しくなった。


「グレイヴ伯爵家の息子だな!」


「……そうだ」


 周囲にいた者たちも、何事かと顔を向けた。


「お前らのせいで、俺の息子はハル子爵領へ行っちまったんだ!」


「…………」


「昔からあの土地で暮らしてきたんだぞ!それなのに、税ばかり取られて、まともに暮らせなくなっちまった!」


 老人の声が大きくなる。


「息子は仕事を探してハル子爵領へ行った! 向こうで暮らし始めて、もう帰ってこねえ!」


 ……そういうことか。


 旧グレイヴ領では、領民たちの暮らしが相当苦しかった。


 そのため、ハル領へ移住した人も多い。


 この老人の息子も、その一人なのだろう。


「俺はな、あの村で息子と一緒に畑を耕して暮らしたかったんだ!」


「…………」


「それがどうだ!今じゃ、年寄り一人で畑を守ってる!」


 老人がガレスを睨みつけた。


「お前らが、まともに領地を治めてりゃ、こんなことにはならなかったんだ!」


 ガレスは何も言わなかった。


 ただ、石を持つ手に力が入っている。


「何とか言ったらどうだ!」


「…………」


「昔は偉そうにしてたくせに、今度は黙りか!」


 ……まずいな。


 ガレスの表情が険しくなっている。


 以前のガレスなら、間違いなく怒鳴り返していただろう。


 だが。


「…………」


 ガレスはゆっくりと石を荷車に載せた。


 そして、次の石を持ち上げる。


「おい!無視するのか!」


 老人がさらに声を荒らげた。


 近くにいた別の老人も口を開く。


「そうだ!お前ら貴族が好き勝手やったせいで、どれだけ苦労したと思ってる!」


「今さら真面目なふりをしたって、誰が信用するか!」


 罵倒が続く。


 それでも、ガレスは働き続けた。


 ……どうして、言い返さないんだ。


 自分が直接、老人の息子を追い出したわけではない。


 言いたいこともあるだろう。


 それでも、ガレスは黙っている。


 私は、少し離れた場所からその姿を見つめていた。


 ◇


「……エメラルダ」


 隣にいたガウマンが声をかけてきた。


「何だ?」


「ずいぶん我慢してるじゃねえか。あいつ」


「……ああ」


 ガレスは、もう何度も石を運んでいる。


 汗が額から流れ落ち、服も泥だらけだ。


 それでも、一度も手を止めない。


 一方、老人たちは罵倒に夢中になり、すっかり仕事の手を止めていた。


 周囲の人々も困った様子で見ている。


 やがて、アストン殿が近づいてきた。


「……これは、さすがに見過ごせんな」


 アストン殿がガレスの方へ向かおうとする。


 すると。


「おっと、騎士団長さん」


 ガウマンが、その前に立った。


「何だ?」


「ガレスはうちのメンバーだ。口を出さねえでくれるか?」


「しかし、あのままでは……」


「わかってるよ」


 ガウマンは腕を組んだ。


「危ないことになりゃ、俺たちが止める。だが、今はあいつ自身が踏ん張ってるんだ」


「…………」


「もう少し、見ててやってくれ」


 アストン殿は、しばらくガウマンを見つめた。


 それから、小さく頷いた。


「……わかった。だが、作業の妨げになるなら止めるぞ」


「ああ。それでいい」


 私は、再びガレスへ目を向けた。


 ……しかし。


 いくら何でも、これはひどい。


 昔のガレスが傲慢だったことは、私も知っている。


 イレーナ団長に対する無礼な態度も、忘れていない。


 だが、今のガレスは毎朝、必死に訓練している。


 慣れない仕事にも文句を言わず、最後まで取り組んでいる。


 ……少なくとも、私にはそう見える。


 私は我慢できなくなった。


「ガレス!」


 大きな声で呼びかける。


 ガレスが顔を上げた。


「……何だよ!」


 横からガウマンが割り込んでくる。


「やってみせろよ!ガレス!」


「……は?」


「お前が今までとは違うところを、仕事で見せてみろ!」


 ガレスが目を見開いた。


 私はガウマンに続けてガレスに声をかけた。


「私は、お前が毎日どれだけ頑張っているか知っている!」


「…………」


「だから、ここでも最後までやり遂げろ!」


 ガレスはしばらく黙っていた。


 それから、口元を少しだけ緩めた。


「……言われなくても、やってやるよ!」


 そう言って、再び石を持ち上げた。


 ……ふっ。


 やはり、負けず嫌いな男だ。


 その性格は、昔から変わっていないのだろう。


 だが、今はその負けず嫌いが、少し違う方向へ向いているようだった。


 ◇


 作業は続いた。


 老人たちの罵倒も、完全には止まらなかった。


「まったく、よく平気でいられるもんだ!」


「貴族様には、こんな仕事は似合わねえだろ!」


 ガレスは何も答えない。


 黙々と石を運ぶ。


 すると、老人の一人が荷車に石を積もうとして、足を滑らせた。


「うわっ!」


 持っていた石が傾く。


 そのまま落ちれば、足に当たるかもしれない。


「危ない!」


 真っ先に動いたのは、ガレスだった。


 老人の横へ駆け寄り、傾いた石を支える。


「くっ……!」


 ガレスは歯を食いしばりながら、石を荷車へ押し戻した。


 近くの作業員も手を貸し、どうにか安全な位置へ置く。


「……ふう」


 ガレスが息を吐いた。


「怪我はねえか?」


 老人は驚いたようにガレスを見つめた。


「……あ、ああ」


「そうか」


 ガレスはそれだけ言うと、再び自分の仕事へ戻ろうとした。


 老人は何か言いかけた。


 しかし、結局何も言わなかった。


 ガレス、お前は本当に変わり始めているんだな。


 私は、少しだけ嬉しくなった。


 ◇


「おい!お前たち!」


 突然、大きな声が響いた。


 ガイル殿だ。


 ベイルン騎士団を率いて工事に参加している、あの大男である。


 老人たちが驚いて振り返った。


「な、何でしょうか?」


「さっきから見ていたが、お前たち余裕そうだな!」


「そ、それは……」


 ガイル殿が腕を組んだ。


「そんなにお喋りをしたいのか?」


「い、いや、あいつはグレイヴ家の息子で……」


「そんなことは知ってるぞ!」


 ガイル殿が豪快に言い放った。


「俺もガレスを少しは知っている!どうしようもない奴だったこともな!」


 ……。


 ガイル殿はずいぶん遠慮がないな。


 ガレスも顔を上げた。


「だがな!」


 ガイル殿が老人たちを指さす。


「今日のお前たちを見ていると、ガレスの方がよほど働いているぞ!」


「……っ!」


 老人たちが言葉を失った。


「昔、何があったのか、俺は詳しく知らん!忘れろとも言わん!」


「…………」


「だが、今やるべき仕事を放り出して、他人を罵ってばかりでどうする!」


 ガイル殿の声が、工事現場に響き渡った。


「ガレスは朝からずっと石を運んでいる!お前たちはどうだ!」


「……そ、それは」


「文句を言う元気があるなら、手を動かせ!」


 老人たちは黙り込んだ。


 すると、ガイル殿が突然、にやりと笑った。


「……そうか!」


「な、何ですか?」


「それほど元気が余っているなら、明日の朝からベイルン騎士団の訓練に参加するか!」


「……はあ!?」


 老人たちが一斉に声を上げた。


「心配するな!俺がみっちり鍛えてやるぞ!」


「い、いや!勘弁してください!」


「はっはっは!遠慮するな!」


「遠慮じゃねえ!この歳で騎士団の訓練なんかできるか!」


「何を言う!まだまだ元気そうではないか!」


 ……。


 失礼だが、ガイル殿は少し馬鹿なのか?


 ガイル殿は、ひとしきり笑うと老人たちを見た。


「まあ、無理にとは言わん!だが、仕事をするなら最後までやり遂げろ!」


「……わ、わかりました!」


 老人たちが慌てて道具を手に取った。


 ガイル殿は満足そうに頷く。


「うん!それでいい!」


 周囲の騎士たちから笑い声が上がった。


 ……それにしても、すごい人だ。


 あれだけ険悪だった空気を、一瞬で変えてしまった。


 私には、あんな芸当はできそうにない。


 ◇


 それからは、工事が順調に進んだ。


 ガレスも相変わらず黙々と働いている。


 しばらくすると、先ほどの老人が声をかけてきた。


「……おい」


「……何だ?」


「そっちの石も運ぶのか?」


「ああ」


「だったら、こいつも持っていけ」


 老人が石を一つ指さした。


 ガレスは少し驚いたようだったが、すぐに頷いた。


「……わかった」


 それだけの会話だった。


 謝罪もなければ、感謝の言葉もない。


 だが、少なくとも、老人はもうガレスを罵っていなかった。


 ……それでいいのだろう。


 過去のことが、一日で消えるわけではない。


 恨みを抱いていた人間が、突然ガレスを許すはずもない。


 それでも、こうして一緒に働くことはできる。


 今は、それで十分なのかもしれない。


 ◇


 夕方。


 ようやく、その日の仕事が終わった。


 ガレスは荷車の横に腰を下ろしていた。


 顔も服も泥だらけだ。


 手には小さな傷がいくつもできている。


 私は水の入った革袋を持って近づいた。


「ガレス」


「……何だよ」


「飲め」


「……ああ」


 ガレスは革袋を受け取ると、勢いよく水を飲んだ。


「ぷはっ!」


「よく頑張ったな」


「……ああ」


 私は隣に腰を下ろした。


 しばらく、二人とも何も話さなかった。


 やがて、私は口を開いた。


「……今日は、大変だったな」


「……は?」


 ガレスが驚いたように顔を上げた。


「何だよ、急に」


「褒めているんだ」


「……お前が?」


「何か不満でもあるのか?」


「いや、そうじゃねえけど……」


 ガレスが気まずそうに目を逸らした。


 私は少し笑った。


「以前のお前なら、あの老人たちに怒鳴り返していただろう」


「……そうだろうな」


「だが、今日は違った」


「…………」


「一度も仕事を投げ出さなかった。それに、あの老人が危なくなったときも助けただろう」


「……別に」


 ガレスが小さく呟く。


「目の前で怪我されても困るだろ」


「それでも、立派だった」


「……そうかよ」


 ガレスはそっぽを向いた。


 しかし、耳が少し赤くなっている。


 褒められることには、慣れていないのかもしれないな。


 しばらくして、ガレスが口を開いた。


「……なあ」


「何だ?」


「俺さ、途中で言い返しそうになったんだよ」


「……そうか」


「あの爺さんの息子を追い出したのは、俺じゃねえって」


 ガレスは地面を見つめた。


「俺が直接、何かしたわけじゃねえだろって……」


「…………」


「でもさ」


 ガレスが拳を握りしめる。


「俺、あの頃、領民がどうやって暮らしてたのか、何も知らなかったんだよな」


 私は黙って聞いていた。


「いや……知ろうともしなかった」


「…………」


「自分の家が金持ちで、偉くて。それだけで、何でも許されると思ってた」


 ガレスが小さく笑った。


 自分を笑うような、そんな笑い方だった。


「……そりゃ、嫌われるよな」


 私は何も言えなかった。


 以前のガレスなら、決して口にしなかった言葉だろう。


「……でもさ」


「うん?」


「俺、いつまでもあんなふうに言われ続けるのは嫌なんだよ」


「……ああ」


「だから、ちゃんと働いて、強くなって……いつか、あいつらに見直してもらいたい」


 ガレスが顔を上げた。


「……甘いか?」


 私は首を横に振った。


「いいや」


「…………」


「それでいいと思う」


 ガレスは少し驚いた顔をした。


 私は続けた。


「今日一日頑張ったからといって、過去が消えるわけではない」


「……わかってる」


「だが、今日のお前の働きは、誰にも否定できない」


 私はガレスを見た。


「少なくとも、私は立派だったと思っている」


「…………」


「これからも、今日のように働き続ければいい」


 ガレスはしばらく黙っていた。


 それから、小さく頷いた。


「……ああ」


 私は立ち上がった。


「さて、明日も朝から訓練だぞ」


「……げっ」


「今日もずいぶん体力を使ったようだが、手加減はしないからな」


「おいおい!少しくらい休ませろよ!」


「安心しろ。訓練の内容は、今日の疲労を見て調整してやる」


「……本当か?」


「ああ。ただ、手は抜くなよ」


「……言われなくても!」


 ガレスが立ち上がった。


 その足取りは重い。


 だが、以前のように不満をぶつけることはなかった。


 ……そうか。


 イレーナ団長がおっしゃっていた意味が、少しわかった気がする。


 人は、簡単には変われない。


 過去の行いが許されるとも限らない。


 それでも、やり直そうとする人間には、そのための場所が必要なのだ。


「エメラルダ!」


 少し先を歩いていたガレスが振り返った。


「何だ?」


「明日も、ちゃんとやるからな!」


 私は思わず笑った。


「ああ。期待しているぞ!」


 ガレスは少しだけ笑い、再び歩き始めた。


 その背中は、初めて会った頃よりも、ほんの少しだけ頼もしく見えた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ガレスの周りが規格外なだけであって、無理して大人ぶらなくてもって思ってしまいます。 貴族だったとはいえ、本来ならまだ学院生だったんだから。 あとは、本編の中でリオンと絡めると面白いですね。
まー、いろいろあるけど、、、 パパンみたいにならなくて、良かった。
ガレスの父親がやった事を子供である自分も知らなかったではすまされないし非難されても仕方ない、普通ならどこか知らない土地に逃げて知らんふりもできるのになんとか踏ん張ってるのを見るに中々見所があるんじゃな…
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