第636話 技術をつなぐ人たち
新連載もよろしくお願いします!
『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。
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翌朝。
政務所で仕事をしていると、王宮から共鳴石通信が入った。
相手は王宮の国王陛下だった。
『リオン。以前、お前の領地で捕らえた男について報告がある』
「あっ!あの諜報員らしい男ですか?」
『うむ。王宮へ移送してから取り調べを続けているのだが、まったく口を開かんそうだ』
「……えっ?」
俺は思わず聞き返した。
「一度もですか?」
『ああ。名前も出身地も、誰の命令で動いていたのかも答えん。専門の尋問官をつけているのだがな』
「そうなんですか……」
ビダン山で捕らえたあの男は、ドラン帝国の諜報員である可能性が高い。
俺が《綻びの目》で調べた限りでは、共鳴石通信機の技術を狙っていたようだった。
でも、男自身が認めたわけじゃない。
『所持品や入国経路についても調べているが、今のところ決定的な手がかりはない』
「そうですか……」
『まあ、本人が話さぬのであれば、別のところから調べるまでだ。当面は厳重に拘束し、調査を続ける』
「わかりました!」
『それから、リオン』
「はい!」
『お前の領地には、他国が欲しがる技術が増えている。十分に気をつけるのだぞ』
「はい!ありがとうございます!」
通信が終わった。
……うーん。
やっぱり、簡単にはいかないか。
でも、王宮に任せた以上、俺があれこれ口を出すことでもない。
まずは、自分の領地をしっかり守らないとな。
◇
「ローレンさん!」
「はい。何でございましょう?」
俺はローレンさんに、王宮からの報告を伝えた。
「なるほど。相当な訓練を受けた人物なのでしょうな」
「そうかもしれないね」
「警備について、さらに強化いたしましょうか?」
「うーん。今のところ、そこまでは必要ないと思うよ」
政務所や工房には、以前からセキュリティレベルを設けている。
特に、大事な技術に関する情報が保管されてる場所は、セキュリティレベルを最高の四にしている。
セキュリティレベル四の所には入口に騎士を配置し、出入りする人の記録も取っている。
今回の事件を受けて、鉱山などの警備も強化済みだ。
「それより、技術の情報をもっと細かく管理したいんだ」
「と申しますと?」
「例えば、共鳴石通信機の部品を造る人が、通信機全体の設計まで知る必要はないでしょ?」
「確かに、そうでございますな」
「だから、必要な人に、必要な情報だけを渡すようにしたいんだ」
前世の会社でも、機密情報の管理は重要だった。
もちろん、情報を秘密にするだけでは仕事が進まない。
大切なのは、誰が何を知る必要があるのかを整理することだ。
「例えば、全体の設計図は責任者が管理して、それぞれの職人さんには、担当する部分の図面を渡すんだ」
「なるほど」
「それから、重要な図面や研究記録は、誰が確認したのかわかるようにしておきたいな」
「記録を残すわけですな」
「そう!」
ただし、何でも制限すればいいわけじゃない。
共通して使う加工技術や、安全に関わる情報は、みんなで共有した方がいい。
それに、新しい職人を育てることも必要だ。
「工房のセキュリティレベルは今のままで、情報の扱い方を整理しようと思うんだ」
「承知いたしました」
「ルッツさんたちにも相談して、仕事に支障が出ないように進めよう!」
「はい」
これなら、今ある仕組みを生かせそうだ。
すると、ローレンさんが別の書類を取り出した。
「ところで、リオン様。ルッツ殿からもご連絡がございます」
「ルッツさんから?」
「はい。大型蒸気機関の試験準備が整ったそうです」
「おお!本当!?」
「ぜひ、ご覧いただきたいとのことでございます」
「行こう!」
……楽しみだな!
◇
政務所の裏手にある試験場へ向かう。
入口で入室記録をつけ、中へ入った。
「ルッツさん!」
「ああ、リオン様!お待ちしておりました!」
ルッツさんの周りには、何人もの職人が集まっていた。
その中央には、大型蒸気機関の試作品が置かれている。
「今回は、どんな試験をするんですか?」
「以前から問題になっていた接合部分の確認です」
「ああ!熱くなったり冷たくなったりすると、隙間ができる問題ですね!」
「はい。加工方法をいろいろと見直してみました」
ルッツさんが、作業台に並んだ金属部品を見せてくれた。
円筒状の部品。
厚みの違う金属板。
そして、いくつもの固定金具。
「……おお!」
以前より、ずいぶんきれいにできている気がする。
「ルッツさん。これ、前より精巧になってませんか?」
「おわかりになりますか?」
「うん!表面も滑らかだし、形もそろってる!」
ルッツさんが嬉しそうに頷いた。
「実は、このところ金属加工の技術が格段に上がっているんです」
「そうなの!?」
「はい。蒸気機関や通信機を造るために、さまざまな加工を試してきましたからね」
……なるほど。
確かに、以前は簡単な金具を一つ造るだけでも苦労していた。
それが今では、蒸気機関の複雑な部品まで造っている。
「特に、同じ形の部品を正確に造る技術が進歩しました」
「へえ!」
「加工する際に部品を固定する道具や、寸法を確認する器具も改良してきたんです」
ルッツさんが金属部品を二つ手に取った。
「以前は、同じ図面を使っても、出来上がった部品に微妙な違いがありました。しかし、今ではその差をずいぶん小さくできるようになりました」
「それはすごい!」
「ええ。おかげで、組み立てたときの隙間も減らせるようになってきました」
蒸気機関を開発しているうちに、金属加工そのものが発展しているんだ。
「それに、若い職人たちも育ってきましたよ」
「そうなんですか?」
「はい。例えば……キント!」
「はい!」
近くの作業台から、一人の少年が顔を上げた。
まだ若い。
十五歳くらいだろうか。
「こちらへ来てくれ」
「わかりました!」
少年は手にしていた工具を置き、こちらへやって来た。
「紹介します。キント・アルサミルです」
「は、初めまして!キント・アルサミルです!」
「初めまして!リオン・ハルだよ!」
俺が笑顔で答えると、キントは緊張した様子で頭を下げた。
「キントは十五歳なんですが、なかなか面白い発想をするんです」
「十五歳!?若いね!」
「はい!」
「キントは、もともとこの領地の人なの?」
「いえ。ラウグレン公爵領から家族で引っ越してきました!」
「へえ!遠くから来たんだ!」
「父が、こちらの領都で宿屋を始めたいと言いまして」
「宿屋?」
「はい!人がどんどん増えているから、きっと商売になるって!」
なかなか商売熱心なお父さんだな。
「それで、キントはどうして工房へ?」
「俺、昔から道具をいじるのが好きだったんです!」
「そうなの?」
「はい!壊れたものを直したり、分解して仕組みを調べたりしてました!」
キントが少し照れくさそうに笑った。
「こっちに来て、蒸気で動く機械があるって聞いたら、どうしても見たくなっちゃって……」
「なるほど!」
「それで、職人さんの募集に応募したんです!」
ルッツさんが笑った。
「最初は簡単な作業を任せていたんですが、部品の形を見ただけで、どう組み合わせるのか考え始めましてね」
「へえ!」
「今では、試験用の部品加工も手伝ってもらっています。もちろん、重要な作業は熟練の職人が確認していますが」
……すごいな。
「それに、今回の試験でも役に立ってくれたんですよ」
「えっ?どんな?」
ルッツさんが、一つの金属部品を取り出した。
「以前は、加工するたびに部品を固定し直していたんです」
「はい」
「ところがキントが、同じ位置に固定できる道具を考えてくれましてね」
「……おお!」
キントが小さな器具を見せてくれた。
金属部品を挟んで固定する仕組みになっている。
「これ、どうやって思いついたの?」
「えっと、毎回部品を置く位置が少しずつ違ってたんです!」
「うん」
「だから、最初から同じ場所に置けるようにすればいいんじゃないかと思って!」
「うんうん」
「それで、この板に溝を造って部品の端を当てるようにしたんです!そうすれば角度もそろうし、削る場所もずれにくくなるんですよ!」
「おお!」
「それで、今度は削る道具の方も固定できたら、もっと正確になるんじゃないかと思ってるんです!あと、部品の大きさごとに溝を変えられるようにすれば、ほかの加工にも使えるんじゃないかって!」
……おおお。
急にすごい勢いで話し始めたぞ。
「キント。少し落ち着きなさい」
ルッツさんが苦笑した。
「あっ!す、すみません!」
キントが慌てて頭を下げた。
「いやいや!面白いよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「うん!もっと聞きたいくらい!」
すると、キントの目が再び輝いた。
「じゃあ、もう一つ考えてることがあるんですけど!」
「キント。まずは試験だ」
「あっ!はい!」
機械の話になると、止まらなくなる子なんだな。
まあ、俺とあんまり年齢変わらないけど。
ルッツさんが笑いながら説明してくれた。
「実際に道具を造ったのはほかの職人たちですが、発想はキントのものです」
「それはすごいね!」
「ええ。加工の精度が上がれば、それだけ組み立てもしやすくなりますから」
……なるほど。
この子、将来が楽しみだな。
「キント。これからもいろいろ考えてみてね!」
「はい!」
キントは嬉しそうに返事をした。
◇
「それでは、試験を始めましょう」
「うん!」
今回の試験では、大型蒸気機関を低い圧力で動かし、加熱と冷却を繰り返したときの接合部分の状態を確かめる。
実は、改良した部品を使った試験は、すでに二回行われていた。
どちらも、以前のような隙間は確認されなかったらしい。
そして、今日は三回目の試験だ。
「リオン様。始める前に、もう一度確認をお願いできますか?」
「もちろん!」
俺は蒸気機関へ目を向けた。
《綻びの目》。
すると、一か所に文字が浮かんだ。
《支持部分の固定不良》
……あれ?
「ルッツさん。ここの固定部分、少し調べてもらえるかな?」
「こちらですか?」
「はい。何か気になるんだ」
ルッツさんが職人に声をかける。
確認してもらうと、固定金具の一つに、わずかな緩みが見つかった。
「……なるほど。これは見落としていましたね」
「直せそう?」
「はい。すぐに対応できます」
職人たちが固定金具を調整し、改めて確認する。
……よかった。
これで一つ、気になるところがなくなった。
もちろん、《綻びの目》だけですべての危険がわかるわけじゃない。
だから、ルッツさんたちによる点検も欠かせない。
「それでは、始めます!」
ルッツさんの声で、職人たちが持ち場についた。
俺たちは安全のため、装置から少し離れた場所で見守る。
やがて、蒸気が送り込まれた。
シュウウウウ……。
大型のピストンが、ゆっくりと動き始める。
「……おお!」
何度見ても、すごいな。
大きなピストンが前後に動き、その力が回転運動へ変わっていく。
蒸気の力だけで、これほど重い部品が動くんだ。
「今のところ、圧力は安定しております!」
職人の一人が報告した。
「接合部分からの漏れは?」
「確認されておりません!」
……おお!
前回までと同じように動いている。
でも、まだ安心はできない。
大切なのは、このあとだ。
しばらく運転したところで、蒸気の供給を止める。
装置が停止し、十分に冷えるのを待った。
その間、ルッツさんは過去の試験記録を確認していた。
「……ずいぶん、たくさんの記録があるね」
俺が声をかけると、ルッツさんが頷いた。
「ええ。何度も失敗しましたからね」
「そうだよね……」
「接合部分を造り直しては試験し、また隙間が見つかって造り直す。その繰り返しでした」
ルッツさんが、作業台の隅に積まれた部品を見つめた。
そこには、以前の試験で使った金属部品がいくつも置かれていた。
「ですが、無駄ではありませんでした」
「……うん!」
「失敗するたびに、何が原因だったのかを調べてきましたから」
ルッツさんが、少し笑った。
「ようやく、その成果を確かめられそうです」
……そうだね。
俺は前世の知識を少し持っているだけだ。
実際に部品を造って、何度も試験してきたのはルッツさんたち。
だからこそ、今回は成功してほしい。
◇
やがて、装置の冷却が終わった。
職人たちが慎重に接合部分を調べ始める。
寸法を確認し、隙間や変形がないか調べていく。
……どうかな。
俺は少し緊張しながら見守った。
しばらくして。
「ルッツさん!」
「どうしました?」
「接合部分に、新しい隙間は見つかりません!」
「……本当ですか?」
「はい! 寸法にも大きな変化はありません!」
ルッツさんが記録を確認する。
そして、もう一度、接合部分を調べた。
……どうだろう。
しばらくして、ルッツさんが顔を上げた。
「……成功です!」
「おおおっ!」
俺は思わず声を上げた。
「やった!」
周りの職人たちからも歓声が上がる。
「よし!」
「うまくいったぞ!」
キントも両手を上げて喜んでいた。
「やった!やったぞ!」
本当に嬉しそうだな!
「ルッツさん!おめでとう!」
「ありがとうございます」
ルッツさんは笑顔で答えた。
でも、その目は少し潤んでいるように見えた。
「……長かったですね」
「そうかな?」
「何度も造り直しましたから。正直、同じ問題が続いたときは、どうすればよいのかわからなくなったこともありました」
ルッツさんが、そっと大型蒸気機関に手を触れた。
「ですが、諦めずに続けてきてよかったです」
その気持ち、わかるなぁ。
「本当にすごいよ!ルッツさんも、職人さんたちも!」
「ありがとうございます!」
近くにいた職人たちも嬉しそうに笑った。
ただ、これで大型蒸気機関が完成したわけじゃない。
「次は、もう少し高い圧力でも試すんだよね?」
「はい。ただ、その前に今回の結果を詳しく調べます。それから、少しずつ条件を厳しくしていく予定です」
「うん、それが良いと思う!」
安全が第一だ。
でも、これで一つ、大きな課題を乗り越えた。
……嬉しいなぁ。
「それにしても、ルッツさん」
「はい?」
「本当に金属加工の技術が進歩したね!」
「ええ。私も驚いています」
ルッツさんが並んだ部品を見つめた。
「以前なら、こうした部品を造ること自体が難しかったでしょう」
「そうだよね!」
「ですが、今では材料の性質も少しずつわかってきましたし、加工する道具も改良できています」
蒸気機関を造るために始めた研究が、ほかの技術まで発展させている。
これなら、将来はもっと複雑なものも造れるようになるかもしれない。
「ところで、キント!」
「はい!」
「さっきの固定する道具、本当に助かったね!」
「あ、ありがとうございます!」
「これからも、いろいろ考えてみてね!」
「はい!俺、もっとすごいものを造れるようになりたいです!」
キントが目を輝かせた。
「次は、部品を削る道具も改良したいんです!今は手で動かしてますけど、蒸気機関の力を使えば、もっと正確に削れるんじゃないかって!」
「……おお!」
それって、工作機械のことかな?
確かに、蒸気の力で機械を動かせるなら、金属加工にも使えるかもしれない。
「キント。まずは今の仕事を覚えなさい」
ルッツさんが苦笑した。
「あっ!はい!」
本当に機械が好きなんだな。
すると、キントが作業台の上に置かれた記録用紙を手に取った。
「ルッツさん!三回目の結果も書いておきますね!」
「ああ。頼むよ」
キントが慣れた手つきで数字を書き込んでいく。
「キント、記録も担当してるんだね!」
「はい!領都の夜間学校で読み書きと計算を習ってるんです!」
「おお!そうなんだ!」
「前は数字を整理するのが苦手だったんですけど、最近は少しわかるようになってきました!」
「それはすごいね!」
キントが嬉しそうに笑った。
「学校で習ったことが、こんなところで役に立つなんて思ってませんでした!」
……そっか。
夜間学校で学んだことが、工房の仕事にも役立っているんだ。
こうして実際の成果を見ると、学校を始めてよかったと思える。
「これからも、勉強と仕事、両方頑張ってね!」
「はい!」
キントは元気よく返事をした。
……この子、将来どんな職人になるんだろうな。
◇
午後。
政務所へ戻ると、ローレンさんが声をかけてきた。
「リオン様。アナハイムからメラニーが参っております」
「おお!もう着いたんだ!」
以前からメラニーが領都へ来る予定になっていた。
アナハイムに学校を開くため、領都の学校を見学し、今後の準備について相談したいとのことだった。
「お待たせ!」
「あっ!リオン様!」
応接室に入ると、メラニーが立ち上がった。
「アナハイムでは、いつも頑張ってくれてありがとう!」
「いえ!こちらこそ、ありがとうございます!」
メラニーは相変わらず元気だ。
「それで、学校の準備はどう?」
「はい!実は、今日は嬉しい報告もあるんです!」
「おお!何かな?」
「教師をお願いできそうな方が見つかりました!」
「……本当!?」
「はい!」
メラニーが嬉しそうに頷いた。
「その方は、以前ローデン商会で働いていたそうなんです」
「ローデン商会?」
「はい!帳簿の管理などを担当していた方で、読み書きと計算が得意なんです!」
「へえ!」
「今はご家族と一緒にアナハイムで暮らしておられますが、近所の子どもたちに読み書きを教えてくださっているそうで!」
「おお!」
それは嬉しいな。
「ご本人も、正式に教師として働けるなら、ぜひ挑戦してみたいとおっしゃっています!」
「すごいね!」
……あれ?
そういえば、以前も似たようなことがあったな。
「西の森の学校でも、最初はローデン商会に協力してもらってたんだよ」
「はい。教師役となる人員を出して頂いたと聞きましたね」
「そうそう!」
西の森で学校を始めたときも、読み書きや計算ができる人を探すのに苦労した。
そこで、ローデン商会に協力してもらった。
「じゃあ、今回もその経験を生かせそうだね!」
「と申しますと?」
「先生になりたい人に、教え方を学んでもらうんだよ!」
読み書きや計算ができても、それを人に教えられるとは限らない。
でも、経験のある人から学べば、少しずつ教え方も身につくはずだ。
「領都のクルストにも協力してもらおう!」
「なるほど。まずは領都で授業を見学していただくわけですな」
「うん!それから、経験のある先生についてもらって、実際に子どもたちを教える練習をしてもらうんだ」
「それはよい方法かと存じます!」
メラニーも嬉しそうに頷いた。
「早速、その方に相談してみます!」
「お願い!」
もちろん、一人だけでは学校を続けていくのは大変だ。
ほかにも教師になりたい人がいないか、募集することにした。
「それから、メラニー。校舎の方はどう?」
「はい!そちらも、少し進展がございます!」
「本当?」
「実は、町の方から、使っていない建物を教室にできないかと申し出がありまして!」
「おお!」
それはありがたい。
ただ、子どもたちが使う建物だ。
安全性は十分に確かめないといけない。
「建物の状態を調べて、問題がなければ使ってみよう!」
「はい!」
「机や椅子も必要になるね!」
「そちらも、アナハイムの大工たちに相談しております!」
「おお!準備がいいね!」
メラニーが少し照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます!」
……頼もしいなぁ。
「じゃあ、今日は領都の学校を見学して、クルストとも相談していこう!」
「はい!よろしくお願いいたします!」
◇
夕方。
メラニーとの相談を終えた俺は、政務所で今日の仕事を整理していた。
大型蒸気機関の試験は成功。
アナハイムの学校も、開校に向けた準備が進んだ。
……そういえば。
俺は、昼間に出会ったキントのことを思い出した。
十五歳の若い職人。
機械の話になると止まらなくなる、ちょっと面白い子だった。
でも、自分で道具の改良を考え、学校で学んだことまで仕事に生かしていた。
あの子は十年後、どんな機械を造っているんだろう。
それを考えるだけで、何だかワクワクしてきた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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