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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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第631話 二人の怪物

新連載もよろしくお願いします!

『平民出身の転生執事、最強王女を育成する』という作品です。

お手すきの際に是非!

https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。

 ガイルとイレーナさんが手合わせをすることになった。


 さすがに町の通りで戦うわけにはいかないので、俺たちは町外れの広い空き地へ移動した。


 周囲には、話を聞きつけた冒険者や町の人たちが集まっている。


 ガルセゾン団の人たちも、何人か見に来ていた。


「おお!なかなか広い場所じゃないか!」


 ガイルが嬉しそうに言った。


「ここなら、多少暴れても大丈夫だろう?」


 イレーナさんが笑う。


「多少ならね!」


 ……多少で済むのかなぁ。


 ちょっと心配だ。


 ガウマンさんたちは、見物人が近づきすぎないようにしてくれていた。


 ガイルは背負っていた大剣を外し、地面に置いた。


 イレーナさんも腰の剣を外す。


「素手でいいのかい?」


「ああ!その方が面白そうだ!」


「ふふっ。いいねえ」


 二人が向き合った。


 ……大きいなぁ。


 イレーナさんも女性としては相当大きい。


 たぶん百八十センチを超えていたはずだ。


 でも、そのイレーナさんより、ガイルはさらに大きかった。


 二メートル近い巨体。


 しかも、全身が鍛え上げられている。


 二人が並んでいるだけで、ものすごい迫力だ。


「ねえ、リオン」


 隣にいたミラが声をかけてきた。


「何?」


「リオンは、どっちが勝つと思う?」


「……うーん」


 難しい質問だなぁ。


 俺はガイルとも、イレーナさんとも戦ったことがある。


「単純な力なら、間違いなくガイルだと思うよ」


「そんなに?」


「うん。ガイルの力は本当にすごいからね」


 あの大剣を振り回す腕力だけじゃなく、速さも反応も普通じゃない。


「でも、イレーナさんもすごいんだよ」


「どういうこと?」


「相手が動く前から、攻撃を読んでいるみたいなんだ」


「……動く前から?」


「うん。俺が攻撃しようとしたときには、もう避け始めていることがあったんだ」


 あのときは、本当に手も足も出なかった。


「それじゃあ、イレーナさんが有利なのかな?」


「いや、それもわからないんだ」


「どうして?」


「ガイルはガイルで、危険を察知する感覚がものすごく鋭いからね」


 ただ力任せに戦っているわけじゃない。


 相手の動きや気配を、本能的に感じ取っているようなところがある。


「だから、正直、俺にも予想できないよ」


「そっか……」


 ミラが二人を見つめた。


 ナディアも興味深そうにしている。


「お相手の方も強そうですね」


「うん!」


 ……さて。


 どうなるんだろう。


 ◇


「それじゃあ、始めようか」


 イレーナさんが軽く両手を上げた。


「おう!」


 ガイルも構える。


 周囲が静かになった。


 ……あれ?


 二人とも動かない。


 ……。


 しばらくすると、イレーナさんが口を開いた。


「どうしたんだい?来ないのかい?」


「……うーん」


 ガイルが珍しく考え込んでいる。


「何だか、お前には何をやっても避けられそうな気がするんだよな!」


「……へえ?」


 イレーナさんの目が、わずかに細くなった。


「面白いことを言うじゃないか」


「はっはっは!何となくだけどな!」


 ……おお。


 やっぱり、ガイルは何か感じているんだ。


「それなら、こっちから行くよ!」


 イレーナさんが踏み込んだ。


 速い!


 次の瞬間、長い脚がガイルの胴へ向かって伸びた。


 ドンッ!


 鈍い音が響いた。


「……おお!」


 ガイルが嬉しそうに声を上げた。


 ……えっ?


 ガイルは、その場からほとんど動いていなかった。


 まともに蹴りを受けたはずなのに。


「いい蹴りだな!」


「……は?」


 イレーナさんが目を丸くした。


「姉上くらい強いんじゃないか!?」


 ……いや。


 姉上って、そういう比較で出てくる人なの?


 イレーナさんは、すぐに距離を取った。


「……あんた、何を食ったらそんなに硬くなるんだい?」


「はっはっは!よく食べて、よく鍛えて、よく勉強しているだけだ!」


「それで済む話かねえ……」


 イレーナさんが呆れたように笑った。


 ……わかるなぁ。


 俺もガイルと戦ったとき、何度もそう思った。


「よし!今度は俺の番だな!」


 ガイルが構え直した。


 その瞬間。


 ……空気が変わった。


 さっきまで豪快に笑っていたガイルが、まっすぐイレーナさんを見つめている。


「行くぞ!」


 ドンッ!


 ガイルが地面を蹴った。


 ……速っ!


 あの巨体が、一瞬で間合いを詰める。


 そして、右の拳が振り抜かれた。


 まともに受けたら、大変なことになるぞ!


 ところが。


 イレーナさんは、その拳が放たれる直前から動いていた。


 ガイルの右側へ滑り込むように身をかわす。


 ブンッ!


 巨大な拳が空を切った。


 その勢いで、イレーナさんの髪が大きく揺れる。


 ……すごい。


 あの速さの攻撃を避けたんだ。


 しかも、イレーナさんはそこで止まらなかった。


 ガイルの脇腹へ、鋭い拳を叩き込む。


 ドスッ!


「おお!」


 ガイルが声を上げた。


「いい拳だな!」


「……効いてないのかい?」


「はっはっは!まだまだいけるぞ!」


 ……あはは。


 すごいな、二人とも。


 ◇


「おおおっ!」


 周囲から歓声が上がった。


「何だ、今の!?」


「ガイルって人、全然動かなかったぞ!」


「いや、それよりイレーナだ!あんな拳を避けるのかよ!」


 冒険者たちが興奮している。


 ガウマンさんも腕を組み、真剣な表情で見つめていた。


「……やっぱり、とんでもねえな」


 どっちのことを言っているんだろう。


 たぶん、両方かな。


 再びガイルが踏み込む。


 今度は左から拳を振るった。


 イレーナさんは、また攻撃が始まる前に動いている。


 普通なら、あんなに早く反応できるはずがない。


 でも、ガイルも黙ってはいなかった。


「おおっ!」


 左の拳を避けられると、そのまま体を回して右腕を伸ばす。


 イレーナさんが後ろへ跳んだ。


 さらにガイルが前へ出る。


 ……速い!


 相手が避ける方向へ、どんどん踏み込んでいく。


 イレーナさんも、少しずつ余裕がなくなっているように見えた。


「……やるじゃないか!」


「はっはっは!お前もな!」


 ガイルが大きく腕を振った。


 イレーナさんが身を沈める。


 その頭上を拳が通り過ぎた。


 次の瞬間、イレーナさんがガイルの腹へ拳を打ち込む。


 ドンッ!


 ……でも。


「おお!いいぞ!」


 ガイルは、やっぱり平気そうだった。


「……まったく!」


 イレーナさんが笑う。


「本当に人間かい、あんた!」


「はっはっは!よく言われるぞ!」


 ……。


 だろうね。


 イレーナさんはガイルの攻撃を避けられる。


 でも、ガイルはイレーナさんの攻撃を受けても平気そうだ。


 これ、どうやったら決着がつくんだろう?


 そのときだった。


「おい!」


 遠くから、大きな声が聞こえた。


「大変だ! 誰か!」


 ……ん?


 振り向くと、冒険者らしい男が、町の方から走ってきていた。


 息を切らし、顔色を変えている。


「魔物だ!」


 男が叫んだ。


「ビダン山から魔物が大量に出てきた!」


 えっ!?


「鉱山の連中も逃げてる!早く応援を!」


 周囲がざわめいた。


 ◇


「何だって!?」


 俺が声を上げると、冒険者は必死に頷いた。


「山の中腹から、次々に魔物が下りてきてるんだ!」


「鉱山の人たちは!?」


「今、逃げてる!ガルセゾン団と騎士たちが食い止めてるが、数が多すぎる!」


 ……騎士たち?


 ハガーとノルか。


「ガイル!」


「おう!」


 ガイルは、もう大剣を拾い上げていた。


「手合わせは中断だな!」


「ああ。そうだね」


 イレーナさんも剣を腰に戻した。


 さっきまでの楽しそうな表情が消えている。


「ガウマン!」


「おう、姐さん!」


「団の連中を集めな!ビダン山へ行くよ!」


「わかった!」


 ガウマンさんが走り出した。


「メラニー!」


「はい!」


「鉱山の人たちの避難状況を確認して!アナハイムへ逃げてくる人がいたら受け入れをお願い!」


「承知しました!」


 メラニーも駆け出した。


 俺たちも行こう。


「リオン」


 ミラが俺を見た。


「私も行くよ」


「うん!」


「私もご一緒します」


 ナディアも頷いた。


「ナディア、大丈夫?」


「はい。怪我をした方もいるかもしれませんから」


 ナディアの回復魔法も必要になるかもしれない。


「ポロリ!」


 ナディアが空を見上げた。


 大きなガルーダが、ゆっくりと降りてくる。


「山の様子を見てきてください!」


 ポロリは大きく翼を広げ、ビダン山へ向かって飛び立った。


「よし!俺たちも行くぞ!」


 ガイルが声を上げる。


 俺たちは護衛たちとともに、急いでビダン山へ向かった。


 ◇


 ビダン山へ近づくにつれ、逃げてくる人たちが増えてきた。


 鉱山労働者たちだ。


 荷物を抱えた人。


 仲間の肩を借りて歩く人。


 必死に走っている人もいる。


「急げ!ここまでくれば安全だ!」


 ガルセゾン団の人たちが、避難する人々を誘導していた。


 そのとき。


「あっ!」


 前を走っていた男性が、石につまずいて転んだ。


「大丈夫ですか!?」


 ナディアがすぐに駆け寄った。


「くっ……!」


 男性は膝を押さえている。


 転んだ拍子に、膝を大きく擦りむいてしまったようだ。


「少し見せてください」


「す、すまねえ……」


 ナディアが男性の膝に手をかざした。


 淡い光が広がる。


 すると、傷が少しずつ塞がっていった。


「……おお!?」


 男性が驚いたように目を見開いた。


「痛みが……!」


「もう大丈夫そうですね。でも、無理はしないでください」


「あ、ありがとう!」


 男性は何度も頭を下げた。


 ……さすがだなぁ。


 ナディアは、その後も逃げる途中で転んだ人や、軽い怪我をした人たちを治療してくれた。


 もちろん、俺たちも避難する人たちを手伝った。


 怪我をして自力で歩けない人は、護衛たちと協力して安全な場所へ運ぶ。


 ……よし。


 これで少しは安心かな。


「リオン!」


 ガイルが山の方を指さした。


「あそこだ!」


 見ると、少し離れた場所で騎士たちが戦っていた。


 ハガーとノルだ!


 ◇


「隊列を崩すな!」


 ハガーの声が響いていた。


「作業員を先に逃がせ!」


「はい!」


 ベイルン騎士団とハル領騎士団の騎士たちが、魔物の群れを食い止めている。


 周囲には、狼のような魔物が何頭もいた。


 さらに、大きなワイルドボアまでいる。


 ……多いな!


 これだけの数が、どこから出てきたんだろう。


「ノル!」


「はい!」


「左側を頼む!」


「承知しました!」


 ノルが騎士たちを率いて移動する。


 そのすぐ後ろを、鉱山労働者たちが逃げていった。


 ……よかった。


 騎士たちのおかげで、避難は進んでいるようだ。


 でも、魔物はまだかなり残っている。


「おお!」


 ガイルが声を上げた。


「なかなかの数じゃないか!」


「ガイル、気をつけてね!」


「はっはっは!任せろ!」


 ガイルが大剣を構えた。


 そして。


「行くぞ!」


 ドンッ!


 地面を蹴った。


 ……速っ!


 ガイルは一瞬で、魔物の群れへ飛び込んでいった。


 ◇


 最初に襲いかかってきたのは、大きなワイルドボアだった。


 太い牙を突き出し、ガイルへ向かって突進してくる。


「おおおっ!」


 ガイルが大剣を振った。


 ズバンッ!


 ワイルドボアの巨体が、横へ倒れた。


 一撃か!?


「はっはっは!次だ!」


 ガイルは止まらない。


 続けて飛びかかってきた狼型の魔物も、大剣で次々に倒していった。


「……おい」


 近くにいた冒険者が呟いた。


「あいつ、一人で何頭倒すつもりだ?」


 ……あはは。


 俺もそう思うよ。


 でも、今日はガイルだけじゃない。


「ガウマン!右だ!」


「おう、姐さん!」


 イレーナさんが魔物の群れへ走り込んだ。


 狼型の魔物が飛びかかる。


 しかし、イレーナさんは、その魔物が地面を蹴る前に体を動かしていた。


 剣が閃く。


 一頭。


 続いて、二頭目。


 さらに背後から迫った魔物も、振り向きざまに斬り伏せる。


 ……うわぁ。


 相変わらず、すごいなぁ。


「おいおい……!」


 冒険者たちが驚いていた。


 ……イレーナさんも、ガイルに負けていないな。


 ◇


「リオン!」


 ミラが声を上げた。


「右から来てる!」


「うん!」


 見ると、数頭の魔物がこちらへ向かっていた。


 その後ろには、逃げ遅れた鉱山労働者の姿がある。


 ……まずい!


 俺は魔力を集中させた。


 風魔法を放つ。


 ゴウッ!


 突進していた魔物の一頭が、横へ押し流された。


 すぐに《綻びの目》で相手の動きを確認する。


 踏み込もうとしている前脚に、綻びが見えた。


 俺は狙いを定め、もう一度風魔法を放った。


 魔物が体勢を崩す。


 その隙に、近くの騎士が剣を振り下ろした。


「やった!」


 これなら、みんなと協力して戦える。


「リオン、後ろ!」


「えっ?」


 振り返ると、別の魔物が迫っていた。


 でも。


「リオン、伏せて!」


 ミラの声が響いた。


 俺が身を低くすると、すぐ頭上に強い光が広がった。


「ギャッ!」


 魔物が一瞬ひるむ。


 さらにミラが放った光の魔法が、魔物を直撃した。


 魔物が倒れる。


「ありがとう、ミラ!」


「うん!」


 ……助かった。


 ミラも、しっかり周囲を見てくれているんだな。


 ◇


 少し離れた場所では、ナディアが魔法を使っていた。


「危ない!」


 鉱山労働者の一人へ、狼型の魔物が迫る。


 その瞬間。


「えいっ!」


 ナディアが手をかざした。


 ゴウッ!


 鋭い風が魔物の横から吹きつける。


 魔物は踏み込んだ脚を取られ、横へ吹き飛ばされた。


 ……おお!


 見事な風魔法だ!


「ガイルさん!」


「おう!」


 近くにいたガイルが、一気に踏み込んだ。


 大剣が振り抜かれる。


 魔物はその場に倒れた。


「よし!」


 すごい。


 二人の連携も見事だなぁ。


 ナディアは、ほかの騎士たちの動きもよく見ていた。


 別の魔物が騎士団の側面へ回り込もうとすると、すぐに風魔法を放つ。


 魔物の進路が変わり、騎士たちの正面へ押し戻された。


「今です!」


「承知!」


 ハガーが応じ、騎士たちが一斉に攻撃する。


 魔物は次々に倒されていった。


 ナディアはただ魔物を倒しているんじゃない。


 周囲の人たちが戦いやすいように、風魔法を使っているんだ。


 しかも、危険が少なくなると、今度は負傷者のもとへ向かっていた。


「こちらの方も、怪我をされていますね」


 ナディアが膝をつき、回復魔法を使う。


 ……本当にすごいなぁ。


 戦うことも、人を助けることもできるんだ。


「……何なんだよ、あの人たち」


 近くの冒険者が呆然としていた。


「さっきの大男も、あの女剣士も……」


「あの男爵様の魔法もすごいぞ!」


「それに、あの女まで……!」


「風魔法も回復魔法も、あんなに使いこなせるのかよ……」


 そう言ってもらえるのは嬉しいけど、今は戦いに集中しないと。


 ◇


「ピー!」


「キュ!」


 後方から、ピコとナッシュの声が聞こえた。


 二匹は護衛のそばで、こちらを見守っている。


 そのとき、空から大きな影が落ちた。


 ポロリだ!


 大きな翼を広げながら、鉱山の方へ飛んでいく。


 ……あれ?


 何かを見つけたのかな。


 見ると、岩場の陰に、逃げ遅れた鉱山労働者がいた。


 その近くへ、数頭の魔物が迫っている。


 ……まずい!


「ポロリ!」


 ナディアが声を上げた。


 ポロリは急降下すると、大きく翼を羽ばたかせた。


 バサァッ!


 強い風に、魔物たちがたじろぐ。


 その隙に、近くの騎士たちが駆け寄った。


「こっちです!」


 逃げ遅れていた労働者を、安全な場所へ誘導する。


 「さすがね、ポロリ!」


 ナディアが嬉しそうに言った。


 ポロリは大きく翼を広げ、もう一度上空へ舞い上がった。


 本当に頼もしいなぁ。


 ◇


 それからしばらくして。


「最後の群れを確認した!」


 ハガーの声が響いた。


「よし!全員、周囲を警戒しろ!」


 ガイルが指示を出す。


 騎士たちが散開し、周囲を確認していった。


 すでに、目の前にいた魔物の大半は倒されている。


 残っていた数頭も、ガイルとイレーナさんたちがあっという間に片づけてしまった。


 あれだけいた魔物が、もういない。


 でも、完全に終わったかどうかは確認しないと。


 しばらくして、ノルが戻ってきた。


「リオン様。周辺の確認が終わりました」


「どうだった?」


「近くに魔物の姿はありません。鉱山労働者の避難も完了しております」


「よかった!」


「負傷者はおりますが、幸い命に関わるような怪我をした者はいないようです」


 ふぅ、それは何よりだ。


 ナディアも怪我をした人たちの治療を続けてくれている。


 ガルセゾン団の人たちは、鉱山の入口や避難路を確認していた。


「男爵様」


 そこへ、鉱山で働いている男性がやってきた。


「どうしたの?」


「今回の魔物なんですが……」


「うん?」


「こんなに大勢で山を下りてきたのは、あまり見たことがありません」


「……そうなの?」


 ……うーん。


 どうして、急にこんなにたくさん現れたんだろう。


「ガウマンさん」


「おう、男爵様!」


「ガルセゾン団の人たちにも、何かわかったら教えてもらえるかな?」


「もちろんだ。姐さんにも伝えておくぜ」


「ありがとう!」


 すぐに原因がわかるとは限らないけど、鉱山で働く人たちの安全にも関わることだ。


 今後も注意してもらおう。


 ひとまず、今日のところは大丈夫そうだ。


 ◇


「いやあ、すごかったな!」


 ガイルが満足そうに笑った。


「いい訓練になったぞ!」


「まったく、あんたは元気だねえ」


 イレーナさんが呆れたように言った。


「おお!イレーナ!」


「何だい?」


「お前もなかなかやるじゃないか!」


「……ふふっ」


 イレーナさんが笑った?


「あんたこそ。やるじゃないか、ガイル」


「はっはっは!」


 ……おお。


 二人とも、何だか楽しそうだな。


「しかし、さっきの手合わせは途中だったな!」


 ガイルが思い出したように言った。


「そうだねえ」


 また始まるのかな?


「今から続けるか!?」


「いや。今日はもう十分暴れただろう?」


「むっ。そうか!」


「その代わり、また今度やろう」


「おう!約束だぞ!」


「ふふっ。覚えておくよ」


 どうやら、次の楽しみができたみたいだ。


 ◇


 その日の夕方。


 アナハイムでは、ちょっとした宴が開かれることになった。


 討伐した魔物の中には、ワイルドボアが何頭もいた。


 そこで、解体に慣れた冒険者たちにお願いして、食用にできるものを選んで処理してもらうことにした。


 食堂の料理人たちも手伝ってくれることになり、準備が進められた。


 その間に、騎士たちは再び周辺を巡回し、鉱山の安全を確認してくれている。


 やがて日が傾く頃には、町の広場にいくつもの焼き台が並んでいた。


 騎士たち。


 冒険者たち。


 ガルセゾン団の人たち。


 それに、鉱山で働く人たちも集まっている。


 ずいぶん賑やかだな。


「リオン!肉が焼けたぞ!」


 ガイルが大きな声で呼んでいる。


「うん!」


 俺が近づくと、焼き台の上ではワイルドボアの肉がいい音を立てていた。


 ジュウウッ……。


 香ばしい匂いが広がってくる。


 ……お腹がすいてきたな。


「はっはっは!やっぱり、戦った後の肉はうまいな!」


 相変わらずだなぁ。


 ナディアも楽しそうに笑っている。


「ガイルさん。今日は本当にお疲れさまでした」


「おお!ナディアも頑張っていたな!」


「ありがとうございます」


「風魔法も見事だったぞ!」


「ふふっ。ガイルさんが守ってくださったおかげです」


「はっはっは!」


 仲がいいなぁ。


 少し離れたところでは、イレーナさんとガウマンさんが肉を食べていた。


「姐さん、あのガイルって男、とんでもなかったな」


「ああ。あれは本物だね」


「Bランク二人を押さえ込んだときも驚いたが、まさかあそこまでとはな……」


「ふふっ。面白い奴がいるね」


 イレーナさんが嬉しそうに笑った。


 これは、また手合わせすることになりそうだな。


「ピー!」


「キュ!」


 足元から声がした。


 ピコとナッシュだ。


 二匹とも、肉の匂いが気になるらしい。


「あはは。二匹もお腹がすいた?」


「ピー!」


「キュウ!」


「そっか!」


 もちろん、二匹にも食べられるものを用意してある。


 少し離れた広場の端では、ポロリも大きな肉を食べていた。


 今日はポロリも大活躍だったからなぁ。


 ◇


「リオン!」


 ガイルが肉を片手に声をかけてきた。


「今日は楽しかったぞ!イレーナとも手合わせできたし、魔物も倒せた!」


「あはは。ガイルらしいね」


「それに、アナハイムもずいぶん発展していた!」


「うん!」


「いい町になりそうだな!」


 ……そうだね。


 俺は広場を見渡した。


 笑い合う騎士たち。


 肉を頬張る冒険者たち。


 楽しそうに話す鉱山労働者たち。


 少し前まで、この場所には建物もほとんどなかった。


 それが今では、こんなに大勢の人たちが集まっている。


 もちろん、町が大きくなれば、いろいろな問題も起こるだろう。


 今日のように、魔物が襲ってくることだってある。


 でも、こうして力を合わせてくれる人たちがいる。


 きっと、この町はもっといい町になる。


「リオン!もっと肉を食え!」


「えっ?たくさん食べたよ!?」


「はっはっは!もっとだ!」


 俺は笑いながら、焼き台へ向かった。


 アナハイムの賑やかな夜は、まだ始まったばかりだ。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

イレーナ対ガイルはいずれ決着をつける時がきます。

ところで、ノア山脈ですが、アノー山を除くと魔物が多いです。

いつか、その魔物を狩りに3人の冒険者がやってくることになるでしょう。

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― 新着の感想 ―
イレーナ姐さんは、ガイルのことは名前で呼ぶのね 笑 にしても、 ガイルがお姉さんに頭が上がらないのが、姉だからだけでなく戦闘力的にもだったとは、、、 ガイル姉強っ、、ってことは、もしやあちらの方含…
イレーナとガイルの姉上の対決とか見てみたいかも~できれば真剣で!そういえば例の苔は研究が進んでるのかな?魔物避けに使えそうならいいのにね。
とりあえず、、、 じゃじゃ◯、ピッコ□ と思った人は、私と同年代だ、 なお、歳は聞かないこと。
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