第625話 ガルセゾン団
新連載はじめました!
『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。
お手すきの際に是非!
https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。
数日後。
俺はアストンと一緒に、騎士団の訓練場を訪れることになっていた。
今日は、新しく騎士を採用するための試験が行われる日だ。
鉱山の開発が進み、街道を行き来する商人や馬車も増えている。
領都の人口も、日に日に多くなっている。
そのため、騎士団の人員を増やす必要が出てきた。
「リオン様。本日の予定はこちらです」
屋敷を出る前に、ミアが予定を確認してくれた。
「ありがとう。午前中は騎士団の試験で、午後は政務所だね」
「はい。試験の間に届いた書類は、戻られてから確認できるようにしておきます」
「助かるよ」
「私もご一緒しますので、必要なことがあればお申し付けください」
「うん。お願い!」
そこへ、ケーラがやってきた。
「男爵様。イレーナ様から、本日の採用試験を見学したいとのご連絡がございました」
「イレーナさんが?」
「はい。アストン様には、すでにお伝えしております」
「そうなんだ。ありがとう!」
……本当に助かるな。
「じゃあ、行ってくるね」
「はい。お気をつけて」
ケーラに見送られ、俺はミアと一緒に屋敷を出た。
◇
訓練場に着くと、すでに多くの志願者が集まっていた。
「アストン。応募者はどのくらい集まったの?」
「予定していた人数は確保できました。元兵士や冒険者、それに腕に覚えのある他領の若者など、経歴はさまざまです」
「へえ! 楽しみだね」
「ただ、採用できるのは一部になるでしょう」
「そうだよね」
騎士団は、領民の安全を守るための組織だ。
剣の腕だけでなく、体力や協調性、それに指示を守れるかどうかも大切になる。
「まずは基礎体力を確認し、その後に剣術や模擬戦、集団行動を見ます」
「うん。お願い!」
俺が頷いたときだった。
訓練場に集まった志願者たちの中に、見覚えのある顔を見つけた。
……あれ?
「ガレス?」
そこにいたのは、ガレス・グレイヴだった。
数日前、酒場で騒ぎを起こしていた。
俺が声をかけると、ガレスはこちらを一度だけ見た。
「……ふん」
そして、すぐに顔を背ける。
……来たんだ。
酒場では、俺の世話にはならないと言っていたのにな。
まあ、本人が応募すると決めたなら、それでいい。
もちろん、特別扱いするつもりはないけど。
◇
試験が始まった。
最初は基礎体力の確認だ。
決められた距離を走り、その後に腕立て伏せや荷物運びを行う。
志願者たちは、落ち着いた様子で次々と課題をこなしていった。
一方、ガレスはというと……。
「はぁ……はぁ……!」
……あれ?
ずいぶん息が上がっている。
ほかの志願者が次の課題へ向かう中、ガレスは膝に手をついていた。
「ガレス、大丈夫かな?」
俺が呟くと、アストンが記録用紙に目を落とした。
「基礎体力は、今のところ下位ですな」
「……そうなんだ」
王立学院で戦ったときのガレスは、もっと動けていたはずだ。
その後も試験は続いた。
剣術の基本動作では、ガレスの剣筋に鋭さが見られた。
さすが《剣豪》だ。
でも、同じ動きを繰り返すうちに、少しずつ姿勢が崩れていく。
模擬戦でも、最初は相手を押していた。
ところが、試合が長引くにつれ、足が止まり始める。
最後は相手の攻撃を避けきれず、一本を取られてしまった。
「……くそっ!」
ガレスが悔しそうに木剣を握りしめる。
……うーん。
これは、予想していたより厳しいな。
「アストン。どう思う?」
「剣の基本は身についております。しかし、持久力が不足していますな」
「やっぱり、訓練してなかったのかな?」
「おそらく。長く鍛錬を怠っていたのでしょう」
……そっか。
酒場でも、最近は剣を振っていないと言っていたもんな。
努力して身につけたものでも、使わなければ衰えてしまうのだろう。
俺もちゃんと体を動かさなきゃいけないな。
そして、最後は集団行動の試験だ。
数人で協力し、荷物を運びながら襲撃役から守るという課題だった。
ガレスの組が出発する。
しばらくすると、前方から襲撃役が現れた。
「俺がやる!」
ガレスが真っ先に飛び出した。
「おい! 持ち場を離れるな!」
仲間の志願者が叫ぶ。
しかし、ガレスは止まらなかった。
その隙に、別の襲撃役が荷物へ近づく。
「そこまで!」
アストンの声が響いた。
……失敗だ。
ガレスが戻ってくると、同じ組の志願者たちは不満そうな顔をしていた。
「お前が持ち場を離れなければ……」
「うるせえ! 俺が倒せばよかったんだろ!」
「荷物を守る試験だぞ!」
「……っ!」
ガレスが言葉に詰まる。
……これは厳しいな。
一方、別の組では、剣術の成績がそれほど高くなかった志願者が、仲間と協力して課題を成功させていた。
なるほど。
強い人が一人いればいいというわけじゃないんだ。
◇
試験が終わり、アストンと担当者たちが結果を確認した。
俺も記録を見せてもらう。
「……ガレスは?」
「不合格です」
アストンが迷わず答えた。
「そうなんだ……」
「剣術には光るものがあります。しかし、体力、持久力、集団行動のいずれも基準に達しておりません」
「少し甘く見ても?」
「難しいでしょう。ほかの志願者との公平性もあります」
「……そうだよね」
俺は頷いた。
ガレスが努力していたことは知っている。
でも、それは過去の話だ。
今の実力で判断しなければならない。
結果を伝えられたガレスは、納得できない様子だった。
「……ふざけるな!」
アストンに詰め寄る。
「俺は《剣豪》だぞ! そこらの連中とは違う!」
「固有スキルだけで採用を決めることはない」
「俺の剣を見ただろ!」
「そのうえでの判断だ」
「……っ!」
ガレスが拳を握りしめた。
……困ったな。
俺が声をかけようとした、そのときだった。
「はっはっは!こりゃあ、ひどいねえ!」
訓練場に豪快な笑い声が響いた。
振り返ると、見覚えのある女性が立っていた。
「……イレーナさん?」
「よう、坊や。元気そうじゃないか」
イレーナさんだ。
隣には、体格のいい女性が立っている。
肩幅が広く、鍛えられた腕が目立つ。
腰には剣を下げ、背筋を伸ばしていた。
……強そうだな。
「今日はどうしたの?」
「アストンに頼んで、試験を見せてもらってたんだよ」
「ああ、ケーラから聞いたよ」
「そうかい。ウチでも人手が足りなくなってきてね」
イレーナさんは、ノア山脈周辺の巡回や鉱山の警備を請け負っている。
最近では、アナハイムで何でも屋の仕事を引き受けたり、冒険者ギルドの依頼を受けたりもしているそうだ。
そのため、以前より仲間が増えているらしい。
「騎士団に落ちた連中の中にも、ウチで働ける奴がいるかもしれないだろ?」
「なるほど」
「騎士になれなかったからって、何の役にも立たないわけじゃないからね」
「確かに!」
「まあ、ウチでもちゃんと仕事は覚えてもらうけどな」
イレーナさんが笑った。
すると、近くにいた不合格者の一人が、おずおずと声をかけてきた。
「あの……俺みたいな奴でも、仕事はありますか?」
「何ができるんだい?」
「剣はあまり得意じゃありません。でも、荷馬車の扱いには慣れています」
「へえ。だったら、荷運びや鉱山の仕事で役に立つかもしれないね」
「本当ですか!」
「ただし、楽な仕事じゃないよ。それでもやってみたいなら、後で話を聞きに来な」
「はい! ありがとうございます!」
男が嬉しそうに頭を下げた。
隣にいたミアが、その姿を見つめていた。
「よかったですね」
「うん」
「試験には落ちてしまいましたけど、あの方にもできる仕事があるかもしれないんですね」
「そうだね。得意なことは人によって違うからね」
ミアが嬉しそうに微笑んだ。
「そういえば、坊や」
イレーナさんが声をかけてきた。
「ウチの組織に、最近正式な名前を付けたんだよ」
「名前?」
「ああ。ガルセゾン団だ」
「ガルセゾン団?」
「いつまでも『イレーナの一味』じゃ格好がつかないだろ?」
「そうなんだ!」
「団員たちと相談して決めたんだ。なかなかいい響きだろ?」
「うん。覚えやすい名前!」
「だろ?」
イレーナさんが満足そうに笑った。
「鉱山の警備から荷物運び、魔物の討伐まで、仕事は何でも請け負う。もちろん、依頼は選ばせてもらうけどね」
……へえ。
ずいぶん大きな組織になってきたんだな。
そのとき、イレーナさんがガレスに目を向けた。
「で、そこのだらしない豚は何だい?」
「……何?」
ガレスが振り返った。
「おや。聞こえなかったのかい?」
イレーナさんがにやりと笑う。
「グレイヴ家のお坊ちゃんも、ずいぶんだらしない豚になったもんだと言ったんだよ」
「……何だと!」
ガレスの顔が真っ赤になった。
「貴様!俺が誰だかわかっているのか!」
「もちろん知ってるさ」
イレーナさんが肩をすくめた。
「私がどこの領地で騎士をやってたと思ってるんだい?」
「……っ!」
「それにしても情けないねえ。あのグレイヴ家の息子が、騎士団の試験にも通らないとは」
「黙れ!」
ガレスがイレーナさんに向かって突進した。
「ガレス!待って!」
俺が叫ぶ。
イレーナさんの強さは、よく知っている。
まともに挑んで勝てる相手じゃない。
しかし、止める暇もなかった。
「よっと」
イレーナさんがガレスの腕をつかんだ。
そのまま体をひねる。
「うわっ!」
ガレスの体が宙を舞った。
ドサッ!
訓練場の地面に、背中から落ちる。
……うわぁ。
豪快だな。
「イレーナさん!」
「おっと」
イレーナさんが俺を見た。
「元領主様の息子だったね。坊や、問題ないよな?」
「領主の立場としては、喧嘩は認めない」
「相変わらず堅いねえ」
「でも、向こうから襲いかかってきたんだから、自分を守るための反撃までは責めないよ」
「はっはっは!そうかい!」
「でも、これ以上は駄目だ」
「わかってるよ」
地面に倒れていたガレスが、ゆっくりと起き上がった。
「……くそっ!」
イレーナさんが笑う。
「どうした、豚野郎。もう終わりかい?」
「ふざけるな!」
ガレスが再び向かおうとする。
「待ちな!」
イレーナさんが片手を上げた。
「これ以上やるなら、喧嘩じゃなくて稽古にしな。ここは訓練場だからね」
「……何だと?」
「お前が望むなら、相手をしてやるよ。嫌なら帰りな」
「……やってやる!」
ガレスが即座に答えた。
俺がアストンを見ると、小さく頷いた。
「本人が希望するのであれば、訓練として認めましょう。ただし、危険と判断した場合は中止させます」
「うん。お願い」
イレーナさんはガレスを、藁を厚く敷いた場所へ連れていった。
「さあ、かかってきな」
「……ふざけるな!」
ガレスが勢いよく踏み込む。
しかし。
「ほらよ」
「うわあっ!」
また投げ飛ばされた。
……ああ。
今度は横向きに転がっている。
「何やってんだ?足元がお留守だよ」
「黙れ!」
ガレスが立ち上がる。
「もう一度だ!」
再び飛び込もうとしたガレスに、イレーナさんが声をかけた。
「お前、本当に何も考えてないねえ」
「……何だと!」
「同じように突っ込んで、同じように投げられる。それで次は勝てると思ってるのかい?」
「……っ!」
「悔しいなら、負けた理由を考えな」
ガレスが黙り込んだ。
……あれ?
イレーナさん、ちゃんと教えてるんだ。
「……もう一度だ」
ガレスが構え直す。
今度はすぐに飛び込まず、慎重に距離を詰めた。
イレーナさんが右手を伸ばす。
ガレスは、その手を避けて左へ回り込んだ。
……おお。
さっきとは違うな。
さらに、相手の袖へ手を伸ばす。
しかし、イレーナさんは一歩踏み込み、逆にガレスの体勢を崩した。
「しまっ……!」
ドサッ!
……また投げられた。
でも、今度は少しだけ粘ったように見えた。
イレーナさんがガレスを見下ろす。
「……だんだんいい顔になってきたじゃないか」
「……何だと?」
「今のは、少し考えて動いてたね」
ガレスが悔しそうに唇を噛んだ。
「……もう一度!」
「いや、今日はここまでだ」
「まだ、俺は!」
「立つのもやっとのくせに、何を言ってんだい」
ガレスは言い返そうとして、地面に手をついた。
呼吸が荒い。
「……くそっ」
しばらくして、小さな声が漏れた。
「前みたいに動けねえのは、俺が一番わかってる……!」
イレーナさんは何も言わなかった。
「……なのに、どうすりゃいいのかわからねえんだよ!」
ガレスが拳を握りしめる。
イレーナさんは、少しだけ表情を和らげた。
「だったら、最初からやり直せばいいじゃないか」
「……簡単に言うな!」
「簡単じゃないさ。体を鍛え直して、毎日剣を振って、仕事も一つずつ覚える。面倒なことばかりだよ」
「…………」
「でも、さっきのお前は、一度投げられてから動きを変えただろ?」
ガレスが顔を上げた。
「今はそれで十分だ。今日できなかったことを、次に一つできるようにすればいい」
「……っ!」
「うまくいかないからって、そこで全部投げ出すんじゃないよ」
ガレスが俯いた。
……ああ。
イレーナさんは、ガレスが負けたことを笑っているんじゃないんだ。
悔しいなら、もう一度頑張ってみろ。
そう言っているんだな。
◇
「エメラルダ!」
イレーナさんが声を上げた。
隣にいた大柄な女性が、一歩前へ出る。
「はい、団長」
「こいつはお前が面倒を見ろ」
「承知しました」
……えっ?
「イレーナさん?」
「何だい、坊や」
「ガレスを引き受けるの?」
「ああ。ウチで働かせてやろうと思ってね」
「でも、あれだけ問題を起こしたんだよ?」
「だからどうした?」
「……大丈夫なのかって」
イレーナさんがガレスを見た。
「坊やだからな」
「……え?」
「まだまだガキってことさ。これからいくらでも変わる」
「なるほど……」
イレーナさんが腕を組んだ。
「ウチには、何度失敗しても諦めずに働いてる奴が大勢いる。あいつも、その仲間になれるかもしれないだろ?」
「それはそうだけど」
「失敗した奴に、もう一度やってみろって言える場所くらい、あってもいいじゃないか」
……うん。
いい考えだと思う。
ん?
「そういえば、イレーナさん。いつも俺のことも坊やって呼んでるよね?」
「ああ?」
イレーナさんが俺を見た。
「何か言いたいことでもあるのかい?」
「……いえ、何でもありません」
「はっはっは!」
……相変わらずだなぁ。
でも、少しわかった気がする。
ガルセゾン団は、ただ仕事を請け負うだけの組織じゃない。
うまくいかなくても、もう一度頑張りたい人に機会を与える場所でもあるんだな。
その間に、エメラルダと呼ばれた女性がガレスの前に立った。
「立て」
「……何だよ」
「団長がお前に働く機会をくださるそうだ」
「はあ?誰がお前らなんかと!」
ガレスが顔を上げる。
「俺は、あの女の部下になんか――」
パァン!
乾いた音が響いた。
エメラルダが、ガレスの頬を平手で打っていた。
「……っ!」
ガレスが目を見開く。
「貴様!何をする!」
「口の利き方がなってないぞ」
エメラルダが低い声で言った。
「団長が直々に、お前に働く機会を与えてくださったのだ。その御厚意を踏みにじるつもりか」
「……何だと!」
「不服なら断ればいい。だが、あのお方への侮辱は許さん」
……うわ。
こっちも相当怖いな。
でも、さすがに今のは行き過ぎだと思う。
「エメラルダさん」
「何だ?」
「ガレスの態度が悪いのは確かだけど、いきなり叩くのはやめてほしいな」
エメラルダが俺を見た。
そして、イレーナさんへ視線を向ける。
「……団長」
「坊やの言うとおりだよ。お前も少し落ち着きな」
「……申し訳ございません」
「ウチは、殴って言うことを聞かせる集団じゃないからね」
「承知しました」
エメラルダがガレスに向き直った。
「……今のは私が行き過ぎた。詫びよう」
「…………」
「だが、団長への口の利き方は改めてもらう」
「……くそっ」
ガレスが不満そうに顔を背けた。
……まあ、簡単には変わらないよな。
イレーナさんがガレスに声をかけた。
「で、どうするんだい?」
「……何がだ」
「ウチに来るか、来ないかさ」
「…………」
「言っとくけど、最初から剣を使う仕事なんて任せないよ。荷物運びでも掃除でも、できることからやってもらう」
「……俺に荷物を運べっていうのか?」
「ああ。今のお前じゃ、それすら満足にできるかわからないからね」
「……っ!」
「嫌なら断りな。無理に連れていくつもりはないよ」
ガレスが拳を握りしめた。
しばらくの間、誰も口を開かなかった。
やがて、ガレスが顔を上げる。
「……あんた」
「ああ?」
「俺が本気で鍛え直したら、もう一度相手をしてくれるか?」
……えっ?
イレーナさんが、にやりと笑った。
「もちろんさ」
「……本当だな?」
「ああ。ただし、今度はもう少し楽しませてくれよ」
「……くそっ!」
ガレスが悔しそうに歯を食いしばった。
「……だったら、やってやる」
「へえ?」
「荷物運びだろうが何だろうが、やってやるよ!」
イレーナさんが豪快に笑った。
「はっはっは!いいねえ!」
そして、エメラルダを見た。
「聞いたか?」
「はい、団長」
「まずは基礎から鍛え直してやりな。それと、仕事も一から教えてやってくれ」
「承知しました」
エメラルダがガレスに向き直る。
「立て。行くぞ」
「……どこへだよ」
「まずは手当てだ。それから、明日からの仕事について説明する」
「……今日からじゃねえのか?」
「その体で何ができる。まずは休め」
「……わかったよ」
ガレスがゆっくりと立ち上がった。
……おお。
本当に行くんだ。
まだ納得していないことも多そうだけど、自分で決めたみたいだな。
◇
「それじゃあ、坊や」
イレーナさんが俺に声をかけた。
「こいつはウチで採用するが、いいな?」
「うん。でも、ほどほどにお願いね。ガレスもこの領の一員なんだから」
「わかってるよ。壊しちまったら働けないからね」
「……その言い方、ちょっと怖いんだけど」
「はっはっは!」
イレーナさんが豪快に笑った。
「まあ、最初は見習いだよ。仕事ぶりを見て、正式に雇うか決めるさ」
「うん。それならいいと思う」
「それに、あいつが本気で鍛え直すなら、少しは使いものになるかもしれないしね」
「そうだね」
俺はガレスの方を見た。
エメラルダさんに何か指示され、不満そうな顔をしている。
でも、ちゃんとその後について歩いていた。
「リオン様」
ミアが隣で声をかけてきた。
「何?」
「ガレスさん、よかったですね」
「うん。まだどうなるかわからないけどね」
「はい。でも、もう一度頑張れる場所が見つかって、よかったと思います」
「そうだね」
俺は、ガレスの背中を見送った。
王立学院で初めて会った頃のガレスは、家柄を誇るばかりの嫌なやつだった。
その後、王都武闘大会の学院代表選考では、努力して強くなった姿を見せてくれた。
そして今は、その努力も途絶えてしまっている。
……だけど。
さっきのガレスは、何度投げ飛ばされても立ち上がっていた。
負けるたびに、少しずつ動きを変えていた。
あの頃の負けず嫌いなガレスが、少し戻ってきた気がする。
騎士団の試験には落ちた。
でも、新しい居場所は見つかった。
……よかったな、ガレス。
まあ、イレーナさんとエメラルダさんの下で働くのは、相当大変そうだけどね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ガルセゾンです。ガルセゾンですよ?
ガレスが成長してくれると良いな~と思っています。




