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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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第621話 働くこと、楽しむこと

新連載はじめました!

『王女殿下、まずは拳をお下げください ~転生執事と最強王女の成り上がり~』という作品です。

お手すきの際に是非!

https://ncode.syosetu.com/n5173mx/1からご覧いただけます。

 翌日。


 政務所で書類を確認していると、ローレンがやってきた。


「リオン様。今月の収支について、報告がございます」


「うん。どうだった?」


「順調です。共鳴石通信機や硬化石の販売、それに鉱山関係の事業からの収入が増えております」


「おお!」


 それは嬉しいな。


「アナハイムでも商人や職人が増え、経済活動が活発になっております」


「そっか!」


 俺は資料を受け取った。


 収入の項目が、以前よりずいぶん増えている。


 領主になったばかりの頃は、領地の財政に余裕なんてほとんどなかった。


 それが今では、複数の事業から収入が入るようになっている。


 まだ財政に余裕があるというわけはない。


 それでも……。


 感慨深いな。


「ただし、支出も増えております」


「そうだよね」


「鉱山や道路の整備、工房の拡張など、今後も多くの費用が必要になります」


「うん」


「それでも、継続的な収入が増えてきたことで、以前より余裕を持った運営ができるようになりました」


「それはよかった!」


 南部鉱山の開発では、金貨五万枚もの資金を集めた。


 でも、あれは開発のための資金だ。


 普段の領地運営に、好き勝手使えるお金じゃない。


 だからこそ、事業からの収入が増えているのは大きい。


「ローレン」


「はい」


「だったら、そろそろ騎士団を増員できないかな?」


「……騎士団ですか」


「うん。最近、守らないといけない場所が増えてきたでしょ?」


「おっしゃるとおりです」


 領都。


 アナハイム。


 鉱山。


 街道。


 それに、これから新しくできる施設もある。


 人や物の行き来が増えれば、当然、警備の仕事も増える。


 先日はスパイまで捕まった。


 領地が豊かになっても、安全に暮らせなければ意味がない。


「騎士を増やすとなると、給料や装備など、毎年の費用も増えますな」


「うん。だから、今の収入で無理なく雇える人数を調べてほしいんだ」


「承知しました」


「それと、アストンたちにも相談したいな」


「すぐに手配いたします」


 ◇


 しばらくして、アストン、ノル、テオの三人が政務所にやってきた。


「リオン様。お呼びでしょうか」


「うん。騎士団のことで相談したくて」


 三人に椅子を勧める。


「最近、領地の事業収入が増えてきたんだ」


「それは何よりです」


 アストンが頷く。


「それでね。そろそろ騎士団を増員したいと思っているんだけど、どうかな?」


 アストンが少し驚いた顔をした。


「それはありがたいお話です」


「やっぱり、人手が足りない?」


「はい。領都の警備だけでなく、鉱山や街道の巡回にも人員を割いておりますので」


「そうだよね」


「今の人数では、何か事件が起きた際に余裕がありません」


 普段の仕事が回っているからといって、十分な人数がいるとは限らないのか。


「ノルはどう思う?」


「増員には賛成ですな」


「本当?」


「はい。ただ、人数を増やせば、それだけで騎士団が強くなるわけではありません」


「ああ……」


「新人には訓練が必要です。それに、人数が増えれば、指揮する者の負担も大きくなります」


 確かに。


 騎士を十人増やしたからといって、すぐに十人分の戦力が増えるわけじゃない。


「それと、リオン様」


「何?」


「私とテオが、いつまでもこちらにいるわけではありませんので」


「あっ、そうだった!」


 父上が二人を派遣してくれたのは、半年間だった。


 ずっと頼り続けるわけにはいかない。


「二人が帰るまでに、新しく入る騎士たちの教育をお願いできるかな?」


「もちろんです」


 ノルが頷いた。


「ですが、それだけでは足りませんな」


「えっ?」


「我々が帰った後、新人を教える者がいなければ困るでしょう?」


「うん」


 そう、これからも騎士団は大きくなるかもしれない。


 そのたびに、ベイルン騎士団から教官を呼ぶわけにはいかない。


「では、今いる騎士の中から、指導役を育てる必要がありますな」


 アストンが口を開いた。


「そのとおりです」


 ノルが頷く。


「技術だけではありません。訓練の組み立て方や、部下の状態を見極めることも教えたいと思っています」


「なるほど」


「テオには、引き続き若い騎士たちを見てもらいましょう」


「はい。お任せください」


 テオが答えた。


「それから、新しく入る者についてですが」


「うん」


「最初から剣の腕が立つ者ばかりを探す必要はないと思います」


「そうなの?」


「はい。もちろん、体力や技量は大切です。でも、規律を守れることや、仲間と協力できることも重要です」


「ああ、そうだね」


「技術は訓練で伸ばせます。しかし、勝手な行動ばかりする者がいれば、仲間を危険にさらすことになりますから」


 確かに、強いだけじゃ騎士は務まらないよな。


「アストン、今の騎士団で指導役を任せられそうな人はいる?」


「何人か候補はおります。ただ、実際に指導できるかは、確認する必要があります」


「じゃあ、その人たちの育成もお願いできる?」


「承知しました」


 ノルが頷いた。


「アストン殿と相談して、訓練の計画を作りましょう」


「助かるよ!」


 ふと、昨日クルストと話したことを思い出した。


 学校でも、教師が替わっても同じ内容を教えられるように、授業の記録を残すことにしたんだった。


「そうだ。訓練の内容も、記録に残してもらえるかな?」


「記録ですか?」


「うん。何を、どの順番で教えるのか。それから、どこまでできるようになったら次へ進むのか」


 ノルが目を細めた。


「なるほど。訓練の手引きを作るわけですな」


「そういうこと!」


「それなら、我々が帰った後にも役立ちます」


 テオも頷く。


「新人ごとの成長も記録しておけば、指導する者が替わっても困りませんね」


「うん!」


 ……いいね。


 これなら、二人が帰った後も騎士団が成長していける。


「それじゃあ、増員の募集を進めようか」


「はい」


「ただし、一度に大勢を採用するんじゃなくて、教えられる人数に合わせて増やしていこう」


 アストンが頷いた。


「その方がよろしいかと」


「ローレンには、継続して給料を払える人数を調べてもらうよ」


「承知しました」


 これで騎士団も、もう一段強くできそうだ。


 ◇


 その日の夕方。


 仕事を終えて、ミラと領都を散歩していた。


「今日は少し早く終わったんだね」


「うん。たまにはこういう時間もいいよね」


「ふふ。そうだね」


 ミラが笑った。


 夕暮れの通りには、仕事を終えた人たちの姿があった。


 買い物をする人。


 酒場へ向かう人。


 家族で歩いている人。


 以前と比べて、ずいぶん賑やかになったな。


「最近、街を歩く人が増えたね」


 ミラが言った。


「うん。鉱山や工房で働く人が増えてるからね」


「知らない顔も多くなった気がする」


「他領から来た人もいるみたいだしね」


 ミラが通りを見渡す。


「みんな、ここで楽しく暮らしてくれるといいね」


「そうだね」


 そういえば。


「ミラ」


「何?」


「教会での訓練はどう?」


「ああ、あれね」


 ミラが少し笑った。


「なかなか難しいよ」


「そうなんだ」


「うん。今は、魔力を細かく調整する練習をしてるの」


「なるほど」


「教会の人にも、焦らずに基礎を続けるように言われたよ」


「そっか。治癒魔法はまだ?」


「うん。まだ使えない」


 ミラが少し残念そうに笑った。


「でも、前より魔力を安定させられるようになってきたの」


「おお! すごいじゃない!」


「ふふ。ありがとう」


「やっぱり、《光聖》ってすごいスキルなのかもしれないね」


 声を落として言う。


 このスキルのことは、ミラが俺を信頼して打ち明けてくれた秘密だ。


 誰にでも話していいことじゃない。


「そうだといいな」


「無理はしてない?」


「大丈夫だよ。教会の人も、少しずつでいいって言ってくれてるから」


「そっか」


「でもね、リオン」


「何?」


「私、治癒魔法を使えるようになりたいって気持ちは、前より強くなったかもしれない」


「そうなの?」


「うん。領内には病気や怪我で困っている人もいるでしょ?」


「……そうだね」


「少しでも、その人たちの力になれたらいいなって」


 ミラらしいな。


「応援してるよ」


「ありがとう」


「でも、頑張りすぎないでね」


「ふふ。リオンもね」


「えっ?」


「最近、また仕事が増えてるでしょ?」


「……あはは」


 言い返せないな。


 すると、ミラが俺の手を取った。


「だから、こういう時間も大切にしようね」


「うん」


 俺も、その手を握り返した。


 ◇


 しばらく歩いていると、通り沿いの酒場から大きな声が聞こえてきた。


「おおっ!」


「そこに置くのか!」


「まだ逆転できるぞ!」


 ……ん?


「何だろう?」


 ミラと顔を見合わせる。


「ずいぶん盛り上がってるね」


「うん。ちょっと覗いてみようか」


 酒場の入口から中を見る。


 何人もの男たちが、一つの卓を囲んでいた。


 酒を飲んでいる人もいる。


 でも、みんなの視線は卓の上に集まっていた。


 リバーシだ。


 盤の上には、黒と白の石が並んでいる。


「そこだ!」


「いや、待て! 角を取られるぞ!」


「もう遅い!」


 石が置かれる。


 続けて、いくつもの石が裏返った。


「おおおっ!」


 店の中から歓声が上がる。


 すごいな、こんなに盛り上がってるんだ。


「リオン、見て」


「うん」


「あっちの卓でもやってるよ」


 ミラが指さした先では、別の二人もリバーシをしていた。


 まさか、ここまで広まっているとは。


「リオンが広めた遊びだよね?」


「うん。でも、みんなの方がずっと真剣にやってる気がする」


「ふふ。そうかも」


 しばらく眺めていると、また歓声が上がった。


 勝った男が両手を上げ、負けた男が悔しそうに頭を抱えている。


 でも、どちらも楽しそうだ。


 仕事を終えた人たちが、こうして笑い合っている。


 何だか、嬉しくなった。


「ねえ、ミラ」


「何?」


「リバーシ大会を開いたら面白くないかな?」


「……大会?」


「うん。こうやって遊ぶだけじゃなくて、参加者を集めて優勝者を決めるんだ」


「それは楽しそう!」


「でしょ?」


「でも、大人ばかりにならない?」


「ああ、そうだね」


 確かに、子供たちも楽しんでいるはずだ。


「だったら、子供の部と大人の部を分けようか」


「うん! それなら小さな子も参加できるね」


「親子で出場しても面白そうだな」


「ふふ。お父さんが子供に負けちゃうかもしれないね」


「それはありそう」


 二人で笑った。


 すると、ミラが何かを思い出したように言った。


「ねえ、リオン」


「何?」


「こういうの、何だか文化祭みたいじゃない?


 言われてみれば、そうだな。


「三年生のとき、みんなで遊び場を作ったよね」


「うん。覚えてる?」


「もちろん!」


 輪投げ。


 的当て。


 札合わせ。


 重さ当て。


 魔法を使わない遊び場。


「最初は地味だって言われたんだよね」


「ふふ。そうだったね」


「でも、最後はすごく賑わった」


「小さな子たちも楽しそうだったよね」


「うん。大人も結構夢中になってたし」


「あのときの重さ当て、意外と難しかったよね」


「そうそう。見た目だけじゃわからないからね」


 ミラが笑った。


「景品の焼き菓子も、途中で足りなくなりそうだったよね」


「ああ! そうだった!」


「みんなで慌てて準備したの、覚えてる?」


「もちろん」


 楽しかったな。


「それから、五年生の文化祭もね」


 ミラが続けた。


「お好み焼き!」


「ふふ。そう!」


「六百六十五枚も売ったんだよね」


「よく覚えてるね」


「忘れないよ。あんなに忙しかったんだもの」


「あはは。確かに」


 朝からずっと焼いていたな。


 クラスのみんなで協力して、たくさんのお客さんに食べてもらった。


「今度は、いろんなお店に食べ物を出してもらってもいいかもしれないね」


「うん。料理を作るのが得意な人もいるだろうし」


「音楽や踊りもあったら楽しそう」


「それもいいね!」


 そうか。


 領都で文化祭みたいな催しを開けばいいんだ。


「ミラ」


「何?」


「子供が楽しめる遊びと、大人が楽しめる催し。それから、家族で一緒に参加できるものも用意しようか」


「うん!」


「リバーシ大会だけじゃなくて、輪投げや的当てもできるし」


「食べ物の屋台もね」


「音楽も呼びたいな」


「それなら、踊りたい人もいるかもしれないね」


「おお。それも楽しそう!」


 考え始めると、次々に案が出てくる。


 これは面白いな。


 すると、ミラが俺の顔を覗き込んだ。


「でもね、リオン」


「何?」


「五年生の文化祭で、一番よく覚えているのは、お好み焼きじゃないよ」


「え?」


「もう忘れちゃった?」


 ミラが少しだけ頬を膨らませた。


 ……あ。


 そういうことか。


「あの中庭?」


「うん」


 ミラが嬉しそうに笑った。


「二人で文化祭を回って、串焼きのお肉を食べたよね」


「ああ。覚えてるよ」


「それで、少し休もうって長椅子に座って……」


「……うん」


 あの日。


 ずっと自分でもよくわからなかった気持ちを、ようやく言葉にした。


 ミラには、これからも近くにいてほしい。


 友達としてだけじゃなくて。


「リオンが、私に好きだって言ってくれた日だよ」


「……うん」


「それから、付き合ってほしいって」


「そうだったね」


 ミラが俺の手を、少し強く握った。


「私、すごく嬉しかったんだから」


「……ありがとう」


「ふふ。何のお礼?」


「いや、あのとき、付き合ってくれて」


 ミラが目を丸くする。


 それから、楽しそうに笑った。


「こちらこそ、ありがとう」


 ……何だか照れるな。


 あのときは、文化祭でこんなふうに気持ちを伝えることになるなんて、考えてもいなかった。


 でも、あの日があったから今こうしてミラと並んで歩いている。


 そう考えると、文化祭は特別な思い出だ。


「ねえ、リオン」


「何?」


「領都でも、みんなにそんな思い出ができたらいいね」


「うん」


 そうだな。


 家族で楽しく過ごした思い出。


 友達と遊んだ思い出。


 仕事仲間と笑い合った思い出。


 もしかしたら、俺たちみたいに、特別な相手との思い出ができる人もいるかもしれない。


「いいね。そういう催しにしよう!」


「ふふ。楽しみ!」


 ◇


 酒場を離れて、再び通りを歩き始めた。


「でも、準備は大変そうだね」


 ミラが言った。


「そうだね。会場も必要だし、出店する人も集めないと」


「警備も必要だよね」


「うん。そこはアストンたちにも相談しないと」


 ……そういえば。


 今日は騎士団の増員について話したばかりだったな。


 領地が発展すると、守るべきものも増える。


 でも、それだけじゃない。


 人々が楽しめる場所や時間も、もっと増やしていきたい。


「まずはローレンに相談してみようかな」


「うん。いきなり大きな催しにしなくてもいいと思うよ」


「そうだね。最初は領都の広場で、小さく始めてみようか」


「それなら、みんなも参加しやすそう」


「それに、俺たちだけで全部決めなくてもいいよね」


「うん。みんながやりたいことを聞いてみたいな」


 なるほど。


 領民からも出し物を募集するのか。


 それはいいな。


「じゃあ、最初はリバーシ大会を中心にして、ほかの催しも募集してみようか」


「うん!」


「子供の部と大人の部に分けて、優勝者には何か景品も用意したいね」


「ふふ。リオンも出るの?」


「えっ? 俺?」


「だって、リバーシを広めたんでしょ?」


「いや、それと強いかどうかは別だよ」


「そうなの?」


「うん。たぶん、今の領民の方がずっと上手だと思う」


 あの酒場の様子を見る限り、かなり研究していそうだしな。


「じゃあ、私も出ようかな」


「おお。いいね!」


「リオンには負けないから」


「……えっ?」


「ふふ。三年生の文化祭でも勝負したでしょ?」


「ああ、そうだったね」


「今度も負けないよ」


 ミラが楽しそうに笑った。


 これは、練習しておいた方がいいかもしれないな。


 夕暮れの領都を、二人で歩いていく。


 酒場からは、まだリバーシを楽しむ人たちの歓声が聞こえていた。


 領地が豊かになることは、収入が増えることだけじゃない。


 安心して働けて、家族と暮らせて、好きなことを楽しめる。


 そんな場所になっていくことも、大切なんだと思う。


 よし。


 領都でも、文化祭みたいな催しを開こう。


 みんなが笑顔になれるような。


 そして、いつか思い出して、楽しかったと言ってもらえるような。


 そんな催しにしたいな。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回はエンターテイメントの話でした。

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― 新着の感想 ―
リバーシ大会! 子どもの部から始めて、子どもの部の優勝者は希望制で大人の部へのエントリー可能!ってのでもおもしろそう
リア充、爆◯しろし! ミラパートを求めているけど、、、 いざあると、なんかこう、、、冒頭。、
次々と新しい事を初めて活気づく領地に他の領主も気になって視察に来そうねw
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