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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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第603話 鉄道の価値

 翌朝。


 政務所の応接室に、ヴァレスト公爵を案内した。


 部屋にはヴィクトルとローレンさんも来ている。


 机の上には、アルスレイン王国の地図を広げていた。


 公爵が席に着く。


「昨日はありがとう。おかげで、とても有意義な一日だったよ」


「こちらこそ、ありがとうございました」


「それで、今日は蒸気機関車の今後について話したいんだけどね」


「はい」


 公爵が地図へ目を向けた。


「リオン君。君は、あの蒸気機関車をもっと大きくするつもりなんだよね?」


「はい」


「どのくらい大きくしたいのかな?」


「まずは鉱山で使えるものですね。今より多くの鉱石を運べるようにしたいです」


「なるほど。その先は?」


「人を乗せたり、町と町を結んだりできればと思っています」


「そうか」


 公爵が頷く。


「では、線路はどうするつもりなんだい?」


「まずは領内ですね。鉱山から鉱石を集める場所まで、短い路線を作りたいです」


「その先は?」


「いずれは領都まで。それから、ほかの領地ともつなげたいですね」


「なるほど」


 公爵が地図の上で指を動かした。


「でも、ほかの領地へ線路を延ばすとなると、いろいろ問題が出てくるね」


「そうですね」


「例えば、隣の領主が線路を通すことに反対したら?」


「ああ……」


「それに、領地ごとに別々の線路を作ったら、幅や構造が違ってしまうかもしれない」


「それは困りますね」


「同じ機関車が走れなくなるからね」


「はい」


 公爵が頷く。


「だから私は、王宮に協力してもらうべきだと思うんだ」


「王宮ですか?」


「ああ」


 公爵が地図を指す。


「王国全体で線路の規格を統一する。それから、主要な路線については王宮に調整してい

ただく」


「なるほど」


「もちろん、王宮にすべての建設費を負担してもらうわけではないよ」


「はい」


「鉄道を作る事業には、王家や各領主、商会などが出資する。そして、完成した鉄道から得られる利益を分け合うんだ」


 なるほど。


 王宮は王国全体の方針を決める。


 実際にお金を出すのは、その鉄道によって利益を得られる人たちだ。


「でも、公爵様」


「何かな?」


「陛下がそこまで協力してくださるでしょうか?」


「十分可能性はあると思うよ」


「本当ですか?」


「ああ。考えてみてごらん」


 公爵が王都を指さす。


「王都から各地へ、大量の食料や物資を運べるようになったらどうなるかな?」


「商売が盛んになりますね」


「そうだね。税収も増えるだろう」


「はい」


「それに、戦争が起きた時には、兵士や物資を今より早く運べるかもしれない」


「あ……」


 確かに。


 今はドラン帝国がサハルへ侵攻している。


 軍隊を動かすにも、食料や武器を運ぶにも、大変な労力が必要だ。


「そういう意味でも、鉄道は王国全体に利益をもたらすと思うんだ」


「なるほど」


「だからこそ、早いうちに陛下にも実物をお見せした方がいい」


「実物を?」


「ああ。君の蒸気機関車だよ」


「え?」


 思わず公爵を見る。


「あの小さな試作品をですか?」


「そうだよ」


「でも、まだ人が一人しか乗れませんし、速度も遅いですよ?」


「それで十分だと思うよ」


 公爵が笑った。


「昨日、私も乗せてもらっただろう?」


「はい」


「馬も使わず、機械が自分の力で線路の上を走る。それを実際に見ていただくことが大切なんだ」


「確かに……」


 言葉で説明するだけでは、分かりにくい。


 実際に見てもらえば、何を作ろうとしているのか伝わるはずだ。


「必要なら、王都にある私の屋敷を使うといい」


「公爵邸を、ですか?」


「ああ。庭に短い線路を敷いて、陛下や宰相、関係する方々をお招きすればいい」


「そんなことまでしていただいていいんですか?」


「もちろんだよ」


 公爵が頷く。


「ただし、国王陛下をお招きする以上、安全性は十分に確認しないといけないね」


「はい」


「試作品を王都まで運ぶ方法や、線路の設置も考えよう」


「そうですね」


「まずは私から王宮へ相談してみるよ」


「ありがとうございます」


「それと、もう一つ」


「はい?」


 公爵が少し表情を引き締めた。


「この発明がこの領で生まれたことを、早いうちに陛下にも知っていただいた方がいいと思うんだ」


「……あ」


「いずれ、ほかの領主たちも蒸気機関車に興味を持つだろうからね」


「なるほど」


「最初に開発した者が誰なのか。それを王宮に認識していただくことは、今後の事業にも役立つはずだよ」


 確かに。


 技術を広める前に、誰が開発したのかを明確にしておく。


 これは大切だ。


「ありがとうございます。ぜひお願いします」


「分かった。私から話しておこう」


 ◇


「ところで、リオン君」


「はい?」


「この蒸気機関車で、どうやって利益を得るつもりなのかな?」


「利益ですか?」


「ああ。開発にも、線路の建設にもお金がかかるからね」


「そうですね」


 少し考える。


「まずは蒸気機関車の製造と販売ですね」


「うん」


「それから、鉄道を運営して運賃をいただくことも考えています」


「なるほど」


「ただ、機関車を売って終わりでは、もったいないと思うんです」


「ほう?」


 公爵が顔を上げた。


「蒸気機関車は、走れば走るほど部品が傷みます」


「そうだね」


「だから、修理も必要ですし、部品の交換も必要になります」


「なるほど」


「それに、動かすには石炭と水が必要です」


 リンクス山のことを思い出す。


「鉄道が増えれば、石炭の需要も増えると思うんです」


「そうだね」


「だから、機関車を売るだけではなくて、修理や交換部品、それから石炭の販売でも利益を得られるんじゃないでしょうか」


 ヴィクトルが顔を上げた。


「……待てよ」


「何?」


「それって、機関車を売った後も商売が続くってことか?」


「そうだよ」


「なるほど……」


 ヴィクトルが腕を組む。


「しかも、機関車が増えるほど、部品も石炭も必要になる」


「うん」


「それを俺たちが供給するわけだな?」


「そういうこと」


 ヴィクトルが笑った。


「面白えな!」


 公爵も笑う。


「よく考えているね、リオン君」


「ありがとうございます」


「ヴァレスト領には鉄を扱う工房もある。こちらも協力できそうだね」


「ぜひお願いします」


 公爵が頷いた。


「では、もう一つ考えてみようか」


「何でしょう?」


「鉄道が走ると、何が変わると思う?」


「人や物の移動ですね」


「そうだね。それから?」


「商売の範囲も広がると思います」


「うん。その通りだよ」


 公爵が地図へ目を向けた。


「でも、私はもう一つ、大きな変化があると思うんだ」


「何ですか?」


「町だよ」


「町?」


「ああ」


 公爵が地図の上に指を置く。


「例えば、何もない場所に新しく駅を作るとしよう」


「はい」


「駅ができれば、人が集まるだろう?」


「そうですね」


「人が集まれば、商人も集まる。店ができる。倉庫も必要になる」


「はい」


「さらに、そこで働く人たちが暮らす家も必要になるね」


 なるほど。


「つまり、駅を中心に町が発展するわけですね」


「そういうことだよ」


 公爵が頷いた。


「では、リオン君。君の領地には、まだ開発していない土地がたくさんあるんだろう?」


「はい。特に南部はこれからです」


「だったら、町を作る前に駅の場所を決めてしまったらどうかな?」


「……先に駅を?」


「ああ」


 公爵が地図を指す。


「駅の位置を決める。その周りに道路を通し、住居や倉庫、市場を整備するんだ」


「……」


「最初から人と物の流れを考えて町を作れば、後から道路を広げたり、建物を移したりする手間も減らせるだろう?」


「確かに……」


 それは面白い。


 前世でも、駅を中心に町が発展している場所はたくさんあった。


 ただ、この領の開発計画に最初から鉄道を組み込むことまでは考えていなかった。


「しかも、リオン君」


「はい?」


「駅の周辺の土地を君の領が持っていたら、どうなるかな?」


「あ……」


 なるほど。


 駅前に商店ができる。


 倉庫ができる。


 住居が増える。


 土地や建物を貸せば、継続的に収入が入る。


「地代や賃料ですか?」


「そうだね」


 公爵が笑った。


「鉄道そのものから利益を得るだけじゃない。鉄道によって発展する町からも利益を得られるんだ」


「……すごいですね」


 思わず声が出た。


 確かに、そういう商売は前世にもあった。


 でも、公爵からこの世界の領地経営の話として聞くと、また違って見える。


「公爵様」


 ヴィクトルが身を乗り出した。


「それなら、駅の近くにローデン商会の倉庫を建てることもできますね?」


「もちろんだよ」


「市場や店舗も?」


「ああ」


「それなら、荷物を運ぶ商売だけじゃなくて、保管する商売もできる……」


 ヴィクトルが考え込んだ。


「さらに、駅の近くに商人を集めれば……」


「いろいろできそうだろう?」


「はい!」


 ヴィクトルが笑った。


「これは面白いですね!」


 公爵が俺を見る。


「リオン君。君は、鉄道で人と物を運ぼうとしている」


「はい」


「でも、鉄道には町そのものを発展させる力もあるんだよ」


 ……すごいな。


 ヴァレスト公爵。


 まるで、鉄道が町を発展させるところを実際に見たことがあるみたいだ。


 でも、公爵様なら歴史や経済にも詳しいだろうし、そういうことも考えられるのかもしれない。


「ただし」


 公爵が続けた。


「最初から大きな町を作るのは危険だね」


「そうですね」


「鉄道が本当に実用化できるか、まだ分からないからね」


「はい」


「まずは駅の候補地だけ考えておく。そのうえで、開発の進み具合に合わせて町を整備すればいいと思うよ」


「なるほど」


 それなら無理も少ない。


 既存の南部開発とも組み合わせられる。


「ローレンさん」


「はい」


「南部開発の計画に、将来の鉄道も考慮しておこう」


「承知しました。ただし、現在予定している道路や住居の整備を止めるわけにはまいりませんな」


「うん。そっちは予定どおり進めよう」


 鉄道ができるのは、まだ先の話だ。


 今暮らしている人たちの生活を後回しにはできない。


 ◇


「それで、リオン君」


「はい?」


「蒸気機関車の開発には、どれくらいのお金が必要なのかな?」


「正直、まだ分かりません」


「そうかい?」


「はい。今は小さな試作品ができただけですから」


 これから大型化する必要がある。


 重い貨車を引けるようにする。


 長時間運転にも耐えられるようにする。


 安全に止める仕組みも改良したい。


 今の段階で、正確な開発費を出すのは難しい。


「まずは、実際に鉱石を運べる機関車を作りたいと思っています」


「なるほど」


 公爵が少し考えた。


「だったら、私も資金を出そう」


「え?」


「蒸気機関車の開発にね」


「……本当ですか?」


「ああ」


 公爵が頷く。


「現時点では、金貨五千枚までの投資を考えているよ」


「五千枚!?」


 思わず声が大きくなった。


 金貨五千枚。


 日本円なら五億円だ。


「もちろん、最初からすべて出すわけではないよ」


「はい」


「まずは必要な設備や試作品に資金を出す。開発の進み具合を確認してから、次の資金を出すつもりだ」


「なるほど……」


「それに、ヴァレスト領から鉄材や技師も送れると思う」


「ありがとうございます!」


 ありがたい。


 蒸気機関車を大型化するには、今まで以上に鉄が必要になる。


 加工できる技師も必要だ。


「ただし、リオン君」


「はい?」


「これは以前の鉱山開発とは別の出資として考えてほしい」


「もちろんです」


 すでに公爵には南部鉱山の開発へ多額の出資をしてもらっている。


 今回の蒸気機関車は、別の事業だ。


 契約も会計も分けた方がいい。


 そこでヴィクトルが口を開いた。


「だったら、ローデン商会も参加させてくれ」


「え?」


「俺たちも金を出す」


「いいの?」


「当たり前だろ!」


 ヴィクトルが笑う。


「これだけの商売になるかもしれねえんだ。黙って見てられるかよ」


「ありがとう」


「それに、専用の工房も必要だろ?」


「工房?」


「ああ。いつまでも屋敷の庭で作るわけにはいかねえ」


 ……確かに。


 庭には、もう線路まで敷いてある。


 ケーラも困っているし。


「蒸気機関車の開発に使える工房を用意しよう。大きな鉄材を加工できる設備も必要になるだろ?」


「うん」


「工房の建設や設備の手配なら、ローデン商会でも協力できる」


「本当?」


「ああ。ただし、どこまで商会が金を出して、工房を誰のものにするかは決めないとな」


「そうだね」


 ヴィクトルが笑う。


「当然、俺にもちゃんと儲けさせてくれよ」


「あはは。もちろん」


 公爵も笑った。


「いい話になってきたね」


 ◇


「ただ、公爵様」


「何かな?」


「一つ、提案があります」


「聞かせてくれるかな?」


「蒸気機関車を開発する事業と、鉄道を運営する事業は分けたいんです」


「ほう。どうしてだい?」


「鉄道の建設には、莫大なお金が必要になると思うんです」


「そうだね」


「線路を敷く土地を確保しなければなりませんし、橋を作る場所もあると思います」


「うん」


「でも、蒸気機関車の開発は、それとは別に進められます」


「なるほど」


「それに、蒸気機関は鉄道以外にも使えます」


 昨日見てもらった鉱山の装置が、まさにそうだ。


「だから、まずは蒸気機関の開発と製造を行う事業を作りたいんです」


 公爵が頷く。


「そして?」


「鉄道の建設と運営については、路線ごとに採算を考えて、別に出資を集めた方がいいと思います」


「なるほど。確かにそうだね」


「そうすれば、鉄道の建設が遅れても、蒸気機関の開発そのものは止めずに済みます」


「いい考えだと思うよ」


「ありがとうございます」


 さらに、もう一つ気になることがあった。


「それから、開発した技術の扱いも決めておきたいです」


「技術の扱い?」


「はい。蒸気機関の基本的な技術はこの領で開発したものです」


「そうだね」


「もちろん、ヴァレスト家やローデン商会の協力がなければ、これからの開発は進められません」


 公爵とヴィクトルを見る。


「だから、共同で事業を進めたいんです。ただ、今回の出資で、これまでに開発した技術まで全部譲る形にはしたくありません」


「なるほど」


 公爵が頷いた。


「それは当然の希望だと思うよ」


「ありがとうございます」


「では、君が持っている技術を、共同事業で使えるようにする形を考えようか」


「はい」


「その代わり、新しく開発するものについては、誰が権利を持つのかも決めておく必要があるね」


「そうですね」


 ヴィクトルも頷いた。


「それに、出資する金額と利益の分け方もだな」


「うん」


 まだ何も決まっていない。


 金額。


 出資比率。


 利益の配分。


 事業を誰が管理するのか。


 技術をほかの領地へ提供する場合の条件。


 どれも大切だ。


「公爵様。今日は大きな方向性だけ決めて、正式な条件は後日詰めませんか?」


「そうだね。それがいいと思うよ」


「ヴィクトルも、それでいい?」


「ああ。まずは必要な金と設備を見積もらねえとな」


「ありがとう」


 ローレンさんが口を開いた。


「男爵様。今回の事業については、既存の鉱山開発とは別の帳簿を用意いたしますかな?」


「うん。そうしてほしい」


「承知しました」


 今の領には、まだやるべきことがたくさんある。


 鉄道が面白いからといって、ほかの仕事を止めるわけにはいかない。


「それから、もう一つ」


 俺が言う。


「量産するのは、安全性を十分に確認してからにしたいです」


「もちろんだよ」


 公爵が即答した。


「昨日のビダン山でも、まだ試験を続けていたね」


「はい」


「焦らず、しっかり確認した方がいいと思うよ」


「ありがとうございます」


 ヴィクトルが腕を組んだ。


「じゃあ、まずはルッツたちに必要な設備を聞くか」


「うん。それから、大型化の設計だね」


「工房の候補地も探しておく」


「お願い」


「ただし、今いる職人を全員そっちへ回すわけにはいかねえぞ」


「分かってるよ」


 共鳴石通信機も硬化石も、すでに注文が入っている。


 そちらを止めるわけにはいかない。


 新しく職人を育てることも考えなければならないだろう。


「では、私からは王宮への話を進めておくよ」


 公爵が言った。


「ありがとうございます」


「陛下に蒸気機関車をご覧いただく件と、今後の鉄道についてね」


「はい」


「まずは実物を見ていただく。それから、王国全体でどう活用するかを考えていこう」


「よろしくお願いします」


 公爵が笑った。


「楽しみだね、リオン君」


「はい!」


 ◇


 昼食を済ませると、公爵が帰る時間になった。


 屋敷の前には馬車が用意されている。


「二日間、ありがとうございました」


「こちらこそ。とても楽しかったよ」


 公爵が笑う。


「蒸気機関を見るために来たつもりだったんだけど、まさか王国全体の鉄道の話まですることになるとはね」


「あはは。俺も驚きました」


「でも、君なら本当に実現してしまいそうだね」


「まだ小さな試作品しかありませんよ」


「最初は、みんなそういうものじゃないかな」


 公爵が笑う。


「それと、リオン君」


「はい?」


「ルッツ君たちには、十分休んでもらうといい」


「はい」


「これからは、もっと難しいものを作ってもらうことになるだろうからね」


「そうですね」


「彼らの力がなければ、私たちがどれだけ立派な計画を立てても、実現できないからね」


「はい。本当にそう思います」


 公爵が頷いた。


「では、私はそろそろ戻るよ」


「難民の受け入れ準備ですね」


「ああ」


 公爵の表情が少し変わった。


「鉄道の話は、これから何年もかけて進めることになるだろうね」


「はい」


「でも、サハルから逃れてくる人たちは待ってくれない」


「……そうですね」


「まずは、今できることを進めよう」


「はい」


 俺も頷いた。


 公爵が馬車へ乗り込む。


「では、また会おう。リオン君」


「はい。お気をつけて!」


 馬車がゆっくり動き出した。


 俺たちは、その姿が見えなくなるまで見送った。


 ◇


 その後、俺は政務所へ戻った。


 応接室の机には、先ほどまで公爵と見ていた地図が残っていた。


 そして、遠く離れた王都。


 もし、これらを鉄道でつなぐことができたら。


 鉱山から掘り出した資源を、遠くの町まで運べる。


 人の移動も早くなる。


 駅を中心に新しい町を作ることだってできる。


 しかも、それが新しい産業になる。


「……すごいな」


 最初は、鉱山で馬の代わりにトロッコを引く機械を作りたかっただけだった。


 それが、いつの間にか王国全体の鉄道網の話になっている。


 ただ、実現までには何年もかかるだろう。


 まずは蒸気機関車を大型化する。


 安全に動かせるようにする。


 短い路線で、実際に荷物を運べることを確かめる。


 一つずつ進めていこう。


 その時。


「男爵様」


 ローレンさんが応接室へ入ってきた。


「あ、ローレンさん」


「難民受け入れの件で、いくつかご報告がございます」


「ああ、そうだったね」


 地図を畳む。


 鉄道のことも大切だ。


 でも、今はまだ、サハルから何人の人が来るのかも分かっていない。


 住居。


 食料。


 水。


 仕事。


 それに、今いる領民たちの不安もある。


「じゃあ、聞こうか」


「承知しました」


 ローレンさんと一緒に部屋を出た。


 未来の鉄道も大切だけど。


 まずは、目の前の仕事からだ。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

改めて読んでみるとヴィクトルが有能すぎる……。

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― 新着の感想 ―
あーあ、侯シャク様、てつどうっていってるし。
2026/10/12 17:23 アルテイシア
ついでw 駅というのは律令制で国の令により地方へいく官人の便宜を図るために設置した「駅」からきてるので王国や領主が整備した駅馬車の基地などがあれば一応の説明がつきます 元々は中国から来た制度ですし、似…
『A列車で行こう』篇が始まる!?
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