第602話 公爵の視察
数日後。
ヴァレスト公爵がハル領へやってきた。
「お久しぶりです、公爵様」
「久しぶりだね、リオン君」
公爵が馬車から降りる。
今回の目的は、蒸気機関の視察だ。
「わざわざお越しいただき、ありがとうございます」
「いやいや。君がまた面白いものを作ったと聞いたからね」
「まだ試験中ですけど」
「それでも、鉱石の搬出量が三倍近くになる可能性があるんだろう?」
「はい。鉱山技師の方は、そうおっしゃっていました」
「それはぜひ見てみたいね」
公爵が笑う。
今回は一泊二日の予定らしい。
ヴァレスト公爵領でも、サハルからの難民を受け入れる準備が始まっている様だ。
あまり長く領地を離れるわけにはいかないそうだ。
「では、早速ビダン山へご案内しましょうか?」
「そうだね。ただ、その前に一ついいかな?」
「何でしょう?」
「君の屋敷の庭にも、面白いものがあると聞いたんだけど」
「ああ、蒸気機関車ですね」
「……蒸気機関車」
「はい。まだ小さいですけど、人も乗れるんですよ」
「そうなのかい?」
公爵が少し目を細めた。
「それは、ぜひ見せてもらいたいね」
◇
「こちらです」
公爵を庭へ案内する。
大きな楕円形の線路。
その上に、小さな蒸気機関車が載っている。
前には蒸気機関と操縦席。
後ろには、一人が乗れる小さな客車をつないでいた。
「……なるほど」
公爵が機関車へ近づく。
しゃがんで車輪を見た。
それから、蒸気機関へ目を向ける。
「実際に動かしてもらえるかな?」
「もちろんです」
ルッツさんと職人たちが準備を始める。
炉に火を入れ、石炭を加える。
水が温まり、やがて蒸気が上がってきた。
シュウウウ……。
「準備できました」
「ありがとう」
俺が操縦席に座る。
「公爵様、後ろに乗ってみませんか?」
「私がかい?」
「はい」
公爵が笑った。
「それは面白そうだね」
客車へまたがってもらう。
「ずいぶん低いんだね」
「まだ試作品なので」
「いや、十分だよ」
「では、動かします」
「ああ」
周囲に人がいないことを確認する。
ルッツさんが頷いた。
少しずつ蒸気を送る。
ガコン。
ガタン。
小さな機関車が動き出した。
「おお……」
後ろから公爵の声が聞こえた。
ガタン。
ガタン。
ゆっくりと線路の上を進んでいく。
「どうですか?」
「うん。面白いね」
最初のカーブへ入る。
車輪が線路に沿って曲がっていく。
そのまま直線へ。
次のカーブも問題なく通過した。
「これは……」
公爵が小さく呟く。
「本当に作ってしまったんだね」
「え?」
「いや。見事なものだと思ってね」
「あはは。ありがとうございます」
線路を一周して止まる。
「いかがでしたか?」
「驚いたよ」
「本当ですか?」
「ああ」
公爵が機関車を振り返る。
「まさか、こんなものに乗れる日が来るとはね」
ずいぶん喜んでもらえたみたいだ。
「リオン君」
「はい?」
「これは、どれくらい大きくできそうかな?」
「まだ分からないですけど、将来的には何人も乗れるくらいにしたいですね」
「何人も?」
「はい。それに、荷物も運べるようにしたいです」
「なるほど」
公爵が頷く。
「では、車両を何台もつなぐことも考えているのかな?」
「あ、はい。そのつもりです」
「そうか」
なんだろう。
普通は、こんな小さな乗り物を見ても、何台もつなぐなんて思いつかないんじゃないだろうか。
「公爵様は、こういう機械に詳しいんですか?」
「いや。仕組みまではよく知らないよ」
「そうなんですね」
「ただ、使い道を考えるのは好きでね」
公爵が笑った。
「それより、この機関車は君が作ったのかい?」
「いえ。俺はこういうものを作りたいって言っただけです」
「そうなのかい?」
「はい。実際に作ってくれたのはルッツさんたちです」
ルッツさんを呼ぶ。
「公爵様、こちらがルッツさんです」
「お初にお目にかかります」
「君がこれを作ったんだね」
「はい。ただ、私一人ではありません。ほかの職人たちと試作を繰り返しました」
「そうか。少し話を聞いてもいいかな?」
「もちろんです」
公爵は機関車の横にしゃがみ、ルッツさんの説明を聞き始めた。
蒸気を筒へ送る。
中の板が押される。
棒が動く。
その動きを回転に変える。
最初は蒸気を出し入れする金具を、人が操作していたこと。
そこから車輪の回転に合わせて、自動で切り替える仕組みを作ったこと。
何度も失敗し、部品を作り直したこと。
ルッツさんが順番に説明していく。
「なるほど」
公爵が頷く。
「君たちが考えたのかい?」
「はい。リオン様から、どのように動かしたいかをお聞きして、職人たちと相談しながら作りました」
「そうか……」
公爵がルッツさんを見る。
「素晴らしいね」
「ありがとうございます」
「これだけの仕組みを形にするのは、簡単ではなかっただろう?」
「はい。ですが、非常に勉強になりました」
ルッツさんが笑う。
「最初は、本当に動くとは思っておりませんでしたから」
「そうだろうね」
公爵も笑った。
「リオン君」
「はい?」
「君には、こういう人がいたんだね」
「え?」
「いや。素晴らしい職人に恵まれたと思ってね」
「ああ、はい。本当にそう思います」
ルッツさんたちがいなかったら、蒸気機関なんて作れなかった。
俺は完成した機関車の姿を知っている。
でも、その仕組みを細かく説明できるわけじゃない。
それを実際に作ってくれたのが、ルッツさんたちだ。
「これからも大切にするといい」
「もちろんです」
公爵が満足そうに頷いた。
◇
「では、次はビダン山へご案内します」
「お願いするよ」
庭を出て、屋敷の裏へ向かう。
ただし、その前に公爵の随員には屋敷で待っていてもらうことにした。
案内するのは俺とアストンだ。
「馬車はどちらかな?」
公爵が尋ねる。
「ああ。今回は馬車を使いません」
「そうなのか?」
「はい。少し驚かれるかもしれませんが……」
公爵を見る。
「俺の手につかまっていただけますか?」
「こうかな?」
公爵が手を差し出した。
「はい」
アストンも隣に来る。
「では、行きます」
一瞬で景色が変わった。
「……」
公爵が周囲を見回す。
さっきまでいた屋敷の裏ではない。
「着きました」
目の前にあるビダン山を見上げる公爵。
「……なるほど」
公爵が俺を見る。
「これは驚いた」
「そうですよね」
「しかし、これで一つ分かったよ」
「何がですか?」
「以前、王宮で君に会った時のことさ」
「あ」
あの時か。
王宮から急いで来てほしいと言われて、すぐに転移した。
公爵から、どこから来たのか聞かれたんだった。
「かなり急いで来たって言いましたよね、俺」
「そうだったね」
公爵が笑う。
「本当に急いでいたんだね」
「……はい」
「安心するといい。誰かに話すつもりはないよ」
「ありがとうございます」
「しかし、便利なものだね」
「そうですね。ただ、行ける場所には限りがありますけど」
「なるほど」
公爵はそれ以上聞かなかった。
◇
鉱山へ向かう。
坑道の入口近くには、蒸気機関が設置されていた。
高い煙突から煙が上がっている。
ゴオオオ……。
石炭の燃える音が聞こえた。
「公爵様!」
ヴァレスト公爵領から来ている鉱山技師が駆け寄ってきた。
「ご苦労様」
「わざわざお越しいただき、ありがとうございます」
「いや。報告を読んで、どうしても見てみたくなってね」
公爵が蒸気機関を見る。
「これが例の装置かい?」
「はい」
「では、実際に動かしてもらえるかな?」
「承知しました」
技師が作業員たちへ合図を出す。
蒸気の圧力を確認する。
縄の張り具合も確認する。
坑道の奥と合図を交わした。
「準備できました!」
「では、始めてください」
ガコン。
ガコン。
蒸気機関が動き始める。
回転軸が回り、縄が巻き取られていく。
やがて、坑道の奥から鉱石を積んだトロッコが姿を現した。
「おお……」
公爵が目を細める。
ガコン。
ガコン。
トロッコがゆっくり近づいてくる。
そのまま坑道の外へ出てきた。
「なるほど」
公爵が頷く。
「これなら、馬を使わずに鉱石を運び出せるわけだね」
「はい」
鉱山技師が答える。
「以前は馬を使って縄を巻き取っていましたが、今はこちらの装置で動かしております」
「能力はどれくらい違うんだい?」
「まだ試算ですが、この坑道の搬出量を三倍近くまで増やせる見込みです」
「三倍か」
「はい。ただ、採掘量そのものが三倍になるわけではありません」
「そうだね。運ぶ量が増えても、掘る人が足りなければ意味がないからね」
「その通りです」
公爵が蒸気機関を見つめる。
「ほかの坑道にも設置できそうかな?」
「形や距離に合わせた調整は必要ですが、可能性は十分あります」
「なるほど」
公爵が頷いた。
「ところで、燃料は石炭なんだね?」
「はい」
「どこから運んでいるんだ?」
「リンクス山です」
俺が答える。
「……リンクス?」
「はい。あの向こうに見える山です」
西の方を指さす。
ビダン山の向こうに、リンクス山が見えていた。
「あれがリンクス山かい?」
「そうです。石炭が採れるんですよ」
「……そうか」
公爵が山へ目を向ける。
「アーシタ、ビダン……リンクス」
「はい」
公爵が少し考える。
「リンクス、ね……」
「どうかしましたか?」
「いや」
公爵がこちらを向いた。
「以前、君が山の名前をつけた時のことを思い出してね」
「ああ」
「まだ名前のない山もあっただろう?」
「はい。もう名前を決めましたよ」
「そうなのかい?」
「アノー山とエヴィン山です」
「……アノーとエヴィン」
「はい」
公爵が小さく頷いた。
「なるほど。そういう名前になったんだね」
「何か?」
「いや。いい名前だと思ってね」
「ありがとうございます」
公爵はもう一度、リンクス山を見た。
それから何事もなかったように、鉱山技師へ顔を向けた。
相変わらず、山の名前を気にする人だな。
◇
「ところで、安全面はどうなっているんだい?」
公爵が尋ねた。
「現在、毎日点検を行っております」
「具体的には?」
「蒸気漏れ、部品の摩耗、縄の傷み、それから燃料と水の消費量などです」
「なるほど。蒸気の圧力は?」
「確認しております。危なそうな場合には運転を止め、余分な蒸気を逃がす仕組みも設けました」
「そうか。それは大切だね」
公爵が装置を眺める。
「煙や煤への対策は?」
「そちらも行っております」
技師が煙突を指す。
「煙突を高くして、火の粉が外へ飛びにくいよう金網も設けました」
「金網?」
「はい。ただし、煤が詰まることもありますので、定期的に外して掃除しております」
「なるほど」
公爵が頷く。
「作業員の健康への影響は?」
「そちらも確認しております」
蒸気機関は坑道の外に置いてある。
住居や休憩場所からも離している。
風向きによっては煙が作業場所へ流れるため、その場合は運転を見合わせることもあるそうだ。
「煙が坑道の中へ入ることは?」
「今のところ確認されておりません。ただ、風向きには十分注意しております」
「そうだね」
「石炭を燃やす作業員についても、交代で作業するようにしております」
「休憩も取れているのかな?」
「はい。炉のそばに立ち続けることがないようにしております」
さらに、石炭を扱う際に舞う粉塵や、炉から出る灰についても対策を進めているらしい。
灰や煤は集めて保管し、勝手に捨てないようにしている。
装置の点検記録だけでなく、作業員の咳や目の痛みなども報告してもらっているそうだ。
「なるほど」
公爵が頷いた。
「よく考えられているね」
「ありがとうございます」
「ただ、まだ運用を始めたばかりだろう?」
「はい」
「長い間働いて、初めて分かる問題もあるからね」
「承知しております」
「それと、装置が動いている間は、縄や回転軸に人を近づけないようにしてほしい」
「はい。立ち入り場所も決めております」
公爵は作業員が働いている場所も確認した。
俺も一緒についていく。
「リオン君」
「はい?」
「君も安全には気を配っているんだね」
「はい。庭で試した時にも、いろいろ問題が出たので」
「そうか」
「それに、鉱山で働く人たちが怪我をしたり、病気になったりしたら困りますから」
「うん」
公爵が少し笑った。
「それは大切なことだよ」
それから、もう一度蒸気機関を見た。
「しかし……本当に動いているんだね」
「はい」
「しかも、実際の仕事に使えるところまで来ている」
「まだ試験中ですけどね」
「それでも大きな一歩だよ」
公爵はしばらく蒸気機関を眺めていた。
「リオン君」
「はい?」
「君は、この装置をほかにも使おうと考えているのかな?」
「もちろんです」
「例えば?」
「まずは、さっきの蒸気機関車ですね」
「うん」
「それから、工房の機械も動かせるんじゃないかと思っています」
「工房の機械?」
「はい。木材を切ったり、金属を加工したり」
「なるほど」
「水を汲み上げることにも使えると思うんですよね」
鉱山で地下水がたまった時にも役立つかもしれない。
「ただ、まだ思いついただけですけど」
「いや。それで十分だよ」
公爵が頷いた。
「一つ、聞いてもいいかな?」
「何でしょう?」
「もし、あの蒸気機関車をもっと大きくできたら、線路はどこまで延ばすつもりなんだい?」
「え?」
「屋敷の庭だけではもったいないだろう?」
「ああ」
少し考える。
「まずは領内ですね」
「うん」
「鉱山と町をつないだり、荷物を運んだり」
「その先は?」
「いずれは、ほかの領地ともつなげられたらいいなって」
「そうか……」
公爵が少し笑った。
「それは楽しみだね」
「はい」
「でも、なかなか大変そうだね」
「そうですね。線路も作らないといけませんし、機関車だってまだ小さいですから」
「それだけではないよ」
「え?」
「ほかの領地まで線路を延ばすなら、その領主にも協力してもらわなければならないだろう?」
「ああ……」
確かに。
「それに、誰が線路を作り、誰がお金を出すのかも決めなければならない」
「そうですね」
公爵が頷く。
「考えることは多いね」
「はい」
「ただ……」
「はい?」
「方法がないわけではないと思うよ」
「本当ですか?」
「ああ」
公爵が笑った。
「まあ、その話はまたにしようか」
「……はい」
何か考えがあるんだろうか。
◇
その後も鉱山を見て回った。
坑道の入口。
石炭や水の保管場所。
作業員の休憩場所。
蒸気機関を使った運搬作業。
公爵は一つ一つ確認していた。
夕方になる頃には、視察も一通り終わった。
「公爵様、そろそろ戻りましょうか」
「そうだね」
鉱山技師と作業員たちへ礼を言う。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ、お越しいただきありがとうございました」
「引き続き、安全第一でお願いします」
「承知しました!」
公爵も技師へ声をかけた。
「今後の試験結果も報告してほしい」
「はい!」
「何か問題が見つかったら、隠さず知らせること。安全を優先してほしい」
「承知いたしました」
それから、アナハイムへ向かった。
「では、公爵様。また手につかまってください」
「ああ」
公爵が俺の手を取る。
アストンも隣に来た。
転移する。
一瞬で景色が変わった。
見慣れた屋敷の裏だ。
「着きました」
「……本当に便利なものだね」
「そうですね」
公爵が笑う。
「これがあれば、馬車も鉄道も必要なくなりそうだけど」
「あはは。でも、俺しか使えませんから」
「そうだね」
公爵が頷く。
「大勢の人や大量の荷物を運ぶなら、別の方法が必要だね」
「はい」
屋敷へ向かう。
「公爵様」
「何かな?」
「十分なおもてなしはできませんが、今夜はぜひゆっくりしていってください」
「ありがとう。楽しみにしているよ」
◇
夕食は屋敷で用意してもらった。
ミラも一緒だ。
「ミラ嬢、久しぶりだね」
「お久しぶりです、公爵様」
「元気そうで何よりだよ」
「ありがとうございます」
食事をしながら、今日見た蒸気機関車の話になった。
「ミラ嬢も乗ったのかな?」
「はい! ピコと一緒に乗りました」
「そうか。楽しかったかい?」
「とても!」
ミラが笑う。
「最初はびっくりしましたけど、本当に馬がいないのに動くんですよ」
「私も乗せてもらったよ」
「いかがでした?」
「面白かったね。また乗ってみたいくらいだよ」
ミラが嬉しそうに笑った。
「ピコも気に入ってるんです」
「ピー!」
近くにいたピコが鳴いた。
公爵も笑う。
「それは何よりだね」
それから、公爵家の近況も聞いた。
ルークやセレナも元気にしているらしい。
「セレナは最近どうですか?」
「相変わらず勉強熱心だよ」
「そうですか」
「君の話も時々しているね」
「え?」
「いろいろ新しいことを始めているそうだから、気になるんだろうね」
「あはは」
「そのうち、エドガー殿下とここへ来るかもしれないね」
その後は、サハルからの難民の話になった。
「受け入れの準備はどうかな?」
「まだ人数が分からないので、できるところから進めています」
「そうか」
「水や住居、食料、仕事。それに医療や衛生も」
「いろいろ必要になるね」
「はい」
公爵が頷く。
「我が領でも同じだよ」
「やっぱり大変ですか?」
「ああ。何人来るか分からないからね」
「そうですよね」
「受け入れたいと思っていても、何も準備せずに迎えるわけにはいかない」
「はい」
ミラも口を開いた。
「今いる人たちのことも、ちゃんと考えたいと思っています」
「そうだね」
公爵がミラを見る。
「受け入れる人たちだけでなく、今暮らしている人たちの生活も守らなければならないからね」
「はい」
「二人でよく相談しながら進めるといいよ」
「ありがとうございます」
その後は、あまり難しい話はしなかった。
学院の頃のこと。
公爵領で過ごした時のこと。
ルークやセレナの近況。
懐かしい話もいろいろ聞けた。
公爵も楽しそうだった。
◇
食事が終わる頃には、すっかり夜になっていた。
「今日はありがとうございました」
俺が礼を言う。
「こちらこそ。とても楽しかったよ」
「よかったです」
「蒸気機関も見られたし、機関車に乗ることまでできた」
「はい」
公爵が少し笑う。
「それに、ルッツ君という優秀な職人にも会えた」
「本当にすごい人なんですよ」
「そうだろうね」
公爵が頷いた。
「リオン君」
「はい?」
「君のところには、いい人たちが集まっているね」
「あはは。そうですね」
「それが何よりだよ」
公爵の言葉に、なんだか嬉しくなった。
その後、客室へ案内する。
「明日も少し話をさせてもらえるかな?」
「もちろんです」
「ありがとう。では、また明日」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」
公爵が客室へ入る。
扉が閉まった。
俺も自分の部屋へ戻ることにした。
今日は、公爵に蒸気機関を実際に見てもらうことができた。
ルッツさんたちの仕事も評価してもらえた。
それだけでも十分だ。
ただ、一つ気になることがあった。
公爵は、蒸気機関車の使い道について、ずいぶん具体的なことを聞いてきた。
車両を何台もつなぐこと。
領地を越えて線路を延ばすこと。
誰が建設費を負担するのかということ。
俺もいずれは考えなきゃいけないと思っていたけど、まだ何も決めていない。
「……何か考えがあるのかな」
明日は、その話を聞けるかもしれない。
俺は自分の部屋へ戻った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ヴァレスト公爵がリンクス山に見せた反応。
あれには、実はちゃんとした理由があります。
本編で明かせるかどうかはわかりませんが……。
※明日からの更新について
書籍化作業、新作準備などがある為、しばらくは12時と18時更新にさせて頂きます。
更新ペースが滞り申し訳ありませんが、よろしくお願いします。




