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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

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第591話 王宮へ

 翌朝。


 政務所へ行くと、ルッツさんが工房から出てきた。


「あ、リオン様」


「おはよう」


「王宮から追加で頼まれていた通信機、できました」


「十組全部?」


「はい」


 工房へ入る。


 作業台の上に、小さな木箱が並んでいた。


 一から十まで。


「早かったね」


「同じものを作る作業には、かなり慣れてきましたから」


「全部確認した?」


「はい。それぞれ通信できることも確認済みです」


「ありがとう」


 一番の箱を開ける。


 二台の通信機。


 一組の二台には、同じ原石から分けた共鳴石が入っている。


 ただし、一番と二番では原石が違う。


 三番も四番も、それぞれ別の原石だ。


 組が違えば、使っている原石も違う。


「じゃあ、王宮へ連絡しよう」


「今日ですか?」


「受け取ってもらえるなら」


 通信室へ向かった。


 担当の文官に内容を伝える。


《イライサレタ ツウシンキ》


《ジュックミ カンセイ》


《ノウヒンシタイデス》


 送ってもらう。


 返事を待つ間に仕事へ戻った。


 しばらくして。


「リオン様」


 文官が執務室へ来た。


「返事が?」


「はい」


 渡された紙を見る。


《サッキュウニ オウキュウヘ》


《ヘイカト サイショウガ オアイニナル》


「早急か」


 それだけ急いでいるということだろう。


「分かりました」


 ◇


 昼食を終え、屋敷へ戻った。


「ミラ」


「何?」


「午後、王宮へ行ってくる」


「王宮?」


「うん。十組できたから」


「もうできたんだ」


「ルッツさんが頑張ってくれたからね」


「ピー!」


 足元でピコが跳ねる。


 抱き上げた。


「ピコはお留守番」


「ピー?」


「今日は王宮だから」


 ミラへ渡す。


「お願いしていい?」


「もちろん」


「ピー……」


「すぐ帰ってくるよ」


「ピー」


 ミラが笑う。


「本当にすぐ?」


「今日は納品するだけだから」


「前もそんな感じじゃなかった?」


「……たぶん大丈夫」


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 アストンと屋敷の裏へ向かった。


 魔力を流す。


 景色が変わった。


 王都。


 以前借りた宿の部屋だ。


「何度経験しても、不思議ですな」


 アストンが周囲を見る。


「もう慣れたかと思った」


「領都から王都へ一瞬で移動することには、なかなか慣れません」


「俺は結構慣れたよ」


「男爵様だからでしょうな」


 荷物を亜空間収納から取り出す。


「行こうか」


「はい」


 ◇


 王宮へ着く。


 門で名前を告げると、すでに話は通っていた。


「ハル男爵。お待ちしておりました」


「ありがとうございます」


 アストンと一緒に王宮へ入り、奥へ進む。


 案内されたのは、以前にも来た国王の執務室だった。


「失礼いたします」


「入れ」


 中にいるのは二人。


 国王。


 宰相。


 アストンには部屋の外で待ってもらう。


「リオン」


「はい」


「座れ」


「ありがとうございます」


 席につく。


「通信機を持ってきたそうだな」


「はい」


 持ってきた木箱を取り出した。


 十個。


 机の上へ並べる。


「これで十組です」


 宰相が一つ開ける。


「二台で一組か」


「はい」


「以前と同じだな」


「基本は同じです。ただ、安全面は少し変えました」


 国王陛下が俺を見る。


「聞こう」


「まず、この十組は、一組ごとに別の原石を使っています」


「つまり?」


「一番の二台だけが同じ原石です。二番は別の原石。三番も別です」


 宰相が頷く。


「なるほど」


 もう一つ。


 こっちの方が大事だ。


「それと、この十組に使った原石の余りは残していません」


「余り?」


「同じ原石が第三者の手に渡ると、そこでも反応する可能性がありますから」


 同じ石が残っている。


 それを誰かが持っていく。


 それだけで通信を拾われる可能性がある。


「残った部分は細かく砕きました。その後、通信機を動かしても反応しないことを確認してから処分しています」


「なるほど」


 宰相が通信機を見る。


「石そのものから対策したか」


「できることからですけどね」


 次に紙の束を出す。


「こちらが基本の符号表です」


「前にも見たものだな」


「はい」


 もう一冊置く。


「それと、こっちは運用手順です」


「運用?」


「前に言われた、通信内容を外に漏らさないための対策をまとめました」


 王宮用。


 軍用。


 民間用。


 符号表を分ける。


 同じ表を長期間使い続けない。


 誰から送られてきたのか確認できるよう、通信の最初と最後に決めた合図を入れる。


「全部同じ表を使っていたら、一つ漏れただけで全部読まれます」


「だから分ける」


「はい。それと、定期的に符号表は変えてください」


 宰相が紙をめくる。


「変更する時の手順まで書いたのか」


「作った人によってやり方が違うと、余計に混乱すると思ったので」


「妥当だな」


 国王陛下も資料を見る。


「これで完全に安全なのか?」


「いえ」


 すぐ答えた。


「まだ分からない方法で破られる可能性はあります」


「そうか」


「なので、何か見つかったらその都度変えます」


 宰相が頷いた。


「それでいい。完全だと思い込む方が危険だ」


「はい」


「民間利用については?」


「予定通り進めたいと思っています」


 以前、王宮や諸侯の通信内容が外へ漏れない仕組みを考えること。


 それを条件に、国内での民間利用については認めてもらった。


「今回のやり方で、まず始めようと思っています」


 宰相が少し考える。


「王宮用と民間用を分け、この運用を守るのであれば、国内での商業利用まで止める必要はないだろう」


「ありがとうございます」


「ただし、問題が出れば報告しろ」


「もちろんです」


 これで通信機の商業化も前へ進められる。


 ◇


「それと、もう一つ報告があります」


 国王が俺を見る。


「まだあるのか?」


「あります」


「今度は何だ?」


 袋から黒い石を取り出す。


「石炭です」


「石炭?」


「ノア山脈の三つ目の山で見つけました」


「また山か」


「はい」


 国王が石炭を手に取る。


「どの程度ある?」


「まだ分かりません。ただ、離れた場所でも何度か確認しています」


「本格的な調査は?」


「これからです」


 宰相が聞く。


「また資金を集めるのか?」


「今のところ、その予定はありません」


「なぜだ?」


「まず調査が先です」


 どれだけあるのか。


 どの程度の品質なのか。


 どこなら掘りやすいのか。


 運び出すにはいくら掛かるのか。


「今ある鉱山資金の範囲でも、調査はできます。本格的に開発する時に追加の資金が必要かどうかは、それから判断します」


「なるほど」


「今はヴァレスト公爵領から来てもらっている鉱山の専門家にお願いしています」


「他の山を調べている者たちか?」


「はい。そちらが一段落したら、石炭の山も見てもらいます」


「ヴァレスト公爵には話したのか?」


「通信機で。現場の判断に任せると返事をいただきました」


 少し迷ってから続ける。


「量があるなら、ヴァレスト領で買いたいとも」


 国王が少し笑った。


「調査前から買い手候補までいるのか」


「候補です」


「そこは慎重だな」


 国王が笑った。


 ◇


 国王の表情が変わった。


「では、今度はこちらからだ」


「はい」


 宰相が地図を広げる。


「ドラン帝国の動きについて、新しい情報が入っている」


 自然と姿勢が正される。


「まだ断定はできん」


 宰相がドラン帝国側を指した。


「だが、兵の動きと物資の集まり方を見る限り、再びサハルへ軍を向ける可能性が高い」


「……やっぱり」


 そうなるかもしれないとは思っていた。


 できれば外れてほしかった。


「アルスレイン側も警戒を始めている」


 国王が言う。


「ラウグレン、ベイルンをはじめ、ドラン帝国と国境を接する領には警戒を強めるよう伝えてある」


「はい」


 宰相が机の上の通信機を見る。


「この十組も、そのために使う」


「国境へ?」


「用途のすべてを話すことはできん」


「あ……そうですよね」


「どこに何台置くか。それ自体が情報になる」


「分かりました」


 作ったのは俺だけど。


 どう使うかまで全部知る必要はない。


「少なくとも、王国内の連絡を早めるためには使う」


 宰相が続ける。


「必要に応じて、サハルやセルヴァンとの連携にも使うことになるだろう」


「はい」


 それ以上は聞かなかった。


 ◇


「共鳴石は分かった」


 国王が言う。


「硬化石はどうなっている?」


「道路については、試験段階から先へ進んでいます」


「もう使っているのか?」


「はい。一部ですが」


「荷馬車が通りにくい場所から優先して、実際に敷き始めています」


「問題は?」


「今のところ大きなものはありません。ただ、硬化石だけに頼らないようにしています」


「どういうことだ?」


「その下の地盤や排水が悪ければ、表面だけ硬くしても道は傷むので」


 トラウゼン領から来てもらっている道路職人にも協力してもらっている。


「前に見せた試作品から、実際の道路を造る段階に入ったということか」


「はい」


「建物などへの利用は?」


「まだです。道路と同じ配合でいいとは限らないので、そっちは別に調べています」


「分かった」


 国王が地図を見る。


「今の段階では、おまえの領に兵を出すよう求める予定はない」


「はい」


「だが、共鳴石通信機と硬化石については、今後さらに協力を求める可能性がある」


「分かりました」


 通信機。


 硬化石。


 どちらも戦争のために作ったものじゃない。


 少しだけ引っかかる。


 でも、連絡が早ければ危険を早く知らせられる。


 道が良ければ、物資を早く運べる。


 怪我をした人を運ぶ時にも役に立つ。


 戦争にならないのが一番いい。


 それでも起きるなら国を守るために使うしかない。


「できる限り協力します」


「ああ。頼む」


 ◇


 話が一段落したところで、宰相が口を開いた。


「ハル男爵」


「はい?」


「もう一つ話がある」


「何でしょう?」


「ローレン、ケーラ、アストンについてだ」


「三人?」


「ああ」


 思わず扉の方を見る。


 その向こうにはアストンがいる。


「三人から、今後について希望が届いている」


「今後?」


「今後もハル領で働きたいそうだ」


「……え?」


 一瞬、意味が分からなかった。


「三人ともですか?」


「そうだ」


 国王が俺を見る。


「私も、本人たちの意思を優先したいと思っている」


「陛下も?」


「ああ」


 ローレン。


 ケーラ。


 アストン。


 三人とも、王宮から来てもらった人だ。


 いつか戻る。


 どこかでそう思っていた。


「私も同じ考えです」


 宰相が続ける。


「ただし、こちらだけで決める話ではありません」


「はい」


「戻ったら三人と話してみるとよいでしょう」


「分かりました」


 思っていた以上に嬉しかった。


 ◇


 執務室を出る。


 扉の外には、アストンが待っていた。


「男爵様」


「待たせたね」


「いえ」


「では、戻りましょうか」


「うん」


 歩き始める。


 隣にいるアストンを見る。


「男爵様?」


「何?」


「先ほどから、こちらを見ておられますが」


「……そう?」


「はい」


 知らないのかな。


 それとも俺に話すつもりだったのかな。


「アストン」


「はい」


「帰ったら、ちょっと話そう」


 アストンが一度だけ瞬きをした。


「承知しました」


 それ以上は聞かない。


 いつも通り、俺の横を歩いている。


 その姿を見ながら早く三人と話したいと思った。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

アストンですが、当初の名前はアストナージでした。

プロットを書いてて「長いな」と思ってアストンに変更しました。

ローレンは散歩しながらキャラ設定を考えているとき、目の前にローソンがあったのでローレンにしました。

ケーラは……想像にお任せします。

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仲間が増えるお祝いにとっておきのサラダ作らなきゃ
サラダが、死亡フラグになるやつ。
逆襲のシャア
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