第571話 集まる仲間
お手すきの際に是非!
《剣聖》になった弟に家を追い出された俺のスキルは《会員》でした
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「じゃあ、すぐ書くよ」
俺は席を立った。
「僕も書こう」
エドガーも続く。
「私もね」
セレナも立ち上がった。
王都へ使者を出すなら、少しでも早い方がいい。
◇
執務室へ移動し、それぞれ手紙を書く。
俺はヴァレスト公爵へ。
エドガーは国王陛下と宰相へ。
セレナも父親への手紙を書いている。
隣を見ると、ミラまで紙を広げていた。
「ミラも?」
「うん。お父様に」
「そっか」
「いきなり二人で行くより、先に知らせておいた方がいいでしょ?」
「確かに」
俺も手元の紙へ視線を戻す。
ヴァレスト公爵への手紙は、それほど長くしなかった。
ノア山脈で複数の資源を発見したこと。
王家の許可をとった後、大規模な開発事業を考えていること。
資金援助ではなく、事業への出資について相談したいこと。
王都にいる間に時間をもらえないか。
それだけを書いた。
「できた」
顔を上げる。
「僕もだ」
「私も」
エドガーとセレナもほぼ同時だった。
「早いね」
「リオンに言われたくないよ」
「そう?」
少し遅れてミラも手紙を書き終えた。
「私もできた」
「何て書いたの?」
「リオンと一緒に帰るって」
「それだけ?」
「ちゃんと大事な相談があるとも書いたよ」
「そっか」
ミラから手紙を受け取る。
「これはローレンに渡して、ハーウェイ領へ届けてもらおう」
「お願い」
「うん」
その後、王都へ送る手紙をエドガーがまとめ、護衛の一人を呼んだ。
「王都まで頼む」
「はっ」
「王宮へこれを。それから、ヴァレスト公爵へ二通届けてほしい」
「承知しました」
「できるだけ早く頼む。ただ、無理はするな」
「はっ」
使者が手紙を受け取り、部屋を出ていった。
「どれくらいで戻ってくる?」
「王都へ行って戻るだけなら、早馬で二日くらいだ」
「そんなに早いんだ」
「今回は返事を待つから、もっと掛かるよ」
エドガーが答える。
「父上と宰相の予定を確認して、ヴァレスト公爵からも返書をもらう。すべて戻ってくるまで四日か五日は見ておいた方がいい」
「そっか」
その間にできることはある。
「リオン」
「何?」
「それなら、山を見せてもらってもいいか?」
「ビダン山とアーシタ山?」
「ああ。父上へ報告するなら、僕自身も見ておきたい」
「もちろん」
すぐ答えたものの、一つ気になった。
「でも、東側は大丈夫?」
「うん?」
「何日もこっちにいて」
「ああ」
エドガーが笑った。
「今は調査結果を待ってるところなんだ」
「人口とか税とか?」
「それもだね。耕作地や道路、橋、水路も調べてもらってる。僕がずっとそこにいても、早く終わるわけじゃないから」
「そっか」
「それに、僕がいなくても判断できる文官を何人か残してあるよ。数日なら問題ない」
すると、ヴィクトルが笑った。
「その点じゃ、エドガーの方がリオンより優秀な領主だな」
「え?」
「人に任せられるところだよ」
「俺だって任せてるよ」
「山も湿原も政務所も、自分で見に行ってるだろ?」
「必要だからだよ」
「ほら」
「何が?」
ミラまで笑っている。
「最近は前より任せられるようになったけどね」
「前より?」
「うん」
もう少し評価してほしい。
「山ですか……」
ナディアが小さく呟いた。
興味がありそうだ。
「ナディアも行く?」
「私もですか?」
「うん」
ナディアはすぐには頷かなかった。
「ですが、よろしいのですか?」
「何が?」
「共鳴石に硬化石、それに銅まで見つかった場所ですよね」
「うん」
「今後、アルスレイン王国にとって重要な場所になるのではありませんか?」
「ああ」
「私はセルヴァン王国の人間です。簡単に見せてよい場所ではないと思います」
そういうことか。
「今はまだ、ただの山だから大丈夫だよ」
「ただの山……ですか?」
「うん。鉱山として認められたわけでもないし、採掘方法も決まってない」
「ですが、共鳴石は」
「軍事利用に関わる仕組みまでは見せないよ」
「……」
「それにナディアには、レイ湿原の米作りで助けてもらってるからね」
ナディアが少し考える。
「でしたら、ご一緒させてください」
「もちろん」
「私も行くよ」
ミラが言う。
「うん」
「私もよ」
セレナまで続いた。
「ここまで聞いて、山だけ見ないで帰れっていう方が無理でしょ?」
「それもそうだね」
ヴィクトルは言うまでもない。
人数がかなり増えてきた。
「ちょっと待ってて」
「どこ行くの?」
「ルッツのところ」
◇
政務所の一角にあるルッツの作業部屋へ入る。
「ルッツ」
「ん?」
机の上には共鳴石や金属部品が並んでいた。
「今から南に行くんだけど、通信機を二つ借りていい?」
「ええ、どうぞ」
「新しいのある?」
「ありますよ、ちょっと待ってくださいね」
ルッツが奥から二つの木箱を持ってきた。
前の試作品より少し小さい。
「もう変えたの?」
「使いにくいところがありましたから」
「早いね」
「試作品なので、どんどん改善してるんですよ」
「そっか」
最新の試作機を二つ受け取る。
読み取り用の表も一枚もらった。
「片方は政務所に置いていく」
「ええ。また山から使ってみて下さい」
「そのつもり」
「不具合があったら教えてください」
「分かった」
「ピー!」
足元から声がした。
「ピコ?」
「ピー!」
いつの間にかついてきている。
「ピコも行く?」
「ピー!」
「じゃあ行こうか」
「ピー!」
◇
そのままローレンのところへ向かった。
「ローレン」
「はい」
机の上に通信機を置く。
「ルッツが作った最新の試作機」
「ああ、もう新しいものができたのですね」
「うん」
「前より小さくなりましたね」
「使いやすくしたみたい」
読み取り表も渡す。
「これも置いておくね」
「ありがとうございます」
「俺たちはこれから南へ行く。急ぎのことがあったら、これで連絡して」
「承知しました」
「こっちも一台持っていくから」
「では、こちらでもいつでも確認できるようにしておきます」
「お願い」
これなら領都を離れていても、緊急の連絡を受けられる。
まだ試作品だけど、実際に使わないと分からないこともある。
◇
屋敷の前へ戻った。
思っていた以上の人数になっている。
エドガーとセレナ、それぞれの護衛と侍女。
ナディアにも同じように護衛と侍女がいる。
ミラ。
ヴィクトル。
アストン。
テオ。
「ピー!」
ピコもいる。
本当なら転移したい。
でも、転移魔法を必要以上の人間に見せるつもりはない。
それに、これほど大勢を一度に転移させた経験もなかった。
できるからといって、いきなり試す必要もない。
今回は普通に向かおう。
「じゃあ――」
出発しようとした時だった。
「男爵様!」
門の方から使用人が走ってきた。
「どうしたの?」
「ベイルン家の方々がお越しです!」
「え?」
門の向こうを見る。
馬車。
騎士。
かなりの人数だ。
そして、その先頭にいる大きな男。
「リオーーーン!」
「ガイル!」
思わず声が出た。
「来たぞ!」
ガイルが大きく手を振る。
後ろには騎士たちが続いていた。
「早かったね!」
「おう!」
ガイルが馬から降りる。
「ナディアから手紙来た?」
「来たぞ!」
「何て?」
「お前が困ってるって!」
「ははは……そこ強調されてた?」
「されてた!」
ナディアを見る。
「ナディア」
「人手が足りないのは事実でしたので」
「まあ、そうだけど」
「それでリオン!」
「何?」
「何をすればいい!」
「もう?」
「そのために来たんだろ!」
相変わらずだ。
でも、ありがたい。
「ありがとう」
「気にするな!」
その時だった。
「キュ?」
「……ん?」
ガイルの肩から、小さな顔が覗いた。
緑色。
見たことのない生き物。
「ガイル」
「何だ?」
「それ、何?」
「ナッシュだ!」
「名前じゃなくて」
「キュ!」
ナッシュと呼ばれた生き物が鳴く。
「ちょっと待って」
セレナが目を細めた。
「それ……ドラゴンじゃない?」
「ああ!」
「……」
セレナが固まる。
エドガーとヴィクトルもガイルの肩を凝視していた。
「ドラゴンなの?」
エドガーが聞く。
「そうだ!」
「キュウ!」
「どうしてガイルがドラゴンを連れてるんだ?」
ヴィクトルが聞く。
「グリーンドラゴンに頼まれた!」
「……」
「……」
「……」
三人が黙った。
俺もよく分からない。
「ガイル」
「何だ?」
「どういうこと?」
「色々あった!」
「説明になってないよ」
「そのうち話す!」
「そっか」
まあ、ガイルだし。
「ガイルさん」
ナディアが前へ出た。
「お久しぶりです」
「おお! ナディア!」
「その子はガイルさんの従魔ですか?」
「そうだ! ナッシュだ!」
「キュ?」
ナディアが顔を覗き込む。
「可愛いですね」
そっと手を差し出す。
ナッシュがその指へ鼻先を近づけた。
「キュ……」
ナディアが優しく頭を撫でる。
「キュウ」
「嫌がりませんね」
「ナッシュもナディアが好きみたいだな!」
「そうでしょうか?」
ナディアが微笑む。
もう一度撫でると、ナッシュも大人しくしていた。
気に入ったみたいだ。
「それでリオン!」
「うん?」
「俺たちは何をやればいい?」
「まず、家を作るのを手伝ってほしい」
「家?」
「南にレイ湿原があるのは知ってる?」
「ああ!」
「その湿原とノア山脈の間に広い平地があるんだ」
南に見える山を指す。
「あの辺り」
「あそこか!」
「うん。将来、人が住める町にしたい」
「分かった!」
「まだ終わってないよ」
「続けろ!」
「まず土地を整えてほしい。木を切って、根を抜いて、建物を建てられる状態にする」
「おう!」
「それと資材運び。長屋を建てる時の力仕事もお願いしたい」
「任せろ!」
ガイルが後ろを振り返る。
「コディ! ハガー! できるよな!」
「整地、伐採、資材運搬であれば問題ありません」
コディが答える。
「建物も問題ありません」
ハガーも頷く。
「俺たちは力仕事をやればいいんだろ?」
「うん。本当に助かるよ」
「道路はどうする?」
ガイルが聞いた。
「それは後」
「後?」
「作るつもりだけど、今は人が住める場所を先に作りたい」
「分かった!」
本当に話が早い。
ふと周囲を見る。
……多い。
ミラ。
ナディア。
ヴィクトル。
エドガー。
セレナ。
ガイル。
それぞれの護衛や侍女。
ベイルン騎士団。
アストン。
テオ。
ピコ。
そしてナッシュ。
「すごい人数になったね」
思わず言う。
「リオンのところに集まったんでしょ?」
ミラが言った。
セレナが周囲を見る。
「なんだか懐かしい顔ぶれね」
「確かにな」
ヴィクトルも笑った。
「まだ卒業して何カ月も経ってないけどね」
「ああ、そうだな」
エドガーが頷く。
「それぞれ別のところに行ったはずなのにね」
「何の話だ?」
ガイルが聞く。
「ガイルは気にしなくていいよ」
「なんでだ!」
「なんとなく」
「気になるぞ!」
皆、相変わらずだな。
「じゃあ行こうか」
「おう!」
「ピー!」
「キュウ!」
ガイルにピコとナッシュまで続く。
それぞれ馬や馬車へ乗り込む。
ずいぶん賑やかな一行になった。
俺たちはノア山脈とレイ湿原の間にある平地を目指し、南へ向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ついにガイルも来ました。このメンバーが揃うのは約30話ぶりくらいですかね。
ナッシュについて気になる方は「《剣聖》になった弟に家を追い出された俺のスキルは《会員》でした」をご覧ください。




