↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第21章 リオン・ハル男爵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
588/680

第565話 作りたい人

お手すきの際に是非!

《剣聖》になった弟に家を追い出された俺のスキルは《会員》でした

(https://ncode.syosetu.com/n6087ms/)からご覧いただけます。

「これは……!?」


 ランタンを近づける。


 黒っぽい岩の中に、黄色っぽく光る部分が混じっていた。


 ところどころ、表面が緑色に変わっている。


「何か分かるのですか?」


 テオが聞く。


「いや。分からない」


「分からないのですか?」


「うん。俺、鉱石には詳しくないから」


 金属っぽくは見える。


 でも、それだけだ。


 前世でも鉱物なんてほとんど知らなかった。


「何かに使えるといいけどね」


 周囲を少し削り、崩れた岩を拾う。


「持ち帰られるのですか?」


「うん。いずれ詳しい人に見てもらおう」


 亜空間収納へ入れる。


 ただ、気になることがあった。


「これ、ここだけなのかな」


「ほかも掘られるのですか?」


「安全そうな場所を、あと何か所かだけ見てみたい」


 一か所だけなら、小さな塊が偶然ここにあっただけかもしれない。


 でも、別の場所でも出るなら話が変わる。


 ◇


 一度外へ出て、山肌を移動した。


 少し離れた場所で、アストンが周囲を確認する。


「ここなら比較的安全かと」


「じゃあ、少しだけ掘ろう」


 今度はテオが見張りに立ち、俺とアストンで掘る。


 身体強化を使って土を出し、岩が増えてきたところでつるはしへ持ち替えた。


 しばらくして。


「……あった」


 黒っぽい岩の中に、同じような黄色い部分が見える。


「先ほどと似ていますね」


「うん」


 少しだけ採って、また亜空間収納へ入れる。


 さらに別の場所へ移動した。


「もう一か所だけね」


「先ほども、そのようなことをおっしゃっていたような」


「そうだっけ?」


「はい」


 アストンの返事が早い。


 三か所目は、俺とテオで掘った。


「リオン様」


「何?」


「やはり速すぎます」


「何が?」


「掘る速度です」


「身体強化してるからね」


「それは分かっておりますが……」


 テオも横で土を運ぶ。


 少しずつ岩盤が露出してきた。


 ランタンを近づける。


「……まただ」


 三か所目にも、同じような層があった。


 テオがしゃがみ込む。


「かなり広い範囲にあるのでしょうか」


「まだ分からないよ」


 三か所掘っただけで埋蔵量なんて判断できない。


 ただ。


「少なくとも、小さな石が一個だけ埋まってたって感じじゃなさそうだね」


「はい」


 アストンも頷く。


「離れた三か所で確認できております」


「ここから先は専門家に任せよう」


「もう掘られないのですか?」


「俺たちは素人だからね。これ以上は危ない」


 鉱物の種類。


 どこまで広がっているのか。


 どれくらい採れるのか。


 全部、ちゃんと調べてもらった方がいい。


「試料だけ持って帰ろう」


「承知しました」


 ◇


 山を出るまでに、また魔物が現れた。


 しかも、この日は一度だけじゃなかった。


 午前中だけで三度。


 しかも、どれも昨日までに見た魔物より手強い。


 この山は、魔物の数だけでなく強さも違うようだ。


「また来ます!」


 テオが剣を抜く。


「ピー!」


 最後に出てきたのは、大きな牙を持った魔物が二体だった。


 アストンが一体。


 テオがもう一体へ向かう。


 俺も剣へ手を掛けたが、二人とも押されてはいない。


 特にアストンは相変わらずだった。


 最小限の動きで攻撃をかわし、確実に傷を増やしていく。


 ほどなく一体が倒れた。


「ピー!」


「あっ」


 止めるより早かった。


 ピコが大きく口を開ける。


 倒れた魔物が一瞬で消えた。


「……」


 テオの動きが止まる。


「前!」


「は、はい!」


 もう一体の攻撃をかわし、テオが剣を振る。


 最後はアストンも加わり、二体目も倒れた。


「ふう……」


 テオが息を吐く。


「大丈夫?」


「はい。それより……」


 ピコを見る。


「今の魔物は?」


「ピコが食べた」


「食べた?」


「うん」


「丸ごと?」


「丸ごと」


「ピー!」


 ピコが得意そうに鳴く。


「……そうですか」


「慣れるよ」


「本日、その言葉を何度も聞いている気がします」


 確かに。


 ピコが二体目へ近づく。


「待って」


「ピー?」


 倒れた魔物を見る。


 大きな牙。


 厚い皮。


「これ、売れないのかな」


「魔物をですか?」


「うん。冒険者って、倒した魔物の素材を売るよね?俺はそんなにやらなかったけど」


「種類によっては、牙や皮などが売れるはずです」


 アストンが答える。


「やっぱり?」


 この山は、思っていた以上に強い魔物が多い。


 危険だ。


 でも、もし素材に価値があるなら。


 見方を変えれば、それもこの山の価値になる。


「今度、どれくらいで売れるのか調べよう」


「ピー!」


「これは食べないで」


「ピー……」


「そんな残念そうにしなくても」


 二体目は亜空間収納へ入れた。


 テオがまた目を丸くする。


「魔物まで入るのですか?」


「入るよ」


「……」


「何?」


「リオン様は、私が知らないことをあといくつ隠しておられるのでしょうか」


「そんなにないと思うけど」


 アストンが俺を見る。


「男爵様」


「何?」


「その回答には同意いたしかねます」


「アストンまで?」


「ピー!」


 ピコまで鳴いた。


 ◇


 昼を少し過ぎた頃、三頭の馬と一緒に屋敷へ戻った。


 俺もアストンもテオも泥だらけだ。


「……何してきたの?」


 ミラが俺たちを見る。


「山を掘ってきた」


「それは見れば分かるよ」


「結構掘ったからね」


 テオを見ると、服だけじゃなく顔にも少し泥がついている。


「テオ、大丈夫?」


「はい。ただ……」


「ただ?」


「昨日から、知らなかったことを知りすぎている気がします」


「まだ昼だよ」


「それを聞いて余計に疲れました」


 ミラが笑った。


「とりあえず三人とも着替えてきたら?」


「そうする」


 ◇


 着替えたあと、ミラと昼食を取った。


「それで、今日は何か見つかったの?」


「うん。見つかった」


「本当?」


「でも、何なのか分からない」


「分からないんだ」


「うん」


 亜空間収納から、小さな欠片を取り出す。


 ミラが覗き込む。


「変わった色だね」


「離れた三か所を掘って、全部似たものが出た」


「三か所?」


「うん」


「じゃあ、たくさんある可能性もある?」


「あると思う。でも、そこは専門家に見てもらわないとね」


「そっか」


 ミラが石を見る。


「価値があるものだといいね」


「本当にね」


「期待してる?」


「……まあね」


「やっぱり」


 ミラが笑う。


「また目がキラキラしてる」


「まだ何か分からないよ?」


「それでも楽しいんでしょ?」


「うん」


 魔物についても話した。


「ピコ、また食べたの?」


「一体だけね」


「ピー!」


「自慢しなくていいから」


「でも、売れるなら魔物もお金になるかもしれないね」


「俺もそう思ってる」


 鉱物。


 魔物。


 この山には、まだ分かっていない価値がいくつもあるのかもしれない。


 ◇


 昼食を終え、ミラと政務所へ向かった。


 建物へ近づくと、昨日までとは違う光景が見えた。


 建物の脇で、何人かが草を刈っている。


「あ」


 昨日ミアが提案した仕事だ。


「もう始まったんだ」


「はい」


 一緒に来ていたミアが答える。


「ローレンさんが、すぐに募集してくださいました」


「何人くらい?」


「最初は三人でしたが、今日は八人になっています」


「増えたね」


「はい。働きたいという方は、ほかにもいらっしゃるそうです」


 政務所の裏へ回ると、別の二人が古い木箱を運んでいた。


「これも?」


「はい。倉庫の整理です」


「なるほど」


 草刈り。


 清掃。


 荷物運び。


 落ち葉や植物くずの回収。


 特別な技能がなくてもできる仕事は、思っていた以上に多い。


「屋敷でもお願いできそうだね」


「私もそう思っています」


 ミアが答える。


「毎日人を雇う必要はありませんが、掃除する場所が多い日や、大きな荷物が届いた時だけお願いすることはできるかと」


「ああ。それならいいね」


 今の屋敷に、以前のような人数のメイドや使用人を常勤で置く余裕はない。


 でも、必要な仕事まで放置するわけにもいかない。


 必要な時に、必要な仕事だけお願いする。


 働いた分の日当を払う。


 その形なら、常勤の使用人を何人も抱えるより支出をかなり抑えられる。


 働く側にも収入になる。


「政務所でも増やせそうだね」


「書類そのものを扱っていただくのは難しいと思いますが、清掃や荷物運びであれば」


「うん」


 俺は少し考える。


「じゃあ、屋敷でも試そう」


「はい」


「ただ、仕事が増えたからって日当を安くしすぎないようにね」


「もちろんです」


「働いた人にも、ちゃんと意味のある金額にしたい」


「ローレンさんと相談します」


「お願い」


 完璧な仕組みではない。


 でも、昨日は仕事がなかった人が、今日は働いている。


 まずはそれでいい。


「ミア」


「はい」


「いい案だったね」


「いえ」


 ミアが少し照れたように首を振る。


「まだ始まったばかりですから」


「それでもだよ」


 ◇


 政務所へ入る。


「男爵様」


 一人の文官がすぐに近づいてきた。


「何?」


「王都からお客様がいらしております」


「俺に?」


「はい。先ほど到着されました」


「誰だろう」


 案内された部屋へ向かう。


 扉を開ける。


 中にいた男を見て、思わず足を止めた。


「……ルッツさん?」


「お久しぶりです、リオン様」


「なんでここに?」


 王都のベルン金工房で、何度も一緒に暖房装置を試作した職人。


 ルッツだった。


 足元には荷物まで置いてある。


「王都から仕事で来たの?」


「いえ」


「じゃあ?」


 ルッツが少し頭をかく。


「工房を辞めてきました」


「……え?」


「ベルン金工房を辞めました」


「本当に?」


「はい」


「オスカーさんは?」


「きちんと話しました」


「止められなかった?」


「最初は止められました」


「だよね」


「でも、最後には『行ってこい』と言っていただきました」


「……なんで辞めたの?」


 ルッツが少し考える。


「もっと、新しいものを作りたくなったんです」


「新しいもの?」


「はい」


 ルッツが俺を見る。


「リオン様と暖房装置を作っていた時が、一番面白かったんです」


「……」


「考えて、作って、失敗して、原因を探して、また作る」


 ルッツが少し笑う。


「王都へ戻ってからも、あの時のことを何度も思い出しました」


「それで?」


「リオン様がこちらの領主になられたと聞きました」


「うん」


「きっと、また変なものを作り始めるだろうと思いまして」


「変なもの?」


「今までにないもの、です」


「言い直したね」


「はい」


 悪びれもしない。


「それで、ここで働きたいと?」


「はい」


 昨日の夜。


 ちょうど考えていた。


 こういうものが得意な人がいたらいいのに、と。


「……すごいタイミングだな」


「何がですか?」


「見てほしいものがある」


「もうですか?」


「うん」


 急ぎの書類がないことをミアとローレンに確認してから、ルッツを屋敷へ連れていった。


 ◇


 屋敷へ戻り、まず裏庭へ向かった。


「これ」


「何でしょう?」


「硬化石」


 昨日作った四種類の試験片を見せる。


「この灰色の石を粉にして、土とか砂、小石と水を混ぜた」


 ルッツがしゃがみ込む。


 表面を指でなぞる。


 軽く叩く。


「配合は覚えていますか?」


「記録してある」


「見せてください」


「はい」


 紙を渡す。


 ルッツの目が一気に真剣になった。


「固まるまでの時間は?」


「まだちゃんと測ってない」


「水を掛けたのは?」


「少しだけ」


「完全に水へ浸したものは?」


「まだ」


「どのくらいの重さまで載せました?」


「まだ重い石を一つ載せたくらい」


「なるほど」


 もう考え始めている。


「これ、私にもう一度作らせていただいてもよろしいですか?」


「もちろん」


「配合をもっと細かく分けたいです。硬化する時間も測りたい」


「俺もやりたかった」


「でしたら一緒に記録しましょう」


「うん」


 ミラが少し離れたところから俺たちを見ている。


「まだあるよ」


「まだあるのですか?」


「うん」


 共鳴石を二つ取り出す。


「片方に触ってみて」


 ルッツが指を伸ばす。


 ふわっ。


 二つとも光った。


「……」


 もう一度触る。


 今度は少し長く。


 やはり二つとも同じように光る。


「これは……」


「元は一つの結晶なんだ」


「割ったのですか?」


「うん」


「離しても?」


「ノア山脈から屋敷までは確認した」


「山脈って、あの遠くの山からですか?」


 ルッツが窓の外のノア山脈を指さす。


「うん」


 ルッツの表情が変わる。


「それでね。短く光らせるのと、長く光らせるのを組み合わせる」


「組み合わせる?」


「例えば、短い光と長い光の並びごとに文字を決めるんだ」


 紙に書いた信号表を見せる。


「これを使えば、離れた場所へ文字を送れる」


「……」


「昨日、俺はノア山脈にいて、ミラは屋敷にいた。それでも文章を送れた」


「本当にですか?」


「うん」


 ルッツが共鳴石を見る。


「これが使えるようになったら、今までみたいに人が手紙を運ばなくても情報を送れる」


「……」


「村で火事が起きた。魔物が出た。川が氾濫した。そういう時も、すぐ領都へ知らせられる」


「はい」


「商人なら、品物の値段や在庫を遠くへ伝えられる。政務所同士でも使える。

 国境に置けば、敵が動いた時にもすぐ王都へ知らせられる」


 ルッツがゆっくり顔を上げる。


「それは……国の仕組みそのものが変わりますね」


「俺もそう思ってる」


 だからこそ、問題もある。


「でも、このままじゃ使えない」


「なぜですか?」


「同じ結晶から三つに割って、その一つを知らない人が持ってたら、俺たちの信号も全部見える」


「……盗み見られる?」


「うん。それどころか、その人が石に触れば偽物の信号も送れる」


「それは危険ですね」


「それに、通信先が増えたら、どの石がどことつながっているのか分からなくなる」


 ルッツが頷く。


「今は指で直接触ってるけど、短く触ったつもりが長くなったら文字まで変わる」


「使う人によって差も出ますね」


「そう。だから、誰が使ってもなるべく同じように信号を送れて、どの石がどことつながっているかすぐ分かる道具が欲しい」


「なるほど……」


 ルッツが二つの石を見比べる。


「でしたら」


「うん?」


「まず、石ごとに番号を付けましょう」


「番号?」


「はい。王都につながる石、ハル領につながる石というように番号を決めて、一つの箱に並べます」


「それいいね」


「それから、直接指で触らなくても済むようにできないか試してみます」


「できそう?」


「まだ分かりません」


 ルッツが笑う。


「だから、作ってみたいです」


「……」


 やっぱり。


 ルッツが来てくれたのはこの領にとって凄く大きい。


 そして最後。


「もう一つある」


「まだ?」


「今日見つけた」


 山から持ち帰った岩を出す。


 ルッツが受け取り、しばらく黙って眺める。


 表面を削る。


 黄色っぽい部分を見る。


 緑色に変色したところも確認する。


「リオン様」


「何?」


「これはどこで?」


「ノア山脈」


「量はどれくらいありましたか?」


「持ってきたのはほんの少しだよ。でもね、離れた三か所を掘ったけど、全部似たものが出てきたんだ」


「三か所……」


「何か分かる?」


「断定はできません」


 ルッツが岩をよく見る。


「ですが、工房で扱ってきたものに似ています」


「何に?」


「銅を含んだ鉱石です」


「銅?」


「おそらく、ですが」


 もう一度石を見る。


「私は鉱山の専門家ではありません。正式には、詳しい方に調べていただいた方がいいと思います」


「うん。そのつもり」


 銅。


 もし本当にそうなら。


 しかも、あの山の広い範囲にあるとしたら。


「……」


「リオン」


 横にいたミラが声をかけてくる。


「何?」


「また何か考えてるね」


「ちょっとだけ」


「ちょっとじゃなさそうだよ」


 その時。


「リオン様」


 ルッツが声を掛ける。


「何?」


「お願いがあります」


「お願い?」


 ルッツが硬化石と共鳴石を見る。


「この二つの試作、私に任せていただけませんか?」


「もちろん」


「本当ですか?」


「むしろ俺からお願いしたかった」


 ちょうど欲しかった。


 考えたものを形にできる人。


「硬化石は、配合を変えて強度を見る」


「はい」


「水に浸した時と、乾いた時も比べたい」


「分かりました」


「共鳴石は、まず操作するための簡単な道具を作りたい」


「やってみます」


「でも」


「はい?」


「今日は着いたばかりでしょ?」


「はい」


「明日からでいいよ」


「いえ」


 返事が早い。


「今から始めたいです」


「今から?」


「はい」


「王都から来たばかりだよね?」


「大丈夫です」


「疲れてない?」


「共鳴石が気になります」


「……」


 分かる。


 ものすごく分かる。


「リオン」


 ミラが笑顔で俺を見る。


「何?」


「同じ顔してるよ」


「誰と?」


「ルッツさんと」


「そう?」


 ルッツまで頷く。


 ◇


「テオ」


「はい?」


 少し離れたところにいたテオを呼ぶ。


「悪いけど、今日はルッツさんの実験を手伝ってくれる?」


「私がですか?」


「うん。重いものを運んだり、必要な物を用意したり」


「承知しました」


「共鳴石のことはまだ秘密だからね」


「……」


「どうしたの?」


「ここ二日ほどで、秘密にしなければならないことが増えすぎております」


「ごめん」


「いえ。もう驚かないよう努力いたします」


「それは無理だと思うぞ」


 アストンが横から言った。


「アストン殿まで……」


 ルッツがテオへ頭を下げる。


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


「今日は手伝いだけでいいからね。騎士団の仕事もあるし」


「はい」


 これでいい。


「あ、そうだ」


 ルッツを見る。


「住むところは?」


「まだ決めていません」


「え?」


「今日着いたばかりですので、これから宿を探そうかと」


「荷物まで持ってきてるのに?」


「はい」


 それなら。


「ケーラ」


「はい、男爵様」


「一人増えても大丈夫?」


「ルッツ様でしょうか」


「うん」


 ケーラは少し考えただけで答えた。


「問題ございません。空いている部屋はいくつもございます」


「本当?」


「はい」


 そうだった。


 この屋敷は大きい。


 来たばかりの頃は、その広さが嫌だった。


 掃除が大変。


 維持にも金が掛かる。


 使わない部屋ばかり。


 でも。


「この屋敷、大きくてよかったって初めて思った」


「それは何よりでございます」


「ルッツさん、屋敷に住む?」


「よろしいのですか?」


「もちろん。仕事をしてもらうなら、給料とか条件もちゃんと決めよう」


「ありがとうございます」


「今日は部屋だけ用意してもらおう」


「承知しました」


 ケーラが頭を下げる。


 これで住む場所も決まった。


「では」


 ルッツが共鳴石を持ち上げる。


「何?」


「作業を始めてもよろしいでしょうか」


「もう?」


「はい」


「本当に好きだね」


 ルッツが少し笑った。


「リオン様に言われたくありません」


「え?」


「やっぱり似てる」


 ミラが笑う。


「そんなに?」


「うん」


「ピー!」


 ルッツはすでに共鳴石を眺めながら、何を作るか考え始めている。


 昨日までは作りたいものがあっても、それを形にできる人がいなかった。


 でも今日、作りたい人が自分からやって来てくれた。


 これで俺は次の手を打てる。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

リオン領に新たな仲間ルッツが加わりました。ルッツの活躍、楽しみにしてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハル男爵領の 戦力がだんだんとやべーことになってる。。。
アイテムボックスや異空間収納が無いから、魔物の素材を持ち帰って販売することは無いって設定どこ行った。
ルッツといずれ仕事をするんじゃないかと思ってたら、なんと押し掛け女房みたいな事をして来るとはw想定外でしたよ~。魔獣の素材が取れそうだけど、この領地にギルドを作ってしまうのもありでは?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。