第540話 最後の結果発表
新連載スタート!
《剣聖》になった弟に家を追い出された俺のスキルは《会員》でした
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お手すきの際に是非!
翌朝。
五年Sクラスの教室には、すでに多くの生徒が集まっていた。
「結果が出たみたいだよ」
隣にいたミラが言う。
「うん」
今日発表されるのは、王立学院で受ける最後の試験結果だ。
人の間から掲示された成績表を見る。
1位 リオン・ハル 381点
1位 セレナ・ヴァレスト 381点
1位 フィーネ・ラウベル 381点
1位 エドガー・アルスレイン 381点
1位 ナディア・セルヴァン 381点
6位 ミラ・ハーウェイ 370点
7位 ヴィクトル・ローデン 363点
7位 クラウス・レインフォード 363点
9位 レティシア・オルブライト 360点
10位 ガイル・ベイルン 354点
「……え?」
もう一度、一番上から見る。
一位。
一位。
一位。
一位。
一位。
「一位が五人?」
「本当だ」
ヴィクトルも目を丸くしている。
周囲からも声が上がった。
「五人とも三百八十一点?」
「こんなことあるのか?」
「最後の試験で?」
自分が一位だったことより、五人が同じ点数だったことの方が驚いた。
「リオン、一位だね」
ミラが笑う。
「ミラも六位だね」
「うん。でも、一位が五人ってすごいね」
「俺も初めて見た」
セレナは腕を組みながら掲示板を見ていた。
「最後に同点とはね」
「セレナも一位だね」
「ええ」
いつも通り落ち着いているけど、少しだけ嬉しそうに見える。
その隣では、フィーネが掲示板を見たまま動かなくなっていた。
「フィーネ?」
「……え?」
「どうしたの?」
フィーネが自分の名前を指す。
「私……一位なんですか?」
「そう書いてあるね」
「本当に?」
「三百八十一点だよ」
フィーネがもう一度掲示板を見る。
「私が一位……」
まだ信じられないらしい。
「前回も二位だったんだから、おかしくないでしょ」
ミラが言う。
「そうですけど……一位は初めてなので」
フィーネが少し照れたように笑った。
「嬉しいです」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
「ただし、一位は五人いるけれどね」
セレナが言う。
「セレナさん」
「私もその一人よ」
二人が笑う。
「エドガーとナディアもだな」
ヴィクトルが言った。
ナディアも自分の名前を確認している。
「まさか、最後の試験で一位になれるとは思いませんでした」
「五人が同じ点になる方がすごいよな」
ガイルが言う。
エドガーは黙って掲示板を見ていた。
「エドガーも一位だね」
「ああ」
そして、ほんの少し口元を緩めた。
「フッ」
珍しい。
エドガーが成績を見て笑っている。
「嬉しそうだな」
ヴィクトルがすぐに気づく。
「最後の試験だからね。少しくらい喜んでもいいだろう」
「もちろん」
エドガーがもう一度掲示板を見る。
「それにしても、面白い結果になったね」
「俺もいるからな!」
ガイルが急に胸を張った。
「十位に」
「十位でも上位十人だ!」
「誰も違うとは言ってないよ」
「最後まで残ったぞ!」
五人同率一位より、自分が十位に入ったことの方が嬉しいらしい。
「ガイルさん」
「なんだ?」
「喜ぶのは、個人成績を確認してからにしましょう」
ナディアの一言で、ガイルの笑顔が固まった。
「……そうだった」
◇
教室へ入ると、しばらくしてアデライン先生が書類の束を持って入ってきた。
「席についてください」
ざわついていた教室が静かになる。
「すでに総合順位は確認したと思います。
今回は一位が五名という珍しい結果になりましたが、当然、同じ総合点でも各試験の点数は違います。
これから個人成績表を返しますので、それぞれ確認してください」
名前を呼ばれた生徒から前へ出る。
「リオン・ハル」
「はい」
成績表を受け取り、席へ戻った。
総合科目90点。
応用100点。
実技91点。
専門コース100点。
合計381点。
「応用、満点だったんだ」
隣からミラが覗き込む。
「専門コースも百点」
「本当だ」
研究発表はかなり評価してもらえたらしい。
「ミラは?」
「総合科目は九十八点」
「過去最高点じゃない?」
「うん。リオンと一緒に勉強したからね」
「教えてもらった俺は九十点なんだけど」
「そこは私が頑張ったから」
ミラが得意そうに笑う。
全員に成績表を配り終わると、アデライン先生が教室を見回した。
「これで五年三学期の試験はすべて終了です。そして今回の結果をもって、皆さん全員が卒業に必要な課程を修了しました」
教室が静かになった。
「卒業式は三日後です。それまでは王立学院の生徒です。最後まで自覚を持って過ごしてください」
「はい」
返事をしながら、改めて実感した。
もう試験はない。
王立学院で学ぶために必要な課程は、全部終わった。
入学した時には、卒業の日なんてずっと先だと思っていたのに、あと三日しかない。
◇
昼休み。
いつものメンバーで学食に集まり、それぞれの成績表を見せ合っていた。
「見ろ!」
ガイルが真っ先に自分の成績表を机の中央へ置く。
「百点が二つだ!」
総合科目75点。
応用79点。
実技100点。
専門コース100点。
「本当に二つ満点だ」
「だろ?」
ガイルが得意そうに胸を張る。
「学院最後の試験で百点二つだぞ!」
「はい。実技と専門コースは素晴らしいです」
ナディアが頷く。
「だろ?」
「ですが、総合科目は七十五点です」
「今は百点の話をしてるんだ!」
「応用は七十九点ですね」
「だから高い方を見ろ!」
みんなが笑う。
「でも」
ナディアが成績表をもう一度見る。
「総合科目も応用も、かなりの難問でした。よく頑張りましたね」
「そうなのか?」
「はい。かなり」
「じゃあ、俺も勉強できるようになった?」
「以前よりは」
「そこはもっと褒めてくれよ!」
文句を言っているけど、ガイルも嬉しそうだ。
「フィーネは?」
ヴィクトルが聞く。
「私は……」
フィーネが成績表を見せた。
総合科目100点。
応用100点。
実技81点。
専門コース100点。
「三つ百点?」
ミラが目を丸くした。
「はい」
「すごいな」
「でも、実技が八十一点でした」
フィーネが少し残念そうに言う。
「そこを気にするの?」
「もう少し実技で取れていたら、単独で一位だったかもしれませんから」
「フィーネは最後の最後で欲が出たな」
ヴィクトルが笑う。
「でも、実技も以前より上がっています。もう少しでした」
フィーネはそう言ってから、成績表を見て少し笑った。
「でも、入学した頃を考えれば、八十一点でも十分嬉しいです」
セレナは総合科目93点、応用95点、実技93点、専門コース100点。
エドガーは96点、97点、94点、94点。
ナディアは95点、95点、96点、95点だった。
「同じ三百八十一点なのに、本当に全然違うな」
ヴィクトルが五人の成績表を見比べる。
「リオンとセレナとフィーネは満点があるし、エドガーとナディアはほとんど穴がない」
「得意なところが違うってことだね」
ミラが言う。
「ああ」
エドガーが頷いた。
「得意なことが違う五人が、最後に同じ点になった。悪くない結果だと思うよ」
「王子っぽいこと言うな」
ヴィクトルが笑う。
「王子だからね」
エドガーが返した。
また笑いが起きる。
試験の話がひと段落したところで、ガイルが勢いよく立ち上がった。
「よし! 今日は久しぶりに思いっきり剣を振るぞ!」
「どこへ行くんですか?」
ナディアが聞く。
「訓練場だよ。昨日もまともに振ってないんだ!」
「駄目です」
「なんで!?」
「今日もダンスの練習です」
「今日は結果発表だぞ!」
「それとダンスに何の関係があるんですか?」
「気分の問題だ!」
「行きますよ」
ナディアがガイルの腕を掴む。
「待て!」
そのまま引っ張っていく。
「ナディア! 俺は今日は剣を振りたいんだ!」
「練習が終わってからにしてください」
「ちょっと待て! 意外と力強いな!」
ガイルが踏ん張っているのに、ナディアは止まらない。
ヴィクトルが感心したように二人を見る。
「ナディアって、意外と力あるよな」
「私、これでも魔法コースですよ?」
ミラが笑いながらこっちを向く。
「リオンも行くよ」
「……うん」
ガイルだけ置いて逃げるわけにもいかない。
◇
昨日と同じ広間で、二日目の練習が始まった。
「一、二、三。一、二、三」
クラウスの声に合わせて動く。
昨日よりは少し分かる。
最初の足運びなら、あまり考えなくても動けるようになってきた。
「今日はいい感じだね」
「本当?」
「昨日よりは」
「じゃあ、もう大丈夫?」
「全然」
「え!?こんなにできてるのに!」
「まだ向きを変えると怪しいでしょ」
「……うん」
隣ではガイルとナディアも練習している。
「今日は引っ張ってないぞ!」
「それはできて当然です」
「昨日より上達しただろ?」
「昨日よりは」
「もっと褒めてくれてもいいだろ!」
ガイルも俺と似たような評価らしい。
「リオン、今度は向きを変えるよ」
「うん」
ミラに合わせて動く。
右。
左。
向きを変える。
「こっち」
「分かった」
同じ頃、ガイルたちも方向を変えた。
次の瞬間、ナディアとミラが同時に声を上げた。
「危ない!」
「うわっ!」
「おっ!」
背中に強い衝撃がきた。
振り返る。
「ガイル?」
「リオン?」
思い切りぶつかったらしい。
「大丈夫?」
ミラがすぐに近づいてくる。
「俺は大丈夫」
「ガイルさんは?」
「これくらい平気だ」
ナディアもほっとしたように息を吐く。
「よかったです。でも、本番では気をつけてくださいね」
「本番?」
「舞踏会では、もっと多くの方が踊っています。
今のように周りを見ずに動いたら、誰かとぶつかりますよ」
「あ……」
今は二組しかいない。
本番では、この何倍もの人が同じ場所で踊る。
「足を見るな、相手を見ろ、周りも見ろ……」
俺が呟く。
「全部だ」
クラウスが言った。
「難しすぎない?」
「普通だ」
「そうなんだ……」
ヴィクトルが笑う。
「偉い人には平気で話せるのに、本当、ダンスになると急に弱くなるよな」
「それとこれとは別だよ」
「見てる方は面白いけどな」
「こっちは全然面白くないよ」
もう一度、最初からやり直す。
今度は足だけではなく、ミラを見て、周囲にも少し気を配る。
すると今度は足の順番が怪しくなる。
「リオン、反対」
「あ、ごめん」
「慌てなくていいよ」
「うん」
まだまだだ。
ガイルも周りを気にし始めたせいで、ナディアとの拍子がずれている。
「ガイルさん、私も見てください」
「周りも見ろって言われただろ!」
「周りだけを見るのではありません!」
「全部は無理だ!」
「慣れてください!」
結局、今日もかなりの時間を練習に使った。
昨日よりは進んだ。
俺は基本の足運びなら少しできるようになったし、ガイルもナディアを引っ張らなくなった。
でも、本番で普通に踊れるかと聞かれたら、まだ自信はない。
「明日もやるからね」
帰り際、ミラに言われた。
「やっぱり?」
「もちろん」
隣ではガイルもナディアから同じことを言われていた。
「明日は剣を振らせてくれ」
「練習が終わってからなら」
「先は?」
「駄目です!」
「ナディア、いつになく厳しいな……」
◇
夜。
男子寮へ戻ると、寮監に呼び止められた。
「リオン様。お手紙が届いておりますよ」
「俺に?」
「ええ。ハル領からです」
差し出された封筒には、見慣れたハル家の印が押されていた。
「ありがとうございます」
部屋へ戻り、机の前に座る。
「父上からだ」
「ピー?」
ピコが机の上へ飛び乗る。
封を切って手紙を開いた。
『リオンへ。
卒業式には私も参列する。
卒業式の二日前には王都へ入る予定だ。
そして卒業式の前日、王宮へ登城するよう命を受けている。
それとは別に、お前にも王宮から伝達があった。
卒業式の翌日、王宮へ来るようにとのことだ。私からお前へ伝えるよう命じられている。
私が呼ばれた理由も、お前が呼ばれた理由も聞かされていない。
詳しい話は王都でしよう。
ガルド・ハル』
「父上、卒業式に来てくれるんだ。母上も一緒かな」
そんなことを考えていると素直に嬉しかった。
卒業式の二日前ということは、明日には王都へ来る。
でも、その翌日には父上が王宮へ呼ばれている。
そして俺は、卒業式の翌日。
「なんで別々なんだろう」
「ピー?」
「父上と俺が、別の日に王宮へ呼ばれてるんだ」
同じ用件なら、一緒に呼んでもいいはずだ。
それをわざわざ別々の日にしている。
しかも、父上にも詳しい理由は知らされていない。
旧グレイヴ領のことが頭に浮かんだ。
あの領地をこれからどうするのか。
それがハル家にまったく関係ないとは思えない。
でも、それなら俺まで別の日に呼ばれる理由は何だろう。
考えてみても答えは出ない。
明日には父上が王都へ来る。まずは直接話を聞いてみよう。
試験も終わり、結果も出た。
あとは卒業式を迎えるだけだと思っていたけど、父上と俺が別々に王宮へ呼ばれていることだけは気になった。
卒業式まで、あと三日。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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