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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第20章 王立学院五年 三学期

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第536話 最後の期末試験

 翌朝、王立学院で受ける最後の期末試験が始まった。


 一日目は共通科目の筆記試験。


 教室へ入ると、いつもより静かだった。


 さすがに最後の試験だからか、みんな少し緊張している。


 俺も自分の席に座り、机の上に筆記用具だけを置いた。


「それでは、始めてください」


 アデライン先生の声で、一斉に問題用紙をめくる。


 最初の数問は問題ない。そのまま順番に解いていく。


「……あ」


 途中で見覚えのある内容が出てきた。


 地方貴族が税率を変更する場合の条件。


 少し前まで何度か間違えて、ミラと一緒に確認したところだ。


 今なら分かる。


 迷わず答えを書く。


 そのあとも、歴史や法制度でミラと一緒に勉強したところがいくつか出てきた。


 付き合ってもらってよかった。


 もちろん、全部が簡単だったわけじゃない。


少し迷う問題もあったけど、覚えている知識を整理しながら一つずつ答えていった。


 ◇


 試験が終わる頃には、かなり疲れていた。


「終わった……」


 教室を出ると、すぐ近くにミラが来た。


「どうだった?」


「たぶん大丈夫」


「本当?」


「ミラと勉強したところ、結構出たよ」


「よかった!」


 ミラが嬉しそうに笑う。


「じゃあ、教えた甲斐があったね」


「本当に助かった」


「明日もあるんだから、今日は早く休んだ方がいいよ」


「うん」


 そこへ少し離れた場所からガイルが歩いてきた。


 顔が暗い。


「どうしたの?」


「聞くな」


「そんなに?」


「聞くな!」


 その後ろからナディアが来る。


「ガイルさん、昨日確認したところはできましたよね?」


「そこはできた!」


「では大丈夫です」


「それ以外が問題なんだ!」


「明日の試験もありますから、今日も勉強しますよ」


「今日も!?」


「当然です」


 昨日まで王都武闘大会三位だった人とは思えない。


 思わず笑ってしまった。


 ◇


 二日目。


 午前は応用試験、午後は実技試験だった。


 一日目より考えなければならない問題が多く、簡単ではなかった。


 実技も完璧にできたとは思わない。


 それでも、今まで学んできたことを使って、一つずつ取り組んだ。


 結果がどうなるかは分からないけど、今の俺にできることは全部やったと思う。


 午後の実技試験を終えて教室を出る。


 これで二日目まで終了した。


 残るのは明日の研究コースの発表だけだ。


 少し緊張はある。


 でも、それ以上に楽しみだった。


 ◇


 放課後、研究室へ向かった。


 中へ入ると、すでにルッツが来ていた。


「お疲れさまです」


「ルッツさん。もう来てたんですね」


「ええ。先生から許可をいただいたので、先に場所を確認していました」


 研究室を見る。


 いつもと違うのは、隣の教室との壁に二か所、印がつけられていることだ。


 学院から許可をもらった、配管を通す位置。


「ここでいいんですよね?」


「はい。往きと戻りで二本です」


「では、始めましょう」


「お願いします」


 まずは隣の教室へ移動する。


 暖炉の前には、ルッツが工房から運んできた部品が並んでいた。


 暖炉の熱で水を温め、そこから配管へ流す。


 試験が終われば元に戻せるよう、必要な部分だけ手を加えていく。


「そこ、押さえてもらえますか?」


「はい」


 言われた場所を固定する。


 ルッツが金具を締めた。


「もう少し右ですね」


「このくらい?」


「そこで大丈夫です」


 暖炉側の準備ができたら、今度は壁だ。


 印をつけた位置を確認し、ルッツが工具を使う。


 俺も横で手伝いながら作業を進めた。


 やがて、隣の教室と研究室をつなぐ二つの穴が開く。


「通しますよ」


「はい」


 一本目の管を通す。


 続いて二本目。


 隣の教室から伸びた配管が、壁を越えて研究室へ姿を現した。


「おお……」


 分かっていたことなのに、実際に見ると少し嬉しい。


 研究室側へ戻り、今度は放熱部分を取り付ける。


「右側、少し高くないですか?」


「少し下げましょう」


「お願いします」


 位置を調整して固定する。


 もう片方も同じように取り付けた。


 何度か隣の教室と研究室を行き来しながら、接合部分を一つずつ確認していく。


 最後に水を入れる。


「漏れてませんか?」


「こっちは大丈夫です」


「こちらも問題ありません」


 今日は火を入れない。


 本当に動かすのは明日の試験だ。


 研究室へ戻り、完成した装置を見る。


 壁を隔てた隣の教室から二本の管が伸び、その先には二つの放熱部分がある。


 工房で何度も作ってきた装置とは、規模がまるで違う。


「ここまで来ましたね」


 ルッツが言った。


「はい」


 最初は、温めた水を管の中で循環させるだけでもうまくいかなかった。


 それが今は、実際の二つの教室を使って試せるところまで来た。


「明日は隣の暖炉で水を温めて、ここまで送るんですよね」


「はい」


「本当に暖まるといいですね」


「そこは少し不安です」


「不安なんですか?」


「工房では成功しましたけど、今度は壁を隔ててますから。配管も長いし、研究室も広いです」


 条件はかなり違う。


 明日になってみないと、本当にうまくいくかは分からない。


 それでも、目の前の装置を見ていると、不安より早く試したいという気持ちの方が大きかった。


「楽しそうですね」


 ルッツが笑う。


「そう見えます?」


「ええ」


 言われてみれば、そうなのかもしれない。


 明日、この装置に火を入れたらどうなるのか。


 自分でも早く見てみたい。


「ルッツさん、明日はよろしくお願いします」


「もちろんです」


 もう一度、研究室を見回す。


 準備はできた。


 明日は、今まで積み重ねてきた研究を実際の教室で試す。


 発表が楽しみだ。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
リオン以外のミラやビクトルの研究課題が何なのか気になるんだけど~発表はなし?
複雑なやつだと設置で詰むけどこれはどうなんだろ?
ヴィクトルも好きなんだけど、この頃ガイルが読んでて楽しい。 ナディアとのやりとりも好き。
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