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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第20章 王立学院五年 三学期

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第528話 十五歳の四強

新連載スタート!

《剣聖》になった弟に家を追い出された俺のスキルは《会員》でした

(https://ncode.syosetu.com/n6087ms/)からご覧いただけます。

お手すきの際に是非!

 選手用の待機場所へ戻ると、ガイルがすぐに近づいてきた。


「勝ったな!」


「うん。何とかね」


「見てたぞ! 最後、うまく入ったな!」


「リゼットさんが強かったから、かなり危なかったよ」


「次は俺だ!」


 ガイルが木の大剣を肩に担ぐ。


「分かってる?」


「何がだ?」


「相手、王宮騎士だよ」


「だから楽しみなんだろ!」


 ガイルらしい。


 第二回戦第二試合。


 ガイル・ベイルン。


 グレゴール・バイス。


 王立学院代表と王宮騎士。


 ガイルが通路へ向かう。


「じゃあ行ってくる!」


「頑張って」


「勝ってくる!」


 迷いがない。


 その背中を見送り、俺も選手用の観戦場所へ移動した。


 ◇


 ガイルとグレゴールが試合場の中央へ進む。


 二人で王族席へ向かって礼をして、それぞれの位置へ戻った。


 グレゴールは一回戦でも見た。


 派手じゃない。


 でも、相手の動きに付き合わず、自分の間合いを守る。


 王宮騎士らしい堅実な戦い方だった。


 対するガイルはいつも通り。


 大剣を両手で握り、早く始まらないかと待っている。


 審判が二人を見る。


「両者、準備は?」


「ああ」


「いつでも!」


「始め!」


 先に動いたのはガイルだった。


「行くぞ!」


 真正面から距離を詰め、大剣を横薙ぎに振る。


 グレゴールは受けない。


 後ろに下がり、剣先をかわす。


 大剣が空を切った直後、グレゴールの木剣がガイルの肩へ入った。


 バシッ!


「おっ!」


 当たった。


 でもガイルは止まらない。


 今度は斜め上から大剣を振り下ろす。


 グレゴールが木剣を合わせ、力を横へ流した。


 そのままガイルの脇へ回る。


 木剣が太腿へ。


「ぐっ!」


 また入った。


 上手い。


 ガイルの大剣を真正面から受けず、振り終わりだけを狙っている。


 ガイルが追う。


 グレゴールは下がりながら、時々踏み込んで一撃を入れる。


 肩。


 腕。


 脇腹。


 全部浅い。


 でも確実に当てている。


「ガイル……」


 さすがに少し心配になる。


 観客席からもざわめきが広がっていた。


「王宮騎士の方が上じゃないか?」


「学生じゃ厳しいだろ」


「さっきのリオンが特別だったのか?」


 そんな声も聞こえてくる。


 でも、ガイルを見る。


 表情は変わっていない。


 むしろ楽しそうだ。


「ははっ!」


 グレゴールの木剣を大剣で受け止める。


「さすが王宮騎士だな!」


「随分余裕だな」


「強いからな!」


「さすがはベイルン家の嫡男だな」


 二人の剣が離れる。


 ガイルが一歩前へ出た。


「これなら手加減しなくていいな!」


 グレゴールの表情が少し変わった。


「……随分なことを言ってくれる」


「行くぞ!」


 ガイルが踏み込む。


 今度はさっきまでより速い。


 横薙ぎ。


 グレゴールが受け流そうとする。


 でも。


「っ!」


 流し切れない。


 木剣ごと身体が横へ押され、吹き飛ばされる。


 すぐに体勢を戻す。


 そこをガイルが追う。


 大剣が勢いよく振り下ろされる。


 グレゴールさんがかわし、そのまま木剣を返した。


 肩へ入る。


 でもガイルは、その瞬間に身体をわずかにひねっていた。


 木剣を浅く受け、そのまま前へ出る。


「なっ!」


 深く入る攻撃は大剣で防ぐ。


 避け切れない攻撃は、身体をずらして浅く受ける。


 ただ力任せに突っ込んでいるわけじゃない。


 それでも前へ出ることだけはやめない。


 グレゴールが下がる。


 また木剣がガイルの腕へ入った。


 ガイルは止まらない。


 さらに一歩。


「……っ!」


 グレゴールの顔から、少しずつ余裕が消えていく。


 やっぱり無茶苦茶だ。


 でも、これがガイルだ。


 分かっていても止められない。


 ◇


「ほう」


 王族専用席。


 国王が試合場を見ていた。


「グレゴールもよく対応しているが、ベイルン家の少年は止まらんな」


「普通なら、あれだけ剣を当てられれば一度は距離を取りたくなるところです」


 アルフレッド第一王子が答える。


「それでも前へ出るか」


「はい。それに、ただ無理に進んでいるわけでもありません。

深く入る攻撃だけはきちんと防いでいます」


「十五歳だったな?」


「はい」


 国王が少し目を細めた。


「王立学院は随分と面白い生徒を二人も出してきたものだ」


 その横では、エドガーとセレナが特に驚いた様子もなく試合を見ている。


 アルフレッドが二人を見る。


「随分落ち着いているな」


「ガイルなら、このくらいはやると思っていましたから」


 エドガーが答える。


「ええ」


 セレナも頷く。


「むしろ、ここで止まる方が意外です」


「随分な信頼だな」


 国王が笑った。


 ◇


 試合場。


 グレゴールが一度距離を取った。


 呼吸が少し乱れている。


 ガイルも無傷じゃない。


 肩や腕には何度も木剣が入っている。


 でも、大剣を握る力は落ちていない。


「来ないのか?」


 ガイルが聞く。


「……行くさ」


 グレゴールが木剣を構え直した。


 踏み込む。


 速い。


 ガイルの右側。


 大剣を振りにくい場所へ入る。


 木剣が脇腹を狙う。


 ガイルが大剣を下げて受け止めた。


 ガンッ!


 グレゴールがすぐに離れる。


 その瞬間、ガイルが大剣を高く持ち上げた。


 上段。


「っ!」


 グレゴールも気づいた。


 下がる。


 でも、その先は試合場の端に近い。


 横へ逃げようにも、ガイルはもう目の前まで来ている。


 グレゴールが木剣を両手で構えた。


「いくぞ!」


 ガイルが大剣を振り下ろす。


 ブンッ!


 空気を切る音。


 グレゴールが木剣を上げた。


 ガンッ!


 二本の木剣がぶつかる。


 その直後。


 バキッ!


「え?」


 グレゴールの木剣が中央から折れた。


 観客席が一瞬静まる。


 ガイルの大剣は止まらない。


 折れた木剣を押し切り、そのままグレゴールの肩口へ叩き込まれた。


 ドンッ!


「ぐっ!」


 グレゴールの身体が沈む。


 折れた木剣が手から落ち、そのまま片膝をついた。


 ガイルはそこで大剣を止めた。


 追撃はしない。


 審判がすぐに二人の間へ入った。


「そこまで!」


 一瞬の静寂。


「勝者、ガイル・ベイルン!」


 次の瞬間、会場が揺れた。


「わああああああっ!」


「折ったぞ!」


「王宮騎士の剣を折った!」


「学院生だろ!?」


「まだ十五歳だぞ!」


 観客席が一気に騒がしくなる。


「ガイルさん!」


 ナディアが立ち上がっている。


 満面の笑みで拍手していた。


「勝ちました!」


 ガイルが気づき、大きく手を上げる。


「おう!」


 ミラたちも拍手している。


「ピー! ピー!」


 ピコも嬉しそうだ。


 俺も思わず笑った。


「本当に勝ったな」


 これでガイルと準決勝だ。


 ◇


 王族専用席。


 国王が少し驚いた顔で試合場を見ている。


 王妃殿下も、わずかに目を見開いていた。


「……グレゴールの剣を折ったか」


「受け方が悪かったわけではありません」


 アルフレッド第一王子が答える。


「真正面から受けて、あれです」


「十五歳であの力か」


 国王の視線がガイルへ向く。


 それから、選手用の観戦場所にいる俺へ移った。


「リオンに続いて、ガイルも十五歳か」


「はい」


 エドガーが答える。


「王立学院の代表二人が揃って四強入り。それも二人とも十五歳です」


「前代未聞だな」


 国王が呟いた。


 その言葉を聞いたわけじゃない。


 でも、観客席でも同じことに気づいた人たちがいたらしい。


「待てよ!」


「どうした?」


「リオンも残ってるだろ!」


「ああ!」


「じゃあ、学院代表が二人とも勝ち残ってるぞ!?」


「二人とも十五歳だぞ!」


「ってことは……」


 一瞬、声が途切れる。


「どっちかは必ず決勝に行くってことか!」


 また大きなどよめきと歓声が広がった。


「すげえ!」


「十五歳が決勝に行くぞ!」


「こんなの聞いたことない!」


 会場中が騒いでいる。


 俺も改めて気づいた。


 次は俺とガイルが戦う。


 どちらが勝っても、十五歳が決勝へ行く。


 試合場から戻ってくるガイルと目が合った。


 ニヤニヤしている。


 あれは絶対、楽しみにしてる顔だ。


 ◇


 第二回戦第三試合。


 アルベルト・グランツ。


 王宮騎士団第三隊隊長。


 対するのは王宮魔術士、エリオット・バーンズ。


 一回戦で多彩な魔法を見せたエリオットは、開始直後から距離を取った。


 前方へ大きな火球を放ち、その脇から鋭い風刃を走らせる。


 アルベルトが避けた先には、続けて複数の水弾。


 間を空けない。


 近づけさせないつもりだ。


 でも、アルベルトは慌てなかった。


 火球が放たれる直前。


 エリオットの肩がわずかに動く。


 その時には、もう半歩横へ。


 風刃を放とうと手が上がった時には、進路を変えている。


 水弾も同じ。


 視線が向いた時には、もうそこからいなくなっていた。


「……すごい」


 魔法を見てから避けてるんじゃない。


 魔法を使う人を見てる。


 手。


 肩。


 視線。


 身体の向き。


 発動前の動きから、次に来る魔法を読んでるんだ。


 少しずつ距離が縮まる。


 十歩。


 八歩。


 五歩。


「くっ!」


 エリオットが大きな火球を放った。


 アルベルトが難なく避ける。


 そして、次の魔法が放たれるより早く一気に懐へ踏み込んだ。


「なっ!」


 木剣が首元で止まる。


「そこまで! 勝者、アルベルト・グランツ!」


 やっぱり強い。


 派手じゃない。


 でも、相手にやりたいことをやらせない。


 ◇


 第二回戦最後。


 ディート・ハーゲン。


 傭兵。


 ミレーヌ・アスター。


 王宮魔術士。


 ミレーヌは一回戦と同じように、距離を保ちながら魔法を連続で放つ。


 火球がディートの進路を塞ぎ、横から風刃が飛ぶ。


 さらに水弾。


 ディートはかわす。


 でも、全部じゃない。


「っ!」


 火球が服をかすめ、肩口が少し焦げる。


 それでも進む。


 水弾が身体へ当たり、一歩よろめいた。


 それでも止まらない。


「無理だ!」


 観客席から声が飛ぶ。


 そう見える。


 でも、よく見ると少しずつ距離が縮まっている。


 一歩。


 また一歩。


 ミレーヌが大きな風魔法を放った。


 ディートの身体が後ろへ押される。


 でも倒れず地面を踏みしめる。


 その直後、ミレーヌさんの手が止まった。


 ほんの一瞬。


 強い魔法を放った直後、次の魔法へつなぐまでのわずかな間。


 ディートはそれを待っていた。


 一気に踏み込む。


「え?」


 ミレーヌが手を上げる。


 でも遅い。


 木剣が肩へ入った。


 バシッ!


「っ!」


 体勢が崩れる。


 そのまま首元へ木剣。


「そこまで! 勝者、ディート・ハーゲン!」


「やっぱりあの人も強いな」


 いつの間にか俺の隣へ戻ってきていたガイルが言う。


「うん」


 派手な魔法はない。


 圧倒的な力もない。


 でも、相手の癖や隙を見つけるまで待てる。


 そして、一度見つけた隙を逃さない。


 強い。


 これで四人。


 ◇


 休憩に入る前。


 選手用の掲示板へ、次の組み合わせが貼り出された。


■準決勝 第一試合


リオン・ハル(王立学院代表)VSガイル・ベイルン(王立学院代表)


■準決勝 第二試合


アルベルト・グランツ(王宮騎士団第三隊隊長)VSディート・ハーゲン(傭兵)


「来たな!」


 隣でガイルが言った。


「うん」


「やっとリオンとやれる!」


「朝は何度もやってるけどね」


「違うだろ!」


「まあね」


 確かに違う。


 朝の訓練では何度も戦った。


 何度も負けた。


 たまに良いところまで行った。


 でも、全部練習だった。


 次は違う。


 勝った方が決勝。


 負けた方は終わり。


 ガイルが拳を出してきた。


「手加減するなよ!」


 俺も拳を出し、軽くぶつける。


「ガイルもね」


「当たり前だ!」


 ガイルが笑う。


 俺も笑った。


 何度も戦ってきた。


 でも、勝つためにガイルと戦うのは、これが初めてだった。



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― 新着の感想 ―
さてはて・・・お互い手の内は理解してる 隠し玉があれば有利にはなるけど引き出しが多いのはリオン君 組み合わせを考えなおす余裕があるかな?
そういう大会じゃないのかもしれないけど、 トーナメントの場合、割と同門は最後まで当たらないように組まないのかな? それにしても、 ここで優勝しちゃうのは、ちょっとやりすぎかなぁ。 と思いつつ、この先…
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