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45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: アカメノコバチ
第19章 グレイヴ伯爵&五年冬休み編

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第483話 その前に

 数日後。


 朝食を終えたところで、ハル領から届いた手紙を開いた。


 父からだ。


「……やっぱり」


「ピー?」


 机の上にいたピコが首を傾げる。


「王宮から父さんにも連絡が行ったみたい」


「ピー」


 グレイヴ領からの出稼ぎと移住について、王家が改めて協議を行う。


 そして、その席にハル領からも代表を出してほしい。


 そこまでは予想していた。


 問題は、その次だ。


『今回の件については、お前にハル領の判断を委ねる。王家にも、その旨は伝えてある』


「俺か……」


 今日は父の代わりに話を聞くだけじゃない。


 ハル領を代表して意見を述べ、必要なら判断することになる。


 十五歳の俺が。


「緊張するなぁ」


「ピー!」


「ピコは気楽でいいね」


「ピー!」


 たぶん励ましてくれている。


 たぶん。


 俺は父からの手紙を畳み、数日前にまとめた紙を鞄へ入れた。


 今日は司法院の話じゃない。


 グレイヴ領の人口流出について決める日だ。


 ◇


 王宮へ入ると、いつもより少し大きな会議室へ案内された。


 中にはすでに国王陛下とラウグレン公がいる。


 そして。


「…………」


 初めて真正面から見る。


 グレイヴ伯爵。


 年齢は父より少し上だろうか。


 整えられた髪。


 落ち着いた表情。


 領地が苦境にある人物には見えない。


「リオン・ハルです」


 頭を下げる。


 グレイヴ伯爵が俺を見る。


「ハル子爵は?」


「父から、本件についての判断を委任されています」


 グレイヴ伯爵の眉がわずかに動いた。


「君が?」


「はい」


 陛下が口を開く。


「ハル子爵から、その旨は正式に聞いている。今日はリオンをハル領の代表として扱う」


「承知しました」


 グレイヴ伯爵はそれ以上何も言わなかった。


 ただ、俺を見たまま小さく笑う。


「ハル家は、随分と若い者に大きな判断を任せるのですね」


「ありがたいことだと思っています」


「なるほど」


 嫌味なのかどうか。


 たぶん嫌味だ。


 でも、そこに反応しても仕方ない。


「全員揃ったな」


 陛下が言う。


「では始めよう」


 俺たちは席についた。


 ◇


「まず、グレイヴ伯爵」


「はい」


「改めて、そなたの提案を説明してくれ」


「承知いたしました」


 グレイヴ伯爵が立ち上がる。


「私が王家へお願いしているのは、恒久的な移動制限ではありません」


 落ち着いた声だ。


「一定期間、グレイヴ領民の新規雇用と移住について、ハル領をはじめとする他領に受け入れを控えていただきたいのです」


「期間は?」


 ラウグレン公が聞く。


「まず半年を考えております」


 半年。


「すでに他領へ移った者を戻せと言うつもりもございません。

また、一時的な商取引や訪問まで制限するものでもありません」


 そこは以前と同じ。


「目的はただ一つ。グレイヴ領を立て直すための時間をいただきたい」


 グレイヴ伯爵が続ける。


「現在、我が領では働き盛りの者から外へ出ております」


 農地を耕す人。


 職人。


 若い労働者。


 それらが減れば税収も減る。


 公共事業を進めるための人手も足りなくなる。


「王家から支援をいただき、農地や水路、道路の復旧を進めようにも、人そのものがいなくなれば立て直すことはできません」


 言っていること自体は分かる。


「すでにいくつかの領からは、王家として方針が決まるのであれば協力するとの返答を得ている」


 ラウグレン公が言った。


 やっぱり。


 ハル領だけの話ではなくなっている。


「リオン」


 陛下が俺を見る。


「ハル領の考えを聞かせてくれ」


「はい」


 俺は一度息を吸った。


「ハル領としては、グレイヴ領民の新規雇用や移住を一律に断ることには反対です」


 グレイヴ伯爵がこちらを見る。


「理由は?」


「順番が違うと思うからです」


「順番?」


「グレイヴ領から人が出ていったから、グレイヴ領が悪くなったわけではありません」


 グレイヴ伯爵の表情は変わらない。


「ハル領への出稼ぎが増える前から、グレイヴ領の状況は悪化しています」


 王家から何度も支援を受けている。


 それでも十分に改善しなかった。


 その後、ハル領で仕事が増えた。


 だから人が来るようになった。


「人口流出は、少なくとも最初の原因ではありません。

グレイヴ領の状態が悪くなった結果として起きています」


「なるほど」


 グレイヴ伯爵はあっさり頷いた。


「そこについては否定しません」


「え?」


「確かに、人口流出が最初の原因ではなかったのでしょう」


 認めるのか。


「ですが」


 グレイヴ伯爵の視線が俺へ向く。


「最初に何が原因だったかと、現在何が領地の回復を妨げているかは別の問題です」


「…………」


「人口流出が結果として始まったとしても、今ではそれ自体が新たな原因になっている」


 税を納める人が減る。


 農地を耕す人が減る。


 商売をする人が減る。


 さらに領地が悪化する。


「原因と結果は、一度決まれば永遠に変わらないものではありません」


 強いな。


 ちゃんと反論してくる。


「それは否定しません」


 俺も答えた。


「人が減れば、立て直しが難しくなる。それはその通りだと思います」


「ならば」


「でも、受け入れを断ったら、人の移動そのものが止まるんでしょうか?」


 グレイヴ伯爵が少し目を細める。


「少なくとも、大幅には減るでしょう」


「私は、別の問題が増えると思っています」


「別の問題?」


「ハル領が把握できない人が増えます」


 正式に雇えば、誰がどこで働いているか分かる。


 住む場所についても、雇用主や行政がある程度把握できる。


「でも、グレイヴ領民を雇うなと言われたら?」


 親戚を頼って来る人もいる。


 知人の家に住む人もいる。


 身元を隠して、その日限りの仕事を探す人も出るだろう。


「正式な受け入れを止めても、生活に困っている人が移動を諦めるとは限りません」


「だからこそ、王家として統一した仕組みを作ればよいのです」


 グレイヴ伯爵が即座に答える。


「仕組み?」


「期間中、グレイヴ領から他領へ長期就労する者には、領主家の許可証を必要とする」


「…………」


「許可証のない者を雇った雇用主には罰則を設ける。

各領が同じ対応を取れば、抜け道は大幅に減らせます」


 そこまで考えているのか。


「領境での確認も強化すれば、無秩序な流入はかなり抑えられるはずです」


 ラウグレン公が顎に手を当てる。


「制度としては不可能ではないな」


「はい」


 グレイヴ伯爵が頷く。


「半年だけなのです。その間に王家の支援を受け、領内の雇用を回復させます」


 俺は少し黙った。


 確かに、制度として徹底すれば、俺が考えた抜け道は減る。


 それでも。


「私は反対です」


 グレイヴ伯爵が俺を見る。


「なぜです?」


「グレイヴ領を立て直すために、グレイヴ領民が働く場所を選べなくなるからです」


「領地が崩壊すれば、選ぶ場所そのものがなくなります」


「だからって、人を出られなくするのが最初じゃないと思います」


「理想論ですな」


 グレイヴ伯爵が言った。


「そうかもしれません」


「…………」


「でも、ハル領はその理想論をやります」


 少しだけ、グレイヴ伯爵の表情が変わった。


「人が出ていかないように壁を作るんじゃなくて、残りたいと思える場所にする」


 仕事を作る。


 農地を立て直す。


 商売ができるようにする。


 すぐには無理でも、そっちを目指す。


「ハル領として、働きたい人を出身だけで断るつもりはありません」


「では、その結果グレイヴ領がさらに衰退しても?」


「ハル領が責任を負う話ではないと思います」


 今度ははっきり言った。


「…………」


「グレイヴ領を立て直す責任は、まずグレイヴ領を治める側にあります」


 部屋が静かになった。


 言いすぎたかな。


 でも、ここは譲れない。


「陛下」


 グレイヴ伯爵が俺ではなく陛下を見る。


「私は領民を閉じ込めたいのではありません」


「分かっている」


「半年です」


 グレイヴ伯爵が続ける。


「わずか半年、他領にも協力していただきたい。その間に立て直しの道筋を作る」


 そしてラウグレン公を見る。


「このまま人が流出し続ければ、王家からいただいている支援すら十分に生かせなくなります」


 俺は何も言わなかった。


 ラウグレン公もすぐには答えない。


 陛下が腕を組む。


「双方の言い分は分かった」


「はい」


「グレイヴ伯爵の案には現実的な面がある。一方で、リオンの懸念も無視できん」


 陛下が少し考える。


「だが、グレイヴ領の現状をこのまま放置するわけにもいかない」


 空気が少し傾いた。


 グレイヴ伯爵もそれを感じたらしい。


「陛下。まず半年だけでも」


「ああ」


 陛下が頷きかける。


「では――」


 その時、扉が叩かれた。


「陛下。ヴァレスト公爵がお見えです」


 陛下の眉が動く。


「通せ」


 扉が開く。


「ヴァレスト公爵……?」


 ユリウス・ヴァレスト。


 その後ろにはエルマン。


 ベルントさん。


 さらに司法院の職員が二人。


 それぞれ書類を抱えている。


 数日ぶりに見る顔だった。


 何を調べていたのか。


 何が見つかったのか。


 俺は何も知らない。


「ユリウスか」


 陛下が言った。


「どうした?」


 ヴァレスト公爵が頭を下げる。


「その結論を出される前に、司法院から報告があります」


「報告?」


「はい」


 グレイヴ伯爵がゆっくりと振り返る。


「司法院が、この協議に何の関係を?」


 ヴァレスト公爵はグレイヴ伯爵を見る。


「人口流出についてではありません」


「では?」


「グレイヴ伯爵家についてです」


 部屋の空気が変わった。


「私の家が?」


「はい」


 ヴァレスト公爵が前へ進む。


「まず、要点を確認しよう」


 その口調は、俺が司法院で何度も聞いたものだった。


「グレイヴ伯爵家からヴァルナー商会へ、金貨三千枚を貸し付けたとする契約書が存在します」


「……それが?」


「しかし、グレイヴ伯爵家が王家へ提出していた資料にも、今回提出された帳簿にも、金貨三千枚の出金はありません」


「帳簿への記載漏れでしょう」


 グレイヴ伯爵は即答した。


「ヴァルナー商会側にも、三千枚の入金記録はありません」


「それも商会側の問題では?」


「外部の金品輸送記録も確認しましたが、該当するものは見つかっていません」


 グレイヴ伯爵が小さく息を吐く。


「我が家の馬車と人間を使って運んだ可能性もあるでしょう」


「その通りです」


 ヴァレスト公爵が頷いた。


「それだけでは、貸付が実行されていなかった証拠にはなりません」


 グレイヴ伯爵の表情に、わずかな余裕が戻る。


「ならば」


「問題は、その後です」


 ヴァレスト公爵が一枚の資料をエルマンから受け取った。


「ヴァルナー商会は、その三千枚の借入金について、複数年にわたり返済を行ったことになっています」


 金貨二百枚。


 四百八十枚。


 六百二十枚。


 五百四十枚。


「合計、金貨千八百四十枚」


 グレイヴ伯爵は黙っている。


「こちらについては、実際に金が動いた記録が残っています」


「…………」


「ヴァルナー商会の支払記録。グランツ輸送商会の現金輸送記録。冒険者ギルドの護衛依頼と達成記録」


 ヴァレスト公爵が続ける。


「四件すべて、金額と日付が一致しています」


「行き先は?」


 陛下が聞いた。


「グレイヴ伯爵家の王都邸です」


「…………」


 陛下の顔が変わった。


 ラウグレン公も黙っている。


「王都邸へ金が届いたからといって」


 グレイヴ伯爵が口を開く。


「私が受け取った証拠にはならないでしょう」


「その通りです」


 ヴァレスト公爵がまた頷く。


「誰か使用人が勝手に受け取った可能性もある」


「あります」


「ならば」


「ですから、それも確認しました」


 グレイヴ伯爵が初めて黙った。


「グレイヴ伯爵家王都邸で会計補佐をしていた元職員から、正式な証言を得ています」


「元職員?」


「オットー・ライマン氏です」


 その名前を聞いた瞬間。


 グレイヴ伯爵の表情がほんの少しだけ変わった。


「彼は、ヴァルナー商会から金品輸送の馬車が王都邸へ来ていたことを複数回確認しています」


「辞めた使用人一人の証言です」


 グレイヴ伯爵が言う。


「我が家に不満を持って辞めた者なら、何とでも言える」


「そうですね」


 ヴァレスト公爵は淡々としている。


「私も、彼の証言だけで判断するつもりはありません」


「…………」


「彼はもう一つ証言しています」


 ヴァレスト公爵の声が少し低くなる。


「ヴァルナー商会から届く金について、通常の会計帳簿には記載しないよう、王都邸の家令から指示されていた」


「家令が勝手に行ったことでは?」


 グレイヴ伯爵はまだ崩れない。


「私がそのような指示を出した証拠がありますか?」


「あります」


 短かった。


 グレイヴ伯爵が止まる。


 エルマンが一冊の薄い帳面を机の上へ置いた。


「これは?」


 陛下が聞く。


「グレイヴ伯爵家の私庫に関係する受入記録です」


 俺は思わず帳面を見る。


 見つかったのか。


「必要な手続きを経て、ヴァルナー商会との取引に関係する範囲を確認しました」


 ヴァレスト公爵が帳面を開く。


「金貨二百枚」


 一枚めくる。


「四百八十枚」


 さらに。


「六百二十枚」


 もう一つ。


「五百四十枚」


 部屋が静まり返る。


「すべて、ヴァルナー商会からの受け入れとして記録されています」


「…………」


「日付も、グランツ輸送商会の記録と一致します」


 グレイヴ伯爵の顔から、さっきまでの余裕が消えていた。


「しかも、この受入記録には、あなた自身の確認を示す記載が残っています」


「…………」


「家令一人が勝手に行ったという説明は難しいでしょう」


 グレイヴ伯爵は何も答えなかった。


「さらに、ヴァルナー商会から提出させた内部支払記録も確認しました」


 まだあるのか。


 ベルントさんが別の書類を開く。


「王家からグレイヴ領の復旧事業に関する代金がヴァルナー商会へ支払われた後、その一部を『借入金返済』としてグレイヴ伯爵家へ送る処理が複数回行われています」


 俺は息を止めた。


 王家からヴァルナー商会。


 そこからグレイヴ伯爵家。


 一本につながった。


「内部の支払指示にも、王家事業の入金後に伯爵家への送金を行う旨の記録が残っていました」


「それは……」


 グレイヴ伯爵が初めて言葉に詰まる。


 ヴァレスト公爵が続ける。


「オルセン商会から回収した契約書では、王家がヴァルナー商会へ金貨三千八百枚を支払った事業について、実際に石材の調達、加工、輸送、保管、納品の大部分を担ったオルセン商会への契約額は金貨二千二百四十枚でした」


「商会が利益を得ることは違法ではないでしょう」


「もちろんです」


 ヴァレスト公爵はすぐ認めた。


「利益を得ること自体を問題にしているのではありません」


 一枚の書類へ視線を落とす。


「王家の復旧事業でヴァルナー商会へ入った資金の一部が、実体を確認できない貸付の返済という名目で、あなたの私庫へ移されていたことを問題にしています」


「…………」


「つまり」


 陛下の声が低くなる。


「私がグレイヴ領を立て直すために出した金が、ヴァルナー商会を経由して、そなたの私庫へ入っていたということか?」


「現在確認できている複数の記録は、その流れを示しています」


 ヴァレスト公爵が答えた。


「少なくとも、単なる偶然の一致では説明できない段階です」


「…………」


 ベルントさんが続ける。


「さらに、徴税上の確認も済んでいます」


 グレイヴ伯爵がゆっくりとベルントさんを見る。


「私庫へ入った金貨千八百四十枚は、申告対象となる資金です」


「…………」


「しかし、該当する年度の申告には一度も計上されていません」


「私的な資産です」


 グレイヴ伯爵が言う。


「領地財政とは別だ」


「私的な資産であることと、申告義務がないことは同じではありません」


 ベルントさんの声は冷静だった。


「しかも問題は徴税だけではありません」


 別の資料を示す。


「グレイヴ伯爵家は、この資金を受け取っていた期間にも、領地財政が厳しいとして王家へ追加支援を申請しています」


「…………」


「その際、支援判断に影響する大きな資金の受け入れについて報告していません」


 つまり。


 領地が苦しい。


 金がない。


 助けてほしい。


 そう王家へ申請しながら。


 その裏では、王家の事業費から流れてきた金を自分の私庫へ入れていた。


 しかも申告もしない。


「グレイヴ伯爵」


 陛下が言った。


 さっきまでとは声が違う。


「私は、そなたの領民を救うために金を出した」


「……陛下」


「水路を直すためだ」


 誰も動かない。


「道を直すためだ。農地を戻すためだ」


「…………」


「領民が、もう一度自分の土地で食べていけるようにするために、私は支援を認めた」


 陛下がグレイヴ伯爵を見る。


「その金を利用して、自分の財産を増やしていたのか?」


「私は……」


「そのうえ、その金を申告せず、さらに領地が苦しいとして支援を求めた?」


「…………」


 答えがない。


 グレイヴ伯爵が口を開く。


「私は……」


 止まる。


「ヴァルナー商会が」


 また止まる。


「家令が……」


 言葉が続かない。


 輸送記録。


 冒険者ギルドの記録。


 元職員の証言。


 私庫の受入記録。


 ヴァルナー商会の内部支払記録。


 王家への財政報告。


 徴税記録。


 全部がつながっている。


「グレイヴ伯爵」


 ヴァレスト公爵が言う。


「今ここで、無理に説明する必要はありません」


「…………」


「申し開きは司法院で正式に聞きます」


 長い沈黙。


 やがて陛下が口を開いた。


「ユリウス」


「はい」


「司法上の扱いは司法院に一任する」


「承知しました」


「法に従って調べろ」


「はい」


 陛下が続ける。


「爵位とグレイヴ領の扱いについては、その報告を受けたうえで王家で決める」


「承知しました」


 グレイヴ伯爵が顔を上げた。


「陛下!」


 初めて声が大きくなる。


「まだ、私から説明を――」


「説明は司法院で行え」


「しかし!」


 グレイヴ伯爵が周囲を見る。


 そして。


「ラウグレン公」


 ラウグレン公を見る。


「私は、グレイヴ領を守ろうとしていただけです」


 ラウグレン公は黙っていた。


「先ほども、私の提案には理があると」


「確かに申し上げた」


「ならば!」


「グレイヴ伯爵」


 ラウグレン公の声は静かだった。


「私は、あなたの人口流出に関する主張には一理あると申し上げた」


「…………」


「あなたの不正まで認めた覚えはない」


 グレイヴ伯爵が固まる。


「むしろ、これが事実なら話は逆です」


「逆……?」


「王家から何度も支援を受けながら、その金の一部を私的な財産へ流し、領地の立て直しに十分使わなかった」


「…………」


「その結果、領民が生活に困り、仕事を求めて他領へ出ているのであれば」


 ラウグレン公の目が鋭くなる。


「領民を止める前に、問われるべき者がいる」


 グレイヴ伯爵は何も言えなかった。


 俺も黙っていた。


 ここまで。


 ヴァレスト公爵たちは、ここまで調べていたのか。


「リオン」


 陛下が俺を見る。


「はい」


「先ほどの人口流出についてだ」


「はい」


「グレイヴ領民の新規雇用と移住を、各領が一律に拒否するという案は白紙に戻す」


「……分かりました」


「グレイヴ領については、改めて王家主導で状況を確認する」


 俺は頷いた。


 勝った。


 そんな気持ちはなかった。


 グレイヴ伯爵がどうなるかは、これから司法院が決める。


 爵位や領地の扱いも、まだ決まっていない。


 それでグレイヴ領が急に良くなるわけでもない。


 むしろ、これからの方が大変かもしれない。


 ただ、グレイヴ伯爵は人が出ていくことを止めようとしていた。


 でも、その前に見るべきものがあった。


 なぜ、人が出ていくような領地になったのか。


 そして、領民を救うための金は、本当に領民のために使われていたのか。


 その答えの一つが、ようやく目の前に出ていた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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グレイブは叩けばまだまだ埃が出てくるよね~他の領地を私物化したり妨害もしてるし、ヤバイ犯罪に手を出してたりしてそう…これは爵位を取り上げ所か首をちょんぱされてもおかしくないかも?
ハル家をグレイブ領の立て直しに使い 回復の目処の功績でリオンを伯爵家に上げて 国民の怨みを全てグレイブにぶつけて留意を下げさせる。 うん、お銀さんの入浴シーンが足りないわ。
フリが半◯直◯期待させておいて最後は水戸黄門チックに感じました。
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