表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第14章 王立学院三年 二学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
276/303

第266話 連絡路の巣

 石扉は重かった。


 俺が綻びに手をかけ、少しずつ力を入れる。


 錆びた金具が、低く軋んだ。


 クラウスが前で剣を構える。


 ミラは指先に小さな光を灯していた。


 扉の隙間から、乾いた風が流れてくる。


 上へ続いている。


 そう思った瞬間、青輝石の灯りが奥を照らした。


 赤い点がいくつも光った。


 床。


 壁。


 天井の隙間。


 最初は数匹かと思った。


 違う。


 奥から、次々に灰色の小さな影が出てくる。


 鼠に似ている。


 だが、牙が長い。


 グレイラットだ。


《小型群体》

《後退困難》

《光反応》

《突破推奨》


 戻る道は狭い。


 扉を閉め直すには時間がかかる。


 ここで止まれば、囲まれる。


「戻れない。前へ抜ける」


「俺が前を開ける」


 クラウスが一歩出た。


「俺は抜けたやつを止める。ミラは足元と横穴だけ照らして」


「分かった」


 ミラの返事は短かった。


 クラウスが踏み込む。


 剣が低く走り、正面の一体を斬る。


 続けて二体目。


 連絡路は狭い。


 大きく振れない。


 それでもクラウスの剣は速かった。


 俺は半歩後ろにつく。


 クラウスの横を抜けてきた一体を剣で払う。


 足元へ潜り込んできた別の一体には、弱い魔力弾を撃った。


 壁に当たる音は小さい。


 大きな音を立てる余裕はない。


 ミラの光が、俺たちの足元だけを照らす。


 広げない。


 必要な場所だけ。


 それでも、グレイラットは止まらない。


 倒しても、奥から次が出てくる。


「きりがない」


 クラウスが低く言った。


「全部倒さない。出口まで押し切る」


 ミラの光が一瞬、奥を照らした。


「先に段差があるわ。上へ向かってる」


 なら、進むしかない。


 グレイラットが右の横穴から飛び出す。


 俺が剣で落とす。


 左の壁から、また二体。


 クラウスが一体を斬り、もう一体が足元を抜けた。


 そいつはミラへ向かった。


「ミラ、下がって!」


「ありがとう!」


 ミラが一歩下がり、光を俺の足元へ落とす。


 俺は飛び込んできた一体を剣で払った。


 もう一体がミラの横へ回り込む。


 魔力弾を撃つ。


 壁に叩きつけられたグレイラットが落ちた。


 三体目が俺の腕に食いつく。


「っ」


 浅い。


 だが痛い。


 俺は顔をしかめながら腕を振り、魔物を床へ叩き落とした。


「リオン、腕!」


「浅い。前を照らして」


 ミラは迷わなかった。


 光が前方へ走る。


 クラウスがその光の中へ踏み込む。


 また道が開く。


 俺は歯を食いしばり、《綻びの目》を使った。


《密集箇所》

《光刺激》

《突破路形成可》


 全部倒す必要はない。


 一瞬だけ、群れを割ればいい。


「ミラ、正面に強い光。一回だけ」


「いけるわ」


「クラウス、その瞬間に前へ」


「任せろ」


「俺は後ろを止める」


 ミラが息を吸った。


 次の瞬間、白い光が正面で弾ける。


 グレイラットの群れがひるんだ。


 クラウスが飛び込む。


 短く、速く、道を開ける。


 一体。

 二体。

 三体。


 灰色の影が左右へ散った。


「進め!」


 クラウスの声に合わせて、ミラが前へ出る。


 俺は後ろへ回り、追ってくる個体を払った。


 足元に絡みつく一体を蹴り飛ばす。


 青輝石の携帯灯を布から出し、床へ転がした。


 青白い光が横へ流れる。


 何体かがそちらへ反応した。


 その隙に、俺たちは奥へ抜ける。


 携帯灯には短い紐をつけていた。


 俺はそれを引き、転がった灯りを回収する。


「取れた。行こう」


 クラウスが上り段差へ入る。


 ミラが続く。


 俺は最後に一体を魔力弾で押し返し、段差へ駆け込んだ。


 奥へ進むほど、グレイラットの数が減っていく。


 巣の中心を抜けたらしい。


 ようやく足を止めた時、三人とも息が荒かった。


 クラウスは剣を下げ、肩で息をしている。


 ミラの光はかなり細い。


 俺の腕からは、少しだけ血がにじんでいた。


「腕、大丈夫か」


 クラウスが聞く。


「浅い。動く」


 俺は布で噛まれた場所を押さえた。


 回復魔法を使うほどではない。


 今は魔力を残す。


 ミラが俺の腕を見る。


「助けてくれてありがとう」


「ミラの光がなかったら、足元を見失ってた」


 俺がそう言うと、ミラは小さく頷いた。


「なら、次もちゃんと照らすわ」


 クラウスが階段の上を見る。


「まだ上に続いている」


 空気が少し変わっていた。


 第四層の重い感じが薄まっている。


 乾いた風が上から流れてくる。


どうやら、俺たちは前へ進めたらしい。


 第三層か。


 その言葉が、少しずつ現実に近づいていた。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

続きが気になったら、ブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ