表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第14章 王立学院三年 二学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/279

第263話 通るための戦い

 グランリザードの黄色い目が、こちらを見た。


 階段の入口は、すぐそこにある。


 だが、その前に分厚い鱗をまとった巨体が横たわっている。


 あれをどかさない限り、上には行けない。


「階段から離す。倒しに行かない」


 俺が小声で言うと、クラウスが剣を構えた。


「分かった」


「光で顔を引くわ」


 ミラの声も短い。


 次の瞬間、ミラの光がグランリザードの顔の前を走った。


 魔物の目が、光を追う。


 俺は右後ろ足の下へ魔力弾を撃った。


 床の石が小さく割れる。


 グランリザードの足が沈んだ。


「今」


 クラウスが右へ踏み込む。


 剣の腹で、グランリザードの側面を叩いた。


 巨体がわずかにずれる。


 階段の一段目が見えた。


 いける。


 そう思った直後、尻尾が床を払った。


「下がれ!」


 クラウスが剣で受ける。


 鈍い音が響き、クラウスの体が横へ押された。


 倒れはしない。


 だが、腕に衝撃が入ったのが分かった。


「重いな……!」


 クラウスが歯を食いしばる。


 グランリザードは、完全に体を起こした。


 階段前から離れるどころか、こちらへ向き直っている。


 もう、眠っている魔物を動かす段階ではない。


 戦いになった。


 グランリザードが前足で床を叩く。


 低い音が足元を震わせた。


 クラウスが正面に出る。


 剣が鱗に当たった。


 火花のような小さな光が散る。


 刃は通っていない。


「正面は無理だ」


 クラウスが短く言った。


 俺も魔力弾を撃つ。


 だが、硬い鱗に弾かれただけだった。


 視界に文字が浮かぶ。


《正面装甲硬化》

《尾部攻撃範囲広》

《右後肢負荷集中》

《腹部防御薄》

《光刺激反応》


 正面は駄目だ。


 尻尾も広い。


 崩すなら右後ろ足。


 決めるなら腹。


「右足を崩す。腹を狙う」


「了解」


「目を引くわ。一瞬だけよ」


 ミラが光を強めた。


 グランリザードの目の前で、白い光が弾ける。


 魔物の頭が上がった。


 その隙に、俺は右後ろ足の下へ魔力弾を続けて撃つ。


 一発。


 二発。


 床が欠け、石が砕けた。


 グランリザードの足が滑る。


 巨体が傾いた。


「クラウス!」


「ああ!」


 クラウスが側面へ入る。


 剣が鱗の薄い場所を捉えた。


 今度は刃が少し入る。


 グランリザードが暴れた。


 尻尾がクラウスへ飛ぶ。


 俺は反射的に魔力弾を撃った。


 尻尾の軌道がわずかにずれる。


 それでも風圧がクラウスの髪を揺らした。


「助かった!」


「まだ!」


 ミラの光が低く走る。


 グランリザードの視線が足元へ落ちた。


 クラウスがもう一歩踏み込む。


「腹!」


 俺の声に合わせて、クラウスが剣を突き入れた。


 刃が入る。


 だが、浅い。


 グランリザードは止まらない。


 前足を振り上げ、クラウスを押し潰そうとする。


「クラウス、右!」


 クラウスが横へ逃げる。


 爪が床を削った。


 砕けた石が飛ぶ。


 ミラが小さく息を呑んだ。


 光が一瞬揺れる。


「ミラ、無理しないで」


「分かってる。でも、ここで暗くしたら終わりよ」


 その声は震えていなかった。


 グランリザードが階段側へ体をひねる。


 まずい。


 このままだと、さらに入口を塞がれる。


 俺は深く息を吸い、《綻びの目》をもう一度絞った。


《腹部損傷拡大》

《魔力流乱れ》

《追撃有効》


 クラウスがつけた傷。


 そこなら通る。


「傷口を開く!」


 俺は魔力を指先へ集めた。


 狙うのは鱗ではない。


 傷の奥だ。


 ミラが短く光を放つ。


 グランリザードの動きが一瞬止まった。


 俺は魔力弾を撃つ。


 鈍い音。


 グランリザードの腹が内側から揺れた。


「今!」


 クラウスが飛び込む。


 剣を引き抜き、もう一度同じ場所へ叩き込んだ。


 グランリザードが大きく体を震わせる。


 尻尾が床を打つ。


 石が跳ねた。


 それでもクラウスは退かない。


 刃を押し込み、最後に横へ引いた。


 グランリザードの喉から、低い音が漏れる。


 巨体が傾いた。


 そして、階段の前から横へ崩れ落ちた。


 通路に重い音が響く。


 俺たちは、誰も声を上げなかった。


 息だけが荒い。


 ミラの光は細く揺れている。


 クラウスは剣を下げ、腕を一度だけ振った。


「動ける?」


 俺が聞くと、クラウスは頷いた。


「ああ。痺れただけだ」


「ミラは?」


「光は出せるわ。でも、長く休める感じじゃない」


 俺も頭が少し重い。


 結構、魔力を使ってしまった。


 だが、止まっている暇はない。


 戦闘音が響いた。


 血の匂いも出ている。


 別の魔物が来てもおかしくない。


「長居できない」


「階段へ行こう」


 クラウスが先に動く。


 グランリザードの巨体は、階段の入口から少し横へずれていた。


 通れる。


 狭いが、行ける。


 その時、倒れた魔物の前足が目に入った。


 太い爪。


 二層目の石蜥蜴とは、明らかに違う。


「少しだけ待って」


 俺はグランリザードに近づいた。


「リオン?」


「討伐証明を取る。後で説明する時に必要になるかもしれない」


 クラウスがすぐに周囲へ目を向ける。


「長くは待てない」


「分かってる」


 俺は折れかけた爪に剣先を当てた。


 硬い。


 だが、根元は戦闘で割れていた。


 力を込めると、爪が床に落ちた。


 俺はそれを拾い、亜空間収納へしまう。


 ミラが小さく息を吐いた。


「本当に、こんな時でも抜け目がないわね」


「後で信じてもらえなかったら困るから」


「それは確かにそうだ」


 クラウスが短く頷く。


 血の匂いが濃くなってきた。


 これ以上は危ない。


「行こう」


 クラウスが一段目に足をかける。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

続きが気になったら、ブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
亜空間に入れる必要はないよね 戻った時にどう説明するんだ?
>亜空間収納へしまう。 丸ごと入らないのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ