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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第14章 王立学院三年 二学期

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第257話 二層目への階段

 暗がりの中で、小さな影が揺れた。


 クラウスが剣を抜く。


 ミラの光が、洞くつの天井近くまで伸びた。


「上、二体」


 俺が言うより早く、黒い影が羽音を立てて落ちてくる。


 穴蝙蝠だ。


「照らすわ」


 ミラの光が横へずれる。


 真正面から照らされた穴蝙蝠が、一瞬だけ動きを鈍らせた。


 クラウスが踏み込む。


 剣で一体を斬り落とした。


 もう一体は低く滑るように飛び、クラウスの肩口を狙う。


「右」


「見えている」


 クラウスは体をひねり、剣の腹で羽を払った。


 穴蝙蝠が壁にぶつかる。


 俺は短く魔力弾を撃った。


 乾いた音がして、二体目も床に落ちる。


 戦いはすぐに終わった。


 だが、訓練場とは違う。


 羽音が壁に反響する。


 光の向きが少しずれるだけで、影が増える。


 俺は息を整えながら、床に落ちた穴蝙蝠を見た。


「上から来ると、少し見え方が違うな」


「でも、今の指示は短かった」


 クラウスが剣についた汚れを軽く払う。


「動きやすかったぞ」


「クラウスも、こっちが見る時間を作ってくれた」


 思ったままを返した。


 前に出るだけなら、ガイルの方が速いかもしれない。


 だが、クラウスは後ろを置いていかない。


 踏み込みすぎず、光の届く場所で戦う。


 俺やミラが次に動ける位置を残している。


 強い。


 ただ剣が上手いだけじゃない。


 班の前衛として、強い。


「何だ」


 クラウスがこちらを見る。


「いや。頼れると思っただけ」


「それはこちらの台詞だ」


 クラウスは短く言った。


「後ろから声が来ると、迷わず動ける」


 その言葉に、俺は少しだけ肩の力が抜けた。


「二人とも、褒め合うのはいいけど、進むなら足元も見て」


 ミラが光を下げる。


 床の岩に、浅い割れ目が走っていた。


 クラウスが一歩止まる。


「助かった」


「前ばかり見ていたら危ないわ」


 ミラはそう言って、光を少し前へ送った。


 明るくしすぎない。


 けれど、剣を振る範囲と足元はきちんと見える。


 俺はその光の置き方を見て、素直に感心した。


 ミラがいなければ、俺たちはもっと遅い。


 クラウスの踏み込みも、俺の判断も、暗ければ半分になる。


 三人で動くというのは、こういうことかもしれない。


 俺たちは奥へ進んだ。


 途中で、石の隙間から灰色の蜥蜴が飛び出した。


「足元、左」


「下げるわ」


 ミラの光が床を照らす。


 クラウスが一歩引いて、俺が魔力弾で進路を塞ぐ。


 石蜥蜴が跳ねたところを、クラウスの剣が捉えた。


 次は、横穴から小さな魔物が二匹出た。


 今度は俺が先に声を出す。


「右穴、二匹」


「押さえる」


 クラウスが前に立ち、ミラが光を横へ回す。


 俺は逃げ道に魔力弾を撃った。


 一匹はクラウスが斬り、もう一匹は壁際で止まったところを俺が仕留める。


 大きな危険はない。


 それでも、油断すれば怪我をする。


 俺たちは一戦ごとに立ち止まり、怪我がないか、道を間違えていないかを確認した。


「今のところ、問題はないな」


 クラウスが言う。


「魔力もまだ大丈夫よ」


 ミラが光球を小さくしながら答える。


「でも、使いすぎる気はないわ。帰る時にも必要になるから」


「そうだね」


 俺は頷いた。


 進むための魔力だけでは足りない。


 戻るための魔力も残す必要がある。


 ベルンハルト先生の言葉が頭に残っている。


 班で進み、班で判断し、班で戻る。


 倒した数ではない。


 俺たちはさらに奥へ進んだ。


 しばらくすると、空気が少し冷たくなった。


 壁の湿り気が増える。


 足元の石も、さっきより黒く濡れていた。


 クラウスが足を止める。


「階段だ」


 光の先に、下へ続く段差があった。


 幅は狭い。


 奥は暗く、下から冷たい空気が上がってくる。


 二層目への階段。


 俺たちはその前で、一度止まった。


「怪我は?」


「ない」


 クラウスが答える。


「私も大丈夫。魔力も余裕はあるわ」


 ミラが光球を少し弱める。


「リオンは?」


「問題ない。薬草も使っていない」


 俺は腰袋を確かめた。


 包帯。


 薬草。


 魔力灯。


 予備は亜空間収納にある。


 だが、それより大事なのは、戻る判断を忘れないことだ。


「二層目まで行って戻る。それが今日の課題だ」


 俺が言うと、クラウスが頷いた。


「三層には降りない」


「二層目に入ったら、帰りの魔力も見ながら進みましょう」


 ミラの声は落ち着いていた。


 クラウスが階段の一段目に足を置く。


「行くぞ」


 ミラの光が段差を照らす。


 俺は後ろから、壁と奥を確認した。


 一層目は越えた。


 だが、ここからが本番だ。


 下から吹き上がる冷たい空気を受けながら、俺たちは二層目へ降りていった。



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