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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第14章 王立学院三年 二学期

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第255話 休日の冒険者

 洞くつ実習に向けて、学院から装備の一覧が配られた。


 最低限の装備は学院から貸し出される。


 だが、自分で用意しておいた方がいい物もある。


 包帯。


 薬草。


 小型魔力灯の替え石。


 滑りにくい手袋。


 短いロープ。


 防水袋。


 机の上に一覧を置き、俺は財布の中身を確認した。


 少ない。


 夏休みに西の森で使った金が、思ったより響いていた。


 夜間学校の木札や炭。


 仮役場の備品。


 必要なものだったので後悔はない。


 ただ、今の俺の財布に余裕がないのも事実だ。


 家に頼めば、出してもらえるかもしれない。


 でも、父上は療養中だ。


 母上もレナードも、領のことで忙しい。


 これくらいは、自分で何とかしたかった。


 ◇


 次の休日。


 俺は王都の冒険者ギルドへ向かった。


 掲示板には、討伐、護衛、採取、荷運びなどの依頼が並んでいる。


 危険度の高い依頼を受けるつもりはない。


 課外実習の前に無理をして怪我をしたら、本末転倒だ。


 俺が選んだのは、王都近郊の森での薬草採取と低級魔物討伐だった。


 対象は、角兎と小牙鼠。


 受付へ依頼票を持っていくと、職員が内容を確認した。


「一人で受けますか?」


「はい。低危険度の依頼ですよね」


「低級です。ただ、角兎は突進してきます。小牙鼠は群れることがありますので、油断はしないでください」


「分かりました」


 俺は依頼を受け、王都の外へ出た。


 ◇


今回行く森は、深い森ではなく、採取人や冒険者の出入りもある場所だ。


 それでも、森に入れば空気は変わる。


 学院の訓練場とは違う。


 足元の土は柔らかく、草の揺れも多い。


 俺は周囲の音を聞きながら、薬草を探した。


 葉の張り。


 根元の弱り方。


 魔力の流れ。


 《綻びの目》を強く使わなくても、状態の悪い草は何となく分かる。


 枯れかけたものは避ける。


 魔力の弱いものも袋に入れない。


 採取は思ったより順調に進んだ。


 袋が少し重くなった頃、近くの茂みが揺れた。


 角兎だ。


 額の小さな角をこちらへ向け、低く身を沈めている。


 俺は一瞬、角の向きと足の踏み込みを見ようとした。


 だが、すぐに横へ動く。


 全部見えてからでは遅い。


 角兎が跳ねる。


 俺のいた場所を、鋭い角が通り過ぎた。


「そこ」


 短く魔力弾を撃つ。


 角兎の足元の土が弾け、体勢が崩れる。


 倒れたところを、短剣で仕留めた。


 大きな戦いではない。


 だが、今のは少し早く動けた。


 そう思えた。


 討伐証明を取り、再び薬草を探す。


 帰り道に、小さな気配がいくつも動いた。


 小牙鼠だった。


 一匹ずつは弱い。


 だが、草むらの中をばらばらに走り、こちらの視線を散らしてくる。


 最初は、一匹ずつ追いかけそうになった。


 すぐにやめる。


 全部を見る必要はない。


 群れの流れを見る。


 前へ出る一匹。


 左右へ回る二匹。


 後ろで様子を見る一匹。


 俺は地面へ魔力弾を撃ち込んだ。


 前に出た一匹が跳ねて止まる。


 その一瞬、左右の二匹の動きも鈍った。


 短剣で一匹。


 魔力弾でもう一匹。


 残りが逃げようとしたところを、距離を取って仕留める。


 最後の一匹が足元へ飛び込んできた。


 避けたが、手の甲を小さく引っかかれた。


「……浅いな」


 血が少しにじんでいる。


 大した傷ではない。


 薬草を使うほどでもなかった。


 俺は森の端まで下がり、周囲を確認する。


 魔物の気配はない。


 そこで、手の甲へ魔力を集めた。


 押し込まない。


 傷の周りを細くなぞる。


 皮膚が戻ろうとする流れを、少しだけ助ける。


 じわりと温かくなる。


 血のにじみが止まった。


 痛みも少し引いている。


 傷は残っていた。


 でも、動かす分には問題なさそうだ。


「使える。けど、頼りすぎるものじゃないな」


 俺はそう呟き、布で手の甲を軽く巻いた。


 その後、ギルドへ戻った。


 ◇


 ギルドの受付に薬草と討伐証明を出すと、職員が薬草を見て少し目を丸くした。


「状態がいいですね。採取に慣れているんですか?」


「少し、見分けるのは得意です」


 そう答えるに留めた。


 報酬は大きくない。


 でも、今ほしい物を買うには足りる。


 俺はそのまま道具屋へ向かった。


 派手な武器は見ない。


 買うものは決めていた。


 包帯。


 薬草。


 小型魔力灯の替え石。


 滑りにくい手袋。


 短いロープ。


 防水袋。


 高い品を勧められもしたが、必要なものだけを選んだ。


 寮に戻る頃には、日は傾きかけていた。


 自室の机に、買った物を並べる。


 どれも特別な道具ではない。


 だが、洞くつの中では、こういう物が役に立つはずだ。


 俺は手の甲の浅い傷を見た。


 血は止まっている。


 痛みも少し引いていた。


 けれど、傷そのものが消えたわけではない。


 今の俺の回復魔法でできるのは、この程度だ。


 それでも、洞くつで小さな怪我をした時、動きを止めずに済むかもしれない。


 俺は机の上の装備を一つずつ確認した。


 洞くつに入る日が、少しずつ近づいていた。



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