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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第14章 王立学院三年 二学期

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第251話 昨日、何があったの?

 翌朝、教室に入ると、クラウスが先に席へ着いていた。


 俺に気づくと、すぐに声をかけてくる。


「リオン、昨日の話だが」


「うん、クラウス」


 返してから、自分でも少しだけ引っかかった。


 昨日までは、クラウスさんと呼んでいた。


 でも、クラウスは何も言わなかった。


 その代わり、別のところから鋭い声が飛んできた。


「……今、クラウスって呼んだ?」


 セレナだった。


 彼女は腕を組み、じっとこちらを見ている。


「えっと……」


「昨日までクラウスさんだったじゃない」


 ヴィクトルが横から笑った。


「よく聞いてるね」


「聞こえるわよ。急に距離が縮まっていたら気になるでしょ」


 セレナの視線が、俺とクラウスの間を行き来する。


「昨日、何があったの?」


 答える前に、ガイルが口を開いた。


「焼き菓子を食べて、少し話して、寮監に怒られた」


「何をしているのよ」


 セレナは呆れた顔をした。


 ヴィクトルが肩をすくめる。


「大事な交流だよ」


「廊下で騒いで怒られる交流なんて聞いたことないわ」


「騒いだつもりはない」


 ガイルが真面目に言う。


「寮監は騒いでいると思ったんでしょうね」


 ナディアが少し笑った。


「でも、楽しそうです」


 ミラも近くで話を聞いていたらしく、興味深そうにこちらを見る。


「男子寮は、夜にそういうことがあるのね」


「いつもあるわけじゃない」


 ライオネルが苦笑しながら答えた。


「昨日はたまたまだ」


「たまたま焼き菓子があって、たまたま人が集まって、たまたま怒られた」


 ヴィクトルがまとめる。


「全部たまたまにするな」


 クラウスが静かに返した。


 そのやり取りに、教室の空気が少しだけ軽くなる。


 ふと見ると、エドガーが席の近くで話を聞いていた。


 笑ってはいない。


 ただ、いつもより少し静かだった。


「エドガー?」


 俺が声をかけると、エドガーはゆっくりこちらを見た。


「王宮では、夜に友人が部屋へ来ることはあまりない」


 短い言葉だった。


 けれど、意味は分かった。


 エドガーはこのアルスレイン王国の第二王子だ。


 学院には通っていても、寮では暮らしていない。


 同じ三年Sクラスでも、夜の時間までは一緒ではなかった。


 ヴィクトルが軽く手を振る。


「じゃあ、昼に混ざればいい。食堂なら王宮通学でも関係ないだろ」


 エドガーは少しだけ考え、頷いた。


「そうする」


「決まりね」


 セレナが言った。


「男子寮だけで勝手に仲良くなられるのも面白くないもの」


「セレナも男子寮に来る?」


「行くわけないでしょ」


「無理だろう」


 ガイルが普通に言った。


「分かってるわよ」


 そこでベルンハルト先生が入ってきた。


 騒ぎはすぐに止まった。


 午前の授業は、二学期の予定確認と実戦判断の基礎だった。


 先生は淡々と進めたが、教室の中には昨日までと少し違う空気が残っていた。


 クラウスやライオネルが、飛び級組に自然に声をかける。


 ヴィクトルもそれをいつもの調子で受け流す。


 大きく変わったわけではない。


 でも、少なくとも俺には、昨日の夜が無駄ではなかったと思えた。


 昼休みになると、食堂はすぐに混み始めた。


 俺たちが席を探していると、クラウスたちがすでに大きめの卓にいた。


 ライオネルが手を上げる。


「こっち、空いてるぞ」


 ヴィクトルが迷わず歩いていく。


「じゃあ、今日はここで」


 俺たちも続いた。


 リオン、ヴィクトル、ガイル、セレナ、ナディア、エドガー。


 そこにクラウス、ライオネル、オルド、ミラもいる。


 少し窮屈だったが、席を詰めれば何とかなった。


 ガイルは、相変わらず皿を多めに持っている。


 セレナがそれを見て眉を寄せた。


「朝も食べてるんでしょ?」


「昼だからな」


「理由になっていないわ」


 ヴィクトルがスープを持ちながら笑う。


「ガイルにとっては理由なんだよ」


 ナディアは小さく笑い、エドガーは静かに席を詰めた。


 昨日の男子寮の話は、いつの間にか昼の卓まで広がっていた。


 そんな中、ライオネルがふと思い出したように言った。


「そういえば聞いたか?」


 ガイルがすぐ顔を上げる。


「何をだ?」


「今度の課外学習、洞くつ攻略らしいぞ」


 卓の空気が変わった。


「洞くつ攻略?」


「ああ。しかも三人一組でパーティーを作るらしい」


 ガイルの目が分かりやすく輝いた。


「面白そうだな」


「ガイルはそう言うと思った」


 ヴィクトルは嫌そうにパンをちぎる。


「課外学習って、もっと穏やかな場所に行くものじゃないの?」


「三年Sクラスで穏やかな課外学習はないだろ」


 ライオネルが笑う。


 セレナはすぐに考える顔になった。


「洞くつなら、魔法の撃ち方も変わるわね。広い訓練場と同じ感覚では危ないわ」


「通路が狭ければ、前衛の位置も大事になります」


 ナディアも真剣な表情になった。


「三人一組なら、回復や支援のタイミングも見なければいけません」


 エドガーがライオネルを見る。


「場所は分かっているのか」


「王都北部の洞くつダンジョンらしい。ただ、まだ噂だ」


「なら、正式な告知を待つべきだ」


 クラウスが落ち着いて言う。


 オルドも頷いた。


「だが、課外学習が近いのは確かだろう」


 三人一組。


 洞くつ。


 狭い通路で、前衛、支援、判断役が動く。


 訓練場とは違う。


 たぶん、見えてから考えていたのでは遅い場面もある。


「リオン」


 ヴィクトルがこちらを見る。


「今、色々考えてるでしょ」


「少しだけ」


「少しで済む顔じゃないわよ」


 セレナにすぐ言われた。


 俺は苦笑した。


「三人なら、役割の偏りは避けるはずだ」


 クラウスが言う。


「先生が班を決める可能性もある」


「仲の良い者同士で組めるとは限らないってことか」


 ライオネルが腕を組む。


「前衛三人になったらどうなる?」


「通路で詰まる」


 ヴィクトルが即答した。


「押し切ればいい」


 ガイルが言う。


「洞くつでそれをやったら、天井ごと落ちるわよ」


 セレナが呆れる。


「なら、落ちないように押す」


「そういう問題じゃないわ」


 ミラが小さく笑った。


「でも、三人一組なら支援役の動きも見られそうね」


「ミラさんは魔法コースでしたよね」


「ええ。私は支援系を伸ばしたいと思っているわ」


 ナディアが少し嬉しそうに頷く。


「私も、回復と支援をもっと学びたいです」


 同じ魔法コース志望でも、セレナとは見ている方向が少し違う。


 それも面白いと思った。


 食事を終える頃には、課外学習の話で卓はすっかり盛り上がっていた。


 午後の授業前、教室に戻ると、他の生徒たちも同じ噂をしていた。


「洞くつって本当か?」


「三人一組らしいぞ」


「班は自分たちで決めるのか?」


 ざわつく教室に、ベルンハルト先生が入ってきた。


「静かにしろ」


 その一言で、空気が締まる。


 先生は教卓の前に立つと、余計な前置きなく言った。


「次の課外学習先が決まった」


 教室が静まり返る。


「王都北部の洞くつダンジョンだ」


 昼に聞いた噂は、本当だった。


 ガイルが嬉しそうに背筋を伸ばす。


 ヴィクトルは小さくため息をついた。


 セレナは腕を組み、ナディアは表情を引き締める。


 ベルンハルト先生は続けた。


「今回は、三人一組で攻略してもらう」


 教室が一気にざわめいた。


「班はこちらで決める。仲の良い者同士で固まれると思うな」


 その言葉で、何人かが顔を見合わせた。


 俺も、昼の会話を思い出す。


 三人一組。


 洞くつ攻略。


 前衛、支援、判断。


 一人で全部を抱えようとすれば、必ず遅れる。


 先生は教室全体を見渡した。


「詳しい班分けと説明は明日行う。今日は、洞くつで何が必要になるかを各自考えておけ」


 それだけ言うと、先生は授業を始めた。


 俺は筆記具を手に取りながら、静かに息を吸った。


 昨日、寮の夜で少し近づいた相手と、今度は洞くつに入るかもしれない。


 誰と組むのか。


 何を任されるのか。


 そして俺は、どこまで自分の目に頼らず動けるのか。


 三年Sクラスの二学期は、思っていたより早く実戦に近づいていた。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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