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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第14章 王立学院三年 二学期

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第246話 力の扱い方

 授業が終わると、教室の空気が少しだけ緩んだ。


 夏休み明けの初日だからか、皆まだ話し足りない様子だった。


「リオン」


 席を立とうとしたところで、セレナに呼び止められた。


「学院長室に行くのでしょう?」


「うん」


「何の話か、心当たりはあるの?」


「ありすぎて分からない」


 そう答えると、セレナは少し眉を寄せた。


「……本当に、あなたらしい答えね」


 ヴィクトルが横から軽く笑った。


「終わったら教えてくれよ。言える範囲でいいから」


「分かった」


 ナディアも心配そうにこちらを見る。


「お気をつけて、リオンさん」


「うん。ありがとう」


 俺は皆に軽く手を上げ、教室を出た。


 学院長室へ向かう廊下は、教室とは違って静かだった。


 久しぶりの学院。


 久しぶりのSクラス。


 ようやく生徒に戻ったと思ったばかりなのに、もう呼び出しだ。


 扉の前で一度息を整え、軽く叩く。


「入ってくれ」


 中から、低い声が返ってきた。


「失礼します」


 扉を開けると、学院長は机の前で書類を見ていた。


「ハル、座れ」


「はい」


 俺が椅子に座ると、学院長は書類から目を上げた。


「昨夜、転移で戻ったな」


 いきなりだった。


 俺は一瞬だけ言葉に詰まる。


「……はい。寮の自室に戻りました」


「人前では使っていないな」


「使っていません。母上にも、皆には話さないようお願いしました」


「ならいい」


 学院長は短く言った。


 だが、すぐに続けた。


「いいか、ハル。転移魔法は便利な移動手段ではない」


「はい」


「知られれば、欲しがる者が出る。使わせようとする者も出る。

逃げ道として使えると思う者もいる」


 俺は黙って聞いた。


「学院内で噂にするな。見せびらかすな。近道のように使うな」


「はい」


「使うなら、場所を固定しろ。あと、体調が悪い時は使うな」


 学院長の言葉は短い。


 けれど、どれも重い。


「魔法は使えば使うほど身体が慣れる。そこまでは正しい」


 学院長は俺をまっすぐ見た。


「だが、慣れたことと、安全になったことは同じではない」


 俺は小さく頷いた。


「肝に銘じます」


「そうしてくれ」


 学院長はそこで一枚の書類を閉じた。


 次に出てきた言葉は、少しだけ声の調子が変わっていた。


「ハル子爵の具合はどうだ」


 胸の奥が、わずかに重くなる。


「医師から、月単位で休ませるべきだと言われています」


「そうか」


 学院長は深くは聞かなかった。


「領から報告は届くのか」


「はい、定期的に報告を受ける形にしました。

母上と文官や他のみんなが手分けして動けるようにしています」


「そうか」


 すぐに返ってきた。


「学院から領地を動かそうとするな。報告を読むのはいい。

必要な返事を書くのもいい。だが、日々の判断まで握るな」


「……はい」


「君が領にいれば頼られる。ここにいても、返事を出せば頼られる。

そうしているうちに、結局全部が君のところへ来る」


 言われて、反論できなかった。


 西の森で、俺が変えようとしていたことそのものだ。


「仕組みを作ったなら、次は任せろ」


 学院長は短く言った。


「それも学べ」


「分かりました」


 そこで話が終わるのかと思った。


 だが、学院長は机の引き出しから別の書類を取り出した。


「もう一つある」


「はい」


「王立研究所から連絡が来ている」


 その言葉に、俺は顔を上げた。


「王立研究所から、ですか」


「ああ。福嶋亮太の本の件だ」


 福嶋亮太。


 その名前を聞いた瞬間、頭の中にあの日本語の本が浮かんだ。


 亜空間収納。


 転移魔法。


 この世界の魔法を、日本語で説明した奇妙な本。


「原本の確認が進んでいる。ただ、読める者がいないから時間がかかっている」


「……そうでしょうね」


「研究所から、いくつか確認したい箇所があるそうだ」


 学院長は書類を机の上に置いた。


 そこには、王立研究所の印が押されていた。


「近いうちに、研究所へ行ってもらう」


「僕が、ですか」


「他に読める者が少ない。君が書き写した内容とも照合したいらしい」


 俺は書類を見つめた。


「分かりました」


 俺が答えると、学院長は小さく頷いた。


「ただし、浮かれるな」


「はい」


「福嶋亮太の本も、転移魔法も、扱いを間違えれば面倒なものになる」


 学院長は立ち上がり、窓の外へ視線を向けた。


「ハル。力を持つこと自体は悪くない」


 そして、こちらを見る。


「だが、力を持つ者ほど、使い方を間違えるな」


 その言葉は、胸に残った。


 転移魔法。

 西の森。

 父上のこと。

 福嶋亮太の本。


 どれも、ただ手に入れて喜べるものではない。


 扱いを間違えれば、自分だけでなく周りも巻き込む。


「分かりました」


「二学期は始まったばかりだ。これから色々と学んでいってほしい」


「はい、失礼します」


 俺は立ち上がり、学院長室を出た。


 廊下に出ると、教室の方から生徒たちの声が聞こえた。


 久しぶりの学院生活。


 けれど、ただ授業を受けるだけの二学期にはなりそうもない。


 俺は王立研究所の印が押された書類を思い出しながら、教室へ向かって歩き出した。



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― 新着の感想 ―
ハル領のことを知った上で自重だけ促し、でも研究所にはいってねってせめてアドバイスとかないのかな? 別に学院やめてハル領に戻って事件の対策や発展開発に集中しててもいいような。って位意味ない気がする。 貴…
なんか、、 周りの大人(と、一部生徒)が、ほぼ全員自制を促すBotみたいになってるのが気になる。。 相談しろじゃなくて全員自制しろ自制しろて、学ぶ意味あるんかな?
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