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【感謝!1000万PV達成!】45歳社長、転生先でハズレスキル「綻びの目」を武器に没落領地を再建する  作者: コバチ
第12章 王立学院三年 一学期

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第196話 認めない者

 三年Sクラスでの授業が始まって、少しずつ教室の空気も変わり始めていた。


 最初に教室へ入った時ほど、刺さるような視線はない。


 それでも、完全に馴染んだわけではない。


 授業の合間、教室の空気を見ながら、俺はそう感じていた。


 ◇


 休み時間。


 次の授業の準備をしていると、一人の男子生徒がこちらへ歩いてきた。


 背が高く、体つきもしっかりしている。


 クラウス先輩のような静かな圧とは少し違う。


 もっと真っ直ぐで、硬い雰囲気の人だった。


 彼は俺たち六人の前で足を止める。


「ライオネル・グランツだ。少し話していいか」


 声も硬い。


 だが、敵意があるわけではなかった。


「はい」


 俺が答えると、ライオネルは一度だけ頷いた。


「昨日の演習は見事だった。初回であれだけ動ける班は多くない」


 まず出てきたのは、意外にも評価の言葉だった。


 ヴィクトルが少しだけ目を動かす。


 セレナも静かに聞いている。


 ライオネルは続けた。


「君たちが優秀なのは分かった。実戦経験があることも、演習を見れば分かる」


 そこで、声が少し低くなる。


「だが、俺はまだ、君たちを三年Sクラスの仲間として完全に認めたわけではない」


 教室の空気が少しだけ固まった。


 近くにいた三年生たちも、こちらを見る。


 ヴィクトルが何か言いかける。


 俺はそれを目で止めた。


「理由を聞かせてもらえますか」


 ライオネル先輩は逃げなかった。


「俺たちは一年の頃から、ベルンハルト先生にしごかれてきた。

何度も失敗して、ようやく今の形になった」


 その言葉には、怒りよりも重さがあった。


「君たちが飛び級でここへ来たことを否定するつもりはない。

実戦演習での動きも本物だった。だが、一度動けたからといって、同じ積み上げをしてきたとは思えない」


 言っていることは、分かる。


 彼らには彼らの二年間がある。


 それを軽く扱われたくない。


 ライオネルが言いたいのは、そういうことなのだろう。


「そう思われるのは当然だと思います」


 俺は答えた。


「俺たちは、ここで二年間積み上げてきたわけではありません。

だから、言葉で認めてもらうつもりはありません」


 ライオネルの目をまっすぐ見る。


「結果で示します」


 少しだけ沈黙が落ちた。


 セレナが続ける。


「私たちも、簡単に受け入れられるとは思っていません」


 エドガーも静かに言った。


「同じ教室に入ったことと、信頼されることは別だと理解しています」


 ナディアは丁寧に頭を下げる。


「私たちも学ばせていただく立場です。ですが、班として必要とされるよう努めます」


 ガイルは短く言った。


「見ていればいい」


 言葉は少ない。


 だが、ガイルらしい。


 ヴィクトルは少し肩をすくめる。


「まあ、こっちも口だけでどうにかなるとは思ってないですしね」


 ライオネルは、俺たちを順に見た。


 そして、少しだけ目を細める。


「なら、見せてくれ」


 それだけだった。


 認めたわけではない。


 だが、少なくとも、こちらの言葉を聞く気はあるようだ。


 ◇


「グランツの言っていることは厳しいが、間違ってはいない」


 声がして振り返ると、クラウスが近くに立っていた。


 どうやら、今のやり取りを聞いていたらしい。


 ライオネルはクラウスを見る。


「クラウス」


「止めるつもりはない。今のは必要な話だ」


 クラウスはそう言ってから、俺たちを見る。


「ただ、昨日の演習で君たちが見せたものも本物だ」


 その言葉で、少しだけ空気が和らいだ。


 クラウスは続ける。


「だからこそ、次は同じ課題を越えた時にどう動くかだ。

実力を見せることと、信頼されることは同じではない」


 リオンたちを認める。


 だが、既存三年生側の思いも否定しない。


 この人が三年Sクラスの中心にいる理由が、少し分かった気がした。


 ライオネルも、それ以上は何も言わなかった。


 ◇


 その時、教室の扉が開いた。


 ベルンハルト先生が入ってくる。


 教室の空気を一目見ただけで、何があったのか大体分かったのだろう。


 だが、先生はすぐには何も言わなかった。


 教壇に立ち、全員を見回す。


「三年Sクラスは、点数だけで成り立つ場所ではない」


 低い声だった。


 教室が静まる。


「同じ課題を越え、同じ失敗を背負い、互いの判断を預けられるようになって、初めて班になる」


 その言葉は、俺たちに向けられているようでもあり、既存の三年生たちに向けられているようでもあった。


「飛び級組が優秀なのは、昨日見た。

だが、優秀であることと、班の一員として信頼されることは別だ」


 ベルンハルト先生は、そこで一拍置いた。


「次回の演習では、班を組み替える」


 教室の空気が動いた。


 既存三年生たちの間にも、小さなざわめきが走る。


「既存生徒と飛び級組を混ぜる。互いを知れ」


 ヴィクトルが小さく呟いた。


「うわ、いきなり来たな」


 俺も同じことを思った。


 今まで俺たちは六人で一班だった。


 でも、次は違う。


 三年Sクラスの既存生徒たちと混ざる。


 実力を見せるだけでは足りない。


 同じ班で動き、判断を合わせる必要がある。


 ベルンハルト先生は淡々と続けた。


「組み合わせは改めて伝える。今日はここまでだ」


 それだけ言うと、先生は次の授業の準備に入った。


 ◇


 授業が終わった後も、教室には少し緊張が残っていた。


 俺は荷物をまとめながら、ライオネルの方を見る。


 彼もこちらを見ていた。


 敵意ではない。


 だが、まだ認めていない目だった。


 認めるかどうかは、次で決まる。


 そんな目だった。


 ライオネル・グランツの言葉は、決して気持ちのいいものではなかった。


 でも、間違っているとも思わなかった。


 俺たちは飛び級でここに来た。


 けれど、三年Sクラスの仲間として信頼されるには、まだ何も積み上げていない。


 なら、積み上げるしかない。


 言葉ではなく、行動で。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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