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爺さん、報酬は弾んでもらうぜ。

12



「ふ、ふざけるなよ・・・・・ッ」


普段は周りを見下して偉そうにふんぞり返ってる奴ほど挑発には弱いもんだ。



そんで、目の前にいるこの金髪の優男もそういう輩の同類だ。



手首に巻いていた数珠型のアーティファクトを振りかざし、スグルが意識を集中させて念じ始める。




すると居間に瘴気と共に黒い気配が漂ってきた。


漂う瘴気が形作られ、鋭い毒針を持った羽虫や吸血コウモリ、青白く燃える髑髏へと変化した。


具現化現象だ。



死霊術系統の技か。


居間にいた使用人たちが大慌てで、その場から逃げ出していく。


メイドの持っていた銀の盆がひっくり返ってたぜ。




数珠の表面に彫られた文字が黒光りすると、同時に死霊の群れが俺に襲い掛かってきた。



発動が遅いな。


余裕ぶってるのか、それともスキルがつかいこなせてないか。



まあ、後者だろうな。





俺はプラズマのネットを放って死霊の群れを素早く消滅させると、スグルの鼻先まで接近し、みぞおちに拳をめり込ませた。



白目を剥いてその場に崩れ落ちるスグル、さて、どうしてやろうか。




俺は失神したスグルを見下ろしながら思案した。


こいつを始末するのは簡単だが、それじゃあ、芸がない。




そうだなあ、慰謝料って名目で金かアイテムでもせしめてやろうか。



毟り取れるもんは毟り取っておくに限るからな。



俺はスグルの襟首を掴むと、何度か揺さぶってやった。





だけど、奴さんはまだ伸びたままだ。



俺はスグルの頬を何度か引っ叩いてやった。




「おい、オネンネするのはまだ早いぞ」


それでもこいつは起きてこない。


こういっちゃなんだが、シマダの奴のほうが格段に上だな。



こいつはレベルとアーティファクトにアグラかいてるだけのスカポンタンだ。





そうこうしている内に当のシマダがやってきて、俺を止めた。



「カズヤ、スグルの坊ちゃんは一応、イツカお嬢様の見合い相手でな」


少しばかり困惑した表情を浮かべているが、その奥にはざまあみろとでも言いたげな感情が覗いているシマダ。



こいつもこのバカタレのお坊ちゃんの事は気に食わないようだな。


スグルよ、お前どんだけ嫌われてんだよ。



「こんなボンクラのボンボンがか?」


レッドアダーがシマダに言う。


レイバンのサングラスを掛け直しながら無言でシマダが頷いた。



「一応は家柄同士の付き合いがあるからな。もっとも翁も大事な孫娘のお嬢様を三木家の坊ちゃんに嫁がせる気はないだろうが」



俺は手首に巻かれた数珠を頂戴すると、スグルを床に放り出した。


どさっと、音を立てて奴の身体がタイルに転がる。



「なるほどね。まあ、そんじゃあ詫び料はこの数珠だけで勘弁してやるか。それでシマダのおっちゃん、爺さんからの要件ってのは何だ?」




「それなら詳しい話は翁の書斎でしよう。それと俺はまだ二十代だぞ」


「おいおい、サバ読みすぎだろ、おっちゃん」



俺が首を横に振って見せるとシマダが鼻息を荒くした。




それから使用人たちにスグルを医務室に運ぶようにシマダが告げると、俺に目配せする。


俺は黙ってシマダの後をついていった。




13




床材がマホガニーの廊下、40メートル先には曲がり角が見えた。


右側の壁にはタペストリーや絵画が掛けられ、左側には等間隔にドアが並ぶ。


3人のメイドたちが手分けして、壁や床を磨いている以外は人の姿はない。



俺はシマダのすぐ後ろをゆっくり歩いた。


廊下の角を曲がった。


そこから直線で3メートルの距離に爺さんの執務室を兼ねた書斎があった。



シマダがドアを三回ノックした。


「シマダです。客人カズヤを連れて参りました」



そう、シマダが告げるとドアが開かれた。



おれはとっととと入室した。





広さは12坪ほど、床は大理石のタイル、中央には霊力を備えた老樹製の机。


右側の壁には、竹の巻物に紙製の本からホログラフィックストレージに最新の量子メモリのガジェットが並んでいた。


まさに富の象徴だな。



あの革張りの本一冊で、でっかいスクラップヤード一つ買えそうだ。




「それで爺さん、俺に何の用だ。また護衛の依頼か?」



おれは単刀直入に切り出した。




「ああ、その件についてだが、もうまどろっこしいからこちらのほうで対処しようと思ってのう」




「根本から叩き潰そうってわけか。でもよ、爺さん、あんたを殺したがってる連中は多そうだ」




「お前の言う通り、潰しても潰しても後から湧いてくる。まるでイタチごっこじゃ。が、見せしめに徹底的に蹂躙してやれば当分大人しくなる」




「それで俺に殺し屋どもとその依頼人を始末しろってか。以前にも言ったが刺客の真似事は受けかねるぞ、爺さん。

俺は殺すときは自分の意志で殺すことにしてるんでな」




「お前のポリシーは受け入れる。それにな、お互いにドンパチやるのも金がかかるじゃろ。だからお互いに選んだ者同士で戦わせるという方法もあるんじゃよ」




「代理戦争か」


「そういうことじゃな。証人は他の名家達じゃ。約束を破れば、証人達が敵に回るし、血の契約も交わすから代償はでかいぞ」




「まあ、抗争で街ぶっ壊して命と資産をじゃかじゃか削るよりはいいわな。合理的って奴だ」



レッドアダーが小馬鹿にしたように笑い出した。




「それでルールはなんだ、爺さん?」





「今回のルールは単純、3対3で殺し合う。それだけじゃ。武器、罠、スキル、魔術、アイテムも制限なし、好きにやればいい。本物のバトルロワイヤルじゃな」



「暇を持て余した金持ち連中が好みそうな話だな。それでこっちの兵隊は?」



「残り二人は精鋭を用意しておるわい。手練れのな。まあ、少々金はかかったが」




「どこのどいつを雇ったんだか」




「プロの傭兵じゃよ。元々は英彦山で修業しておった修験者兄弟だったんじゃがな」



英彦山ひこさんといえば三大修験の霊山の一つだったな」





「その通りじゃ。羽黒山はぐろさん熊野大峰山くまのおおみねさんに並ぶ霊峰の一つよ」



爺さんが顎を撫でさすりながら言う。




「なるほどな。じゃあ、敵さんの情報はどうだ?」



「それなら調べがついとるわ。平均して41レベルじゃな」


俺は渡された資料を眺めた。



どいつも名前を耳にしたことがある連中だ。





「Aランカーの覚醒者チームってわけか。それで報酬は弾んでもらえるんだろうな、爺さん」


「ああ、勿論じゃよ」


「そこら辺は後でゆっくり詰めようじゃねえか」



俺は客用の革張り椅子に腰掛けると、背もたれに背中を沈めた。


やっぱり金の掛かった椅子だけはあるな。


嫌になるくらい座り心地が良いときやがる。



俺は淹れてもらった紅茶を飲みながら少しばかりくつろいだ。



すると書斎の扉が静かに開き、身長224センチを誇る筋骨隆々とした二人組の男が入ってきた。



山伏装束姿で右手に錫杖を持っている。




なるほど、こいつらが修験者兄弟か。



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