白道教を荒らすか(三人称視点)
22
最初は優しい口調でカズヤは二人組に問いただした。
素直に白状するなら手荒な真似はしないと。
それに対して、二人の男はカズヤの頬に唾を吐くとせせら笑いながら罵倒するだけだった。
これでは埒が明かないと考えたカズヤは、レッドアダーを使って、二人に幻覚を見せてやることにした。
レッドアダーが二人の脳にイメージを送り込む。
セロトニン、ノルアドレナリン等の神経伝達物質を過剰に分泌させて悪夢を見せる魂胆だ。
目を覚ますと二人組は地面に埋められていた。
ただし首だけは地面から突き出している。
二人の男は辺りを見回した。
黒いフードを被った人影が錆びたノコギリを男の片方の首に押し当てる。
鉄錆の匂いと冷たい刃の感触が、男の首筋に伝わった瞬間、ノコギリが引かれた。
引き裂ける肉とともに襲い掛かる激痛に男が絶叫した。
夢だというのに、痛みだけは生々しく再現してある。
男達は交互に、錆びたノコギリで首を斬られる悪夢に発狂寸前の様子だった。
首筋にノコギリの赤錆びた刃が食い込み、肉を引き裂く感覚、頸椎まで削られながらそれでも死ぬことができない。
血まみれになった首を切り落とされて視界が暗転したかと思えば、最初の状態に戻っている。
まさに悪夢そのものだ。
二度目のノコギリ引きが始まろうとした途端、男達は自分たちの知っている情報を洗いざらい吐き出し始めた。
カズヤとレッドアダーが黙って聞きながら自分たちで入手した情報と照らし合わせる。
「どうやら嘘はついてないみたいだな、カズヤ」
「そうだな。知りたい情報も聞き出せたし、ここらで勘弁してやるか」
23
白道教教祖のジヒョンは祭壇の間で頭を抱えていた。
生首がジヒョンに直接届けられたせいだ。
差出人は不明、それと教団内部のスキャンダルの書かれた手紙も生首と一緒に同封されていた。
生首の正体は、教団お抱えの暗殺者部隊の隊長のものだった。
手紙の内容はこれまで白道教が行ってきた暗殺、人体実験、禁呪についてだ。
敵対組織にこの事が知られれば、連中は大義名分を手に入れたとばかりに攻めてくるだろう。
白道教を嗅ぎまわっていた野良犬一匹を始末するつもりが、まさかこんな事態に陥るとは。
ジヒョンは奥歯をギリギリと噛み締めた。
ジヒョンは残忍だが根は小心者だ。
弱い者には高圧的だが、強そうな相手にはすぐ及び腰になる。
ジヒョンはすぐに三木家に連絡を取ると、そのまま自室に籠った。
それから三日後、再びジヒョンに小包が届いた。
中身は数珠だ。
それも三木スグルに譲り渡した呪物系のアーティファクトだ。
ああ、これでもう相手がだれか分かった。
アリーナ戦での話は三木家からも聞き及んでいる。
ジヒョンは思わず身震いした。
気づかぬうちに脂汗が浮かんでいた。
突然、部屋中にリトル・リチャードの<のっぽのサリー>が響き渡った。
ハイテンポなピアノとリトル・リチャードの陽気な歌声──この部屋の雰囲気とは不釣り合いすぎる。
(こいつ、狂人か・・・・・・?)
ジヒョンは小包の裏にある手紙に目を向けた。
そこには金と道具を差し出せとだけ書かれていた。
ジヒョンはニンマリと嗤った。
相手の目的が分かったなら対処はいくらでも打てる。
壁に埋め込まれた隠し金庫を開け、金と呪物を引き出すとジヒョンは罠を仕掛けることにした。
このまま素直に金を差し出しても後から強請られ続けるのは目に見えているからだ。
確かにAランカー3人を討ち取る化け物を相手に正面から戦うのは分が悪すぎる。
自分など一瞬で殺されるだろう。
だが、搦手ならどうだろうか。
ジヒョンは金とアイテムを詰めたトランクに罠を仕掛けると、指定された23区のはずれに手下を向かわせた。
その頃、カズヤは教団本部に侵入し、センサーを解除しながらジヒョンの自室へと向かっていた。




