崩壊
朝、俺とウェン、ナハトはウリの部屋にまで集合するように連絡を受けて来ていた。
「で、なんのようだ?」
「それがな。昼にアルが来るって言ってただろ?」
「アルに何かあったのか!?」
いつもは静かなナハトがかなりの勢いで叫ぶ。そりゃそうだ。カップル、側から見れば夫婦にすら見えた二人だ。それほどまでに愛し合っていた二人。何かあったのなら焦るに決まっている。
「いや、逆だ」
「ただいまー!」
ウリの後ろから現れたのはオレンジ髪の小柄な少女。
「あ…」
安堵からかナハトは泣きながら少女に抱きつく。
「もー暑苦しいよ」
「良いでしょ…数年ぶりなんですから」
「はぁ…ごめんねみんな。ナハトが泣き止んでからで良いかな?」
俺たちは無言で同意し部屋を出て二人だけにした。入れたのはそれから1時間程度経った後だった。
「すみません。取り乱しました。」
そういうナハトの目はまだ赤くなっている。相当泣いたのだろう。
「で、なんでそんなに早く帰って来れたんだ?」
「あー、それはたまたまウリと出会ってね」
「は?」
「いやぁ、前回の件があったから俺もできるだけ周囲を警戒していたんだ。そしたらアルの気配を感じてな」
「そうか。それで今に至るってことか」
「まぁそんな感じだね。」
「てかアルちゃんはまた魔眼の色濃くなった?」
「あー、そうかも。ここ数ヶ月でね」
アルは元々赤の中でもピンクに近い色だった。それでも俺たちと同等の力だったからすごいんだが、今じゃそれが赤く染まっている。
「じゃあ、予定通り明日、敵陣に乗り込む。いいな」
「あぁ」
その日はそこで解散した。だがそれが間違えだった。
拠点が半壊した。
「おい!何してんだ!」
犯人は堂々と目の前に立っている。
「何って、破壊だよ」
「テメェ…アル!!」
そこにいたのはアルだった。
「アル…なんで…」
ナハトはその現実を理解できていない。これじゃ使い物にならない。
「ウリ!」
「予想外だ。裏切るとはな」
「ははは、まだ仲間だって思ってたなんてね。」
すでに何人もの死体が積み上がっている。返り血でアルの服は赤く染まっている。
「くそ…一旦ここで気絶させる。」
「舐めてるの?」
グサッと俺の体を何かが貫く。
「これは…」
「私の魔眼の能力忘れてた?」
俺の体には血で出来上がった槍が刺さっていた。アルの魔眼の能力、それは視界内の血を操る能力。敵を殺せば殺すほど強くなる能力。昔の時点では固形にはできていなかったが水圧カッターの様にして切ることができていた。それだけでも脅威だったのに…
「くそが!魔眼展開!」
アルの作り出した血の槍は再び液体に戻っていく。
「流石スノーだね。私たちのリーダーなだけある。もし貴方が最初からルーラーのメンバーだったらこんなことにはならなかったかもね」
「ッ…はぁ…はぁ…」
「スノー…負けないでください」
俺の傷は一瞬にして回復する。
「ナハト…もう大丈夫なのか?」
「いえ、まだショックで戦えそうにはありません。今にも吐きそうですし、頭もうまく回っていません。でも私はもう一度、アルと話さなければならない」
「私はもうナハトなんてどうでも良いんだけどね」
「もう黙って!」
そこら中に転がっている剣や刀が意志を持ったかのようにアルに襲いかかる。
「君も厄介だね。ウェン」
「もうお前なんて仲間じゃない」
「あら?あの頃に戻ってるのかな?」
「黙れ!」
再び無数の刃がアルを襲う。だがその全てをアルは血の塊によって防ぎきる。
「君の能力の片方は知ってるよ。物体を特定の箇所に送るだよね。しかも転移の強化版、転移は途中の移動は存在しない。でも君のは途中の移動を自分の意思でオンオフできる。できないこともあるっぽいけどね。例えば自分で正確に認識していない場所には転移しかできなかったり、一度何かに阻止されたら移動はキャンセルされたり…」
「なんでそんなことを…」
「私が本当に何年もここのことを調べてないと思ってたの?裏切るって決めたのがいつだと思ってるの?それに私が一番警戒してるのは貴方たち四人なんだよ。それこそ伝説のゼロなんかよりも警戒している。特にスノー」
「そうかよ…ウェン、息を合わせろ!ウリはナハトを頼む」
「あぁ」
「はは、残念。もう時間切れ」
アルがそういうと20人程度の黒フードの人物が現れる。
「ウェンはここで殺したかったけど、しょうがないか。次は殺してあげる」
「くそ野郎が!」
俺が攻撃しようと近くの剣をとって切り掛かるとフードの一人がそれを防いでくる。
「この前ぶりですね」
「テメェ…」
先の事件で俺と戦った黒フードの男だ。こいつがいたら無闇にアルに近づけない。
「今回はやり合いには来ていません。一旦、あなた方の戦力を削ぐことと拠点の破壊です。うちのボスは慎重派でね。それではまた」
そしてそいつらは一瞬で消え去った。
「あああああああああ!」
ナハトは朝とは別の意味で泣き叫ぶのだった。




