第40話 オークキングとの決着
俺は回復術で大和たちの体を元に戻していた。
死んだ者を生き返らすことはできないが、肉体の復元なら問題ない。
せめて綺麗な体で、みんなに見送って欲しいと俺は考えた。
「……みんなのところに帰って、そんでからお別れだな」
眠るように死んでいる大和を見て、磯さんはポツリとそう呟いた。
「司くん、円ちゃんも……」
由乃はすでに回復をしていたが、円の怪我はまだ治していない。
以前、触れようとして拒絶されたので彼女の顔色をうかがっていたところだ。
円は俺の視線に気づき、少し戸惑いながらも俺に近づいてきた。
「……私はオークに火を点けられた。あの日以来、他人の手が怖くなって……だから司のことも拒否した」
「怖いなら別にいいよ。今だって死ぬような怪我を負っているわけでもないしね」
「ううん。司なら大丈夫」
「?」
「だって……お兄ちゃんみたいだったから」
やんわりと微笑んで円は俺の顔を覗き込んで来る。
レアな笑みを見て、少し心が躍る俺がいた。
「だったら触れるよ」
「うん」
俺は手を伸ばし、円の頭に触れた。
血が出ている個所に治癒の光を当てる。
「後、円は知らないだろうけど」
「うん?」
「俺の回復術は、古い傷だってなんだって完璧に治しちゃうんだぜ」
「古い……傷」
パーッと円の体が光を放つ。
「これ……」
自分の体を見下ろしている円。
徐々に光は収まっていき――
そこにはまごうことなき美少女の姿があった。
「円ちゃん……やっぱり可愛いです」
「え……えええ!?」
顔を覆っていた布を外し、腕と脚に巻いていた包帯を解く円。
綺麗になった自分の全身を見て驚き、そして涙を流し出した。
空も晴れはじめ、眩い陽の光が円に降り注ぐ。
「まさか……元の綺麗な体に戻れるなんて……夢みたい」
そう言って円は、満面の笑みを俺に向けた。
あまりの美しさに、俺の胸は高鳴る。
「よかったですね円ちゃん」
「うん……うん」
「これで円ちゃんも、司くんのものですよ」
「うん……」
「おい。どさくさに紛れて何言ってんだよ」
ニッコリ可愛い笑みを向ける由乃。
「円ちゃんを司くんの妻の一人としましょう」
「しないから。なんでお前は俺をろくでもない男に仕立て上げようとするんだよ。妻なんて一人いたらそれでいいでしょ」
「ですけど司くんほどの男性に、一人の女性だけとはつり合いが取れないというかなんというか……」
「つり合いなんてどうでもいいわ」
「私……頑張る」
「円も由乃に毒されてんじゃないよ。バカな考えは捨てようね」
俺は呆れて嘆息する。
それを見ていた磯さんがふっと笑う。
「辛いこともいっぱいあったし、犠牲も沢山あった。だけどよ……これでトシマは俺たち人間の手に返ってきたってことだよな」
「そうだね。ここも多分、シンジュクみたいにモンスターがいなくなるはずだ」
完全に晴れた空を見上げなら、円は眩しそうに目を細めている。
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん……みんな。終わったよ。司がトシマを取り戻してくれた」
「さすが司くんです。私たちが歯が立たなかったオークキングをあっさり倒しちゃいましたもんね」
「あれはビックリ。司でももう少し苦戦すると思ってた」
「私は全く思っていませんでした! 司くんならズバッと倒してくれると信じてましたから!」
由乃は前からだけど……なんだか円まで俺のことを見る目がキラキラしはじめている気がする。
円……頼むからこれ以上、由乃から変な影響を受けないでくれ。
俺はちょっぴり青い顔で円を視界に納めながらそう願う。
「あ、そういえば司くん。さっきはどこに行ってたのですか?」
「ああ……」
排除する者……
自分のことを、天使に近い存在だと言っていた。
人間ではなく、モンスターでもない存在。
違反する者を排除する……
現在のこの世界のルールを創り、それを管理している者たちがいるんだろうか?
奴は俺をイレギュラーだと言っていたが……合成師のことで間違いないだろう。
そして、今回イレギュラーを消し損ねたということは、また他の誰かが俺を消しに来るってことだよな……
俺はため息をつきながら、今日あったことを由乃たちに説明した。
「排除する者……そんな存在が……」
「そいつに手間取っている間に大和たちがやられた。直接的には関係ないだろうけど、腹が立つよ」
「ですが、そんな存在に目を付けられるとはさすが司くんとしか言いようがないですね。この世の超越者たちが恐れる超越者。これは超々越者を名乗ってもいいのではないでしょうか?」
「そんなクソダサい字名、何があっても名乗らないからね」
「え~。じゃあ超越神とかどうですか?」
「勝手に俺を神格化しないでくれ。俺はただの人間ですから」
俺はモンスターだけではなく、新たなる敵の存在が判明して少しげんなりしていた。
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