第41話 トウキョウ統合
平穏の訪れたトシマ。
俺はホテル跡の一室で睡眠を取っていた。
建物はボロボロになっていたが、ベッドが無事だったことと、まだ周囲と比べて損傷具合がましなホテルだったので、ここで休憩を取ることになったのだ。
由乃と円は別の部屋で眠っていて、俺は一人で目を覚ました。
「…………」
目が覚めると、いつも感じる。
本当はおかしくなった世界は夢だったのではないだろうか。と。
そこでこれが現実なのか、それを確かめる為にステータス画面を開く。
当然のように開いてしまうステータス画面。
こうしてまた現実だということを思い知らせれてしまう。
「……?」
ステータス画面の記録に表示されている文字を、俺は目を擦ってよく確認した。
『トウキョウの未開放エリアを全て統合しました』
というものであった。
エリアの統合って……どういうことだ?
目を覚ました由乃と円と共に、俺たちは北西へと向かった。
向かった先は、イタハシ。
イタハシに差し掛かろうとした時、大勢の人がこちらに雪崩れ込んできた。
「なあ、トシマが安全って本当か?」
「ああ。もう無事だよ」
ワッと歓喜の声を上げる人たち。
涙を流して喜んでいる。
「ここから南に下っていけば、磯嶋さんという方がいるので、その人のところに向かって下さい。きっと面倒を見てくれますよ」
由乃が笑顔でその人たちに言う。
磯嶋さんたちとはオークキングを倒した後に別れた。
彼はみんなと共にトシマを復興させることに力を注ぐらしい。
由乃はそんな磯嶋さんがいる場所を教えてあげていた。
「そうか……ありがとう」
「なあ。トウキョウを統合って話……どういうことか分かるか?」
俺は先頭にいた男性に、そう訊いた。
「あ、ああ……いきなりエリアの境目が無くなってな……他のエリアのモンスターたちもイタハシに侵入してきて、もうどうしようもなくなったんだよ。逆も一緒だろうな。イタハシから別のエリアに移動していた」
「そうか……とにかく、ここは安全だから安心してくれ」
その人たちは笑顔を浮かべて、南へと向かって行った。
「……以前より危険になった」
「そういうことだろうな。ここからはさらに危険になると思う。逃げるなら今のうちだぞ」
「司くんが逃げるなら、私も逃げます」
「私も一緒。司が行くなら行く」
「……じゃあ、進むという選択しかないんだな」
俺は二人にもう一度確認する。
だが、二人は俺について来るつもりしか無いようで、静かに首肯した。
「よし」
俺たちは、前に歩き出す。
そしてイタハシに侵入した。
◇◇◇◇◇◇◇
「ガアアアアアアッ!」
青い肌に鬼の角。
人間よりも一回り大きなモンスター、オーガが襲い来る。
俺はボウガンを構え、オーガの頭を狙い撃つ。
弾ける頭部。
そのままその場にいるオーガたちを殲滅していく。
「すごい……司は強すぎ」
「当然ですっ。強いからこそ司くんなのです」
などと、よく意味の分からないことを口にしながら由乃はオーガを吹き飛ばす。
そこで俺は、『合成Ⅱ』となったジョブスキルのことを思い出した。
合成Ⅱ――
『合成』はカードのみの合成しかできなかったが、合成Ⅱは、スキル同士を合成したり、武器の攻撃にスキルを合成できるようになるというものだった。
さっそく『合成Ⅱ』を試すために、ボウガンに水の力を宿す。
すると矢の先に水の膜が張り、水属性の矢へと変化した。
それをこちらに向かって来るオーガに向かって放つ。
いつも以上に、派手に飛び散るモンスターの肉体。
威力が上昇している。
MPを消費するものの、威力が上がるということか。
だが俺にはMPなんて関係ないから、純粋に火力が上がったというだけのことだった。
ありがたい。
「ガヴァアアア!!」
オーガの後方から、赤い毛並みの犬型モンスター、ガルムが駆けて来る。
猛スピードで走るガルムは、約20匹ほどだった。
「速い……でも全部倒――」
円が剣を構えるが、俺は水の力を宿した矢を瞬間で敵の数だけ放った。
ボボボボンと破裂していくガルム。
円はその光景を目の当たりにして、ポカンとしていた。
「……司はメチャクチャ……」
「当然ですっ。メチャクチャだからこそ――」
また由乃が円に俺のことを胸を張って語っている。
オーガにガルム。
簡単に倒せはしたものの、やはりオークたちと比べると強くなっている。
敵のレベルがまた上がったのか。
しかし、エリアが統合されたという話だが……エリアマスターはどうなるんだ?
エリアマスターっていうぐらいだから、一匹しかいないんだよな?
その一匹がまた強くなっているのは間違いないとしても……もしかしたらだが、統合されたことにより、より強力になっていたりはしないだろうか?
そうなったら面倒だな……まぁ遠くから狙い撃ちにしてやればいいか。
周囲にモンスターがいなくなったことを確認して、俺はボウガンをカードに戻す。
由乃と円も武器をしまった。
「これからどうしましょうか?」
「とりあえずは、人を探そう。困っている人がいたら助けてあげて、望むならシンジュクかトシマに送ってやろう」
「了解です。ですがさすがは司くんですね。人の安全を第一に考えてあげるなんて……これはもう王様になるべくしてなる存在なのではっ!?」
「違う。俺はそんな存在じゃない」
「そっか……司はそういう存在なのか……」
「…………」
円まで由乃の話に乗り出して、面倒が増えた。
俺は嘆息して、勝手に一人で歩き出す。
二人は話をしながら俺について来る。
この二人のことも守ってあげないといけないけど……
もし、敵の強さが尋常じゃ無かったら……
俺はほんのり不安な気持ちを抱きつつ、先へ進んだ。
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