第39話 対決オークキング③
今まさに、円がオークキングに燃やされそうになっていた。
俺は考えるよりも早く瞬間移動をし、奴の手から落ちたタイマツをキャッチする。
「……お兄ちゃん……?」
円が虚ろな瞳で、俺を見ている。
安堵したような、それでいて懐かしそうな、そんな表情をしていた。
「……誰だお前は?」
「円のお兄ちゃん……じゃないけど、保護者みたいなものさ」
「……で、その保護者は自分の首を貢ぎに来てくれたのか?」
「いや。お前の首を取りに来たんだよ」
俺は円を抱きかかえ、近くに倒れている由乃の場所に瞬間移動し、彼女もわきに抱きかかえた。
「……凄いスピードだな……だが、その女はスピードがあろうとも俺に負けたがな」
「まだ負けてないだろ」
「は?」
「まだ勝負の途中さ。これは……団体戦だからな」
さらに俺は磯さんの居場所まで瞬間移動し、二人を下ろし、周囲のオークたちを風の刃で切り裂いた。
「『エアスラッシャー』」
「ガッ……」「グゲエェエエ」
ズタボロになり、大地に転がるオークたち。
オークキングはまだ冷静に俺の動きを見据えていた。
「……大和はどうした?」
俺は周りを見渡すが、大和の姿は確認できなかった。
「オ、オークキングの後ろに……」
「後ろって……っ!」
由乃の声に俺はオークキングの背後に視線を向けた。
するとそこには……大和たちの首が槍によって突き立てられていた。
「…………」
「お前もここに並ぶんだ。寂しくないだろ?」
「……ごめん」
「? くくく。命乞いかぁ? 今俺の同胞がお前に殺されたんだ。謝ったところで許すわけないだろ」
「……ごめん、大和」
俺は心底後悔していた。
みんなを一旦、シンジュクに帰しておけば……
フィルの挑発に乗らなければ……
そう少し早く来れていれば……
どうしようもない過ぎたことばかりが頭の中をグルグル回る。
行き場の無い憤りが腹の中で暴れまわる。
そして、冷酷なまでの感情が俺の思考を支配しはじめる。
「……お前、救えねえよ」
「救えない? なぜ俺がお前に救ってもらわなければならないんだ? 助けて欲しいのはお前たちの方だろ?」
俺は静かに骸骨の仮面を被り、怒りの炎を爆発させる。
「お前は、ここで葬る」
俺の空気が変わったことを察知したオークキングは、左手を上げオークたちに命令を下す。
「やれ!」
「ウオオオオオオオオオオ!!!!!」
オークとハイオークの集団が、俺たちに向かって進軍を開始する。
四方八方から襲い来るオークたちに、磯さんはゴクリと息を飲んでいた。
「つ、司……どうすんだ!?」
「大丈夫だ。あんたはゆっくり休んでればいい」
襲い来るオークたち。
俺は冷静に土の上級術を発動する。
「『ノームスワンプ』」
「ナ、ナンダ!」「アシモトガ……」
俺を中心にした5メートルほどを除き、周囲の全てが、沼と化した大地に飲み込まれていく。
校舎もオークもハイオークも。
みな等しく、ズブズブと沈んでいく。
「……つつつ、司……お前、メチャクチャだな」
全てのオークがいなくなったのを目の当たりにした磯さんが口をパクパクさせてそう言った。
オークキングも、目を丸くしたまま固まっている。
「は? ……はぁ?」
何が起きたのか理解できていない様子だ。
だがそんなことはどうでもいい。
俺はただオークキングを倒すため、奴の目の前に瞬間移動する。
「な!? この……化け物が!」
「化け物はお前だ」
全力で巨大な包丁を振り下ろすオークキング。
俺はその包丁を拳で迎え撃ち、叩き壊す。
「なっ!!?」
「人間だろうがモンスターだろうが、命を粗末にするやつ……それこそが本当の化け物だ」
「ひっ……」
オークキングは踵を返し逃げ出そうとしたが、腰を抜かして動けなくなっていた。
「人の命はオモチャじゃない。他人の心が分からないやつは心を入れ替えるか……死ぬ他道はない」
「こ、心を入れ替える……だから許してくれ……な?」
「断る」
「え?」
俺はオークキングの体を宙に放り投げ、重力に従い落下してくるのを待った。
「俺の仲間の命を侮辱した。それに――円との約束だ。許す余地何て1ミリもない」
「ま、待っ――」
「『連牙』」
俺の連続拳が、オークキングの全身に炸裂する。
両足は破裂し、腹は何度も鉄をハンマーで殴ったように陥没し、顔面はグチャグチャになっていた。
「ぶひゃあああああ!!!!」
吹き飛んでいくオークキング。
その先にいるのは――円。
「後はお前の好きにしろ、円」
彼女は手に持っていた剣を杖替わりにしゆっくりと立ち上がる。
円の足元辺りにオークキングの体は落下し、血まみれの顔で彼女を見上げていた。
「ひ……助け……」
円は息を荒くし、感情のまま、怒りのままに剣を振り下ろす。
「うわあああああああああ!!!」
「や、やめひょ……たひゅけ……」
何度も何度もオークキングは顔面を斬られ、いつしか絶命していた。
「ああああああ!」
「円! もういいじゃねえか!」
磯さんが円の手を止めると、彼女は剣を取りこぼし膝をついて泣き出した。
天を仰ぎ、ただただ大声で大粒の涙を流し続けていた。
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