第17話 コボルトキング①
「ぬふふっ。ぬふふふふっ」
「お、お願いだ……こんなことはやめてくれ……」
過去に車が行き来していた大きな交差点。
そこで二人の男がコボルトたちに囲まれていた。
ゲスな笑い声を漏らすコボルトに悲壮な表情で訴えかける男。
犬の頭部に人間のような肉体。
体は他のコボルトたちよりも大きく、大きな剣を背中に背負っている。
体毛は全て白く、動きやすそうな軽鎧を身にまとうこのコボルトこそが、コボルトキングであり、シンジュクを支配することを任されたエリアマスターだ。
コボルトキングは今、女性の後ろから首を掴んで悦に浸っていた。
女性の身長は平均ぐらいであったが、背後にいるコボルトキングはそれよりもはるかに大きい。
女性はコボルトキングの腹ぐらいまでの身長ほどだ。
コボルトキングの野性的な臭いと苦しみに、顔を歪めている女性の姿がある。
「ぬふふ。別に構わないぞ。この女が死んでもいいならな」
「くっ……」
コボルトキングの後ろで数十のコボルトがクツクツと笑っている。
人間の男と男が戦っている様子を愉しんでいるのだ。
実の兄弟に殺し合いをさせ観戦している最中で、実に不快な空気に満ちていた。
弟は膝をつき、武器を失っている。
兄は血まみれで槍を手に持っていた。
兄は妻を人質に取られ、弟との殺し合いを余儀なくされている。
だが、弟に止めをさすことへ躊躇していた。
当然だ。兄が弟を殺せるものか。
普通の感性があればそんなことできるはずがない。
できるわけがないのだ。
しかし、妻が人質に取られていて逆らうわけにもいかない。
男は大いに迷っていた。
妻を取るか、弟を取るか。
だが、どちらも犠牲にはできない。
ただ葛藤するだけで何もできなかった。
「うーん。やる気がないみたいだな。では仕方がない」
「うっ……ううう」
「ま、待て!」
コボルトキングは掴んでいる女の首に力を込め出した。
妻の苦しい声に、男は咄嗟に声を張る。
だが弟を殺す覚悟など一切無かった。
「ぬふふっ。弟を殺すのか?」
「そ……それは……」
困り果てる男。
どうすればいいのだ。
俺はどうすれば……
男が悩んでいる、その時だった。
「あ、兄貴。俺を殺せ」
「な、何を言っている! そんなことできるわけ……」
「俺はもうダメだ……だからせめて、兄貴たちの為に死にたい。頼む。二人で生き延びてくれ」
兄夫婦の為に命を捨てる覚悟をする弟。
兄はその弟の気持ちに涙を流す。
「…………」
「やれ……やれぇ!」
「うわあああ!」
兄は否定する心に逆らい、弟の心臓に槍を突き刺した。
血を吐き出しながら倒れる弟を見て、涙をボトボトと流す。
「も、もういいだろ! そいつを離してくれ!」
「ぬふふっ。楽しい余興をありがとう。約束通り、離してやろう」
女性から手を離すコボルトキング。
「あなた……」
解放された女性も、犠牲になった義弟に涙を流しながら夫の下へと駆け出す。
しかし――
背中の大剣を握ったコボルトキングは、女性の首をそれではねてしまった。
「う……うわあああ!」
突然の妻の死に、気が狂いそうな男は涙を流しながらコボルトキングに特攻を仕掛ける。
「無駄無駄。お前では俺に勝てない。ぬふふ」
男は鋭い槍を放つが、コボルトキングの大剣に槍ごと体を真っ二つにされてしまう。
大量の血を噴き出しながら、二つになった体は地面に倒れる。
コボルトたちが大笑いしそこはまるで宴会場のようになっていた。
「ぬふふっ。楽しいなぁ。人間同士を殺し合わせるのは楽しいな」
「オレタチモタノシイ! キングノカンガエルコトオモシロイ!」
「そうだろそうだろ。俺はいつでもお前たちを楽しませることを考えているからなぁ」
数匹のコボルトが大剣に付いた血を拭きとり、コボルトキングはそれを背中に背負い直す。
すると遠くから走って来る1匹のコボルト。
コボルトキングの下まで駆けより、笑みを浮かべながら報告する。
「キング! アッチニニンゲンイタ!」
「そうか。じゃあまた狩りに行くかぁ」
報告したコボルトはコボルトキングに頭を撫でられて気持ちよさそうにしていた。
次はどうやって人間で遊ぶか思案するコボルトキング。
柔和な笑みで気持ちの悪い笑い声を出す。
「うーん。次は追いかけっこでもさせるか」
「オイカケッコ、オモシロソウ!」
「ぬふふ」
コボルトキングの提案に歓声で応えるコボルトたち。
コボルトたちはお祭り気分で大騒ぎをしている。
「よーし。そろそろ行くかぁ」
「オオー!!」
コボルトキングは足を踏み出し、コボルトが見つけた人間の居場所へと移動を開始する。
それに続いて、その場にいるコボルトたちも進軍を開始し出した。
ザッザッザッと大きな音を立てながらコボルトの大軍は歩んで行く。
足元には弄んだ人間たちの死体があり、肉と血の上を平気で歩いている。
次の標的をどう愉しむか。
もう既にそれしか考えていないコボルトたちは忌まわしい笑い顔をしながら前進していた。
最強のコボルトキングを筆頭に。
彼が人間ごときに負けるわけがないと考えているコボルトたち。
悠然とし態度で。軽い足取りで。
次の人間の下へと歩行して行く。
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