第16話 由乃の訓練④
「『狂人化』」
由乃はセットしたアクティブスキル、狂人化を発動した。
敵はコボルトが3匹。
彼女の攻撃力を考えれば負ける要素はない。
狂人化を使った由乃の目が赤く染まっていく。
戦闘力が高まっていく気配を感じる。
狂人化の効果は、攻撃力を増幅する代わりに理性を失うという物だ。
自身の中に眠る野生を解き放ち、野生のままに暴れ回るという、危険極まりないスキル。
攻撃力に関しては十分高いが、色々心配だから目を離せない。
由乃は斧を両手で握り、コボルトたちと対峙している。
俺はいつでもサポートができるように、土の初級術を準備しておく。
「……はぁあ!」
少し戸惑いはあったが、敵に向かって駆け出す由乃。
狂人と化していても、トラウマはぬぐい切れない様子だ。
心の傷は、こんなものぐらいじゃ誤魔化しきれないか。
だがそれでも、平常の由乃と比べれば勢いはある。
恐怖心はある物の、コボルトに攻撃を仕掛けていた。
スピードも平常より速く、撃だけで1匹を仕留める。
続くコボルトも横ふりの一閃で豪快に散らせ、最後の1匹は斧を投げて首をはねた。
「おおおおおおおおお!!」
なんか、見てて怖い。
まさに狂人・ベルセルク。
勝利の雄たけびまで上げる始末だ。
◇◇◇◇◇◇◇
俺たちは3日ほどかけてコボルトの狩りをした。
普段の由乃はコボルト相手には怖気づいてしまうが、狂人化している状態では迷いが減るように思える。
強さも増して、コボルトぐらいなら何匹来ようが負けないぐらいに力を得ていた。
天野 由乃
LV12
ジョブ バトルマスター
HP 240(+12)
MP 80
攻撃力 120(+60)
防御力 80
敏捷 64(+7)
魔力 56
運 64
ジョブスキル
ハイパーチャージ
武器スキル
斧 9
アクティブスキル
狂人化Ⅳ 8
パッシブスキル
HP増加(微小)
攻撃力増加(大)
敏捷増加(小)
自己再生(微弱)
毒耐性(小)
こうやって見ると、俺と比べて能力の上がり方は大きいな。
やはり普通に考えた場合、上位職は圧倒的有利と言われるのがよく分かる。
「ちょっとずつですが、私も強くなってきてますね」
「うん」
「とりあえずの目標、司くんを養えるぐらいまでは頑張ります」
「そ、そう。頑張ってね」
だから俺はそんなこと求めてないんだけど。
俺も俺とて、変化はあった。
一つは純粋な戦闘力の向上。
そして、探索スキルが最大ランクまで上昇したこと。
それにもう一つ。
最大ランクまで合成したカード。
これと同じカードが二つ出来上がったのだ。
俺のホルダーに表示されているのは、『鉄壁』と『鉄壁』。
これが合成選択に出てきていて、また一つにできるようだった。
試しにこれを合成しようとしたら――
『ランクアップ』カードに変換される。というものだった。
鉄壁カードはもう必要ないので合成してみて効果を確認すると、合成によって他のカードのランクを上昇させられるという物のようだ。
俺はそれを見て、自分の心が躍るのが分かった。
これがあれば、ほとんどドロップしないカードでも最高ランクまで上げられるってことだよな。
そう考えた俺は、貯まっているポイントでガチャを引きまくり、とにかく同カードを合成しまくった。
そして、『術・発動時間短縮(微弱)』カードにランクアップカードを合成する。
カードはあっという間に『術・発動時間短縮(強)』になった。
効果は術の発動時間が半分になるというものだ。
さらに出来上がったランクアップカードを合成してやると、LRクラスの『術・発動時間0』に変化した。
おいおい。
発動時間0って。
中級術の上の上級術は、熟練度0で発動時間は1分。
その上の最上級術が5分。
さらにその上の『禁呪』は発動時間が10分必要となる。
それが0?
まだ中級以上の魔術は回復術以外使用したことないが……それらを溜め無しで使えると。
中級でも相当な威力だったのに、それの3つ上のランクの物が間髪入れず使えると。
これもうメチャクチャだな。
俺は少しの戸惑いと喜びを感じ、大きく笑った。
「ど、どうしたんですか?」
「いや、なんでもないんだけどね」
由乃はポカンと俺に視線を向けている。
急に笑い出したら怖いよね。ごめん。
「ところで……司くんはどれぐらいの能力になってるんですか?」
「俺? ま、そこそこかな」
と、自分のステータスを見ながら曖昧な返事をしておいた。
島田 司
LV99
ジョブ 合成師
HP 3620(+7240)
MP 1311(+2622)
攻撃力 1810(+3620)
防御力 1311(+2622)
敏捷 1311(+2622)
魔力 1810(+3620)
運 1448(+2896)
ジョブスキル
合成
武器スキル
体術 99
弩 99
アクティブスキル
火術Ⅴ 99
水術Ⅴ
風術Ⅴ
土術Ⅴ 20
回復術Ⅴ 5
心術Ⅴ 12
鷹の目Ⅴ 99
潜伏Ⅴ 99
警戒Ⅴ 99
探索Ⅴ 99
盗むⅤ 99
こんな数字見せたらビックリで済まないだろ。
とりあえず今は、由乃にも内緒にしておこう。
「由乃」
「?」
「……明日、コボルトキングを探しに行く」
「! はい!」
由乃を強くするため少しより道をしてしまったが、今やるべきことに着手することにした。
由乃の両親を殺したコボルトキング。
このまま放って置いたら被害も拡大しそうだし、そろそろ戦いを挑みに行こう。
今の俺なら……勝てるよな?
難しそうだとしても、潜伏で隠れながら長時間戦ってやる。
思い詰めるような表情の由乃の顔を見ながら、俺はコボルトキングと戦う決意をした。
明日……必ず見つけて倒してやる。
そう決断すると自分の胸が、やけに熱くなっているのに気づいた。
由乃の両親の仇をとらせてもらう。
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