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治癒魔法の間違った使い方~戦場を駆ける回復要員~  作者: くろかた
第十三章 大規模会談、悪魔の暗躍
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第二百八十七話

昨日に引き続き、二話目の更新です。

前話を見ていない方はまずはそちらをー。

 リングル王国内の墓地に埋葬されている遺体が悪魔によって盗まれた。

 盗まれた遺体は七人。

 アウルさんを筆頭としたローズの部下達のもの。

 彼女が、リングル王国の大隊長として戦っていた頃の、最も信頼していた部下であり、あのネロ・アージェンスの部下と互角以上に渡り合った猛者たち。

 その生前の実力を悪魔に狙われ、その遺体は棺から盗まれた。

 なにに利用しようとしているかだなんて知りたくもない。

 遺体が盗まれた知らせを受けた王国はすぐさま他国に警告を促そうとしていたらしいが、“悪魔が亡骸を盗んでいる”という話を信じる可能性が低いという理由と、会談———連合国会談を控えている今、リングル王国は不用意な行動はできないという理由からその考えは見送られた。

 しかし、せめて脅威を伝えようというロイド様の考えから“墓を荒らす不届き者”が出没しているという知らせは届けられたらしい。


「———連合国会談」


 会談の正式な名称も決まり、それが行われる日も決まった。

 魔王に敗北を認めさせてから約、一か月。

 かなりの速さで戦後の処理と、会談への準備が整われていく中―――僕はベッドの上であぐらをかきながら、今後のことを考えていた。

 同部屋のルームメイトであるトングのいびきを耳にしながら考えに耽る。


「一週間後……か」


 ファルガ様が率先して協力しているからか、とてつもなく速い。

 ミアラークでも、会談を行う会場がほぼほぼ完成しているのもすごいと思う。

 会談を行う上で、不安な部分はたくさんある。

 魔王とか、魔族への認識とか……悪魔のことだとか。

 なにより、参加するのが人間だけではなく亜人達の長も含められているのも大変だ。


「ハヤテさんも来るんだよな……」


 個人的に契約しているフーバードにより送られて来た文。

 そこにはハヤテさんが、今回の連合国会談に参加するという話が記されていた。


「頑張らなきゃな……よし、そろそろ寝るか」


 そう思い、机の魔具の明かりを消してベッドに横になろうとした時、窓の方からコンコン、という音が聞こえる。

 見れば、光でできた小鳥のようなものが窓をつついている姿が見える。

 一瞬どういうことか分からなかったが、光、と認識して何が起きているのか察する。


「……もしかして」


 窓を開くと、光でできた鳥はそのまま下へと降りて―――宿舎の前にいるカズキの肩に留まる。 


「……カズキ?」

「遅くにごめん。ちょっといいか?」

「ああ、全然構わないよ」


 夜とはいえ、時間的には12時を回っていないくらいだ。

 靴を履いて、外に出た僕は宿舎の前にいるカズキの元に向かうと、彼は申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「どうしたの?」

「ちょっと、話したいことがあってな。本当は明日でも良かったんだけど、すぐに話をするべきだなって思って」


 カズキがこれから何を話そうとしているのか、僕は察する。

 そうか、決めたんだな。

 なら僕は、彼の答えを聞くべきだ。

 とりあえず話がしやすいように、宿舎から離れた開けた場所に移動する。


「なんか、あの時を思い出すな」


 月明かりに照らされた原っぱに腰を下ろしたカズキは、懐かしそうにそう呟いた。

 あの時というと……。


「最初の戦いの前にカズキがここにきた時?」

「ああ。……俺が、戦うことを怖がって、お前に相談した時だ」


 僕達が最初に経験した魔王軍との戦い。

 それを前にしたカズキは、戦うことに恐怖していた。

 今でもあの時の話は覚えている。


「あの時もいきなり来てびっくりしたよ」

「ははは……結構、考えなしに城を抜け出したからな」

「因みに、その後先輩も来てたよ」

「え、マジかよ。……はは、なんだ、お見通しだったのか」


 さりげなく後ろの林に目を向けると、見覚えのある二つの人影が見える。

 先輩と……もう一人は多分、フラナさんだな。

 僕と目があった二人は、信じられないといった顔をして木の後ろに隠れてしまう。


「ウサト、どうした?」

「ああ、いや、なんでもないよ」


 心配で様子を見に来たのかな?

 なぜか隠れているので、とりあえずカズキには黙っておこう。


「……俺さ、今でも戦いは怖いし、できるだけしたくない」

「うん」

「これからの世界に勇者としての力が必要ないなら、俺は喜んでそれを手放すつもりだ」


 カズキならそうするだろう。

 彼が戦うことが嫌いなことはよく分かっている。

 だからこそ勇者としての立場も必要がなくなれば、捨てることもいとわない。


「ちょっと変な例えをするけど、ゲームでも小説とかさ、最後の敵を倒したら大抵は終わりだよな」

「……」

「俺達にとっての最後の敵が魔王だった。魔王領に入る前は魔王を倒せば、全部終わって勇者として戦うこともないんだなって、俺は心のどこかで思い込んでいた」


 カズキの言葉を無言で聞く。


「でも、そんな甘い話はないんだよな。魔王を倒して魔王軍がなくなっても終わりじゃない。この世界はまだまだ続いていくんだ」

「……そう、だね」


 これからは魔族と人間の問題になっていく。

 それに加えて、悪魔も暗躍し始めている。


「ウサト、俺この世界に残る」


 唐突に、宣言された言葉に思わずカズキの顔を見る。

 彼は夜空を見上げながら、振り切った様子で背を伸ばした。


「実はさ。答え自体は少し前から決まっていたんだ。まだまだ俺にはやるべきことがある。先輩とウサトがこの世界に残るから、残るんじゃない。俺は、俺の意志でこの世界に残って、勇者としての務めを果たそう……てな」

「カズキ……」

「だけど、今ここで決心した。ようやく、俺は前に進むことができる」


 カズキは苦笑しながら、自身の胸に手を添える。


「正直さ、すっげぇ悲しい。もう二度と父さんと母さんに会えないと思うと、どうにもならない気持ちになって……言葉にできないくらいにやるせない気持ちになる」

「……」

「だけど、思ったんだ。このまま何もかもかなぐり捨てて元の世界に帰って俺は胸を張って生きられるのかって。両親に、顔向けできる生き方ができたのかってな」


 僕は、ただ彼の言葉を聞く。

 ここで下手な慰めは口にするべきじゃない。

 そうすること自体、しっかりと考え、選択した彼に失礼なことだからだ


「だから、俺は自分の生き方に後悔しないようにする」

「……そっか」


 カズキは、どちらの世界を選んでいてもおかしくはなかった。

 元の平穏な生活と家族を求めて元の世界に帰ることも、今のようにこの世界に残る可能性も同じくらいあった。

 それを分けた理由は僕も分からない。

 でも、僕は……彼が悩みに悩んで出した答えを尊重したいと思う。


「じゃあ、お互い頑張ろう」

「ああ、困った時はいつでも頼ってくれよ」


 もうカズキに迷いはない。

 その事実に喜びながらも、僕は後ろへと声を投げかける。


「———もう、心配はないですね?」

「え? どうしたウサト?」


 後ろに声をかけた僕に不思議そうな顔をするカズキだが、林から出てきた先輩とフラナさんに驚きの表情を浮かべる。


「フラナ、それに先輩も!? ど、どうして……」

「いえ、普通に心配だったから……」


 ばつが悪そうな顔をするフラナさん。

 一方で先輩は、腕を組みながらいつものような自信に溢れた顔をしている。


「さすがはウサト君だ。私の隠形に気付くとは」

「すぐに気づけましたけれど……」


 ばっちり木の影から黒髪見えていましたけれど。

 隠形と呼ぶには雑すぎると思うのですが。

 しかし、先輩は余裕を崩さず、むしろ機嫌をよくする。


「フッ、それは遠回しに、私がどこにいようとも見つけれる、という暗喩ととらえてもいいのかな……!?」

「まあ、先輩ならすぐにどこにいるか分かりそうですね」


 この人ほど目立つ存在がいないだろう。

 噂とかすぐに出回りそうだし、いざ探そうと思ったらあっさり居場所が分かりそうだ。


「……」

「……いや、普通に照れないでくださいよ」


 そんな反応されると、こっちも普通に照れるわ。

 まあ、そんなやり取りを交わしながら僕はカズキへと向き直る。


「まずは今度行われる会談を無事に終わらせなきゃな」

「ああ、何が来ても対処できるように気を引き締めていこう」


 会談は一週間後。

 それまでにできることを全てやっておこう。

 すると、カズキの隣にいるフラナさんが声をかけてくる。


「その会談だけどさ、私もついていくことに決まったんだ」

「え、そうなの?」

「お父さん……エルフ族の族長も参加するって言っていてね。私もミアラークに来るようにって言われちゃったんだ」


 そうか、獣人だけではなくエルフもか……。

 本当に大規模な会談になりそうだな。


「これはいよいよ何があってもいいように、備えておかなきゃな……」


 ファルガ様の正体も明かすことになるだろうから、多くの意味で歴史に残るものになるかもしれない。


「そういえばさ、ウサト君」

「はい?」


 先輩の声に振り向く。

 なにやら思い悩んだように顎に指を添えている彼女に首を傾げる。


「魔王の見張り……というか出迎えは、君と……多分、私かカズキ君のどちらかになるんだろうけど……一つ、気になったことがあるんだ」

「気になったこと……?」

「魔王は一人でやってくるはずがない。必ず護衛の者がついてくると思うんだけど……誰が来るのかなって」

「……」


 たしかに一般の兵士じゃ護衛にならないし、軍団長クラスの人員が護衛に来るだろう。

 軍団長クラス……。

 脳裏に笑顔でこちらに殴りかかってくる腐れ縁の闇魔法使いの姿がよぎる。


「ま、まあ、誰が来ても同じですよ。悪魔呼ばわりされて怖がられるよりは、マシですし」

「そ、そう……」


 あいつは面倒な奴ではあるが、嫌っているわけじゃない。

 もし魔王についてきたとしてもあちらには魔王の護衛としての立場があるので、いきなり殴りかかってはこないだろう。

 ……殴りかかってこないよね?

 どうしよう、今から心配になってきたぞ。

カズキ、決断回。

カズキは、どちらの世界を選んでいてもおかしくないのが、面白い部分でもあります。


次回の更新は明日の18時を予定しております。

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― 新着の感想 ―
心情語った回でカズキ帰っちゃうのかあって思い込んで悲しい気持ちで読み進めてたけど、残ったかーー!!
[一言] こういうシーンで会話するのってヒロインだと思うんですよ。 だから、カズキはヒロインって事で良いですよね!
[一言] 挨拶の殴り合いは常識ですよ?(ボケ ほら前にもあったじゃないですか 当時は敵同士だったけども (カンナギが封印されてたとこでの章
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