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第1話(二) 【平穏はやって来ない】

着替える為に、捺莉を外に出す。

少し草臥れた制服に袖を通し、中身の入って無い薄い鞄を持って部屋から出る。

一人暮らしには少々広い5LDKの我が家は、いつもの静けさで俺を見送った。


盗られる物など何も無いが取りあえず戸締まりを確認して、門に寄り掛かって暇そうにしている捺莉に声を掛ける。


 「遅ーいっ。いっつもそうやってのんびりしてるから遅刻するんだよ」


 「仕方無いだろ。イルカのカー君が甘えてきて離してくれなかったんだから」


 「ゆー君の家の何処にイルカなんて飼うスペースがあるのよ……そもそもイルカって私たちは飼っちゃ駄目だし」


 「本当はナウマン象のナウ君だ」


高校へ通学するまでの馬鹿なやり取り。

いつも通りとなってしまった事に喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。

以前、この状況を相談したら友人にモンゴリアンチョップを打たれた。

そして血の涙を流しつつ


 「なんだその羨ましい状況はぁぁっ!!」


と脱兎の如く駆けていってしまった。

俺と捺莉の関係を邪推する奴は結構居るが、こいつに限ってそういう事はありえない。

極限まで目のピントをずらし、ぼやかしてもせいぜい妹に見る事しか出来ない。


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