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第1話(一) 【平穏はやって来ない】
「朝っぱらから近所迷惑な奴だな」
部屋のドアを開け、先程の声の主と対面する。
俺、籠谷袖樹は一人暮らしである。
即ち、目の前の女は不法侵入した挙げ句ドアを隔てても尚、響き渡る声で人の名前を叫ぶと言う暴挙をやってのけたのだ。
……文句の一つでも言いたくなると言う物である。
「頼まれてる事なんだから、近所迷惑じゃないもん」
小さい躯を精一杯反らせて言い放つ。
『頼まれてる事』とは、俺の両親が出張で家から出ていく時に、目の前の少女……袖凪捺莉に合い鍵を渡した後
「柚樹を宜しくな(ね)」
と、言い残して去っていった。
捺莉とは生まれる前からの近所付き合いだったのが原因か。
当時、一人暮らしがエンジョイ出来るぜヤッホイとか浮かれてた俺が絶望の縁に叩き落とされたのはまた別のお話。
何をどうコイツに宜しくされるのかは良く分からないが、捺莉なりに考えた結果がこの罰ゲーム並の仕打ちなのである。
平穏が約束されていた筈の俺の朝を返せこの野郎。
俺の意見を述べた所で小学生並の論と女の武器、涙目戦法でこっちの体力と時間と気力の無駄になるので最近は心で思うだけとなっている




