人望
「良いの?警察に届け出なくて。」会社で木下さんに伝えると心配された。
「ええ、でももし社内の人間だと大ごとになりますし。犯人が分かれば内密に処理もできます。」と波瑠が話す。
「さすがネゴシエーター波瑠さんね。まさか、また三笠先生が助けてくれるとはね。」木下さんがクスクスと笑う。
「清貴の奥様が生き霊に取り憑かれてた事件は、結局奥様いや大河内先輩、交通事故で亡くなって三笠先生悔しがってたそうね。
今回の花村ホールディングスの馬頭観音の呪いは見事に解決して下さったけど。」と話す。
『あれ?もしかしたら、見返したいってリーダーの亡くなった奥様の事故に関わる事?』とチラッと思った。
「まあ、奥様も花村の社員だったんですね。知りませんでした。」波瑠が無邪気に返すと木下の顔が少し歪む。
「ええ、私や清貴が新卒で入った時のトレーナーだったのよ。仕事教えていただいたんだけど…まさか…ね。」とまた少し苦笑いして終わった。
波瑠はこういう時深追いしない。
それに新規プロジェクトを立ち上げた清貴と木下がすでに付き合ってるのは明白なので、元奥様先輩の話はご法度だろう。もう亡くなってるし。蒸し返す必要はない。
「それより誰でしょうね?波瑠さんが新規プロジェクト入ったのは昨日辞令がネット上に上がったので社員なら皆知ってますが?」と秘書の大河内さんが質問する。
「そうね。残念だけど会社関係者な気がするわ。
波瑠さんのそばでアナタが異動なると嫌がる人とか居た?」と波瑠に聞く。
「今朝、デスクを片付けてこちらに来ましたが花束を頂いて。急な話なのに。
私が小坂くんの尻拭いで苦労してたの皆さん知ってたので、喜んで送り出していただきました。
あの中に居るとは思えません。」と波瑠が首を振る。
「じゃあ、新規プロジェクトメンバー内?
アナタが問題解決のプロだと知ってる人は多いけど。
小坂くん、本当にとにかく上には噛み付くクセがあったから。
有名な問題児だったから。
次は自分が解決されると?あなたを狙う?」木下さんが笑う。
そうなのだ。誰にもさすがに命を狙われるほど恨まれてる気はしない。
だが、三笠は後ろに生き霊の小坂くんと多分女は結婚した後輩が居ると言ってた。
自分を欺いて結婚できたのだからザマアミロだと思うのだが…なんで恨まれてる???
「こんな言い方申し訳ないんですが、波瑠さんは皆に好かれて信頼されてて、それって周りとトラブルばかり起こしてる人間から見たら…妬ましいんじゃないんですかね?」大河内さんが済まなさそうに話す。
「エッ、そういう考えもあるんだ?」波瑠が驚く。
「男性はやはり能力主義の人多いじゃないですか?
目に見える数字持ってるとか?
波瑠さんはそつなくこなすけど抜きん出て何かに強いとか無いのに、結局困ったら皆波瑠さん頼るじゃないですか?
…人望?
それって男の憧れじゃないですか?」と秘書の大河内さんが語る。
ビックリして波瑠は口がアングリする。
「他の人が説得しても動かない人が、波瑠さんが話すと聞く耳持つって…やっぱり妬ましいですよ。」とまさかの大河内さんに言われる。
「あらら、大河内さんでも人を妬むのね。
波瑠さんの能力は努力で身に付くものでは無いからね〜こればっかりは天性だから。」と面白そうに木下さんが笑う。
「ずっと人生損しかしてないけどね〜人望とかで幸せになれる訳じゃないし。」と独り言を言ってると豊洲フロンティアのアクアリウムみたいなエントランスに三笠が現れた。
皆が神様が来たみたいに会釈してる。
確かにフロンティアビルを救った人だが!
こうやって見ると、整った綺麗な顔と長い細い指先に
お高いスーツが上品だ。
高貴さへ感じる。
「…なんで、そんなに妬まれてるのか?今日も後ろにどっさり抱えてるね〜」と言われてため息が漏れる。
「私は人望より個人的な幸せが欲しいなあ〜」と顔をテーブルに突っ伏す。
「うん?愛が欲しいなら付き合う?
好みはガチムチのゴスロリだけど、僕の趣味に付き合ってくれるなら喜んで付き合うよ。」と三笠がまたニヤ〜ッとする。




