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「それでは、ヒシフォートへ行きましょう。」
楓花たちの乗った車は、そこは小高い丘にいた。小高い丘から道路が伸びている。
その見下ろした先に大きな壁に囲まれた街が見えてきた。壁の中の小高い丘には大きなお城が建っていた。
前回は、飛んで宮殿に入ったし、帰りは出ていくだけだったから、城の外からの様子は見ていなかった。塀を出て少してから慌ててナビに空間移動位置指定したので、塀の脇ではなかったのだ。
ステルスを解いて、ゆっくりと走る。
道行く人たちが、ちらを見てぎょっとして道を開けてくれた。
門の外に小麦畑が広がっていて、美しい金色をしていた。
畑では刈り取り作業をしている人たちがいた。
「小麦ですか?美しいですね。」
「はい、ここは小麦畑に囲まれているので、黄金の道と呼ばれています。」
「素敵ですね。」
門にやってくると、門番たちは礼を取りすぐに通してくれる。
流石はヒシ家の納めている地だ。
町に入り道を進みいくつかの門を通り抜けていく。
そうしてお城にたどり着いた。
「では、リリーさん、サナ16日後に会いにくるからね。」
「待っているから必ずきてね。」
「うん、またね。」
敬一郎さんが、屋敷の人にリリーさんとサナを紹介し、預かってくれた。それから今度は敬一郎さんとララを連れて別の町へ向かった。
「ララはどんな家の子ですか?」
「この国で3番目に大きな商会の娘です。話を聞く限り父親の行商についていたようです。おそらく魔の森に近いアートンにいると思いますので、そちらへ向かっていなければ商会のある場所へ向かいましょう。」
「あの、それなら先に行ったほうがよかったのでは?」
「そうも思いましたが、あの子たちにそれを見せるのも…」
「そうですね。気が付かなかったわ。」
「それにこの車であれば、この世界としては早い移動ができますから誤差の範囲です。」
「そうですか…。」
アートンに到着したので、門番に敬一郎が聞いた。
「ここにカシリア商会は、来ているか?」
「は!閣下、ご質問にお答えします。カシリア商会はリラの宿へ宿泊しております。」
「わかった。ありがとう。」
敬一郎は門番に何かを渡し、門の中へと入った。
「リラの宿は、この町一番の高級宿です。広場を通りぬけ、川沿いを走ってください。」
「わかりました。」
しばらく走らせると、馬車がたくさん停められている場所が見えてきた。
「ここです。」
「わかりました。停めますね。」
敬一郎が、車を降りて宿へと入っていく。
私が行っても話が通じないだろうから、頼るしかないけれど立場のある人を行かせてよかったのかと少し考えてしまった。
楓花はキャビンへ移動した。
「ララさん、ここにご家族がいるかもしれないから降りる準備をしてね。服は持った?」
「うん…」
「それと、これを渡しておくわね。これは消毒薬と癒し水と軟膏よ。」
「これは…どうするの?」
「ケガをしたら傷口を湯冷ましで洗ってこの消毒薬をひと吹きしてね。軟膏は傷口を洗ってから塗ると傷の痛みを和らげてくれるわ。頭に傷が残っているから、そこにはこの軟膏を塗ってほしいの。頭を洗って乾かしてからほんの少し塗るのよ。頭を洗うのに、これをもっていって。」
「うん、わかった。」
楓花は、リンスインシャンプーも追加で渡した。
「この癒しの水は、具合の悪い時に飲むときっと体が楽になると思うわ。」
「ポーション?」
「少し違うけど、誰にも見せずに自分で使うのよ。」
「うん、わかった。もう会えない?」
「会いに行くわ。王都近くの町に住んでいるってわかったもの。必ず行くからね。」
「約束よ。」
「約束するわ。」
話をしていると、宿から人々が出てきた。
敬一郎が、男性を連れて出てきた。
面差しがララとよく似ている。
「ララ、よかった。会えるわよ。」
楓花はララを抱きしめると、キャビンのドアを開けた。
ララが下りて敬一郎と一緒にいる男に抱き着いた。
「パパ!パパぁ…」
「ララ、よかった。よかった。」
「ララさんのお父様ですね。」
「はい、娘を助けてくれた大魔導士様ですね。」
「楓花と申します。実は、車で娘さんにぶつかってしまって…」
「え…大魔導士様の車に当たったのですか?」
「はい、治療はしましたが、本当に申し訳ありません。」
楓花が謝ったのだが、周囲の反応がおかしかった。
ララの父親は、その場で土下座をした。
楓花は慌てて立たせようとしたが、応じてもらえない。
「大変申し訳ありません。娘が大魔導士様の車に当たったとは、本当に…本当に申し訳ありません。」
「立ってください。それはわざとではありませんし、ぶつかったのは私の不注意です。私がお嬢さんにケガをさせてしまって、治療をしたとはいえ…許してもらえることではありません。申し訳ないと…」
「許してもらうなどとんでもない。大魔導士様申しあり輪ません」
話が嚙み合っていない?
楓花は戸惑って敬一郎を見た。
「カリシア会頭、楓花さんは非常にお優しいお方だ。あなたの娘を許しているし、治療もしている。今は治っていないかもしれないと心配もしてくださっている。」
「おぉ…なんと慈悲深い…」
「できるだけの治療はしたのですが…ここに傷が残ってしまっていまして…。」
父親はそこでやっとララの体を確認した。確認と言っても手足を見て、顔を見て楓花が指さした頭を見た。
「このくらい、髪で隠れるので問題はありません。」
「そういってくださると、でも治るように私も治療を続けますので…。」
「え…まだ治療をしてくださるので?」
「はい、もちろんです。」
「なんと…ありがとうございます。ありがとうございます。」
加害者は、自分なのにと楓花は戸惑っていた。
「あ…こちら見つけたときに来ていた服です。それと…靴はなかったので、こちらで用意しました。今、間に合わせの服を着てもらっていて…その…かわいらしい服とか持っていないので申し訳ないのですが、こちらは差し上げます。」
「服に靴まで?」
「はい…」
「これからどうなさいますか?」
敬一郎が会頭へ問いかけた。
「娘を探してもらうために冒険者ギルドへ捜索依頼をかけていましたが、取り下げて店のある町へ帰ろうと思います。どうしても寄らねばならないところがあるので、寄りながらですが…」
「町へ帰るのにどのくらいかかりますか?」
「そうですね…15日16日くらいでしょうか…。」
「そうですか。ではその頃にお店へ伺います。」
「え?お越しくださるのですか?」
「はい、ララさんのケガが治ったか確認しなくてはいけません。」
「わかりました。お気をつけてお越しください。私たちもお待ちしております。」
「はい、よろしくお願いします。そうだ!これ私の作った干し肉です。こちらはそのまま食べるとおいしいです。こちらはお湯をかけるとすぐに肉に戻りますし、そのまま食べてもいいですよ。」
楓花は干し肉を4袋手渡した。
薄味の方にしたのは、ララが薄味好みだと思ったからだ。
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