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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第6章 娘たち

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7


 使い捨てのカップを持ち、ガードの外にいる騎士たちの元へ行く。

 するとリハルドさんが走ってきた。


 「お疲れ様です。お時間がかかりそうなので、こちらの飲み物をどうぞ。」

 「この方はグリフォンの使い手であり、我々の相談役の大魔導士のフーカ様だ。ありがたくいただきなさい。」

 「はい!」


 わっと沸き上がった。

 

 「これは何ですか?」

 「はちみつ入りの紅茶です。体が温まりますよ。この魔の森は寒いでしょう。」

 「はい、実はすっかり冷えています。」

 「あ…ガードの中で休みますか?」

 「よろしいのでしょうか?」

 「車の方に行かなければかまわないですよ。」

 「では、お言葉に甘えて…魔の森は怖くて…。」

 

 騎士たちにもシールを貼り、中へ招いた。

 

 「今日は獣が出てきませんね。そういえば…昨夜も…」

 「ああ、犯罪者たちが獣除けを大量に焚いていたようです。ガードと湖に挟まれて、荷車を出せなくなったために必死だったようですね。我々はグリフォンがいるから襲われる可能性は低いですが…」

 「まぁ、そうだったの…」

 「獣除けは高いですからね。」

 

 そんな物があるのかという驚きと、無意識で閉じ込めていたことを今頃知った。

 彼らがどこにも行かないはずだ。子供たちを取り返そうとしていて、ガードを叩いていたと思ったけれど、自分たちが動けないからだったのか。

 

 「どおりで2晩もガードを叩くはずね。」

 「はい?」

 「あの…今なんと?」

 「あの方たち、2晩もガードを叩いていたから煩くて…」

 「このガードを展開して3日目ですか?」

 「そうですよ。」

 「なんと…」

 「これは、本当に大魔導士様ですね。大変失礼しました。」

 「いえ、私は大層な人ではないので普通に接してください。私は戻りますので失礼します。」


 ガードという物は、通常大魔導士の力に応じて厚さや保持期間が異なる。

 楓花の場合は、チートアイテムのおかげで自分自身も車の周辺もガードを張っているが、そんなアイテムさえ公には存在していない。

 騎士団の騎士たちは、物腰の柔らかい楓花の風貌とその実力(本当はただの道具の力)に驚愕していた。

 そして、その背中を見送ってようやくポットのお茶を注いだ。


 「この軽いカップも不思議だが、このお茶うまい!」

 「紅茶って…もっと渋みのあるものだけど、はちみつたっぷりで甘くておいしい。」

 

 グリフォン隊の騎士の大半は、貴族である。

 違う者のほとんどは、騎士爵家の子かその才を認められ騎士爵家へ養子に入った者だった。

 紅茶は、正式な茶会など特別な時に飲むものであり、独特の渋みを楽しむものだった。

 このように体が温まるからと飲むようなものではない。

しかも、はちみつというのは希少品でおいそれとは口にできない。それがこれほど甘く感じられるほどの量を使うなんて考えたこともなかった。

 つまり、あのご婦人かパートナーは、それが出来るほどの財力の持ち主だと、その場の誰もが認識した。

 楓花は単純に、最近よく売られているはちみつ紅茶を気に入っており、持ってきたのだ。楓花が選んだ品には甘さを付けるためのアスパルテームなどは使われていない。紅茶とはちみつ粉末だけというシンプルなものだった。そのため、あまり馴染みのない人には甘味が足りないだろうという気遣いで砂糖を足しただけだった。

 

 楓花が、サナと敬一郎のいるブルーシートへ戻った。

 先ほどは普通の紅茶を出したので、今度は車からもってきたはちみつ紅茶を淹れた。


 「これは?はちみつの香りが…」

 「はちみつ紅茶です。はちみつの粉末が入っていてほんのり甘いの…甘味が足りなければこの砂糖を足してくださいね。」

 

 そう言って、花の飾りのついた角砂糖の入った壺を取り出した。


 「きれーこれなあに?」

 「お砂糖よ。かわいいでしょう。頂きものなので遠慮なくどうぞ。」

 

 楓花はサナに砂糖を1つ渡した。

 敬一郎は、苦笑いをしつつはちみつ紅茶を飲んだ。

 この世界では砂糖は高級品だ。しかもこのような細工物などないだろう。

 だが、こういった物は敬一郎も見慣れていた。家に届く贈答品の紅茶セットなどにはこういった砂糖がついているのだ。これもおそらくそういったものだろう。




 後ろにいる騎士団長であるリハルドは、その砂糖を見て腰を抜かしていた。

 出された紅茶だけでも十分なのに、お代わりとしてはちみつ入りを出されてしまった。

 しかも、このように美しい砂糖を贈った人物は、フーカ様に熱烈な好意を抱いているに違いない。

 これほど美しい砂糖など、どれほどの職人に依頼して作らせたのか…そう思うのだが、肝心のフーカ様は、それを閣下に勧めている。贈ったものの相手にもされていないようだ。報われない御仁だと、会ってもいない相手に同情していた。

 

 ガード内はいつになく賑やかで楓花は周囲を見ていた。

 天龍のメンバーと一緒だと賑やかだけれど、ここまで大人数が入ったのは初めてだと思って眺めていた。

 

 

 「では、聞き取りは終わりました。ララさんは、王都近くの町の商家の娘だと思います。サナさんは見当が付きませんでした。リリーさんは帰せないので、どうするかを考えなくてはなりません。」

 「そうですか。では、ララさんは帰られるのね?」

 「はい、もちろんです。」

 「お願いしてもいいですか?」

 「はい、お任せください。」

 「サナとリリーさんはどうしましょうか?」

 「フーカと一緒にいたい。」

 「そうねぇ…私も一緒にいたいけど、ずっとここにはいられないのよね…。連れて帰るわけにもいかないし…」

 「そんな…」

 「そうですね…では、私の屋敷で働きますか?働くといっても行儀見習いですが…。」

 「それ、サナには無理では?」

 「わたしおてつだいできるよ!」

 

 「それでしたら、預かってもらえますか?夏休みはこちらにいるようにするので連れ出します。」

 「かまいません。では、普段は私の屋敷で行儀見習いをしてもらい、楓花さんがこちらに来るときにはご自由に連れ出してください。」

 「ありがとうございます。」

 「では、私の屋敷に行きましょうか。」

 「もちろんです。」


 楓花と敬一郎はグリフォンに帰るように命じ、車へ乗り込んだ。子供たち3人もキャビンに乗り、ソファーに座っているように約束した。




 騎士団のメンバーは、車を見送ってから顔を見合わせた。


 「団長、見ましたか閣下の顔…」

 「ああ、フーカ様が心配で仕方がないようだな。」

 「あの閣下があのような顔をするとは…」

 「閣下も人間でしたね。氷の元帥などと呼ばれているのに…あのように怒りを見せるとは…。」

 「いやぁ…年増好みとは…」

 「でもフーカ様ならありですよ。あの滑らかな肌を見ました?陶器みたいでした。」

 「真っ黒で真っ直ぐな髪が、サラサラとして美しかったです。」

 「それに…子供たちを見る目が優しくて、人攫いから助けてくれたのがあのようなお方だったら、離れたくなくなってしまいます。」

 「そうだろうなぁ…」

 「あのはちみつ入りの紅茶…甘くて幸せな味でした。」

 「そうだな、あれはうまかった…。」


 騎士団のメンバーは、軽口を言いながらグリフォンに乗る準備を終えて飛び立ち、ヒシ家の屋敷のあるヒシフォートへと向かった。




読んでくださりありがとうございます。

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