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誘拐犯の荷馬車にいる子供たちが、息をのんでこちらを見ている。
車の前に少女を立たせているので、安心してこちらに来てくれるはずだ。
楓花は口に指先を当てて、静かにするように合図した。子供は2人いて目をしっかり開いてこちらを見ていた。
「ゆっくりでいいから降りて…助けにきたの…」
「本当?」
「あの子もいるわ。シールを張るから腕を出して。」
楓花はドアを開けて、少女を見せた。
すると子供の1人が飛び降りて、少女の元へと駆けていこうとしてガードに阻まれた。
「つっ」
「しっ」
その子の額にシールを貼り中へ入れる。
もう一人の子は、立ち上がれないらしい。
今のやり取りで、見張りが気づくのではないかとハラハラしながら、もう1人の子にシールを貼り抱き上げた。
すぐにガード内へ入る。
「この!」
男は気が付き立ち上がったが、楓花と子供たちはガード内へ逃げ込んだので、近づけない。
楓花は腕に抱えている子を降ろし、手に結ばれているロープを切った。
「腕を出してくれる?」
「うん」
少女に抱き着いている子の手のロープも切る。
「さてと…お名前を聞いてもいいかしら?私は楓花よ。」
「フーカ?わたしはララ」
車で、楓花がはねてしまった少女が名乗った。それを見て他の子も名乗ってくれる。
「あたしはリリー」
「サナ…」
「ララさんとリリーさんとサナさんね。」
「サナさんじゃない…サナ」
サナさんはかなり幼い。敬称を付けて呼ばれることに慣れていないのだろう。
「あら、わかったわ。サナね。」
「うん…」
「では、中に入ってね。治療をしましょう。その前にシャワーを浴びて、体を洗おうね。」
「体を洗う?」
「自分でできる?できないなら一緒に浴びようか?」
「うん」
3人とも1人で、シャワーができないの?
それなら、急いで体を洗ってあげないと…あまりにも汚れていて、このままでは手当をしても膿んでしまいそうだ。
いや、待って…弱っているなら、先にポーションを飲ませよう。
リリーさんに大きなケガは見当たらないけれど、見えないだけかもしれない。
「リリーさんは、これを飲んでね。」
リリーさんには、初級ポーションを渡した。
先ほどまで抱き上げていたサナの足は、たぶん折れている。腕も折れているかもしれない。
足と腕の骨は、ずれている感じはしないけど腫れあがっていた。
位置の多少のずれは修正してくれると信じたい。
「サナはこれを飲みましょう。飲めるかな?」
「うん、飲む…」
2人とも、ポーションを飲み干してくれた。
その間に楓花は、ソファーにバスタオルを敷いた。
「サナはここに座って少し休んでいてね。リリーさんサナの隣に座って見ていてくれる?」
「うん…」
「では、ララさんから洗いましょう。」
「うん」
楓花は脱衣室のドアを開けて、ララを中に入るように促した。
「ここで服を脱いで体を洗うのよ。ここを回すとお湯が出て、こっちに回すと止まるの。体を頭も体も濡らしたら、このシャンプーで頭を洗って、このソープで体を洗うのよ。」
「あの…そういうことやったことなくて…よくわからない…」
「そう、私が一緒に入って洗ってもいいかしら?」
「うん…」
ララはシャワー室で服を脱いだ。
楓花はブラとタンクトップ、ショーツという姿になる。
楓花は、ホテルに泊まった時にもらったアメニティーセットを用意していた。
その中には、体を洗うスポンジやブラシも入っている。
「髪を梳かすからね。」
「うん、いた…」
「ごめんね。引っ張ったかな?」
「大丈夫…」
「もういいかな?」
「では、ここを回してお湯を出すわね。かけるわよ…熱くない?」
「うん、大丈夫。」
ララさんにかけたお湯は、明らかに色がついて流れてきた。これはかなり汚れている。
ボディーソープで頭から体までザっと洗って、シャワーで流した。泡が真っ黒で驚いてしまう。2回目に、リンスインシャンプーで頭を洗って流した。
2回目は手足の指の間も、脇の下もしっかりと洗いお股は、自分で洗ってもらう。多少下手でもお湯で流せばそれなりに落ちるだろう。
幸いなことにポーションが効いているようで、ケガもほとんど治っていたし、変なところもないようだった。頭の傷は治りきっていないので、ポーションをかけておく。
「目を開けていいよ。」
バスタオルで頭を拭いてから体を拭き、バスタオルで巻いた。
楓花は、そのままの恰好でララを連れて、ソファーのところへ行く。
サナたちの正面のソファーに、上の棚から出したバスタオルを敷いた。
「ララさんはここに座って待っていてね。サナさんを見ていてね。」
「うん」
「リリーさん、行きましょう。」
リリーさんも同じように汚れていて、同じように2回洗ってララさんの隣に座らせた。
「サナさん、歩けるかな?」
「ん~…」
ペタペタと歩いて見せて、はじけるような笑顔を見せた。
「痛くない!すごい、どこも痛くない!」
顔の傷はまだ消えていないけれど、痛くないならよかった。
シャワーに連れていき、同じように2回洗った。お湯に当たるのに疲れたらしく最後はしゃがんでしまったので、シャワー椅子を入れて座らせた。
「お顔の傷が治るお薬を塗りますね。」
「うん…これ治るの?」
「どうかな?治ったらいいなと思っているけど、やってみないとわからないね。」
そういいつつ、ガーゼにポーションを含ませて顔に当てていく。薄くなったような気はするけれど、治ったとはいいがたい。
「湯冷めするから、一回出ようね。」
ソファーに戻ると、不織布を外してバスタオルを敷いた。そこにサナを座らせた。
少し傷が薄くなったような気はする。
「サナさん、これを顔に当ててもらえる?」
「うん…」
「そうだ、みんなお腹は空いている?」
「空いている!」
「どのくらい食べていないの?」
「2日くらい?」
「そのくらい?」
2日という割には、ガリガリに痩せていた。ちょっとその日数は信用できないかな?
それとも、1回が恐ろしく少なかった?
その可能性もあるよね…。どうしようかな…。
楓花もシャワーを浴びて服に着替えた。
子供用の服はないけれど、彼女たちの服は汚れすぎている。
棚の中から、新品の女性用ショーツを取り出し、両サイドを縫って子供でも履けるようにした。
「これ履いてみて?大きすぎるなら教えて。」
「大丈夫かな?」
「落ちてこないよ。」
「つるつるで気持ちいい。」
「それならよかった。それで上に着るものだけど、子供服はないから…これでいいかな?」
サナには、レディースのSサイズの半そでTシャツを着せてウエストに紐を巻いた。この紐は、手芸のお店で売っていた紐だった。
「これでいいかな?」
「わぁ!きれいな服!いいの?着ていていいの?」
「いいよ。」
「リリーさんとララさんには短いから…長めの方を着てもらおう。これならワンピース替わりになるでしょ。」
「わぁ…わたしたちもいいの?」
「もちろん。みんなの服はお洗濯してからね。」
「うん…」
楓花は、先ほどコンロにかけていた鍋の湯が沸いたのを確認して、コンソメキューブを1つ入れた。そこにパックごはんを1つ入れて煮込む。
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