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クリスフォートが、ケントを見据えた。
「まだ帰らないでください。…干し肉とは何ですか?フーカ様と干し肉を作ったのでしょうか?」
「ああ、これだ。1枚だけやる。」
「失礼。フーカ様の手づくりとは…ん!?ん?んま~。」
クリスフォートが、一口噛みつき食べ始めると、普段装っている仮面が外れていた。
「なんですこれは?美味しいなんてものではない!それにその袋はなんだ?」
「これは、ジッパー袋と呼んでいましたね。」
「ほぉ…透明で美しい。中身がよく見える。」
「だろう?こうやって封をすると、匂いがあまりしない。」
「おぉ…本当だ。この香しさがない。」
「この袋、塩ギルドは大銀貨1枚で買っていた。」
「なんですって?」
「塩を買う時に使ったら、売ってほしいって言われていた。」
「そういうことですか、それにしても…肉を入れている袋もそうですが、肉を入れている袋もこれと同じ透明だ。液体を漏らさず…匂いも漏らさない袋とは…本当に信じがたい…。」
クリスフォートは心底感心したように呟いた。
「それはそうと、この干し肉はコショウを使っているのですか?」
「そうだ。」
「それは、フーカ様が?」
「もちろん、俺たちに入手はできない。」
「そうですね…それにしてもこの干し肉、相当な価値ですよ。」
「それはそうだろうな…」
「クリスフォートさん、これ数日前に鑑定したら270日持つと出ました。もちろん保存状態によると思うけれど…」
「え?もう一度いいですか?」
「270日です。」
「これが…それほどに?申し訳ないが、これはいくつかあるのですか?」
「まぁ…」
「それであれば、1袋譲ってはもらえませんか?」
ケントとルーシーの視線が泳いだ。
それを見て、金を積めば買えると踏んだクリスフォートは畳みかけた。
「金貨2枚でいかがですか?」
「え?」
「金貨2枚です。袋ももちろんつけてもらいます。これは、フーカ様が作ったもので、特別な袋に入っている。調査をしなくてはならないから特別高額です。これ以上は出せません。」
「わかった。それでいい。」
クリスフォートに1袋渡した。
干し肉1袋が金貨2枚…高額すぎる。
中には20数枚の肉が入っているが、1枚に大銀貨1枚相当になる。1枚に1万ダルとは…意味が分からない。いや、でも塩もコショウもたっぷりと使っていて、その価値がないとも言えない。コショウを味わう機会などほとんどないのだ。
「フーカ様は、我がギルドでも特別なお方だ。失礼のないようにしっかりとお守りしてほしい。」
「当然だ。言われなくてもそうする。」
ケント達には、クリスフォートが計算だけでフーカを認めているようには見えなかった。
「ところでギルマスはなぜ?」
「あのお方は、町を救ってくれた方だ。君たちはもちろんだが…町中の人の怪我や病を治してくださった。この田舎ではポーションやまともな薬は手に入らない。それを融通し、手当の方法を教えてくれた。あのようなお方はそういない。」
「なるほど…そういうことか。」
「もちろん、今は売ってもらっているが、領都や王都と同等の値にしてくれている。こんな田舎まで運んだら普通は高く売るものだ。」
「まぁ、あの人は自分で作るから…」
「それだ。ポーションを作れる魔導薬師様は、国内ではご隠居様ともうお二人だと聞いている。だが、その中にフーカ様はいない。」
「そうなのか?」
「そうですが、あのお方のポーションはかなり質が良い。ご隠居様のものが最高ランクだと思っていたが、それ以上だろう。それに、あのポーション以外の3種がありえないほど効果が高い。」
「へぇ…」
「薬を作り出す御業もそうだが、何よりも…あのお方は町の救世主だ。何がなんでもフーカ様は守ってください。必要な協力はする。」
「もちろんだ。頼まれなくても…そのつもりだ。」
ケント達は、家へ帰っていく。
明日からの依頼への準備もあるので忙しい。
ケントたち天龍が帰ったギルドマスターの部屋でクリスフォートは品を手に鑑定していた。
燻製肉ですね。賞味期限270日!?食べると回復時間を1/2にする!
これは、また…素晴らしい食べ物ですね。
食べて2時間は空腹を満たし、体を温める効果がある?どういうことだ?
フーカ様が持ってくる初級ポーションの効き目は強く、1本飲むところを少量にしても十分な効果があった。開封すれば日持ちはしなくなるが、戻したり直接口をつけたりしなければ1週間くらいは品質に問題ない。
3種の薬は、ポーションと同等以上の効果があるように思えた。
癒し水という物は、見たことも聞いたこともない。
軟膏は何となく想像も出来なくはないけれど、消毒薬に至っては効果が素晴らしすぎて賞賛に使うべき言葉がわからない。
クリスフォートは、補充した薬類を大切に引き出しにしまった。
1日に各種1本1個ずつまでを上限に治療していた。
治療費も安くはないので、治る怪我は自然治癒に任せる。
それなりに重症の患者だけに使う。
それでも、怪我=死という生活ではなくなっていた。
それが、この街にとってどれほどの希望なのか、フーカ様には理解できないようだ。
「ギルマス、聞きました?」
「何をですか?」
「閣下が、王様へ初級と中級のポーションと初級薬3点を献上したらしいです。」
「ほぅ…」
「それで、王様が大変喜ばれたと商人たちが噂していました。」
「そうですか…。」
噂が届く前に献上したのだろう。
そうしないと、大魔導士へお守りするという名の監禁が待っている。
あのふんわりしたフーカ様では、太刀打ちできない。後ろ盾がしっかりというというアピールだろう。
それと…ヒシフォートでは、薬を作れるというアピールか。
フーカ様は、決して若くはない。
若くないからこそ、国としては多くの薬を作って欲しいだろう。
だが、どんなに大量に作っても、使用期限がある。例え50年持つとしても、技術が失われてしまえばそれまでなのだ。
薬を作れる大魔導士様は公式には2人、そこにフーカ様が加わり3人だ。
だが、どう見てもフーカ様が最上位の薬を作れる大魔導士様だ。出来る事なら、弟子を取り育て手もらいたいと、思ってしまう。
「いや、余計な事だな。だが…願わずにはいられない。」
クリスフォートは、ヒシフォートの方角に祈りを捧げた。
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