14
残された天龍の5人とダンは大量の肉を持って家へと帰ることになった。
「誰よ。歩いて帰られるって言ったの!」
「俺だ。そしてルーシーお前だ。」
「だって、生肉の存在を忘れていたもの。あんなに売ったのよ?」
「そうだな。俺も忘れていた。」
「早く帰ろう。重いっ!」
「そうだな。急ごう。」
ダンは、乱暴に言い合っているものの表情の柔らかいメンバーを見て、和んでいた。
父や兄たち4人とは全く違う…この人たちは温かい。
天龍のメンバーは、言い争いつつ家へなんとか辿り着いた。
「それにしても、たった2泊3日とは思えなかったわ。」
「本当にそう。」
「ひたすら狩りをしていた気がする。」
「そうでしょうね。そうじゃなきゃこんな金額にならないわよ。ちゃんとフーカさんに渡したのよね?」
「渡した。」
「それでも、これって…意味がわからないわよ。もう!」
「俺もわからん。」
「俺もだ。」
「ねぇねぇ、フーカさんのプレゼントみよーよ。」
ハナの無邪気な言葉に3人がため息をついた。
「これが一番怖いのよね。」
「ああ…」
それを聞いたダンが、震えている。
「何か良くないものが入っているのですか?」
「そうじゃないわ。」
「そうではない。間違いなくいいものが入っているとは思う。」
「それならどうして?」
「ほらっ…やっぱり…!」
ルーシーが取り出していく。それを見て、ケントとアーサーは苦笑いをしてしまう。初級ポーションは正式な容器ではないが、間違いなくあの時の物だ。ハナとテンは目を輝かせていた。
「これ何ですか?」
「初級ポーション、初級癒しの水、初級軟膏、初級消毒薬だ。どれも簡単に手に入るものではないな。」
「え…お薬ですか?薬なんて効かないって…」
「それは、親が?」
「はい。」
「これは、効くぞ。お前には昨日飲ませてある。そうじゃないと、今日まともに食べられる訳はないだろう?」
「そうなの?」
ダンだけではなく、ハナとテンも首を傾げた。
「絶食が続いて、急に食べたら人間は死ぬ。」
「え?」
「ダンが生きているのは、この癒しの水が効いているからだ。」
「そうだったのか…。」
「そうだよ。これは怪我を治したり、体調不良を治したりしてくれる。だが、簡単に使うようなものではないよ。」
「はい。そんな貴重な物を使って治してくれたの…」
「そうだな。」
ルーシーは少し大きな容器を取り出した。
「ねぇ、見てよ…」
「塩コショウか…」
「こんなに沢山?何年分だよ…。」
「塩もコショウも…」
「これお塩ですか?」
「胡椒入りのな…」
「こしょう?」
「肉に使うスパイスだ。」
「スパイス?」
「まぁ、そういう物があるってことだ。外で言うなよ。」
「はぁ…」
「見てよ、これいくつあると思う?」
「すごい数だな。」
「ね…ないわ…飴をこんなに沢山…」
ルーシーが転がした飴の包みを見ていると、アーサーがジッパー袋を並べ始めた。
「この干し肉、作った全部か?」
「14袋あると思う。」
「14!?」
「17袋になったのよ。それで、ほとんどくれた訳…。」
「よりによってこの袋か…。」
「うん、未使用品を大銀貨1枚で塩ギルドは買っていたわね。」
「大銀貨!?」
「17枚ってそれだけで…」
「しかも、この干し肉塩もコショウも効いていて、めちゃくちゃうまい。普段の干しただけではない燻した香りが、美味しい。」
「うん、私もそう思う…これすごい日持ちするのよ。」
「そうなのか?フーカさん90日と言っていなかったか?」
「言っていたけど、私が見る限り270日。」
「は?270??」
「うん。」
「それって、この干し肉に出来れば半年以上肉を狩れなくてもってことか?」
「そうなるね。日持ちの理由が燻したからか塩コショウなのかそれとも別の何かなのかはわからないけどね。」
「まぁ、フーカさんだからな。」
「うん、そうなの…。」
数日後、天龍は冒険者ギルドのギルドマスター室へ呼ばれていた。
部屋ではクリスフォートが出迎え、その傍らには側近が1人立っていた。
「よく来た。天龍。」
「それでなんですかね?」
「フーカ様の事だ。」
「ああ、フーカさんがどうかしたか?」
「どういう関係だ?」
「魔の森でハナとテンを救ってくれた人だ。前に話しただろう?2人が大怪我をして、俺たちはブラックベアーと戦っていた。その時に、フーカさんの張ったガードに入れてもらって助けてもらった。それから、町の案内を頼まれたり、あとは採取依頼というか一緒に採取する依頼と護衛とかされたりだ。」
「なるほど。報酬はどうなっている。」
「基本なしだ。俺たちは命を救われた対価として、フーカさんの頼みは全て聞くことにしている。まぁ、そんなことを考えるまでもなく…できるだけ時間は合わせているが…。」
「それでは、稼ぎにはならんだろ?」
「護衛中に狩った獲物は、フーカさんが欲しい物以外全てを折半することになっている。」
「ああ、それで…ずいぶん頑張るな。いいところを見せたいのか?」
「いや、そうじゃない。」
「なんだ?」
「フーカさんといると、大量に向かってくるから忙しい。」
「ほぅ…」
「この間の獲物は2日分だ。」
「は?2日?」
「ああ…」
「待て待て、確かに鮮度はよかった。だが、2日だと!?」
「そうだ。」
「2日に間違いないわ。3日目は移動だけだもの。」
「どう見ても、ブラックベアー2頭とオーク4頭はあったぞ?他にも猪3等分に、ウサギ肉と狼は大量だった…それを2日で?たった3人で狩っただと?」
「そう言われても…そうなのでね。」
「よくわからないが、フーカさんに寄ってくるのかもしれないな…。」
「そうなのか?いや…そうかも…」
「そうかも?」
ケントに問われて、クリスフォートは苦笑いをしてしまう。
「いや、フーカ様は定期的に来てくださるが、いつも大量の肉を持ってくるなと…」
「いつも?」
「ああ、ご自分で狩っているらしい。」
「へぇ…それで…いつ覚えたやら…。」
「ん?」
「いや、最初に会った時のフーカさんはウサギを解体できずに困っていたから…」
「そうなのか。」
「ああ、だから…解体した肉を入れる容器とかそ、れなりの量が用意されていて驚いた。」
「そういうことか…解体するのは見ましたか?」
「いや、見ていない。今回はポーションの材料を揃えるのが目的で、2日目にはポーション作りを手伝って、干し肉を作って…」
「え?ポーション作りを手伝う?」
「ああ」
「ポーションは人のいないところで、1人でひっそりと作るものではないのか?」
「そう思うだろ?太陽神の下で堂々と作っていたぞ。」
「は?」
「隠すつもりはなさそうだった。だから、おそらく…真似してもできないのだと思う。」
「どういうことだ?」
「フーカさんが手を掛けると、光が舞っていた。おそらく何かの魔術を行っていると思う。」
「なるほど、そういうことですか…。」
「では、もういいな。」
天龍の5人が立ち上がろうとすると、クリスフォートが手で制する。
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