13
楓花は、セイヤにポーションを並べたトレイを渡した。
「セイヤさん、これお薬ね。」
「ああ、ありがとう。」
「私も持っていくわ。ケントさん、お肉お願いね。」
「ああ、任せて。」
「フーカ様、彼は?」
「アートンの天龍というチームのケントさんです。今回、ポーションの材料の採取を手伝って貰ったの。」
「そうだったのか。」
「ポーションは作り立てなのよ。少し時間が経っていてよければ中級もあるわ。ケイさんには内緒よ。」
「それなら、中級も欲しい。初級だとゆっくり効くから、どうしても重度だと中級を使ってやりたい。」
「そうですよね。」
「だが、こんなに沢山の薬を使えるなんて…夢のようだ。今までは支払い能力があっても手に入らなかったからね。」
「そう言ってもらえるならよかったです。」
「それに、肉を買えるようになったおかげで皆病気になりにくくなった気がする。これから収穫の秋だから働き手はいくらでも欲しい。そしてすぐに冬になっちまう。冬を越せるだろうかといつも不安に思っていたけれど、今年は越せる気がすると皆で言っている。」
「そうなの?少しでも安心につながるならうれしいですね。」
「安心さ。毎月のように肉を卸に来てくれる。生肉を食べられて、干し肉もある。それだけでも十分だっていうのに、薬まである。これで不安なんてない。」
楓花は、肉の概算金をと薬の代金を受け取り、ヒルストンを出た。
今回は時間がないので肉は計量してから、概算金との不足分は次回に貰うことにしたのだ。
「次はアートンね。お肉を出さないと…。」
「どこで出す?」
「アートンの門から少し離れたところに停めて、倉庫で作業しましょう。2人でもいいかしら?3人入ると少し狭いわ。」
「ああ、そうだな。移動時間にしても早すぎるから、それくらい待たせてもいいだろう。」
アートンの門から100mのところに移動すると、倉庫のドアを壁側になるように停めた。ガードは1m、ステルスのままなので気が付かれることはないはずだ。
倉庫へと入り、電気をつけた。
「明るい…上もそうだけれど、不思議な光だ。明るいのに熱を感じない。」
「そう?作業を始めていい?」
「もちろんだ。俺が袋を開けているから、入れてくれ。」
「いえ、ボールに袋をかけてくれれば、そこにお肉を入れるから、いくつかにかけてくれる?こうやってこうしてくれるといいわ。」
「わかった。」
楓花が作業を始めると、ケントが苦笑いをした。
「なんだ、2人でできるな。」
「出来るわよ。でも、人手があるなら手伝ってもらったほうがいいでしょう?」
「まぁな…」
「特にこれは、ケントさんとアーサーさん、ルーシーさんが狩った獲物だもの、自分たちの手で出来るだけ分けたほうがいいのよ。」
「まぁ…そうかも…それにしても、ヒルストンだけで210万ダルも稼ぐなんて…」
「半分ですけどね。」
「半分でその金額っておかしいだろ?」
「ヒルストンは、肉が入って来にくい地域らしいの。」
「は?」
「ウサギ肉や狼は多少捕れるみたいだけど…絶対量が足りなくて、オークやブラックベアーはかなりの高級品で買い取り額が高いわ。」
「そうなのか。どうりで…。」
「ここまではオークで次からブラックベアーね。」
「わかった。」
「だから、できる限り売りに行くようにしているのよ。」
「そうだったのか。」
「また、一緒の時には協力してね。とても助かるから。」
「わかった。その…次はいつ頃空けていたらいいかな?」
「採取よね?今回採取出来なかったライトフラワーが欲しいのだけど…。」
「それなら、冬の終わりごろがいい。」
「わかったわ。冬って採取は難しくなる?」
「草木は枯れるから無理だな。毛皮はもふもふで狼やキツネなんかはいい毛皮が取れるが…。」
「そうなのね。それなら、1か月じゃなくて…3か月後くらいに会いましょう。その前に気が向いたら遊びにくるかもしれないけれど、気にしないで構いません。」
「そうなのか?」
「ええ、先過ぎて予定も立てられない…。」
言いながら、7月の末なら研修の嵐…なんて考えていた。
それから、夏季休業どうしよう?
寒いのは好きじゃないし、タイヤの履き替えも面倒だわ。
7月から8月に5日間連続で取得できる。一応、全員が休むと困るので他の人と融通する必要はあるけれど、ほとんどの人たちがこの時期に有給休暇も使うので、出勤人数は半分以下になる。
それで回る程度に仕事が減る時期ではあった。
時間はあるけれど…などと考えている間に肉の大部分を取り出していた。
狼肉もそれなりの量があった。毛皮や牙、爪や角などいろいろな獣の肉以外の部位も相当量あった。
「角ウサギの角とブラックベアーの爪は私がもらいますね。」
「もちろんだ。」
「毛皮や皮はいらないので、天龍の皆さんでどうぞ。」
「え?半分ずつでは?」
「採取してもらって、それは私がもらっているので…これは受け取ってください。」
「わかった。それなら、もらう。肉はこれ以上置く場所がないから出せない。出せない分は楓花さんが使ってくれるといいかな。」
「それで後悔しません?」
「しない。町に卸すにもこれ以上は無理だろ。処理できない。」
「それなら、私が預かりますね。では、町に入りましょうか。」
楓花が運転席につき、ケントが助手席に乗り込んだ。
シートベルトを締めるのを確認して、車はステルスを解除した。
「それではアートンへ」
「おぉ、フーカ様いらっしゃいませ。ケント偉そうに隣に座っているじゃねえ。」
「うらやましいだろ。魔導車に乗る機会なんてそうそうないからね。」
「うらやましいな~まったく。それで、どうよ?肉はあるのか?」
「オークもブラックベアーも猪にウサギ、狼もあるぞ。」
「おぉぉぉ!すげー。」
「どうぞお通りください。」
「ありがとう。」
楓花は門番に礼を言うと、中へと進む。最初にギルドへ車を停めた。後ろに上がって2階にいる皆を呼んでくる。
それから、ケントさんはギルドへ入っていき、クリスフォートさんを連れて出てきた。
「肉がこれだけある。」
大騒ぎをしながら肉を下した。
アートンだから、天龍の方たちにお任せだ。
「お待たせ。全部下した。」
「ありがとう。それでは、車の警備をしてもらえますか?」
「もちろんだ。」
アーレンに警備を任せると楓花とケントは一緒にギルドへ入り、肉や素材の代金を受け取った。
それから、別部屋へ行き楓花とクリスフォートは薬の取引の相談をして150本ずつ卸すことになった。
怪我人たちは治ったので農作業へ戻っているらしい。それでまた怪我をする者もいるので、多めの薬を売ることになった。
代金を受け取り、車へと戻る。
「それじゃあ、楓花さん俺たちは歩いて帰られるからここでいいよ。」
「そんな…送るわよ。」
「大丈夫だ。」
「うん、本当にここまで送ってもらえれば大丈夫。ありがとう。」
「そう?なら、これを渡しておくわ。預かっていたお肉と干し肉。あと、これは私からのプレゼントよ。」
「え?プレゼント?」
「家で開けてね。ではまたね。」
「ああ、また!」
楓花は、見送られてアートンを出ると、そのまま家へと帰った。
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