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ケインの剣の切っ先が届く前に、男2人がガード外へと飛んで行った。
「え?上!?」
「うそでしょ?」
男たちは上へと飛ばされ、ガードの外側を滑り落ちて行った。
それを聞いて、残りの男2人も走ってきたが、外へと飛ばされていった。
「あの子は?」
楓花たちが走っていくと、少年はおろおろとしていた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「あなたは悪くないわ。ただ、4人とも外に飛ばされてしまって…あっ…」
楓花は慌てて、少年の目元を手で覆い隠した。
でも、少年はその隙間からしっかりと見ていた。
ガードの外に飛ばされた父と兄が、ブラックベアーに喰われていた。
父と兄からは、ことあるごとに乱暴されてきた。
昨日なんて餌にされるところだった。獣から逃げるために崖から落ちて体中痛かったけれど、なんとか逃げた。
僕はもう動けなくて傷だらけの状態でガードを見つけた。これで助かると思ったら、僕を口実にして父さんたちまで入ってきてしまった。
それで、何をしたのか知らないけれど外に追い出されても自業自得だ。
僕は、このお姉さんには何もしないでって…お願いしたのに、4人共悪い事をしようとしていた。
僕を助けてくれたのに…。
「父さんたちが、ごめんなさい。」
「いえ、こちらこそごめんなさい。4人とも…多分もうだめよ。あなたは行くところはある?」
「ううん、ない。」
「彼らとはどういう関係?」
「今、獣に食べられたのが父さんと兄さん。」
「そう…」
「先にお姉さんたちのところに行ったのは、ゲインとフリーだ。」
「そうなのね。」
「坊主、行くところがないなら俺たちとくるか?アートンという町だ。下働きでよければ仕事はある。嫌でなければ、俺たちのチームでもいい。」
「おっ…お願いします!」
「あなたお名前は?」
「僕の名前はダンです。」
少年は、地面に這いつくばって頭を下げていた。
この子は何もしていないのに、親や兄のやったことで謝って…しかも、彼らは死んでしまったし…。
「では、ダンこちらへいらっしゃい。ガードの中は安心だけど、まだ信用できないから外で寝てもらうわよ。」
「それはもちろん…え?これ…立派な車…。」
「そうだ。だが、まだお前は乗せられない。明日の朝まで外で過ごしてもらって川で水浴びしてからだ。」
「うん、もちろんです。ガード内に入れられたら十分…」
「でも…。」
「大丈夫、弱っているからシャワーで体を洗ってあげて…」
「わかった。車に乗せて、悪い事を考えたらどうなる?」
「それは…体がちりじりになるのではないかしら?」
ダンはそれを聞いて、失禁してしまっていた。
ぶるぶると震えているのは、父や兄の末路を知っているからだろう。
「僕は何も悪いことはしません。」
「えっと…やっぱり川で水浴びしてからね。」
「そうだな…川で体を洗うぞ。」
「はい!ごめんなさい・・・」
悪い子ではなさそうだ。
ケントたちの洗濯物はもう乾いていたらしく、そのまま部屋でいいという。
焚火を焚いて、お湯を沸かす。
ハンガーラックを倉庫から取り出した。
そうしていると、ダンとケントが戻ってきた。
「服までお借りしてすみません。」
「テンの服が着られてよかったよ。」
「ダンさん、体が冷えたでしょう?温かい物を飲みましょうね。ココアをどうぞ。」
「ココア?」
「熱すぎると思ってミルクで割ったから飲みやすいと思うけど…」
「飲んでいいの?」
「もちろん。どうぞ」
「うわっ…甘い!美味しい…おいじい…」
ダンは泣きながら飲み始めた。
残念なことがあったばかりで、それも仕方がないと思ってしまう。
そこに、ルーシーとアーサーが降りてきた。
「あら?大人たちは?」
「それが…」
「ガードの外へ飛ばされてしまって…」
「そう。それでその子は?」
「ダンだ。荷物持ちとして雇いたい。」
「まぁ…いいけどね。しっかりと働くのよ。」
「はい!精一杯頑張ります。」
「返事はいいじゃない。」
ルーシーが笑っていて、アーサーもほのぼのとした目で見ていた。
ダンとしては、こんな温かくて美味しいものを飲ませてくれる人たちと一緒にいたいと思った。
「言っておくが、今日それが飲めるのは特別だからな。普段はないぞ。」
「うん、わかっています。」
「今日、明日はあれだが…家に戻ったら贅沢はできないから、覚悟しておけよ。」
「はい」
ダンは、その意味をすぐに理解した。
夕食に肉をたくさん食べていたのだ。
「ダンは、あまり食べていなかったみたいだから、これを飲んでから食べられるなら食べていいわ。寝るところは、このテントの中よ。秋ですし夜は冷えるからね。寝袋は貸してあげるわ。」
ダンは、一人用のテントを貸してもらった。
2階に上がったら体がちりじりになるかもと言われて、怖くて梯子を上れなくなったのだ。
「これは寝袋だから、この中に入って寝るのよ。寒いからしっかり入るのよ。」
「うん。わかりました。」
「ちょっと入ってみてごらん。」
ダンはマントを来た人に言われて、入ってみた。
「ふわふわであったかいです。それに下も痛くない。」
「そう?眠られそう?」
「うん、だいじょう…」
「寝てしまったわね。」
「そのようだな。疲れているだろう。」
楓花たちは、ダンがここまでどうやって来たかはわからない。
それでも、彼の服装や体の状態から大変だったことはわかる。
それに父と兄と言っていた人たちは似ていなかった。それに彼らはここまでガリガリではなかった。
おそらくダンだけが、ひどい扱いを受けてきたのだろう。
「では、また明日の朝ね。」
楓花はキャビンに乗ると、鍵をかけてシャワーを浴びた。
ロッカーの中に着替え一式は入れてあった。
3階まで登らずに済むので、敬一郎がいないなら1階だけでいいと思う。
1人でないから、武器も必要ではない。
もっともショートソードは腰から下げているし、斜め掛けバックの中には、3階の寝室にあるタンスに入っていた弓矢も短剣も入っている。ウエストポーチには弓矢と剣も入っている。
寝る時でも、ウエストポーチだけは身に着けているので、安心感はあった。
明日の朝、ダンに初級の癒しの水を飲んでもらおう。それから朝食は、ダンにはパンと卵のスープがお腹に優しくていいだろう。食べていない子がたくさん食べるのはよくない。ほどほど食べさせたら、上で寝てもらおう。
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