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楓花は、まだ火の通っていないポットベラを端に寄せて、ウサギ肉を焼き始めた。
こうしてみると鶏肉によく似ている。
皮のない鶏肉にしか見えない。
「さぁ、焼けましたよ。」
楓花が肉を取り分けていると、アーサーがやってきた。
「肉を焼くだけでいいなら、俺がやるよ。」
「あら、いいの?生の肉には赤いトングを使ってね。」
「焼けたら青だね。」
「そう!食べながらお願いしますね。」
「ああ、任せて。しっかり食べる。」
楓花は、椅子に座って少し冷めたカボチャを食べた。甘くて美味しい。
「このオレンジ色のとても甘くて美味しい。」
「かぼちゃと言います。私も甘くて好きなの。」
「こっちの白いのも美味しいよ。」
「それは玉葱ですね。火が通ると甘くなるけど、生だと辛いの。サラダにも入っているのよ。」
「サラダに?これかなぁ…あっこれ?」
「そうそれ。」
「あっ…うん、シャキシャキしていておいしいけど、ちょっと辛いかも…。」
「そうでしょう?ふふっ」
「玉葱は、血液をサラサラにするし、カボチャには目にいい栄養がいっぱい入っているから食べてね。」
「…?うんっ、食べる!」
「フーカさん、こっちのこれはそろそろかな?」
アーサーに声を掛けられて、ポットベラを見た。丁度良さそうだ。
「いい焼け具合ですね。もう食べられます。お肉はもう少しかも。そっちのオークとブラックベアーはよく焼いてください。こっちのウサギ肉はもう少しですね。」
アーサーさんが、焼けたポットベラをお皿へ乗せてくれる。
厚切りのそれを噛めば、じゅわーっと汁が出てきて美味しい。
「ん~美味しい。」
「それはよかった。ところでこれはなんですか?」
「これは大きなマッシュルームですね。」
「マッシュ!?」
「マッシュルームはきのこですよ。」
「きのこ!?」
「焼いて食べるの?」
「マッシュルームは生でも食べられますが、他のキノコ類は焼いて食べないと…」
「はぁ…そう…」
アーサーやルーシーが「キノコって薬じゃないの?薬の材料…」とブツブツ言っているけれど、楓花は気が付いていない。
ケントは苦笑いをしつつ、焼けたポットベラを食べて「うまっ」と言っていた。
車に1階に乗っていない2人はわからない。
楓花の全てが普通ではない。それは車の中での行動も同じだ。
ケントは、いろいろと諦めることにしていた。
俺たち以外のいる場所で気を付けてくれればいい。車の外なら、まだそうおかしいところは少ない。そう思うことにしていた。
普段飲む酒は大麦を発酵させて作ったビールで、失敗した物や古くなった物は酸っぱくなる。
成功していてもほんのりと酸味がある飲み物だが、体にいいと言われているので飲んでいた。酒ではあるけれど、酒精は高くない。
ワインは、ブドウを発酵して作るらしくアートンにもワイン農家はいる。
彼らのワインは1本大銀貨5枚から金貨1枚と高価なので収穫祭を終えてブドウの仕込みを終えた頃、前年に詰めたワインが売り出される。それを年に1度の贅沢として買っていた。
このワインのように滑らかではなく、もっと酸味が強い。
このワインは、かなりの年数を寝かせた物だろう。
極稀に貴族の邸宅で振る舞われるような味だった。
味を付けるためにと塩も胡椒もふんだんに入った容器、よくわからないけれど美味しい味のタレ、生の野菜なんて食べ慣れないけれど、フーカさんが出すのなら美味しいのだろう。
ふわふわとした野菜に白いドレッシングをかけて食べると、シャキシャキの歯ざわりで濃厚なおいしさが口に広がる。それをワインで流すのはもうたまらない美味しさだった。
「お肉食べる前に美味しすぎて満足しているわ。」
ルーシーの呟きにケントもうなずいた。
「野菜ってうまいものだったってフーカさんといると思う。家だとすっかり忘れるけど…。」
「家でだって、このソースをかけたら美味しく食べられると思うよ。」
「それはそうかもしれんが…これチーズが入っている…。」
「うん…そうよね…チーズなんて手が出ないわ。」
「お肉焼けましたね!」
楓花が、弾んだ声を出した。
皆で焼き台に集まって肉を食べ始める。
「お肉薄くて食べやすい。」
「うん、このきりかたすき。」
「私にはできないから、あんたたちでできるようになって。」
「え…ごめんなさい。」
「アーサーなら切れる?」
「俺?無理無理、こんなに綺麗に切れないよ。」
「そろそろこっちのオークも焼きませんか?」
「いいね、焼いていこう。」
「おっ…このタレうまい。」
「うん、少しつけるだけで違う味になるね!」
ワイワイと騒ぎながら肉を食べていった。
「も~食えん。」
「私も…美味しすぎていっぱい食べてしまったわ。」
「美味しかったですね~」
楓花もワインを飲んでお腹いっぱい食べてしまった。
お腹のお肉を気にするお年頃だというのに、つい気が緩んでしまう。
「皆さん、お肉は普段どうやって保管しているの?」
「肉は保管庫だね。」
「ああ、保管庫だ。」
「保管庫?」
「保管庫って言うのは…魔石を使った道具だ。肉を入れておくと5日くらいは食べられるように保存できる。」
「へぇ…どのくらい入るものですか?」
「そうだな…この焼き台くらいかな?」
「そうなのですね。」
「そうだ。前に干し肉にすると言っていましたけど、それってここでも作れますか?」
「ああ、それはもちろん。一度茹でて味を付けたものを天日に当てて乾かす。低温で焼いて乾かすと日持ちするらしいが…」
「なるほど…それでしたら、ちょっと変わった干し肉を作ってみませんか?煙で燻すと日持ちするはずです。」
「煙で燻す?」
「はい。」
酔っぱらった楓花は、キャビンから肉用のナイフとまな板も持ってくる。
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