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「ケントさん到着しました。ルーシーさんたちに声をかけてもらってもいいですか?」
「もちろんだ。」
ケントが車を降りて、後部の梯子を上っていく。
楓花は倉庫のドアを開けて、未使用のバケツとペン、ハサミを手に取った。
バケツに名札を貼り、癒し草と書き込む。
「フーカさん、さすが早いですね!」
「そうですか?早速ですが、採取を教えてください。」
「はい、このハート形の葉が3枚ついているのが癒し草です。花が付き始めているのは毒がありますから、葉も取らないように注意してください。根こそぎ抜くと次に困るので、必ず2本は残して摘み取ってください。」
「わかりました。」
クローバーによく似ていると思っていたけれど、生えている様子もクローバーだった。
楓花はしゃがみこんで摘み取り始めた。
「フーカさん、採取した物はこの入れ物に入れたらいいですか?」
「あっはい!助かります。」
今回は採取依頼で、採取の指導も入っているから依頼主の物になるらしい。
楓花はすぐに特徴を覚えて採取に夢中になった。ハナとテンも楓花の近くで採取をしながら、おしゃべりを始めた。
ケイン、ルーシーとアーサーの3人は、そんな3人の周辺で警戒に当たる。
「ああっ!」
楓花が、声を上げて立ち上がった。
3人は周囲の警戒を強める。
「どうした?」
ケインは、周囲を警戒しながら、横目で楓花を見た。
ケガをしている様子はなさそうだ。
「皆さんを勢いで連れてきて、ここに着いて休憩もなしに採取を始めてしまいました。」
「ああ、それがどうした?」
「休憩をしましょう!車の周囲3mにガードを展開してあります。」
「おぉ…」
楓花は、倉庫に積んだ折り畳みテーブルとイス6脚を取り出した。
キャビンに入り、お湯を沸かすとそれを、別のポットに移し、お代わり用のお湯も沸かす。
ティーバックとコーヒーのドリップパック、個包装のカフェオレやココアなどとマグカップ、缶入りクッキーをトレイに乗せて運んだ。ウエットティッシュも持って行く。
「お待たせしました~」
「まずはこれで手を拭いてくださいね。こうやって摘まんで引き出せます。」
「うわぁ…面白い!」
「へぇ…いいものだ…。」
「お茶の他にコーヒーと甘い飲み物もあります。」
「甘い飲み物!?」
「どんなの?」
ハナとテンが目を輝かせて聞いてくる。
「ココアというものとカフェオレと言ってコーヒーにミルクの入ったものもあります。」
「ココアもコーヒーもわからないよ?」
「では、1つずつ作るので少しずつ味見をしてみてください。お好みのものを飲みましょう。」
楓花は、ココアとカフェオレを作った。それとコーヒーと紅茶、緑茶も淹れた。
「これがコーヒーで苦いです。こちらは紅茶でこちらは緑茶です。そして、こちらの2つが甘いカフェオレとココアです。」
「味見はどの順番がおすすめ?」
ルーシーさんの問いかけに楓花は笑った。
使い捨ての小さな紙コップを用意した。それとスプーンも取り出し、それぞれをすこしずつ味見できるようにした。
「そうですねぇ…緑茶、紅茶、コーヒー、カフェオレ、ココアがいいかな?」
「わかったわ、その順番で試させてもらう。」
ルーシーさんが、5人に緑茶をとりわけ一口のみ、次をまた分けた。
「草の香りだけど甘いのね。」
「はい、苦くて甘い飲み物です。」
「こっちは、この間のお茶ね。渋くてさっぱりする。」
「にがっ!この黒いのは苦いわ。」
「焦がした豆を使っているので、苦みが強いかもしれませんね。」
「んんっ!甘い!これもコーヒーなの?」
「それは、コーヒーにミルクを入れて砂糖も入っているの。疲れた時にいいわ。」
「砂糖!?」
「遠慮はしないで、飲むために用意したの。」
「あっはい…」
「こっちは濃厚で何これ?贅沢な味がする。」
「そっちはココアです。子供が好きな飲み物ですが、昔は薬だったそうですよ?」
言いながら、世界での昔って18世紀くらいだろうか?それとも19世紀?20世紀ではないよね?せいぜい300年くらい?
砂糖が貴重品なのは、江戸時代には菓子が出ていたとはいえ庶民に広がったのは中期以降だろうから…200年くらいだろうか?そう考えると案外最近なのかもしれない。
「お湯を注いで作れるので、お好きなのを飲んでくださいね。」
楓花はコーヒーを淹れながらそう声を掛けると、ハナとテンはココアを選んでいた。
ルーシーとアーサーは紅茶を選び、ケインは緑茶を選んだ。
意外だと思いつつ、クッキー缶を開けた。
「これはクッキーです。甘いお菓子なの。」
「わぁっ!きれい!」
「サクサク!」
「おいしい!」
楓花は喜んでいる2人を見て、喜んでいた。
かわいいなあ…甘いものを食べていると子供らしい顔をする。
ハナさんもテンさんも子供だろうに、普段は凛々しい顔つきをしていた。こうやっている姿はかわいらしくていい。
「フーカさん、甘いお菓子までは…」
「一緒に食べたほうが美味しいもの、いいでしょう?」
「ふぅ…仕方ありませんね。」
「ほらっルーシーさんも食べて!これは真ん中にジャムが入っていて美味しいの」
「うぅ…おいじいです…」
「ええ…泣かないでよ。」
ルーシーが泣き出してしまい、楓花が戸惑っていた。
「ルーシーは怖いのです。フーカさんといると、普段食べられないような物を食べられてうれしいのだけれど、贅沢品に慣れると普段との落差を感じるからね。」
「まぁ…そうなの?」
「この間のウサギ肉のソテーなんて、本当においしかったです。でも、自分たちで作ってもあんな味にはならない。」
「あれは…ただの塩コショウよ?」
アーサーが苦笑した。
「俺たちは、普段コショウを食べることはないかな…」
「そうなの?それなら、少しお渡ししましょうか?」
「いやいやいや、そうじゃなくて…」
「おいしく食べたほうがいいもの、そうしましょう。」
「十分休んだし、採取の続きをしよう。それと、フーカさん…」
「はい?」
「思ったのだが…今採取したこの辺りから少し車を動かして、ガードを広げられないか?」
「ガードを?」
ケントが指さしたのは、ガードに阻まれている狼だった。
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