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未亡人が、遺産としてキャンピングカーを受け取ったら、大変な事になりました。  作者:
第4章 リストシア

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3


 レストランを出て、敬一郎さんと並んで歩く。

 初めての街並みは歩いているだけでも楽しい。

 塀に囲われ区画が区切られている街と聞いているけれど、圧迫感はなかった。

  

 「パンを食べながら何か考えていましたね?」

 「あら…わかりました?パンにハーブを入れたらおいしいかもと思って…」

 「ほぅ…ハーブを?」

 「はい、ローズマリーとかバジルが合うと思うけれど、ここだと似たようなものがあるかな?と考えていました。」

 「それは、試してみてもいいかもしれません。」

 

 デザートはなかった。

 食後のリリカ入りのお湯を飲んでから、レストランを出た。

 街を歩きながらリリカの実を売っている店を探した。

 屋台では売られているけれど、鮮度の良いものばかりではない。

 いくつかの店を見て、一番端にある細身の女性の店で立ち止まった。

 店員さんはともかく、商品はどれも瑞々しい。


 「鮮度がいいですね。」

 「ありがとうございます。リリカの果樹園をしていまして、並んでいるリリカは今朝収穫したものです。」

 「それはいいですね。1籠欲しいです。」

 「1籠も!ありがとうございます!1籠だと大銀貨3枚にもなりますが。」

 

 値札は1個銅貨1枚となっていた。

 30個くらいは入っていそうなので、問題ない。

 

 「はい、かまいません。」

 

 楓花は大銀貨を3枚渡し、籠を受け取った。

 歩き始めて少し経つと、敬一郎さんが足を止めた。


 「楓花さん、少し目をつぶっていてください。」

 

 少し歩いたところで、敬一郎さんが足を止めてそう言った。

 数人の男たちに囲まれてしまったようだ。

 目をつぶっていろと言われても、私は何が起きているのかしっかりと見定める主義だから、それには従えない。わからないままになるのは、もう嫌なのだ。


 敬一郎は、剣を抜くと一撃で倒していく。

 楓花は、しっかりと見ていた。

 倒れた男が、もぞもぞと動いたのを視界の端に捉え、慌ててリリカの実をぶつけた。

 丸いものを投げるのは、得意だった。

 リリカの実をぶつけられた男は、そのままナイフを投げられずに落とした。その音に反応した敬一郎は、その男にとどめを刺した。


 「楓花さん…」

 「ごめんなさい。見えてしまったのよ…。」

 「目を閉じないからですよ。」

 「それでナイフを投げるのを止められましたね?」

 「はぁ…仕方がないですね…。」

 

 敬一郎さんが笛を吹いた。

 すぐに兵士たちが駆けてくる。


 「閣下!これはいったい…」

 「ここで襲われたので切り伏せた。」

 「そりゃあ…こいつらバカすぎる…」


 兵士たちが苦笑して、彼らを荷台へとのせ始めた。重ねて積んでいるので生きてはいないのだろうけれど、大和では考えられない光景だ。死者への畏敬の念は、ないのかもしれない。


 「敬一郎さん、町の外に出ても大丈夫かしら?」

 「問題ありません。そろそろ行きますか?」



 車をアイテムバックから取り出してもらい、走らせた。

 街中は人が多いのでゆっくりと進む。入ってきた門を通り塀の外へ出た。


 「ナビさん、ガードを3m、ステルスにして。」

 『かしこまりました。ガードを3m、ステルスい設定。』


 「ケイさん、今日はここで泊まってもいいですか?」

 「もちろん構いません。」

 

 楓花は、車をステルスのまま停めた。道から少し外れたところなので邪魔にはならないだろう。そもそも、ステルスだと邪魔はしないらしいけれど、念のためだ。


 楓花は、襲われたことに動揺していた。

 そして、襲ってきた人たちを躊躇なく殺した敬一郎に、どう接していいのかわからなくなっていた。

 自分だって襲ってくるものは反撃していいと思っているから、その行動を批判するつもりはない。だからと言って実際に人間を斬ったことがないので、どうしても戸惑っていた。


 「あの…いつもああやって殺してしまうの?」

 「いつもではありません。拘束で済むならそうしています。言い訳をさせてもらえるなら、今回は人数が多かったのと…彼らの印を見たから躊躇なくやってしまいました。」

 「印ですか?」

 「はい、額に墨が入っていました。三本線は犯罪を3回も行った証です。」

 「それって…どういう意味になるの?」

 「人殺しならその場で切り伏せられます。誘拐や暴力などであれば、捕まえてから問いただし墨を入れて、労務をさせてから解放します。その都度墨を入れて釈放しますが、4本目はありません。」

 「それってつまり3本まで許されるという意味ですか?」


 敬一郎は頷いた。


 「この世界では、倫理観が低くなかなか定着しません。ですから痛みをもって犯罪を抑えています。」

 「そうですか…」

 「ましてや、私と大魔導士のマントを着ている楓花さんを狙ったのです。当然ですよ。」

 

 それがこの世界での決まりであるならば、それを守らない人が罰せられるのは仕方がない。


 「その…大魔導士というのはどういう人のことですか?」

 「魔導士というのは、この世の理を学ぶ者という意味があります。例えば…科学や生物といった当たり前の理が、この世界では当たり前の知識ではありません。」

 「科学や生物ですか?」

 「はい、それには現代知識による手当も含まれます。」

 「医療ではなく、手当が??」

 「そうです。ばい菌という昔の子供に教えるのに使われた言葉さえありません。そういった概念がなぜか定着していないのです。ですから、清潔にしてという言葉さえ理解されません。」

 「…そうなの?」

 「はい。泥汚れがあろうと平気です。気にもしていません。」

 「そうですか…それはなかなか手ごわいですね。」

 「はい、ですからおそらく…楓花さんの手当は、この世界では唯一無二の医療です。」

 「それは仰々しいというか、恐れ多いです。」

 「実際そうなのです。」

 「でも…そうなると、私の当たり前が、当たり前として通じないですよね?」

 「そうなります。」


 キャビンへ移り、コーヒーを淹れた。

 それをソファーでゆっくりと味わう。もちろんチョコレートもお供にしている。

 それで一息つくことが出来た。

 楓花は、敬一郎を見た。


 「やっぱり、移動します。」

 「そうですね。それであれば、車の性能をゆっくり見たいので…人がいないところがいいですね。」

 「それなら、虹湖でいいですか?」

 「虹湖ですか?まぁ…そうしましょうか。」

 「では、向かいますね。」


読んでくださりありがとうございます。

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